「まさかこんな所でアニーと再会するとはな……。今回のクエストはダンジョンの攻略以外にも大変な事がありそうだ。……はぁ」
アニー達と別れた後、アルハレムは今回のクエストの事を考えて疲れたようにため息をついた。それを見てセイレーンの魔女とワイバーンのドラゴンメイドが口を開く。
「何さ、いつまでもため息なんか吐いて」
「そんなにあの戦乙女のお嬢ちゃんが苦手なのかい?」
「まあな。この旅が始まってから家族以外の戦乙女と出会うと、決まってろくなことにならないからな」
シレーナとウィンに答えてアルハレムは、今までの旅で敵対することになった戦乙女達の事を思い出すと、うんざりとした表情となって首を横に振った。
「まあ……今まで敵対することになった戦乙女の方々は悪い意味で個性的な方々でしたからね。それでアルハレム様、今日はもう戻りますか?」
リリアはアルハレムに相づちをうってから話しかける。戻る、というのはこの王都のすぐそばにある森の上空で待機しているレムが待つ飛行船に戻るという意味だ。
「いや、せっかくだからもう少しこの街を見て回りたいかな」
「あっ! それじゃあアタシも一緒に行く!」
アルハレムがもう少しこの王都を見て回ると言うと、シレーナが片方の翼を上に向けて広げてついて行くことを希望する。このセイレーンの魔女が仲間になった理由には、人間の街を見て回りたいという目的もあったので、それを断るつもりは魔物使いの青年にはなかった。
「そうですか……。それでしたら私達も一緒に行きたいのですが、全員で行ったら街の住民達の注目を集めすぎてアルハレム様のお邪魔になりますからね。……ツクモさん」
「心得たでござる。……さあ、アルハレム殿、これをどうぞでござる」
サキュバスの魔女に言われて猫又の魔女は自分達の主である青年に数本の棒を差し出した。
「これは?」
「この棒の先端にはそれぞれ私達の名前が書かれています。それでアルハレム様が選んだ棒に名前に書かれた者が護衛としてお供をします」
リリアの説明にアルハレムは愕然とする。
「いや……。別にそこまでしなくてもいいんじゃないか? 護衛役だったらアルマとシレーナがいるし……」
「いいえ。それだけでは不安です。以前のようにアルハレム様が拐われるようなことがあったらどうするのですか? 私達はあのようなことは二度と経験したくありません。ですからこの王都を見て回ると言うのでしたら、後一人か二人護衛をつけてくれないと納得できません」
アルハレムの言葉を遮って言うリリアの言葉には強い意思が込められており、そのサキュバスの魔女の後ろでは他の仲間達も強く頷いている。
どうやら以前アルハレムが拐われたことにより、この魔女達は自分の主人である魔物使いの青年を守ろうとする意識がとてつもなく強まったようだった。