オーバーロードと魔法少女   作:あすぱるてーむ

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今回のお話:はじめてのじんもん。
はじめて一人でじんもんする、ネムちゃんの奮闘をごらんください。


新たな火種

少なくない犠牲者を出し、村人達は悲しむ暇もなく雑多な作業に追われていた。

壊された物の特定や廃材場所の確保、生存者の探索、負傷者の治療、そして、犠牲者の確認と安置所の設置などの皆が助け合い行動する。

カルネ村では薬草の材料採取が金銭を稼ぐ最も効率の良い手段であった為、薬草の備蓄は他の村より多少は多くある。たが、小さな村である。多数の犠牲者に対応出来るほどの量はなかった。それでも数が足りたのは、騎士による犠牲者の数が、負傷者よりも死者数が圧倒的に多かった為であるのは皮肉でしかない。

 

村の外れにある共同墓地の近くに簡易のテントが張られた。当座で作られた遺体の安置所である。

犠牲者の数は30名を超えていた。この数は村の人口の約4分の1なのだからかなりの被害であることが分かる。

親や子供を失い、泣き崩れる家族の姿が至る所で見られた。その中には、ミトとその母親の姿もある。父親の亡骸に縋り付き声を上げて泣いていた。

 

騎士が残した傷跡は、村中の至る場所に及ぶ。破壊された農機具や機材、家畜を囲う柵や家財道具など多岐に渡る。それらは村の外れの空き地に運ばれ、山と積まれていた。

 

騎士の遺体をどのように処分するか。村人達の間でも意見が別れたが、ネムの提案でトブの大森林まで捨てに行くことで一致した。

この提案には狙いがあった。理由は死の騎士(デス・ナイト)モルダーである。死体を使ったアンデッド召喚系魔法を使用した場合、モルダーは生前の記憶を保持していた。それは他の死体でアンデッドを作成しても同じなのか。意識せずにアンデッド召喚魔法を使用した場合は手近な死体に乗り移ったが、意識すれば死体を使用せずに召喚することが可能であるのか。知りたいことは山ほどある。この世界独自のルールが他に存在するのかを検証する必要もある。つまりは実験用の死体が欲しかったのだ。

 

村長に借りた荷台に騎士の死体を乗せれるだけ乗せると、トブの大森林までモルダーに荷台を引かせる。

大森林というだけあり、鬱蒼と茂った木々が視界の端から端まで続いている。

森に入れそうな道を探して森沿いを歩き、すぐに荷台が通れそうな獣道を見つける。

森の奥に進むほど日差しが遮られて肌寒さを感じる。森林特有の澄んだ空気が肺を満たす。静寂に包まれた空間に小動物の気配を感じ、自然の息吹を身近に感じられた。

この世界に来て初めて夜空を見上げたときも思ったが、文明に侵されていない大自然の美しさにネムは衝撃を受けていた。

「ブループラネットさんにもこの景色を見せてあげたいな」

自然を誰よりも愛した友の名を呼ぶ。アインズ・ウール・ゴウンの本拠地であるナザリック地下大墳墓。その第六階層のジャングルエリアの天井に星星を散りばめた夜空を作り上げたかつてのメンバーの一人だ。

彼がこの景色を見たら何を思うのだろうと、木漏れ日の光が作り出す光景を眺めながら思い浮かべる。

この美しい場所に死体を放置するのは森を汚すようで気が引けたが、光が届かない仄暗さと静けさが死体を隠すのに相応しいようにも思う。

獣道は既に荷台で通るには困難な道幅となっていた。周囲を伺い若干開けた場所を見つけるとそこに荷台の荷物を放置するようモルダーに指示する。

その間、この場所に魔法によるマーキングすると、獣避けの結界魔法と視覚妨害の魔法を展開する。

「さて、次を運ぶぞ」

荷台が空になるのを確認して指示を出す。

近くとはいえトブの大森林まではそれなりの距離があり、一度に運べる騎士の数は7、8人だ。全てを運び終えるまで三往復はかかるだろう。次元門(ゲート)を開こうかとも考えたが、目立ちたくは無かったので大人しく運ぶことにした。

 

再び森中のマーキングしたポイントに辿り着き、モルダーが荷台から騎士を下ろす。

この時、ある重大な事実に気付いてしまった。

 

(あれ?俺、いらなくない?)

 

放置場所は既に決めた。荷物運びと荷降ろしはモルダーが行っている。ネムは見張り番よろしく後ろを付いて来ているだけだ。

 

「後は任せる。全て運び終えたら村を巡回し警戒に当たれ」

 

モルダーに指示を出し、一足先にカルネ村へと戻るべく<転移(テレポート)>する。

 

 

      ・

 

 

カルネ村に戻ると、村の東側にある共同倉庫へと向かった。

実年齢が10歳でしかないネムは、現状、出来ることは限られている。精々が家の手伝いである。それは働き者のエンリに任せているので下手をすると邪魔者扱いされかねない。

 

(魔法を使えば復旧作業も直に終わるんだけどな)

 

実際、アンデッドを作成すれば、村で行われている片付けや復興作業はたちどころに進むだろう。何しろ、アンデッドは食事、休憩、睡眠いらずの最高の労働者なのだ。だが、アンデッドが村人にどのように思われているかを目にしたネムはその考えを破棄する。

先ずはモルダーを村人達に認知させ、アンデッドの地位向上を図るのが先である。アンデッドを労働力として使うのはその後だ。

スケルトンが田畑を耕し、ソンビが村中を清掃し、家の中では各家族が団欒で過ごす。部屋を快適に暖める暖炉の炎はウィル・オー・ウィスプだ。

そんな光景を思い浮かべながら歩いていると共同倉庫が見えてきた。

一つしかない扉は閉ざされている。見張りは男性が一人だ。男は痩身だが引き締まった体をしており、弓矢とナイフを帯刀している。

男はラッチモンといい、戦闘においては村人の中では最も長けた人物だ。

 

「こんにちは」

「やあ、ネム。こんな所までどうしたんだい?」

「捕虜のお兄ちゃんとお話できますか?」

 

ラッチモンは渋い顔をする。危険人物に村の子供達を近づけたくないのだ。だが、村長からはネムが尋ねて来たら捕虜に合わせるようにも言われているのだ。もちろん、村長はモルダーも同伴する前提で話したのだが、前提の話までは聞かされていないラッチモンは、ネムを捕虜に会わせないわけにはいかないと考える。実直な男なのだ。

 

「今は気を失っていると思うが、それでも構わないかい?」

「うん!」

 

 

倉庫の中には男が一人、両腕を胸の前で縛られ地面に転がされていた。

治療により両足を添え木で固定しているが腕と同様に足首もきつく縛られている。

今は全身鎧(フルプレート)を着用していないが、村を襲った騎士の一人である。

 

ネムはラッチモンに外に出るよう頼むが、それはできないと首を横に振る。

いざとなれば魔法で何とでも出来るが、ラッチモンさんがいると巻き込む恐れがあるためそれができない。などと理由をつけて、不承不承ではあるが納得してもった。広場での騒動を全て見ていたのでネムの言葉にある程度の信憑性を感じていたのだ。

それでも不安は拭えず、倉庫から出る時も、男には近づかないように、何かあったら大声を出すんだよと念を押される。

 

 

ラッチモンが倉庫から出るのを確認すると、ネムは騎士の横に座り、顔をぺちぺちと叩く。

「起きろ」

顔を叩かれて目を覚ますと、焦点を合わせるように目を細め、傍に座っている少女を見つけると訝しげに顔を見る。

「お、起きたか」

身を起そうとして全身に痛みが走り、一瞬息を止める。満身創痍だ。肋骨も何本か折れているだろう。特に両足の傷が酷い。

両手足を縛られていることを知り、捕虜となったことを知る。まずは状況の確認のために近くにいたネムに声をかける。

「おい、ここは何処だ?」

相手が子供である。脅せば騒がれ逆効果になる可能性も有るが、相手の思考を支配しやすくもなる。ここは高圧的な態度を取るべきだと判断する。だが、少女が起した行動は騎士の思惑とは異なるものだった。

 

ネムは満面の笑顔を浮かべて立ち上がる。

「<第6位階死者召喚(サモン・アンデッド・6th)>」

呪文を詠唱するとネムの背後に黒い靄が発生し、やがて人の形を作り死の騎士(デス・ナイト)へと姿を変えた。

「ひあああああああ!!」

騎士は絶叫を上げる。少しでもこの場から離れようと身を捩るが両手足を縛られ上手く行かない。

悲鳴を聞きつけ、倉庫の扉が荒々しく開けられラッチモンが飛び込んできた。

「どうした!大丈夫か!」

ラッチモンは死の騎士の姿を見て安心して胸を下ろす。

「なんだ、モルダーさんか。彼がいるのならネムは安心だな」

「はい。質問するのはモルダーさんで私は通訳なんです。ここは任せてください!」

納得したように頷きながらラッチモンは倉庫から出ると扉を閉めた。

「待って!行かないで!お願いします。あぁぁ……」

扉から差し込む光が量と比例して、騎士の声も小さく掠れていく。

 

倉庫から出るラッチモンの背中を見送りながらネムは苦笑する。

悲鳴を上げる度にいちいち扉を開けれられては堪らない。それに、捕虜と話す内容も出来れば聞かれたくなかった。

「<沈黙の場(ゾーン・オブ・サイレンス)>」

音波を遮断する不可視の幕がネムを中心に周囲に張り巡らせる。これで領域内の音が外に漏れることは無いだろう。

 

「さて、見ての通りだ。死の騎士(デス・ナイト)を召喚したのは私だと理解しろ」

騎士は首が外れるのでは、と思えるほど勢いよく首を振る。

「よし。これからする質問に正直に答えろ。言葉を濁したり偽りの情報は私には通じない。もし嘘を言えば、わかるな?」

「嘘はつきません。全て正直に話します。ほ、本当です」

先程と同じく首を振る。まるで首振り人形のように。

「では最初の質問だ。お前の名は?」

「モーレットです」

「お前達は何者だ」

「ほ、法国の工作部隊です」

「何?帝国の騎士ではないのか?」

「はい、それは偽造でした。我々の罪は全て帝国が被る計画なんです。ごめんなさい」

「なるほど、それがお前らの計画か?帝国に罪を着せる為に私の村を襲ったと?」

「ち、違います!全てはガゼフ・ストロノーフをおびき寄せる為の罠です!」

騎士は、ネムと死の騎士(デス・ナイト)を交互に見ながら様子を伺っている。

ネムは、先を促す。

「続けろ」

「はい、村をお、ごめんなさい!襲ってガセフ・ストロノーフを誘き寄せ、罠にはまったガセフ・ストロノーフを陽光聖典が包囲して撃つ作戦でした」

「分からないな。そのガセフ・ストロノーフというのは何者だ?」

「王国戦士長、リ・エスティーゼ王国最強の男です」

「何故、王国戦士長を殺す?」

「は、はい、王国を弱体化させてるためです。えっと、その、時期を見て法国に併呑するためです」

モーレットの目が右上へ向く。瞬きを繰り返し縛られた両腕を胸の前で強く握る。

 

(おや、これは以前本で読んだことがあるぞ。確か、嘘をつく時に右脳が活発に働くから右上を見るんだっけ。後、疚しさから口元を隠しながら話すとかだっけ)

 

「今、嘘をついたな。残念だよ」

「ひぃいごめんなさい、知りません。ただ命令されただけなんです!」

 

下っ端なんですと泣きながら話すモーレットに、ネムはしたり顔をする。

詳しい理由までは聞かされていないが、何か話さなければ殺されると思い、話を作ったのだと言う。

モーレットはネムに縋り付き涙を流しながら許しを請い懇願する。命を助けて欲しいと。

 

「ああ、分かった。真実を話す限り殺しはしない。続けるぞ」

 

 

それから2時間以上経過しただろうか。

質問を投げかけ、それに答え、新たな疑問が生じそれに答える。モーレットは、実に多岐に渡り喋り続けた。

召喚した死の騎士(デス・ナイト)は既に時間制限により帰還してした。だが、本当に恐ろしいのは死の騎士(デス・ナイト)ではなく目の前の少女であると悟ったモーレットには些細な出来事である。

 

今回の尋問でネムが得た知識は、カルネ村で得た知識とは比べ物にならない程だ。

陽光聖典についての情報から始まり、他の強者の情報、各国の情勢、魔法や武技と呼ばれるこの世界特有の技能、タレントと呼ばれる生まれながらの異能の存在などである。

 

生まれながらの異能(タレント)の話を聞いてまず最初に思ったのはモルダーの事である。

これまで行ったアンデッド作成で記憶を持っていたのはモルダーだけであった。

(案外、魂を死後も肉体に定着させるような生まれながらの異能(タレント)があるのかもしれないな)

漠然と立てたこの予想は、それほど外れではなかった。

 

 

生まれながらの異能(タレント)とは、転移したこの世界の人間が稀に持っている生まれながらの特殊能力の事である。その能力は千差万別で、明日の天気を当てるものから想像もできないような恩恵を与えるものまで様々にある。

ただし、この能力は自分で選べる類のものではなく、あらゆる武器を使いこなす生まれながらの異能(タレント)を持っているが戦士の素養が全く無かったりと、自分に全く関わりの無い異能である場合は、その生まれながらの異能(タレント)を知らずに生涯を終えることも多々あるのだ。

 

『健全な精神は健全な肉体に宿る』という言葉がある。

そして、とある組合の格言に『紳士の精神は紳士的立ち振る舞い宿る』という言葉がった。

それを地で行く永遠の紳士魂(ジェントルマン・フォーエバー)という生まれながらの異能(タレント)が存在した。

その発現条件は三つあり、モルダーは生前から既に条件の一つをクリアしていた。そして、ネムに使役されることで二つ目の条件をクリアし、ミトを救った事で全ての条件を満たすことができた。

モルダー本人でさえ知らない事実である。

 

 

次に興味をそそられたのは御伽噺に出てくる六大神と八欲王の存在である。

彼らはモモンガと同じユグドラシルのプレイヤーである可能性が高い。

それは、この世界に転生したプレイヤーが他にもいるということを意味する。

未知の存在――それも脅威となりうる強者――がいる以上、敵対視されるような行動は慎むべきだ。

 

「やはり、目立つ行動は避けるべきか……」

「はい、何でしょうか?」

「ん?いや、なんでもない。それより次の質問だが……」

『ご主人様、よろしいでしょうか?』

モーレットとの話を遮るようにモルダーから精神感応(テレパシー)が届く。

突然、会話を打ち切った事に対し不安そうな顔で伺おうとするが、片手を上げてそれを制する。

倉庫の入り口に向けて数歩進み、モーレットから距離をとると声に出しならがモルダーと会話(テレパシー)をする。

 

「どうした?」

『はい、騎士と思われる一団がこちらに向かっております』

「なに?それはカルネ村を襲った奴らと同じ者達か?」

『……分かりません。数は20名弱で、皆異なる格好をしています』

 

ネムは振り返り、モーレットに視線を向ける。

 

「おい」

「は、はいぃ」

「確か陽光聖典といったな。そいつらはどんな格好をしてる?」

「はい、陽光聖典は信仰系魔法詠唱者(マジック・キャスター)で構成されていると聞いた事があります。皆、黒い法衣を着ていたと思います」

「……違うか。ならば、王国戦士長の方か」

 

再び、モルダーにテレパシーを送る。

「そいつ等を村に招き入れよ。話をしてみたい。いや、お前が出るとややこしくなりそうだ。村に戻って守りを固めておけ」

『畏まりました』

モルダーとのテレパシーを打ち切ると、地面に縛られ転がされたモーレットを鷹揚に見下ろした。

「尋問の続きはまた後だ」

それまで大人しくしていろと念を押し、ネムは倉庫を出た。

 

 

倉庫から出るネムにラッチモンは気が付き、互いに目が合う。

「やあネム。随分と長かったね」

「ラッチモンさん。野伏(レンジャー)の貴方にお願いがあります。もう直ぐこの村に新たな騎士の一団がやって来ます」

ラッチモンはあからさまに嫌な顔をする。

「恐らく彼らは敵ではありません。それよりも厄介なのは、彼らを追って来ていると思われる者達の方です。村を出て警戒してくれませんか?相手はたぶん黒い法衣を着ています」

「わかった。ここの見張りを代わってもらい次第、偵察に向かうよ」

「それには及びません」

ネムは<施錠(ロック)>の魔法を使う。

「これで大丈夫です。出来れば急いでください。これ以上、後手に回らない為に」

ラッチモンは頷くと、足音を立てずに全速力で走る。

ネムは、大したものだと感心する。気配を読むことに長けた熟練の戦士や訓練を積んだ野伏(レンジャー)に通じるかまでは分からないが、捕虜の話を信じるならば相手は信仰系の魔法詠唱者(マジック・キャスター)だ。相手に潜伏を見破られる心配はまず必要ないだろう。

 

ネムは<飛行(フライ)>を唱え、次の行動に移る。魔法を使って空中に浮かぶと、上空から村長を探した。

新たな騎士の一団と話をするにしても大人の力が必要であり、それには村長が適任だからだ。

村長は直ぐに見つかった。探すならば村長の家か広場だろうと当たりをつけて向かった先の、まさに家の玄関先で数人の大人達と何やら話しをしてるのが見えた。皆一様に重たい表情だ。

村人達も村に近づく一団の存在に気付いたのだろう。その対策を話し合っているようである。

 

上空から声をかけながら傍にふわりと降り立つ。

「村長!探しました」

「ネムか。そうだ、頼みを聞いてくれないか?実は問題が起きてね。モルダーさんの力を借りたいので話をして欲しいのだが……」

ネムは頷く。

「こちらに向かって来ている騎士達のことですね。モルダー……さんは、今、広場に向かってます。村長も来てください」

「ああ、わかった。直ぐに向かおう」

村長は先程まで話をしていた大人達に、他の村人達を集会所に集めるよう指示を出し、その場は解散となった。

 

 

ネムと村長は並んで中央広場へと向かっていたのだが、ネムは村長の手を取ると急かすように引っ張った。

モルダーからのテレパシーで、緊迫した雰囲気が伝わったからだ。

 

『すみません。追いつかれそうです。』

「……今、広場に向かっている、そこまでがんばれ」

 

村長から見ればネムが独り言を言っているようにしか聞こえないのだが、それがテレパシーによる会話であることを知り、魔法とは本当に便利だなと感心する。実際は、魔法ではなく召喚による主従の繋がりを利用したテレパシーであるのだが、魔法であると勘違いされた方が何かと都合が良いので黙っておく。

 

『はっ、ありがとうございます、必ずやあああっ』

「ん?どうした」

『やろう、射って来やがった。殺していいですか?』

「だめだ。彼らとは戦うな。できれば敵対したくない相手だ」

『――すみません。追いつかれました。少しぐらい良いですよね。殺しませんから』

「ああもう、すみません村長。先に行きます」

 

ネムは村長の手を離すと、ぽんと地面を蹴り空中に浮かぶ。

 

「<上位転移(グレーター・テレポーテーション)>」

 

そして瞬時にその姿が掻き消えた。

 

先程までネムに引っ張られ走っていた村長は「本当に、魔法は、便利だな」と息を切らしながら呟き、後を追うように広場へと急いだ。

初老とはいえまだまだ働き盛りの40代。若いものに負ける訳にはいかないのだ。




今回は、説明を省いていたモルダーについて少し記述を足しました。
ネムの行動が早かったので犠牲者の数は少なめにしました。

次回『黄昏の戦い』

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