『……………………………はっ?』
マルコの叫びにアルハレム達は思わず絶句した。それに構わずエルージョの騎士は呼吸を荒くして自分の思いを口にする。
「身動きができないところであんな大勢の魔女達に全力で、一方的に攻められたら私、どうなっちゃうでしょう……? いや、こうして美人ばかりのリリアさん達に殺意のこもった冷たい軽蔑の視線を向けられているだけで私……私……!」
頬を赤く染めて興奮しながら言うマルコからは、言い様のない怪しい雰囲気というか気持ち悪さが感じられて、この場にいる女性陣は思わずドン引き。仕方なくアルハレムはバドラックに話しかける。
「あの、バドラックさん? マルコさん、一体どうしたんですか?」
「あー……、気にするな。いつもの病気が出ただけだ」
アルハレムに聞かれてバドラックは嫌そうな顔をして答える。
「病気?」
「ああ。マルコは貴族の出身ということもあってツラも剣の腕もいいし、性格もいい。……ただ一つだけ、女に酷い目にあわされて悦ぶっていう病気というか……性癖を持っているんだ」
そこまでバドラックが説明したところでアニーが怒声を上げる。
「ちょっとマルコ! 耳元で気持ち悪いこと言ってるんじゃないわよ!」
ドゴォ!
「あふぅん♪」
アニーはかなり勢いのある裏拳をマルコの顔面に叩き込むのだが、エルージョの騎士は顔面の痛みに恍惚の表情を浮かべた。
「……まあ、あんな感じだ」
「なるほど。そう言えば前にマルコさんだったらアニーのお守りが務まるなんてことを言っていたけど、それってこういうだったんだ」
恍惚の表情を浮かべるマルコを横目にバドラックが言うと、アルハレムは納得すると同時に以前バドラックが言っていたことを思い出す。確かに女性に酷い目にあわされて悦ぶ性癖のマルコならば、常日頃からワガママを言って理不尽な暴力を振るうアニーの護衛としては適役なのかもしれない。
「ふ、ふふ……。流石アニーさん、相変わらず強力な一撃……ゾクゾクしますね。でもまだヌルイ! ヌルヌルなんですよ! さあ! 皆さんも私を攻撃をしてください! さあさあさあ!」
『…………………………!』
鼻血を流しながら何故かリリア達に攻撃をするように催促をするマルコ。そんなエルージョの騎士の気持ち悪さに女性陣が一歩引いて、代わりにアルハレムとバドラックが行動を起こす。
「「気持ち悪いんだよ! この変態野郎!」」
ズガン! ドゴン!
アルハレムが投げた石がマルコの股間に、バドラックの鉄拳がマルコの後頭部に激突する。
「ギャアア!? 男のはいらないです!」
塔のダンジョンの最上階に一人の騎士の悲鳴が響き渡った。