魔物使いのハンドレッドクエスト   作:小狗丸

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第百九十四話

「あらあら、凄いですね。あれだけいた魔物の群れをもう倒すなんて。私ではとても無理ですよ」

 

「そうだな。しかもウィンさん、輝力を使ってはいたけど実力の十分の一も出していないな」

 

 飛行船エターナル・ゴッデス号の甲板からウィン達の戦いを見ていたリリアの呟きにアルハレムが頷き、いつの間にか魔物使いの青年の元に集まった仲間達も同様に頷く。

 

「ワイバーンのドラゴンメイド。最強の魔物ドラゴンの眷族は伊達ではないでござるね。……ツクモさんも猫又族の中では結構な実力者で、地元ではちょっとは名が知られていたでござるが、あれを見たら自信を無くしそうでござる。それに……」

 

 そこまで言ってツクモは視線をウィンからシレーナへと移す。

 

「シレーナのあの力も中々に強力でござるな。歌声に輝力を込めることで魅力の効果を付与して敵の意識を己へと集中させる……。今の戦いを見てシレーナが敵を集めてそれをヒスイ殿が閉じ込め、身動きがとれなくなった敵を全員で攻撃するという戦い方が浮かんだのでござるがどうでござるか?」

 

「……それ、もはや戦いじゃなくて虐めだと思うけど?」

 

 ツクモの言う戦い方にアリスンが冷静に言ってアルハレムが内心で頷く。

 

 ヒスイが種族特性で作り出す破壊不可能の壁に閉じ込められて、魔女達と戦乙女によって一方的に攻撃される敵。

 

 想像するだけで背筋が寒くなる光景で、自分がその敵であったなら心が折れるだろうなとアルハレムは思う。

 

(それにしても……)

 

 アルハレムは自分の周りにいる仲間の魔女達と戦乙女の妹を見る。

 

(俺は家族や周りに守られるだけなのが嫌で、自分からでも家族や周りを守る力を得ようと冒険者になったのだけどな……)

 

 だが気がつけばアルハレムの周りには彼より遥かに強い魔女の仲間達と戦乙女の妹にいて、守られるだけの状況はより強くなった気がする。

 

「……はぁ」

 

「なーに、ため息なんかついてるの?」

 

 見目麗しい絶世の美女達に囲まれている今の状況は男として嬉しい限りだが同時に情けなく感じてアルハレムがため息をつくと、戦いを終えてウィンと一緒にエターナル・ゴッデス号の甲板に戻ってきたシレーナが話しかけてきた。

 

「シレーナか。いや、別に。……ただ、もっと強くならないといけないな、と思っただけだよ」

 

「? よく分からないけど、強くなることはいいことじゃない?」

 

「そんなことより! 敵は全て倒したんだから早く最上階に行くよ! 早く行かないとせっかくのお宝が他の奴に取られちまうかもしれないからね!」

 

 アルハレムの突然の言葉にシレーナが首を傾げて返事をするとウィンが興奮ぎみに先を急ぐように言ってきた。そんなワイバーンのドラゴンメイドに魔物使いの青年は苦笑を浮かべる。

 

「それもそうだな。レム、ダンジョンの最上階に向かってくれ」

 

「はい。分かりました、主様」

 

 ゴーレムの魔女、レムはアルハレムに返事をするとエターナル・ゴッデス号を動かして塔のダンジョンの最上階へと向かわせた。


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