「それで何で彼女は俺達が倒した骸骨の人形達の残骸を集めているんだ? さっきからお宝お宝と言っているけど」
アルハレムが真紅の髪の女性、ワイバーンのドラゴンメイドを見ながらセイレーンの魔女に聞くと、セイレーンの魔女は意外そうな表情となって答えた。
「あれ? 気づいていなかったの? 骸骨の人形達って頭蓋骨以外は全部金でできているんだよ」
「「金?」」
セイレーンの魔女の言葉にアルハレムとアルマは思わず声を揃えて驚いた。
「そう、金。ここのダンジョンマスターがヒューマンも相手にした時にそうしたらしいよ。ほら、ヒューマンって金とか宝石とかが大好きなんでしょ? だからヒューマンをこのダンジョンに誘き寄せる餌というか景品って感じで。実際、『さまよえる幽霊船』の噂が出るまでは骸骨の人形達を倒して金を手にいれようってヒューマンが大勢いたらしいよ?」
「なるほど」
「つまり、その金を手にいれようとした侵入者を撃退し続けたせいでこのダンジョンは『さまよえる幽霊船』と呼ばれるようになったと」
セイレーンの魔女の説明に納得してアルハレムが頷き、アルマが結論を告げる。
「まあ、そういうこと。……って、いつまでやってんのさ?」
アルハレムとアルマに頷いてみせたセイレーンの魔女は、骸骨の人形達の残骸、金でできた骨をほとんど集めていながら他にもないか床を這いつくばって探しているワイバーンのドラゴンメイドの脚を軽く蹴った。
「何をするんだい? 邪魔しないでくれ」
脚を蹴られたワイバーンのドラゴンメイドは、セイレーンの魔女に文句を言うが、その間も骸骨の人形達の残骸を探すのを止めようとしなかった。
「……ハァ。どうでもいいけどソレ、後で全部アルハレム達に返しなよ?」
「ハァ!? 何だってそうなるんだい!?」
ため息を吐いてからセイレーンの魔女が言うと、ワイバーンのドラゴンメイドは弾かれたように立ち上がって彼女を睨み付ける。
「これは全部アタイが集めたんだぞ!?」
よっぽど骸骨の人形達の残骸、金を渡したくないのかワイバーンのドラゴンメイドは今にも襲いかかりそうな顔でセイレーンの魔女を見るが、セイレーンの魔女は特に恐れた様子を見せず冷めた視線を向けていた。
「その前に、骸骨の人形達を倒したのはアルハレム達でしょ?」
「うっ!?」
「そもそも骸骨の人形達を倒して手に入る金は全部、侵入者のヒューマンへの景品だってダンジョンマスターも言っていたじゃん?」
「ううっ!」
「てゆーか、貴女ってば最初にここに来た時にダンジョンマスターから沢山金をもらったはずなのに、まだ欲しいの?」
「うううっ……」
セイレーンの魔女の口から次々と出てくる言葉に追い込まれるワイバーンのドラゴンメイド。その表情からは先程までの勢いは欠片もなくなっていた。
「いや、それは……あっ」
ワイバーンのドラゴンメイドは、セイレーンの魔女から目を逸らして視線をさまよわせていると不意にアルハレム、金でできた骸骨の人形達の残骸の持ち主と目があった。
「え?」
「……ふふっ♪ ねぇ、アンタ? 確かアルハレムって呼ばれてたっけ?」
突然の出来事に対応できずにいたアルハレムにワイバーンのドラゴンメイドが猫なで声を出しながら近寄ってくる。
「え? え?」
「なあ、アルハレム? アンタ、せっかく手に入れたお宝をここに置いてたってことは別にいらないんだろ? だったらアタイが貰っても別にいいだろ? ねぇ?」
甘い声で囁きながらワイバーンのドラゴンメイドはアルハレムの体に自分の体を押し付ける。
ワイバーンのドラゴンメイドはここにはいないリリア達、仲間の魔女五人と負けず劣らずの豊満な体つきをしており、アルハレムは服越しに胸に伝わってくる二つの柔らかくて弾力のある感触に思わず口を開いた。
「わ、分かった……。す、好きにしたらいい」
「本当かい!? ありがとよ、アルハレム! ……ん♪」
アルハレムの返事にワイバーンのドラゴンメイドは表情に喜色を浮かべ、彼の頬に口づけをした。
「うーわー……。アルハレムってば誘惑に弱すぎ。いくらなんでもチョロすぎない?」
「マスター……。貴方はいつも私やリリア達が側にいるのに女性に耐性がついていないのですか?」
そしてアルハレムはセイレーンの魔女から冷やかな視線を向けられ、アルマに心底呆れたといった台詞を投げつけられたのだった。