魔物使いのハンドレッドクエスト   作:小狗丸

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第十話

 キンコーン♪

 

「ん?」

 

「あら?」

 

 リリアが教会跡地でゴブリンとオーク達を倒した翌日。アルハレム達が旅を続けていると荷物袋から軽快な音が聞こえてきた。クエストブックに新たな試練が記されたことを知らせる音だ。

 

「そういえば二回目のクエストも一回目のクエスト達成の次の日に記されたな。……クエストブックはクエストを達成した次の日に新しいクエストが記されるのか?」

 

 自分の予想を口にしつつアルハレムはクエストブックを開いて新たな試練の内容を確認する。

 

【クエストそのさん。

 おともだちのまものさんときょうりょくして、てきさんをたおしてください。

 まものつかいなら、まものさんにたよるだけじゃなく、たいとうのパートナーになりましょう。

 それじゃー、あとじゅうよんにちのあいだにガンバってください♪】

 

 どうやら今度のクエストは、アルハレムとリリアが協力して敵と戦うことらしい。それは彼にとっても納得できる内容だった。

 

「確かに。ただ仲間に頼りきるのは駄目だよな」

 

「アルハレム様。この十四日の間というのはどういう意味ですか?」

 

「これは多分クエスト達成までの猶予期間だろう。伝説によるとクエストブックは持ち主の冒険者が三回クエストに失敗すると『冒険者の資格なし』と判断して別の持ち主の所へ行ってしまうそうだ」

 

 アルハレムが伝説を調べて知ったクエストブックの情報を教えるとリリアは納得したように頷く。

 

「なるほど。クエストブックにはそんなルールがあったんですね」

 

「……そう考えると俺のクエストブックは元は別の冒険者が使っていたんだな」

 

「そうですね♪ どこの馬の骨かは知りませんが、その冒険者の方が三回ミスしてくれたお陰で私達は出会えたのですから。それだけは感謝です♪」

 

 リリアはそう言うとアルハレムに抱きつき、彼の腕に自分の胸を押し付ける。それによって彼女の柔らかな乳房が大きく変形する。

 

「うっ!? そ、それよりリリアと協力して敵と戦うのか……少し難しいかもしれないな」

 

 アルハレムは昨日のゴブリンとオーク達を倒すリリアの姿を見て、自分と彼女では戦闘力に大きな差があることを実感していた。

 

 今の自分では普通に一緒に戦っても、逆にリリアの足を引っ張るか、彼女だけに戦闘を任せる結果になるだろうとアルハレムは考える。それではクエストブックの「協力して戦う」という試練は達成されないだろう。

 

「いえ、そんなに難しくないと思いますよ? 要はお互いの行動で戦闘の効率が上がればいいんですよね? それだったら私にいい考えがあります」

 

「いい考え? 一体どんなのだ?」

 

 興味を覚えたアルハレムが聞くと、リリアは自信に満ちた表情で頷き口を開く。

 

「はい。……まず、戦闘が始まるのと同時にアルハレム様が……」

 

「俺が?」

 

「私を抱きしめてキスをします!」

 

「……………………………ハイ?」

 

 リリアの口から出た予想もしなかった言葉に、アルハレムは思わず呆けたような表情になるが、彼女はそれに気づくこともなく続ける。

 

「続いて私の胸やお尻を強く、ときには優しく揉んでもらいます。希望としてはキスをしたままこれをしていただくと嬉しいです」

 

「……………いや、あの? リリアさん?」

 

「胸やお尻の後は体の全てを貪るように、慈しむように愛撫して私を感じさせてください。そして最後は私がイッてしまう直前に愛撫する手を止めてから、かわいそうな家畜を見るような目で『最後までしてほしければ敵を全て倒してこい』と言ってください。そしたら私、通常の三倍以上の戦闘力で戦って戦闘の効率大幅アップです! どうでしょうか?」

 

「…………………………」

 

 得意満面で言うリリアにアルハレムは頭痛を感じて傷む頭に手を当てた。一体どこの世界に戦闘開始時に敵に情事を見せる主人公とヒロインがいるのだろうか?

 

「更にお願いできるとしたら『十分以内に敵を倒せたら特別に俺の肉ロッドで調教してやる』と言ってもらえれば完璧……」

 

「却下!」

 

 いよいよ耐えられなくなり大声で叫ぶアルハレム。

 

「できるわけないってそんな事! 敵が待ってくれるわけないだろ!? している間に殺されるって!」

 

「そんなことありませんよ。敵だって待ってくれますって、というよりガン見してますって。それに皆さんだって喜んでくれると思いますよ」

 

「皆さんって誰だよ? 誰が喜ぶんだよ? ……とにかくその作戦は却下。俺はやらないからな」

 

「……むう。仕方がありませんね。でしたらこういうのはどうですか?」

 

 自分の考えを否定されてリリアは不満そうな顔をするが、すぐに表情を戻すとアルハレムの耳元で囁きかける。

 

「サキュバスの…………でアルハレム様に私の……を貴方に…………ます。そうすればアルハレム様も……を…………を使えます」

 

「っ!? それは本当か!?」

 

 リリアの話を聞いてアルハレムは思わず目を見開き、サキュバスの僕は笑みを浮かべて魔物使いの主に頷く。

 

「はい♪ これでしたらアルハレム様も……!?」

 

 言葉の途中でリリアは背後を振り返り、後ろにある茂みに鋭い視線を向ける。

 

「リリア?」

 

「……アルハレム様。向こうの茂みから誰か来ます。恐らくは人間、一人です」

 

「こんな森の中に? ……盗賊かもしれないな。リリア、ひとまず姿を隠してくれ」

 

「はい。お気をつけて」

 

 リリアが空中に飛び上がり姿を消すのと同時に茂みが揺れて一人の女性が現れた。

 

「……え? 君は……」

 

「あれ? 貴方、どこかで会ったっけ?」

 

 茂みの中から現れたのは、リリアと出会う前に街で乱闘騒ぎを起こしてアルハレムと戦った戦乙女、アニーだった。


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