魔物使いのハンドレッドクエスト   作:小狗丸

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第二百二話

「……う~ん。一体どれにしましょうかね?」

 

「ん?」

 

 レムのいる部屋に向かってアルハレムが飛行船エターナル・ゴッデス号の船内を歩いていると、半開きとなった部屋の扉から聞き覚えがある声が聞こえてきた。

 

 気になってアルハレムが扉の向こうを覗いてみると、部屋の中で魔物使いの青年に従う魔女の一人、サキュバスのリリアが何やら考え事をしていた。

 

 リリアはアルハレムが最初に仲間にした魔女だ。

 

 アルハレムが魔物使いの冒険者になったばかりの頃、最初のクエストで仲間にする魔物を探していた時に、偶然発見した遺跡の隠し部屋で出会ったのがリリアであった。その正体は今から二百年以上昔に滅んだ、かつて中央大陸を統一したという大国の神官と伝説のサキュバスとの間に生まれた娘である。

 

 リリアは二百年前に、とある理由により大国の王子と彼に従う戦乙女の手によってつい最近まで、体の自由だけでなく意識まで完全に封印されていた。しかし二百年の月日によって封印の一部が劣化し、それによって意識を取り戻したサキュバスの魔女は必死に外の世界に助けを呼び掛け、その声を聞きつけて現れたのがアルハレムであった。

 

 そして封印から解放するのを条件に最初の仲間となってくれたこのサキュバスの魔女は、様々な場面でアルハレムを助けてくれた。

 

 戦いの時ではその優れた魔女の戦闘能力を発揮するだけでなく、サキュバスの種族特性を利用して本来戦乙女と魔女にしか使えない輝力を使えるようにしてもらったり、旅をしている時では安全に休める寝床の確保から食糧の調達をしてもらったり等、魔物使いの青年は今までに数え切れないほどサキュバスの魔女に助けられてそれに感謝していた。

 

 だからだろうか。リリアが何やら考え事をしている姿を見たアルハレムは考えるより先にごく自然に部屋に入り、彼女に話しかけた。

 

「リリア? 何か悩み事でもあるのか?」

 

「あら、アルハレム様。別に悩み事と言うほどのことでは……いえ……」

 

 部屋に入ってきたアルハレムにリリアは何でもないと言おうとしたが、途中で言葉を切ると何かを考えてから口を開いた。

 

「……そうですね。アルハレム様には後で知らせて驚かそうと思ったのですが、ここで一緒に決めてもらうというのもアリですね」

 

「俺には後で知らせるつもりだった? 一体何を考えていたんだ?」

 

 アルハレムが首を傾げて訊ねるとリリアは自慢気にその豊かな胸を張って答えた。

 

「はい! 私の新しいセクシーコスチューム案です!」

 

「……………はい?」


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