魔物使いのハンドレッドクエスト   作:小狗丸

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第百五十五話

 体がダイヤモンドでできた骸骨の人形達は確かに強敵であった。

 

 自分の体の強度を活かしてこちらの攻撃を防ぎ、他の個体と簡単な連携をとって攻撃を仕掛けてくる様子は、今までのただ武器を持って突撃してくるだけの体が金でできた骸骨の人形達とは違っていた。

 

 しかしそれでも「強力すぎる助っ人」を仲間に加えたアルハレム達には大した脅威ではなく、一行は敵を全て倒した通路を進んで行く。

 

「ふんふんふ~ん♪ おっ宝♪ おっ宝♪ 大漁だ~♪」

 

 ワイバーンのドラゴンメイドが限界まで膨れ上がった大人一人が入れそうなほど大きな袋(中には今まで倒してきた骸骨の人形達の残骸、つまり金とダイヤモンドの骨が入っている)を軽々と引きずりながら上機嫌に鼻唄を歌い、そんな彼女の後ろ姿を眺めながらアルハレムはこっそりとため息をついた。

 

「ふぅ……。やっぱり強いよな、彼女」

 

 ここまで遭遇した骸骨の人形達のほとんどはワイバーンのドラゴンメイドが倒している。アルハレムも彼女が討ち漏らした骸骨の人形を何体か倒しているが、倒した敵の数は比べ物にならない。

 

 相手がドラゴンの血が流れている魔女で、ただのヒューマンでしかない自分とは身体能力が違いすぎるのは理解しているが、「ワイバーンのドラゴンメイドが敵を五体倒している間に自分は一体を倒すのがやっと」というのは、強くなることを目的とするアルハレムにとって辛いものであった。

 

「マスター……」

 

「そう? アタシの見たところ、貴方結構強いよ?」

 

 アルハレムの呟きが聞こえていたインテリジェンスウェポンの魔女は己の主に何か言おうとしたが、それより先にセイレーンの魔女が口を開いた。

 

「攻撃はヒューマンにしては充分強力で的確だし、防御もただ攻撃を受けるんじゃなくて攻撃の力を流して相手の隙を作るっていう場馴れたものだったよ。それにここに誘拐したアタシが言うのもなんだけど、いきなりダンジョンに放り込まれてもすぐに順応するくらい度胸があるし……少なくともアタシが見てきた男達の中だったら間違いなく上位に入るね」

 

「そ、そうなのか? ……うん。ありがとう」

 

 セイレーンの魔女から思いもよらぬ高評価をもらったアルハレムは照れ臭さを感じながら礼を言う。

 

「だけど俺は家族の中でも、仲間の中でも一番弱いからな。もっと強くなりたいよ」

 

 アルハレムが偽らざる本心を口にするとセイレーンの魔女が意外そうな顔をする。

 

「貴方が一番弱い? ……貴方の家族と仲間って、どんな集団なの?」

 

「家族は母親に父親違いの姉二人、そして父親が同じの妹一人で四人とも戦乙女。仲間はサキュバスにラミアにグール、猫又に霊亀。そしてこのインテリジェンスウェポンのアルマなんだけど、最近は戦乙女の妹も旅の仲間に加わったな」

 

「…………………………は?」

 

 セイレーンの魔女は最初アルハレムの言っていることが理解できず、たっぷり十秒程間を開けてから呆けたような声を出した。

 

「どうした?」

 

「どうしたって……アタシの聞き間違いじゃなかったら今貴方、『家族は全員戦乙女で仲間は魔女』って言ったように聞こえたんだけど?」

 

「ああ、そう言ったぞ?」

 

「……色々とツッコミたいところはあるけど、貴方、よく襲われなかったね?」

 

 セイレーンの魔女は信じられないものを見たという顔で純粋な疑問をアルハレムにぶつける。彼女の言った「襲われる」というのが命の方ではなく貞操の方だと気づいた魔物使いの青年は決まりが悪そうな顔となる。

 

「いえ、マスターは毎晩夜になるとリリアさん達に襲われてむさぼり食われてますよ?」

 

「アルマ!?」

 

「え? どういうこと?」

 

 突然会話に入ってきたアルマにアルハレムが思わず声をあげ、セイレーンの魔女が首を傾げる。

 

「ええっと、つまり……。俺の固有特性でな、俺は常人の何倍もある生命力を持っているんだ。そのお陰でアイツらと一緒にいても死ななかったって訳だ」

 

「……ふ~ん。そうなんだ……」

 

 アルハレムの説明を聞いてセイレーンの魔女の瞳に今までとは種類の違う興味の光が宿ったが、魔物使いの青年はそれに気づかないふりをして先に進むことにした。


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