魔物使いのハンドレッドクエスト   作:小狗丸

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第百五十四話

 アルマが固有特性「思考受信」を使うようになると、アルハレム達のダンジョンを攻略する速度は一気に上がった。

 

 インテリジェンスウェポンの魔女が思考受信でダンジョンマスターの思考を読んで扉を開く正しい順番を見つけ出し、ワイバーンのドラゴンメイドがその途中で遭遇する骸骨の人形達を蹴散らすことにより、一行は驚くほどの短時間でダンジョンの階層を四つ越えて五番目の階層に辿り着いた。

 

「頼むぞ、アルマ」

 

「はい」

 

 五番目の階層の入口でアルハレムはインテリジェンスウェポンのロッド、アルマを床につけて彼女に思考受信を行うように指示をする。

 

「……………マスター、どうやらダンジョンはこの階層で終わりのようです。あと、どうやらダンジョンマスターはかなりご立腹のようです。思考を読んでいると『ズルいです!』とか『そんなのはルール違反です!』といった涙声の抗議が聞こえてきました」

 

「あー、それはそうだろうね」

 

「まあ、確かにね」

 

 アルマの言葉にセイレーンの魔女とワイバーンのドラゴンメイドが頷く。

 

「アルハレム達ってば、最初は面白いくらいにこのダンジョンの仕掛けにひっかかっていたのに、いきなり思考受信なんてズルを使って正解の道を見つけるんだから」

 

「何十年ぶりのお客様をもてなそうって気合いをいれていたのにこれじゃあ怒りたくもなるよな」

 

 苦笑しながら言うセイレーンの魔女とワイバーンのドラゴンメイドであったが、これにはアルハレムに言いたいことがあった。

 

「お前達はそうは言うけど……そのダンジョンマスターが言う『もてなす』って、罠にはめて殺すってことだろ? 俺はまたあの無数の扉を延々と開くのも、骸骨の人形達に殺されるのも嫌だからな」

 

「当然です」

 

 アルハレムの言葉をアルマが肯定し、セイレーンの魔女とワイバーンのドラゴンメイドも「違いない」といった風に肩をすくめる。そんなことを話していると通路の向こうから複数の足音が聞こえてきた。

 

「また骸骨の人形達か? ……あれ?」

 

 アルハレム達が足音がする方を見ると予想通り複数の骸骨の人形達が向かってきていたが、その骸骨の人形達は今までのとは少し違っていた。向かってくる骸骨の人形達は頭蓋骨だけは本物の骨で、胴体は光輝く作り物の骨なのは今までと同じなのだが、よく見れば胴体の光沢が違うのが分かった。

 

「ほおっ! あれは……ダンジョンマスターも本気のようだね。いや、『キレた』って言った方が正しいかな?」

 

 こちらに向かってくる骸骨の人形達を見てワイバーンのドラゴンメイドが鋭い牙を見せて笑顔を浮かべる。

 

「あれは一体何だ?」

 

「今まで戦っていた骸骨の人形達と同じさ。ただし、胴体は金じゃなくてダイヤモンドだがね」

 

『ダイヤモンド!?』

 

 ワイバーンのドラゴンメイドの言葉にアルハレムとアルマは声を揃えて驚き、彼女はその反応に気をよくして更に口を開く。

 

「そうさ。体がダイヤモンドだから下手な攻撃じゃ傷もつかないし、動きも今までよりも上だね。だけどその分、倒したら金よりもっと価値のあるお宝が手に入るんだよ……ね!」

 

 そこまで言うとワイバーンのドラゴンメイドは骸骨の人形達に向かって通路を飛んだ。その目は新たな「お宝」を見つけたことで輝いており、骸骨の人形達に襲いかかるワイバーンのドラゴンメイドの姿を眺めながらアルハレムは、彼女がこちらについたことが最大の「ルール違反」ではないかと思った。


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