SAO ~ソードアークス・オンライン~外伝 The・Start-前日譚-   作:羽山飛鳥

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お待たせいたしました。

今回はミケ編、かなりフリーダムなミケワールドをお楽しみください。


自由の出会い ~Freedom of encounter~

---え、ミケと初めて会った時?そうだな、こまっちーの時もそうだったけど、バンサー系は不遇だなって思ったよ。なにより…

 

---ミケとの出会い?ファングの鬣掴んで、乗り回して、暴れまわった挙句いつの間にか寝てると思ったら、いなくなってて、とりあえず…

 

---ミケ?あぁ、初めて会った時の事か、俺もオキさんやはやまんに初めて会ったときはスノウバンサーに大分えぐいことやったが、まだマシだと思えたな…まぁ、なんていうか…

 

 

---ミケは自由(フリーダム)!

 

 

…とあるチームメンバーのミケの第一印象より

 

 

 

 

 

 

出会いの章

Chapter of the encounter 3

 

 

自由の出会い

~Freedom of encounter~

 

---ナベリウス森林エリアの奥地。

 

こまっちゃんと出会ってから2週間ほど過ぎた。あれから俺らは3人で基本的に活動をしており、オキさんやコマチは別のクラスにも手を出し始めた。俺はブレイバーの試運転を依頼されているため、しばらく他のクラスは出来ないのだ。

 

アークスが凍土を探索し始めてから、森林の奥地でスノウバンサー、バンシーの2体に似た個体が確認された。

 

名を「ファングバンサー」「ファングバンシー」。スノウ夫妻と違うのは体毛の色だ、スノウ夫妻は白をベースとした黒の縞模様をしており鬣は青にたいし、ファング夫妻はほぼ黒に近い灰色の体毛に黄色の縞模様に黄色の鬣とそれぞれの住処の環境が反映された色合いだった。

 

攻撃手段も大体が同じなのだが、ファング夫婦はブレスは使わない。その代わり機動力がかなり高くなっており、木々に飛び乗って上から強襲するといったかなり狡猾な戦い方をする。

 

普段は滅多に現れないのだが、たまに奥地から出てきてアークスを強襲する被害が出ている。中堅レベルの実力があれば良いのだが、アークス成り立てであったり、単独行動中のアークスが襲われるなどの自体が起きているので、時折大規模な討伐作戦が発生する。それが「ファングバンサー討伐任務」だ。

 

「ぶっちゃけレアとか美味しくないんで面倒だけどな」

 

「仕事だから、選り好み出来ないけどね…今日なんてコフィーさんにすごい睨まれてたからな?俺ら」

 

こまっちゃんの愚痴に俺がツッコミを入れる。時折市街地以外に発生する討伐任務等があるのだが、スルーして別の任務に行ったりするので地味にマークされれているのだ。今日なんてクエストカウンターで内容見たら。

 

「いやぁ…、まさか他の任務受注が出来なくされてるとはなー…これからは面倒でもある程度は参加しねーとダメだな。地味に怖かったぞ、コフィーさんの目の笑ってない「こんちには、いい任務日和ですね」は。」

 

オキさんが思い出したのか少し震えながら言う。ここ最近は各々の装備強化に手を入れていたので、あまりそういった任務に参加していなかったので、相当根回しされていたらしい。

 

「…でだ。そろそろ住処に入るはずなんだが、どこにもいねーぞ?」

 

こまっちゃんが周りを見ながら言う。確かに見当たらない。どういう事だろう?

 

「んー、もしかして他の奴らが倒したとか?」

 

「けど、そんな報告来てないよ?…それどころか、なんだこれ?滅茶苦茶に飛び回ってるとか報告上がってる…」

 

オキさんの言葉に俺が端末でデータを確かめながら言う。

 

「えーっと、なになに…?[ファングバンサーと遭遇。戦闘になるかと思ったのだが、様子がおかしく鬣の一部が真っ黒になっていたような…、我々の事など目に入っていないかのようにすぐにどこかへいなくなった。何やら逃げているような。追い掛け回しているような…とにかくかなり移動を繰り返しているようだ。各自警戒を怠らないでくれ。---追記、なにやら「ニャー!」と猫のような声が聞こえたような気がするので、一応気に留めておいて欲しい。]だってさ」

 

「「猫ぉ?」」

 

報告を読むとこまっちゃんとオキさんが口を揃えて言う。

 

「なんだぁ?ファングの奴ら猫でも追い掛け回してんのか?」

 

オキさんが胡散臭い物を見るような目をしながら言ってきた。

 

「さすがにそこまではわからないよ…」

 

…なんて俺らが会話していると。

 

ドォーン!と音を立てながら横から何か大きな巨体が飛び出てきた。

 

「っ「ログベルト」!?」

 

出てきたのは森林エリアで出現するボスエネミー「ロックベア」の希少種「ログベルト」ロックベアに比べ体毛が黒く、手や胸元を覆う体毛は白で背中や頭の突起が少し発光した橙色になっているエネミーだ。行動パターンは同じでも能力は高く、アークスにとって希少で有用なな武器を何故か落とす。

 

「こまっちー、はやまん!戦闘準備だ!」

 

「もう出来てるよ!」

 

オキさんの掛け声に、俺はカタナの一つ<サリザニア>を、コマチはナックル<ファイティングビート>を、そしてオキさんはソード<ラムダアリスティン>を構える。

 

いざ戦闘開始…と思ったのだが。

 

「………なぁ、オキさん、はやまん」

 

「………何?」

 

「…あいつ、俺らのことなんか気が付いていないと言わんばかりに奥に突っ走っていったぞ」

 

ログベルトはこちらに気がついた様子もなくすごい勢いで奥に走り去っていく。その様子は尋常じゃない。……とログベルトの姿が見えなくなり始めたその時。

 

「ドーンッなのだー!!」

 

という謎の掛け声と共に横から更に原生種が降りてきた。

 

「んなっファングバンサー!?」

 

その姿はまごう事なきファングバンサー鬣が真っ黒だが…。とにかく、今回の任務の討伐対象だ。

 

「おいおい、どうなってるんだよ!?」

 

「あーもうめっちゃくちゃだよ!!」

 

急に滅茶苦茶な急展開が発生し混乱してきてしまう俺ら3人。

 

「逃がすなー!あのゴリラを全力で追い掛け回すのだー!終わるまでキマリ号は家に帰さないのだー!」

 

「キャウン!?」

 

そんな俺らを他所に当事者なファングと謎の声の持ち主はログベルトを追いかけて奥に進んでいく。

 

「ニャー!ゴリラ、おとなしくこの「ミケ」にレアをよーこーすーのーだー!」

 

最後にこんな一言を置いて一瞬でいなくなってしまった。

 

「「「………」」」

 

ついていけず呆然としている俺ら。

 

「……はっ!ぼさっとしてる場合じゃねぇ追うぞ!おめーら!」

 

オキさんがいち早く復帰し全力疾走で後を追いかける。

 

「ちょ、オキさん待ってって!!」

 

「あー、もう訳分からねぇ!!」

 

その後を俺とこまっちゃんがすぐに追いかけてくのだった。

 

-スパァン!スパァン!スパァン!

 

「…あのさこまっちー」

 

「あん?」

 

「こんな時に言うのも何なんだけどさ」

 

「おう」

 

「うるせーよ!そのステアタ移動!ファイティングビートでやるな!!」

 

「HAHAHA」

 

-スパァン!スパァン!スパァン!

 

「ちょっ更に速度あげんな!?」

 

「おめーらさっさと追いつかんかゴラァ!」

 

……追いかけるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---例のログベルトと真っ黒な鬣のファングバンサーを追いかけ、追いついた。そんな俺らの目の前に広がった光景は…とてつもなく、悲惨だった。

 

「キマリ号!もう一度体当たりなのだー!どうしたのだー?は、や、く行くのだー!!」

 

「キャゥン!?ギャイィ!?」

 

まず見えたのが思いっきり後ろから体当たりを食らって腹を地面に強打したのか、腹を抑えながらうずくまるログベルト。そして鬣を声の持ち主に引っ張られているのか頭がのけぞっているファングバンサー。よく見ると涙目になってる。

 

「……鬣の中に誰かいるのか?」

 

真っ黒な鬣の中で何かがもぞもぞと動いているのが見えた。と思ったら鬣から頭を出してログベルトを右手で指さしながら指示を出している。左手は依然鬣を掴んで引っ張っているようだが。

 

指示を出している存在の姿を見ると、全身をコートで覆い隠し、顔も猫耳付きフードを深く被っていて口元しか見えず、全く容姿が掴めない、身長はかなり低く、声も見た目相応の高さなので少女なのか少年なのか、それすらわからない。口元はなにやら三日月型で笑っている。なんか今にも「ニャス!」とか言い出しそうだ。

 

「今晩のおかずにされたくなければさっさとやるのだー!」

 

遠慮なくグイグイ引っ張っているようで、ファングバンサーの目から涙が止まる様子がない。これ以上痛い思いはしたくないのかひとまずいうことを聞いてログベルトに突進し、ログベルトはうずくまっていた姿から一転して仰け反る形で吹っ飛ばされ、腹から地面にダイブし、しばらく滑っていく。

 

「キマリ号!ここで追撃のウィークブレスなのだー!」

 

そんなログベルトを他所に例の存在は滅茶苦茶なオーダーをしだした。

 

「…ウィークブレスってなんだ?そもそもブレスなんざ、ファングは使わねーだろ?」

 

オキさんが冷静にツッコミを入れる。

 

「そもそもウィークって、<レンジャー>の特殊装填弾の<ウィークバレット>のウィークか?」

 

こまっちゃんはこまっちゃんでウィークの意味が気になったようだ。ウィークバレットとはクラス<レンジャー>が扱える特殊装填弾スキルの一つで、武器<アサルトライフル>に装填する事で被弾箇所に弱点を作る弾だ。この弱点、なんと元々弱い部分に当てると更に弱点になって攻撃が刺さりやすくなるので強敵と戦う際はかなり重要なスキルなのだ。

 

「…とりあえず例のファングは全力で首振ってるな、無理と言わんばかりに」

 

ブレスなんぞ使えないファングバンサーは首を全力で振って出来ないアピールをしていた。まぁ、そうなるな。

 

「出来ないのかー?なら後で修行なのだな~?仕方ないから今は連続引っ掻きで許してやるのだ、滅多打ちにしてやるのだ!」

 

ひとまず安堵した様子のファングバンサーだが、修行という単語を聞いて体を一瞬硬直させた、目からは涙が更に溢れている。なにか、嫌なことを思い出したのだろう…。やけくそ気味にログベルトに飛びかかり連続で引っ掻き回す。ログベルトは無抵抗のまま引っ掻かれ続け、ついに起き上がることは無かった。

 

「「「……ミンチよりひでぇや」」」

 

俺たちが同時に同じことを口にしたのも、必然だろう。

 

「キマリ号、よくやったのだ」

 

ログベルトが起き上がらないことを確認するとファングバンサーは少し距離を取ってその場に伏せた、どうやら相当に息が上がっているようだ。

 

「………だけどなー?おーそーすーぎーなーのーだー!」

 

「ギャィイイ!?」

 

そんなバテ気味のファングに無慈悲な鬣引っ張りをお見舞いする無慈悲な存在…そういえばさっき「ミケ」って名乗っていた。…あファングバンサーの鬣がごっそり引っこ抜かれた。すごく痛そう。

 

「なんともやわな毛根なのだ。もっと鍛えるといいのだ。さてお宝なのだ~♪」

 

やった張本人は引っこ抜いた鬣をそこらへんにポイ捨てし、ログベルトのドロップ品を漁りだした。

 

「完全に出るタイミング失ったな」

 

「そうだね…」

 

「とりあえずこのまま見守っとくか…ファングバンサーを」

 

「「賛成」」

 

こまっちゃんの意見に賛成し、様子を伺い続けることにするのだった。

 

というわけで再びそちらに目を向けたのだが……見えた光景は…

 

「シャーっ!!」

 

と威嚇するような声を上げファングバンサーにロックベアをかたどったレリーフを投げつけるミケと、

 

「ギャィイイイイイン!?」

 

思いっきり顔面にそのレリーフをぶつけられ痛がっているファングバンサーの姿だった。

 

「こんなものをミケによこすとはいい度胸なのだ!!罰として更に鬣を引っこ抜いてやるのだ、色もそのまま真っ黒で過ごすといいのだ!!」

 

痛がってのたうち回るファングバンサーの鬣を引っ張りブチブチィ!と音を鳴らしながら引っこ抜くミケ。

 

「------!?」

 

ついに悲鳴すら出せないくらい痛いのが来たらしい。

 

「うわぁ…ひでぇ」

 

「バンサーは不遇、俺は覚えたぞ」

 

「その不遇の一つはお前だからな、こまっちゃん?」

 

オキさんは可哀想な物を見る目をしながら口から声をだし、こまっちゃんはバンサー不遇を提唱し、俺はその発端はお前だとツッコミを入れるのだった。

 

「…あれ、あのミケとか言うのどこいった?」

 

ふと俺はいつの間にかいなくなっていたミケに事に気がつきあたりを見渡す。すると…

 

「スヤァ…」

 

「寝てるー!?今までありえないくらい暴れまわってたのに寝てるー!!?」

 

木の上にいつの間にか登って寝ていた…ファングバンサーもボロボロになったのか疲れ果てて寝ている。死んではいないようだ。とりあえず、強く生きろ…真っ黒バンサー。

 

その後俺らは任務活動時間の限界が来たので周辺を一応再確認し撤退することになった。眠っていたはずのミケと名乗っていた子はいつの間にかいなくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

---2日後

 

あの大暴れを見学した任務から2日経ち、その間に俺は例のミケなる存在の調査をすることにした。パティエンティアに話をし、得た情報を二人に伝える。

 

「名前は「ミケ」、本名はもっと長いらしいんだけどよくわかってないらしい。いつの間にかアークスになっていて、得意クラスはこまっちゃんと同じ<ファイター>で、ツインダガーの使い手らしいんだけど、扱っているダガーは誰も見たことない特別製っぽくて、本当に小さな短剣を扱っているらしい、行動はとにかく自由。惑星リリーパではリリーパ族を見かけると「ぶっ飛ばすのだー!」と言いながら蹴り飛ばし、惑星アムドゥスキアではキャタドランに対して「つくし死すべし慈悲はない!」とかいいながら水晶蹴り壊して、惑星ナベリウスではなんでも原生種を乗り回したり木の上を飛び回って暴れたり…ミケがいると原生種は侵食されていても全力で逃げ出す位って噂だよ」

 

「いつの間にかアークスになっていてって…」

 

「つーかたまにリリーパの砂漠でリリーパ族が空飛んでたのはそれが原因か?この前フーリエが相当泣いてたぞ」

 

「とはいえ、ぶっ飛ばされたリリーパ族はどいつもこいつも無事だったらしいけどね……」

 

情報を纏めて各々意見を言い合う俺ら。とりあえず総じて言えることは

 

「とりあえずミケは自由奔放なフリーダム気質」

 

「違いない」

 

「間違いないな」

 

なんて言い合ってたその時

 

---緊急警報発令。アークス船団周辺宙域に、多数のダーカーの反応が接近しつつあります!!

 

ダーカー襲撃の警報がシップ中に響き渡り、慌ただしい雰囲気になった。

 

「っオキさん!!」

 

「わぁってる、いくぞオメーら!ペルソナ、出撃だ!!」

 

「「了解っ!」」

 

俺たちも襲撃予測が立っているシップに向かうため、準備をするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

---ダーカー襲撃シップ、市街地アリーナ周辺。

 

襲撃が起きたシップに到着した俺らはすぐさま行動を開始、道中出てくるダーカーを倒しながら今回の襲撃の中心と思われる大型ボスダーカー「ダーク・ラグネ」を探し、進んでいく。

 

「邪魔だっ!!」

 

こまっちゃんが迫り来るダーカー「エル・アーダ」を殴り飛ばし

 

「いらっしゃいませー!キャッチアンド…リリース!!」

 

オキさんが飛び回っているブリアーダの軌道上で待ってワイヤードランスで捕まえ、上に飛び上がり地面に叩きつけるPA<ヘブンリーフォール>をお見舞いし

 

「雑魚は、すっこんでな!!」

 

俺は敵を引っ張り、カタナをブーメランのように投げて戻すPA<ヒエンツバキ>で纏めて一掃する。

 

そのまま進んでいき、ラグネがいるであろうアリーナに到達し、中に入っていく。

 

「はやまん、予測ポイントはここだったよな?」

 

「ここで間違いないよ!外に出てくる前に倒しちゃおう!」

 

「とはいえ、ラグネは壁に張り付いて移動するからな、地上戦メインの俺らじゃきついんじゃないか?」

 

「なに、はやまんはブレイバーだ。弓がありゃなんとかなるだろ」

 

「…弓?なにそれおいしいの?」

 

試運転クラスブレイバーはカタナの他に遠距離攻撃用の<バレットボウ>という遠距離装備があるのだが…俺は扱いが苦手で使ってない。

 

「あ"!?おま、常にサブ武器持ち歩けっていっただろうが!?」

 

「いやー…弓の扱い壊滅的に苦手で…」

 

「これは、キツいかもわからんな」

 

「だー!!はやまん、お前後で正座な、あと弓徹底的に鍛えろ!!」

 

「はい…」

 

オキさんに睨まれた俺は頷くしかなかったのだった。

 

「ひとまずうだうだいってもしゃあねぇ、このまま行くぞ!」

 

アリーナ内に入るテレポーターに到着して、起動する俺らすぐにラグネが襲って来ると構えていた俺らの前に見えた光景は…

 

「ガァアア!!」

 

壁面を移動するラグネと

 

「ニャー!!逃すわけがないのだ!!」

 

壁を走ってそれを追いかける2日前に遭遇したアークス。ミケの姿だった。

 

「……うぉー!カッケー!あんなことできるのか!」

 

オキさんがなんかすごい目を光らせて見てる。

 

「おいおい、フリーダムすぎるだろこれ…!んなのありかよ!」

 

頭を抱えながらそんなのありかと言わんばかりのこまっちゃん。

 

「…ひとまず降りてきた時にサポートできるようにしておこう」

 

俺は地上で戦闘になる事を考えていつでも戦闘に入れるようにし、ミケを見る。

 

「ガァアアア!」

 

ラグネが咆哮を上げながら後ろ足でミケを払おうとする。

 

「甘いのだっ」

 

ミケは足払いを避けるように迂回し、ラグネの懐に潜り込もうとする。しかしそれを待っていたと言わんばかりに体から紅い雷を発し始め、周囲に雷をばら撒く。

 

「ニャッ!ニャニャニャー!!」

 

ミケはそれにもすぐ対応し壁を蹴って宙に飛び上がり、コートの内側に手を潜り込ませると両手いっぱいに短剣を持ちラグネに投擲する。投擲された短剣はラグネの後ろの右足に刺さり、ヒビが入る。

 

ラグネはお構いなしにミケを押し潰そうと飛び上がる。くるくると体を丸めて回転し、体勢を整えて地面に着地したミケはそのまま後ろに飛び踏み潰しを回避する。ラグネは追撃する形で両前足を振い、紅い小さな円盤のようなカマイタチを飛ばす。

 

「シャーっ!」

 

カマイタチから逃げるように後ろを向いて壁まで全力疾走すると、ミケはそのまま壁を駆け上がり飛び上がってラグネの上に躍り出る。狙うはラグネの背中にある弱点コアだ。真っ直ぐに蹴りを叩き込むPA<シンフォニックドライブ>をコアにお見舞いし、蹴りの反動で飛び上がる。

 

しかしラグネは待っていたと言わんばかりに技を打ってわずかばかりに出来た隙に対し飛び上がる形でミケに体当たりをお見舞いする。

 

「ニャ"っ!?」

 

予想外の行動だったのかミケは防御しきれず吹っ飛ばされてしまう。打ち上げられてしまったミケはそのまま下に向かって自由落下をし始めた。

 

ミケが一人でここで戦っていたらそのまま地面に叩きつけられかなりのダメージをおっていたかもしれない、が

 

「こまっちー!!」

 

「わーってる…よっ!」

 

ここには俺たちもいる。すぐさまこまっちゃんがミケの落下ポイントに向かいそのままミケをキャッチ。

 

完全にミケを攻撃するためだけに上に飛んだラグネはそのまま地面に向かって下りてくる。

 

「おぉおおおおおおおおおおおお!!」

 

そのラグネの落下に合わせ、連続で強力な斬りをお見舞いするPA<サクラエンド>を叩き込む。狙うは…さっきヒビの入った後ろ右足だっ!!

 

--斬っ斬っ!!

 

すでにヒビが入り脆くなっていた足は壊れ、ラグネは体勢を崩した。チャンスっ

 

「オキさぁああああああん!!止めいっけええええええええええええええ!!」

 

「任せろ!!」

 

体勢を崩し、背中の弱点が無防備になったラグネに飛び掛るオキさん

 

「連続ヘブンリー、叩き込んでやらぁああああああああああああ!!」

 

ラグネの背中に飛び乗り、更に高く飛び上がり勢いよくラグネのコアにワイヤーを連続で叩き込むっ!!

 

「グォオオオ………」

 

かなり効いたのか、ラグネはそのまま低い悲鳴をあげて、消滅したのだった。

 

「オキさんナイス!」

 

「流石、えぐいことする」

 

「はやまんサンキュー、こまっちーお前には言われたくない」

 

オキさんは俺とこまっちゃんにそれぞれ言い返し、お互いに一息つく。

 

 

---大規模作戦は終了しました。皆さんの協力に感謝致します。

 

どうやら市街地のダーカーも倒し終わったようだ。

 

「うっし、んじゃ帰るか」

 

「その前に一服しようぜ」

 

オキさんとこまっちゃんは仕事終わりのいつもの一服タイムに入る、俺はそんな二人を見たあとミケを探そうとあたりを見渡す…のだが

 

「…また、居なくなってる」

 

その姿はすでに無く、アリーナ内には俺たちだけだった。

 

「……ま、大丈夫だろあの子なら。ほら、二人共!一服するなとは言わないけど今は早く戻ろうよ!」

 

二人に戻ろうと声を掛けに行く俺は、最後まで気がつかなかった。

 

「………オキ、ハヤマ、コマチかー」

 

アリーナの割れた天井から俺らを見ていたミケの姿を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---その後、チームルームにて

 

「今日も、お疲れ様でしたー!」

 

「「おつかれー」」

 

こまっちゃんが加入してからお決まりになりつつあったチームルームでの一日お疲れ様でした会を行っていた。とはいえ俺が晩飯作って皆で食べるだけだけど。

 

「うっし、はやまん。ラーメン、とんこつな」

 

「天丼はよ」

 

「唐揚げ早くよこすのだー」

 

「今日はカレーだって言ってるだろうがアホども!!食わせねーぞ!!」

 

「「「えーっ」」」

 

大体いつもどおりの会話をして出来たカレーを皆に配ろうと思ったのだが……ん?一人多かったような。

 

「カレーさんもぐもぐ!!」

 

「…ってミケぇ!?すでにカレー食ってるし!!」

 

「「なにぃ!?」」

 

そこにいたのはなんとミケ、すでにカレーを勝手にとって食ってる。しかも鍋の半分位食われてる。オキさんとこまっちゃんも気が付いてなかったのか驚いてる。

 

「なんでミケがここに?」

 

オキさんが代表して疑問を問いかける。しかし

 

「ハヤマー、ミケは紅茶を所望するのだー、いれたてのアールグレイ!砂糖はいらないのだ!」

 

とマイペースに言ってくる。

 

「あ、ちょっとまってね…じゃねーよ!?なんでいるの!?しかも普通にカレー鍋半分位食ってるし!!」

 

「ハヤマはうるさいのだなー」

 

「全くだな」

 

「はやまんちっと落ち着こうな」

 

「全くだな、じゃねぇこまっちゃん!おめーにだけは言われたくねぇ!!」

 

やれやれと言いったミケの態度にオキさんとこまっちゃんが同意する、こまっちゃんお前にだけは言われたくねぇ。

 

「仕方ないのだなー特別に説明してあげるのだ、感謝するのだぞー?」

 

イラっとくる物言いだが我慢だ。スプーンを置いて一息つくとミケは口を開いた。

 

「ただ、今日のことを感謝しに来ただけなのだ。それに前、森林でミケのことを見てたのもオキ達だったなー?その縁もあってちょっと直接会いたくなったのだ」

 

「あの時気がついてたのか」

 

こまっちゃんが驚いたように言う。

 

「人の気配には敏感なのだ。とりあえず、改めて今日のことはありがとうなのだ。ちょっとばかし危なかったからなー」

 

ニシシッと笑いながら言うミケの姿はなんというか、あれだけ好き勝手暴れまわっていたミケとはまた印象が違い、すごく純粋な笑い方だった。

 

「ま、ちょっとお腹すいてたのでご飯も頂いていくがなー!もぐもぐ!全部食い尽くしてやるのだ!」

 

「台無しだよこの野郎!!」

 

「イイハナシダッタノニナー」

 

「んな棒読みながら自分の分確保するんじゃねーっ!!」

 

「とりあえず自分の分は確保しといたほうがいいな」

 

「こまっちゃんもさりげなく確保してやがるっ!!もうほぼ残ってないじゃん!!」

 

「「「HAHAHA!!!」」」

 

「おめーらぁあああああああああああ!!」

 

結果、俺は余ったわずかなカレーを継ぎ足して強引にカレーうどんにして食べることで事なきを得た(皆に狙われたけど)

 

そんなバカ騒ぎしながらの飯の後。

 

「ったく、結構作ってたはずなのに全部食われるとか…」

 

「まーまー、落ち着くのだハヤマ」

 

「おめーのせいだよ…で?感謝は終わったんだろ?自分の部屋戻らないのか?」

 

ミケに部屋に戻らなくていいのか確認をする。もう大分遅くなってきたし。

 

「大丈夫なのだ。それにこれからも関わることになりそうだからなー」

 

「ん?どういうことだ?チームに入るのか?」

 

ミケの意味深なセリフにこまっちゃんが反応する。しかしミケはこまっちゃんの問いには首を横に振った。

 

「違うのだ、ミケは自由が好きなのだ。だからどこかに縛られたりっていうのは面倒くさいし、嫌なのだ。ただ、オキ、ハヤマ、コマチ、皆と色々やるのは楽しそうなのだ!だから友達にならないかー?」

 

ミケはそう尋ねてきた。

 

「何言ってんだミケッチ、すでに俺ら友達だし、仲間だろ?」

 

オキさんがミケの問いに答えた。

 

「にゃー?」

 

ミケは首をかしげてる。

 

「なんてったって同じ釜の飯食った仲だし、一緒に戦ったしな、だから俺はすでにそう思ってたんだが、違ったのか?」

 

「……なのだなー!ミケ達は友達なのだ!」

 

オキさんの言葉にミケは少し間を置いて嬉しそうに笑った。顔は見えないけど雰囲気でなんとなく分かる。

 

「俺の時も、そんな感じだったな。オキさん」

 

「オキさんだからね、仕方ないね」

 

俺とこまっちゃんはあの人らしいと思いながら笑う。

 

「んじゃ改めてオキだ、チームペルソナリーダー、オキ」

 

「ハヤマ、これからもよろしくねミケちゃん」

 

「コマチ、仲良くやろうや、ミケッチ」

 

「おー!ミケはミケ!宜しくなのだー!オキ、ハヤマ、コマチ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

それからというもの、毎日のお疲れ会にミケが加わり、更に騒がしくなったのは言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---後日

 

「「「誰だ!大量のラッピードールおいていったのは!!」」」

 

とあるチームのメンバー達のマイルームに謎のラッピドール大量起きテロが発生し

 

「にゃーっはっはっは」

 

シップの一角で猫の笑い声が木霊したという。

 

 

 




以上ミケ編でした、まともに戦闘描写書いたの初めてかもしれません。ミケ編はあれが書きたいこれが書きたいと色々やりたくて内容が多くなってしましました。

ともあれ、ミケのフリーダムっぷりを少しでも味わえていただけたのなら幸いです。

それでは、次回またお会いしましょう、次回は隊長アインスではなくシンキ編!お楽しみに!

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