LS-00 Re:Start
「どうされました?廉太郎」
俺は目の前の光景に息を飲むことしかできなかった。
目の前で不思議そうに首を傾げるのは腰にまで届く長髪に着物と赤い袴を纏った女性、正規空母「赤城」。
彼女は心配そうに俺を見てくる。
「何で、お前が」
「もしかして、先ほどの演習で疲れたんですか?もう、武蔵さんはやりすぎるんだから」
困ったように話す赤城は呆然としている俺へ近づいてくる。
止めようと手を動かしてさらに驚く。
「あ、あ、赤城、鏡、あるか?」
「待っていてください」
赤城の姿が見えなくなってから縁側へ腰かける。
目線が低い、手が小さく思える。
何だ?この違和感。
しかも、俺の記憶が確かなら電を助けるためにゲネシスドライバーでアーマードライダーに変身した俺は限界を迎えて命を落としたはずだ。
「どうなっているんだ?」
体に異常も見られない。
何より赤城の視線がまともだった。
しばらくして赤城が手鏡を持ってやってくる。
「はい、どうぞ」
「ありがとう」
受け取った鏡を見て俺は確信する。
「(若返っている)」
推定年齢十歳。
「なぁ、赤城」
「はい?」
「キミがここにきてどのくらいになる?」
ドキドキと心臓が高鳴っていく。
「まだ、二カ月程度です」
「そうか」
「どうかしたんですか?」
「いや、何でもない。悪いな。引きとめて」
「いえ、行きますね?」
笑みを浮かべて赤城は離れていく。
彼女の姿が完全に見えなくなったのを確認して俺は縁側へ腰かける。
「逆行しているのか?なんていうタイミングだ」
確証はないが俺は深海棲艦が暴れ始めている時代、提督になる為の勉強を強制させられている時代にまでさかのぼっていた。
「これは、チャンスなのか?」
十歳、赤城が来て二カ月ほど。
あの惨劇が起きるまで少しばかりの猶予がある。
これはやり直せる機会かもしれない。
「……電、キミが望んでいたことを俺は果たせるかもしれない」
電は最後まで俺と艦娘達がよりを戻すことを望んでいた。
約束は果たせなかったけれど、今ならなんとかできるかもしれない。
「約束を果たす……まずは」
縁側から立ち上がる。
俺の記憶が確かなら赤城の次に他の艦娘達が生まれてくる。
殆どが俺と接点を持つことになる。
赤城がおかしくなってから合わなくなったがまずは彼女との関係が壊れないように気を付けよう。
そして、力をつける。
「みていろ、クソおやじ」
ここにいない最低男の顔を思い出しながら俺は宣言する。
「貴様が俺に押し付けた契約、必ず果たしてもらうからな」
この時、俺はまた間違いを犯していた。
一つは逆行したということを軽く考えていた事。
もう一つ、過去へ戻ったけれど、ここから先は不確定要素が多いという事がある。
さらに一つ。
部屋へ戻って確認をしなかったことだ。
急いで部屋に戻れば一人の男が机の上に刃のついたバックルと赤に近い黄色の錠前を置いていく姿が見られたはず。
どこへいっても俺は間違いを繰り返していた。