魔物使いのハンドレッドクエスト   作:小狗丸

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第百九十六話

「……これは驚いたな。まさかこんなに早く来るなんてな」

 

 塔の最上階に現れてアルハレム達に声をかけたのはアニーだった。エルージョの勇者の姿を見てギルシュの勇者は少なからず驚いた顔をした。

 

「ハァ、ハァ……! 私、を……ハァ! なめるんじゃ、ないわよ……! わ、私にかかれば……、こんな塔、なんでもないわよ!」

 

 全速力で塔をかけ上って来たようでアニーは大きく肩で息をしながらアルハレム達を睨み付ける。

 

「まあ、そんな事を言っても丁度最上階の近くまで着いていたからなんだがな」

 

「そうですね。これでもう少し下の階にいたら間に合わなかったかもしれませんね」

 

 勇ましい言葉を吐くアニーの後ろで、バドラックとマルコの二人が階段を上ってきて最上階に姿を現す。

 

「バドラックさんにマルコさん。なるほどね。……流石だな」

 

「ふふん♪ どうやらようやく私の偉大さが分かったよう……」

 

「この足手まとい確定のワガママ勇者を引き連れていながらもうこの最上階に着くとは、流石は凄腕の探検者だな。バドラックさん」

 

「んな!?」

 

 アルハレムの言葉にアニーは胸を張って自慢気に何かを言おうとしたが、ギルシュの勇者はそんなエルージョの勇者を完全に無視して、彼女の後ろにいる騎士の一人に称賛の言葉を贈る。そしてギルシュの勇者の仲間達もそれに同意をして頷く。

 

「そうですね。正直驚きました。バドラックさんって、アルハレム様のお話通りの方のようですね」

 

「………」

 

「リリア。我が夫、嘘、つかない。バドラック、さん、凄い、人」

 

「にゃー、でも話を聞いた時はツクモさんも驚いたでござるよ。人間で、それも戦乙女でもない殿方でダンジョンを一人で攻略をするだなんて」

 

「そうですね。私がいたダンジョンは旦那様達が大勢で攻略をしていましたからね」

 

「お母様がこの話を聞いていたら間違いなくスカウトしていたでしょうね。というか今からでもその女から私達の所に来ない?」

 

「ダンジョンが魔物と戦って攻略するタイプではなく、それほど戦力を必要としなかったとしても驚愕すべき事実であることは確かですね」

 

「ダンジョンマスターである私としてもバドラックさんの話は非常に興味深いですね」

 

「そうね。新しい歌のネタになるかもしれないし、また今度どんな風にダンジョンをクリアしたのか教えてくれない?」

 

「てゆうか、その時に手に入れたエリクサーは今、持っていないのかい?」

 

 リリア、レイア、ルル、ツクモ、ヒスイ、アリスン、アルマ、シレーナ、ウィンと美女達に驚きと感心の視線を向けられてバドラックは照れながらも若干気圧された態度を見せた。

 

「はは……。こんな美人さん達に揃ってほめられると流石に照れるねぇ……。ありがとよ」

 

「そんなことより! 貴方達、一体どうやってここに来たのっていうか、あの空を飛ぶ船は何!?」

 

 頬をかきながら言うバドラックの言葉をかき消すようにアニーは塔の隣の空中に停止している飛行船、エターナル・ゴッデス号を指差しながら怒鳴る。

 

「……あの船はここに来る前に俺が挑戦した飛行船のダンジョンだ。攻略はしていないが、ダンジョンマスターの魔物を仲間にして、それからは俺達の移動手段として使っている」

 

「はぁ!?」

 

「あの船もダンジョンなのですか?」

 

「ダンジョンを攻略するどころか移動手段とするとはな……。どうやら俺の予想以上に大した男だったようだな」

 

 アルハレムの説明にアニーとマルコが驚き、バドラックは今度は自分が感心した目付きとなってギルシュの勇者を見た。


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