「……な、何よソレ? 飛行船のダンジョン? ダンジョンマスターを仲間にして移動手段として使っている? そんなのアリな訳?」
驚きのあまり絶句していたアニーであったが、次第にアルハレムが言った言葉の意味を理解していき思ったことを口にする。
「アリも何も実際に今、飛行船を使ってこの最上階に来ただろう?」
「……! こんなズル、私は認めない! この勝負は貴方の反則負けよ!」
「おいおい……。確かに飛行船のことは俺も反則かもしれないとは思わなくもないが、いつお前とアルハレムは勝負なんてしていたんだ?」
アルハレムの言葉に声を荒らげるアニーにバドラックが呆れたように声をかける。
「そうですよ。それに冒険者が自分の持つ手段を使ってダンジョンを攻略しようとするのは普通の事なんですから、反則呼ばわりは少し言い過ぎだと……」
「うるっさいわね! 貴方達は黙ってなさいよ!」
マルコもバドラックの言葉に同意をするがそれで大人しくなるアニーでは当然なく、エルージョの勇者は言葉の怒気を強めて言い放つとギルシュの勇者とその仲間達を睨み付ける。
「……貴方達、そこをどきなさい? そのエリクサーとダンジョン攻略の栄誉は私のものよ」
「相変わらず自分勝手極まりないですねぇ、貴女は?」
アニーは「このダンジョン攻略は自分とアルハレムとの勝負」、「だけどアルハレムは飛行船で最上階に行くという反則を犯した」、「だからこの勝負は自分の勝ち。エリクサーは自分のもの」という自己理論を展開して傲慢に言い放ち、それに対してリリアは軽蔑を露にした冷やかな視線をエルージョの勇者に向ける。そしてそれはサキュバスの魔女以外のアルハレムの仲間達も同様であった。
「はぁ? その目は何よ貴女達? 私に逆らうつもり? 私に勝てるとでも本気で思っているの?」
「いやいや! どう考えても向こうが勝つに決まってるだろ!?」
「そうですよ! いくらアニーさんが戦乙女でも、アルハレムさんの仲間には戦乙女と魔女が十人ほどいるんですよ!」
リリア達の冷やかな視線にアニーが不機嫌な表情を浮かべて言うと、バドラックとマルコが慌てて止めようとして、それにはアルハレムの内心で頷く。
(俺もバドラックさんとマルコさんと同じ意見だ。……というか、毎回思うのだがアニーのあの自信は一体どこからくるんだ?)
どう考えても戦力差は明らかであるのにもかかわらず、アニーがどうしてこんな強気でいられるのかアルハレムには理解できなかった。
会わなかった間に何かの強力な力を手に入れたのか、それともただ単に戦力差を認識できていないだけなのか。
(とにかくここまでくればアニーの自信はもはや一つの才能だな)
アルハレムはアニーを見ながらそう思った。