油断したら艦娘に拉致されました   作:断空我

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13.隠された陰謀

 

「くそっ、敵が多すぎるだろ!?」

 

変身しているザックが悪態をついた。

 

それに激しく同意しつつ、黒崎はソニックアローを放つ手を止めない。

 

エネルギーの矢はスイカアームズを貫き、爆発にチューリップホッパーを巻き込む。

 

現在、黒崎達はユグドラシルタワーへ侵入するために地下の秘密通路を通っていた。

 

しかし、そこは戦極凌馬が設定した防衛システムが生きており、いたるところから現れる無人のスイカアームズとチューリップホッパーの部隊が待っていたのだ。

 

味方なら問題ないだろう。

 

しかし、こいつらは敵だ。

 

あまりの数の多さに流石の黒崎も嫌になってくる。

 

既に葛葉紘汰や戦極凌馬は先に進んだ。

 

早くこいつらを倒して先に行こう。

 

そんなことを考えていた黒崎だが、嫌な予感がしていた。

 

こういう場合の嫌な予感というのは大抵、当たる。

 

「きゃぁっ!」

 

「おい!あんなところに女の子がいるぞ!」

 

ザックの言葉に振り返ると見覚えのある娘がいた。

 

「俺が行く!」

 

駆けだそうとしたザックに叫んだ黒崎は地面を蹴り、エナジーロックシードをソニックアローへはめ込む。

 

「ラァ!」

 

叫びと共に放った矢はスイカアームズを破壊する。

 

着地する瞬間にスイカアームズを蹴り飛ばして着地した。

 

「お前…」

 

「その声、もしかして、黒崎さんなのです?!」

 

涙を流してうずくまっていたのは電だった。

 

どうして、艦娘の電がここにいるのだろうか?

 

その疑問を考えるよりも早くチューリップホッパーが迫る。

 

「ちぃっ、俺の後ろにいろ、離れるなよ!」

 

「は、はいなのです!」

 

怯える彼女を守るようにソニックアローを放つ。

 

十分ほどして、全ての敵を排除することに成功した。

 

「くそっ、もう出てこねぇだろうな?」

 

「そう願うわ」

 

「だな…」

 

黒崎、ザック、湊の三人は変身を解除する。

 

「それで…その小さな子は黒崎の知り合いか?」

 

「あぁ…知り合いというか…なんというか」

 

「は、はじめましてなのです。電なのです」

 

「この子、艦娘ね」

 

「…艦娘って、あの艦娘か!?」

 

ザックもニュースなどで話は聞いていたのだろう。

 

艦娘と聞いて驚いている。

 

政府の方針であまり存在が発表されていない。しかし、深海棲艦の事が公になった際に一人の艦娘が報道陣の前へ姿を見せた。

 

そのことで別の問題も浮上していたがそこは割愛しておこう。

 

ある程度、一般人も艦娘については知っているのだ。

 

「電、お前はなんでこんなところに?鎮守府にいたんじゃないのか?」

 

「はわわ、あの、その」

 

少し戸惑いながら電は話す。

 

鎮守府の外へ買い出しに出た時、インベスに拉致されたらしい。

 

「おいおい、この街の外にインベスが?」

 

「いやはぐれだろう…空を飛べるインベスならありえる…鎮守府は街から近いから…な」

 

偶然とはいえ、ここに艦娘がいるとなるとあいつらもすぐにやってくるだろう。

 

表情を変えないようにしながら黒崎は考える。

 

「どうする?この子も連れていくか」

 

「いや、俺がこいつを外に連れ出すよ」

 

もし、連中がいるならこの二人も巻き込まれるかもしれない。

 

それだけは避けたかった。

 

彼らのような人を守る存在を勝手な理由で失うわけにいかない。

 

黒崎の言葉に二人は頷く。

 

「外へ出るぞ。電」

 

「は、はいなのです」

 

彼女がついてくることを確認しつつ、ロックシードを手放さない。

 

相手は艦娘なのだ。

 

もしかしたら襲い掛かってくるかもしれない。

 

警戒心を高めながら黒崎は通路を歩く。

 

「あの、黒崎さんはどうして」

 

「別に、用事があっただけだ」

 

逃げ出したという言葉を聴いたらこいつがどんな反応をするのか、それが怖かった。

 

「ホォ」

 

聴こえた声に黒崎は身構える。

 

風が吹いたと思うと翠色のインベスが現れた。

 

「何だ…コイツ」

 

黒崎は目の前に現れた相手を脅威だと感じた。

 

今まで戦ったインベスと比べて明らかに違う。

 

「人間、ソコノ娘ヲヨコセ」

 

細長い杖のようなものを構えて女性のようなシルエットのインベス…否、オーバーロードが黒崎へ近づく。

 

「変身」

 

『ドラゴンフルーツエナジーアームズ』

 

タイラントリペアへ変身する黒崎はソニックアローで攻撃を仕掛ける。

 

しかし、オーバーロード、レデュエは不気味に笑いながら攻撃を弾き飛ばす。

 

「…コイツ、そうか、お前がオーバーロードという存在か!」

 

ソニックアローで攻め込むがダウで弾かれる。

 

「オ前、邪魔」

 

レデュエはタイラントリペアを突き飛ばす。

 

衝撃で壁に叩きつけられながらも立ち上がる。

 

その時、ゲネシスドライバーから小さな電撃が巻き起こった。

 

「グッ…がぁあああああああああああああ!?」

 

電撃で膝をついた途端、バチバチバチと激しい火花を散らす。

 

「ン?」

 

レデュエは動きを止めて振り返る。

 

ゲネシスドライバーから植物の蔓が生えていき、それは黒崎の体を覆いつくしてしまう。

 

しばらくして、そこにいたのは。

 

「そいつに…近づくなァアアアアアアアアアア!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「成功だ!」

 

アーマードライダーに変身した戦極凌馬はスクリーンに現れている怪物、オーバーロードを見て仮面の中で笑顔を浮かべる。

 

「今度は理性もある…やはり適性の高い彼にあれを渡して正解だった…人造オーバーロードの完成だ」

 

戦極凌馬が渡したゲネシスドライバーとドラゴンフルーツエナジーロックシードは暴走しないように調整はしていた。同時に装着者がオーバーロードへ進化するための措置を施していたのだ。

 

それが成功した。

 

仮面の中で彼は笑う。

 

理性のある怪物。

 

禁断の果実を手にすればこれよりも高位な存在が生み出せるだろう。

 

「黒崎廉太郎君。私の手でキミは神の領域にその一歩を踏み出した。さぁ、その力を私に見せてくれ!!」

 

歓喜に震えながら戦極凌馬は目の前のスクリーンを見て微笑む。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

オーバーロードタイラントは手にある野太刀を構えてレデュエへ迫る。

 

レデュエはダウで受け止めようとするがタイラントのパワーに押し負けた。

 

「グゥ…こいつ、強イ」

 

オーバーロードの中で上位に匹敵するパワータイプ。

 

タイラントの力をそう認識するとレデュエはヘルヘイムの森の力を使おうとする。

 

それよりも早く、タイラントが腕を振るう。

 

植物が動き出し、レデュエを拘束しようとする。

 

「成程、興味深イ」

 

レデュエは笑いながらもダウを鳴らしてその場から消える。

 

お土産とばかりにインベスを用意して。

 

「うぉおおおおおおおおおおおおおお!」

 

獣のような叫びをあげてタイラントは全てのインベスを一閃で蹴散らす。

 

まだ壊したりないというようにタイラントは雄叫びを上げる。

 

獲物を求めて歩き出そうとした時、足に小さな衝撃が起こった。

 

タイラントが見下ろすと電がしがみついている。

 

彼女は涙を流しながらタイラントの足にしがみついて離れない。

 

「ダメなのです。黒崎さん!戻ってきてほしいのです」

 

タイラントは首を傾げながら電を蹴り飛ばす。

 

小さな悲鳴を上げて倒れる。

 

しかし、すぐに起き上がって体当たりした。

 

「ダメなのです!今のままじゃ、戻ってこられなくなるのです。お願いです!電の知る。優しい黒崎さんに戻ってほしいのです!!お願いなのです」

 

ぽろぽろと涙を零しながら電は訴える。

 

元に戻ってほしいと。

 

そんな彼女の願いはタイラントへ届かない。

 

しかし、ある人物が動いた。

 

『僕に任せて』

 

そんな声が聞こえた時、タイラントに異変が起きる。

 

「グッ…グォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」

 

頭を押さえて苦しみだすタイラント。

 

しばらくすると体から植物が生えていき、やがて黒崎廉太郎の姿へ戻る。

 

腹部に装着しているドライバーが爆発して地面へ落ちた。

 

ドラゴンフルーツエナジーロックシードも粉々に砕け散る。

 

「黒崎さん!」

 

電が彼を抱きしめた。

 

うっすらと目を開けた時、彼の片目が赤く輝く。

 

 




感想を見ていて、ふと思いつき、実行しました。

だって、艦娘と今のままだと首をねじ切られて死ぬ未来しか思いつかなかったんだもん。


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