魔物使いのハンドレッドクエスト   作:小狗丸

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第百四十三話

「お疲れ様です。マスター」

 

「ああ。なんとか勝てたな……って、どうかしたか?」

 

 全ての骸骨の人形達を倒し終わりアルマに返事をしたアルハレムは、何故かセイレーンの魔女が不機嫌な顔をしてジト目でこちらを見ているのに気づいた。

 

「……別に何でもないって。そんなにあっさりと勝てるんだったら、骸骨の数を二倍にしておけばよかったんじゃないかなって思ってただけ」

 

「……いや、それはやめてくれ。あの二倍の数だと流石に防ぎきれないから」

 

「冗談だって」

 

 本当に先程の倍の骸骨の人形達に襲われる光景を想像してアルハレムが首を横に振りながら言うと、セイレーンの魔女は短く答え、その後で自分以外に聞かれないくらいの小声でつけ加えるように呟く。

 

「……………アタシも興味でてきたのに、ここで死なれたらつまんないからね」

 

「? 何か言ったか?」

 

「……何も? それより骸骨の人形を全部倒したんだから先に進んだら?」

 

 セイレーンの魔女はアルハレムの言葉を流すと先に進むように促して、魔物使いの青年もそれに逆らう理由がなかったので階段を降りて広間に行った。

 

「……何だこれは?」

 

 アルハレムが広間に降りて周囲を見回すと、広間を囲む四方の壁には扉が五つずつ、合わせて二十の扉が規則正しく均等に設けられていた。

 

「これだけ多くの扉があるということは……この扉の中から正しい道に続く一つの扉を探せということでしょうか? そして正解の扉を開けば次に進めて、それ以外の不正解の扉を開いたら敵や罠に襲われる、と……」

 

「多分そうだろうな。だけどどの扉を選べば……」

 

「………」

 

 アルマの言葉に頷いてからアルハレムは横目でセイレーンの魔女を見るが、やはりというかセイレーンの魔女は答える気がないらしくそしらぬ顔をしており、魔物使いの青年と目を会わせようとしなかった。

 

 仕方なくアルハレムは四方の壁にある二十の扉から自分の勘に従って一つの扉を選び、右手にアルマを持ったまま左手で扉の取手をつかんだ。

 

「……行くぞ」

 

「はい。マスター」

 

「三、二、一………っ!」

 

 扉を開いた瞬間に先程の敵や罠が襲いかかってきてもいいようにアルハレムが三つ数を数えて気を引き締めてから勢いよく扉を開くと、扉の向こう側には敵も罠もなく、代わりに予想もしなかった光景があった。

 

「……………ここは?」

 

「どういうことでしょうか?」

 

 アルハレムとアルマが見た扉の向こう側にあった光景……それはこのダンジョンに入って最初に訪れた部屋、セイレーンの魔女が「休憩室」と呼んでいた部屋であった。


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