魔物使いのハンドレッドクエスト   作:小狗丸

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第百八十九話

「シレーナ? 何か名案でもあるのか?」

 

「名案、て言うほどのことじゃないけど、ちょっと耳を貸してくれない?」

 

 声をかけてきたシレーナにアルハレムが聞くと、セイレーンの魔女は自分の主である魔物使いに耳打ちをした。

 

「この……………って、………に……………があるんでしょ? だったら……の………で………まで……ばいいんじゃない?」

 

「……え? それってアリなのか?」

 

 シレーナの考えを聞いてアルハレムが困惑の表情を浮かべる。

 

「確かにその方法だったらすぐにこのダンジョンを攻略できるかもしれないけど、それってどう考えてもルール違反だろ? アイツが納得するか?」

 

「まあ、納得しないだろうね。でも上手くいったらアイツらと顔を合わせずにダンジョンを攻略できて、次の目的地にいけるけど?」

 

 アルハレムの言葉にシレーナは肩をすくめて言いはなつ。そんな二人の会話に他の仲間達を代表してリリアが入ってきた。

 

「あの、アルハレム様? シレーナは一体何を言ったのですか? このダンジョンを攻略する方法があると少しだけ聞こえたのですけど……?」

 

「え? ああ、そうだよ。シレーナが言ったのは……」

 

 アルハレムは自分だけでなく仲間達にも判断してもらおうと思い、今さっきシレーナが言ったダンジョンを攻略する方法を話すことにした。

 

 ☆★☆★

 

 レンジ公国の象徴であるダンジョン「見上げる者達の塔」。

 

 初代国王に攻略されて以来、攻略方法が確立されているダンジョンであるが、その攻略方法を知っているのと実際に攻略できるのとでは大きな開きがある。

 

 一階の広場の天井に印されている罠の位置を全て把握して、魔物と戦いながら罠を避けて進むというのは決して容易いことではない。

 

 しかも罠の位置は半日程の時間が経てば自動で変化するので、ダンジョンに挑む挑戦者達はある程度上に行ったところでやり直しの罠を発動させてしまい、一階の広場で悔し涙を飲むのであった。

 

 それがこのダンジョン「見上げる者達の塔」でお馴染みの光景なのだが、今回はそんな挑戦者達に混じってダンジョンを破竹の勢いと言うべき速度で上にと昇っていく挑戦者の一団がいた。

 

 その挑戦者の一団とは中央大陸にある国家エルージョの勇者であるアニーと、エルージョの騎士のバドラックとマルコの三人であった。

 

 アニー達三人はわずか一日で、普通の挑戦者ならば辿り着くのに三日はかかる塔の中層まで攻略をしたのだ。

 

 ……しかし、塔のダンジョンにはエルージョの勇者達と時を同じくしてこの国にやって来たギルシュの勇者達の姿が何処にも見当たらなかった。


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