SAO ~ソードアークス・オンライン~外伝 The・Start-前日譚-   作:羽山飛鳥

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今回はコマチとの出会い編です。かなり長文ですのでご注意ください。

オキ、ハヤマは、無事アークスとなり様々な困難に立ち向かいながら着実に実力を上げていっていた。そんな中凍土フィールドで行方不明になったアークスの捜索を受けることになるのだった。


暴走の出会い~Encounter of runaway~

惑星ナベリウス、一面雪に覆われたフィールド「凍土」。

 

森林から遠くに見える山脈の中に位置するその場所は、道が険しく、天候も良くも悪くもすぐに変化する。このフィールド近辺から出没する原生種やダーカーも強くなり、新人アークス達にとっては中ランクアークスとなるための最後の壁とも言われている。

 

先に述べた道の険しさや天候の変化による視界悪化や体力を奪う急激な冷え込み、更には大気フォトンが不安定になり連絡が途絶え、遭難するアークスの報告も後を絶たない。

 

……ここにも、一人のアークスが遭難し、一人奥地で取り残されて戦っていた。

 

「し…っつけぇんだよ、もうっ!!」

 

彼の見た目は言うなれば神職者、神父のような衣装「カテドラルスーツ」に身を包み、頭には「カテドラルヴェール」を被っている。後ろから遠巻きに見ればそのままのイメージのままだろう………が、近づいて正面から見れば「裏切ったなエセ神父!!」と言いたくなるぐらい見た目が物騒だ。

 

よく見れば顔には丸サングラスを掛けており、右目にかかるように炎のようなメイクとその下に連なるような形で白いラインメイクが施されている。腰には銃やナイフが取り付けられているベルトや警棒やキーピック等のツールが取り付けられているベルトの二つを巻いており、動き回る際にスーツが捲れると、チラリとを右太ももにこれまたナイフを装備してるのも見えた。まぁ、特に神父とは思えない最大の要因は…口が悪い。

 

「寄るんじゃねぇっつってんだろうが!ぶち転がすぞゴラァ!」

 

多数の原生種、ダーカーに囲まれ接近してきたエネミーを武器<ナックル>の一つ<ブレイブナックル>で殴り、吹き飛ばす。だが数が多く、徐々に距離を詰められていき、次第に只でさえ荒い口調も更に荒くなっていく。しかし、焦った様子はなく、対処には余裕が見えた。

 

「し…っつけぇんだよ!雑魚共っ!!」

 

急接近してきた一体を処理すると、軽く飛び上がり勢いよく地面に拳を叩きつける、PA<クエイクハウリング>だ。すると地面を衝撃が走り、周囲にいたエネミー達はショックで気絶したり、そのまま息を引き取った。彼はすぐさま輪の中から飛び出し壁際まで下がり体勢を整える。

 

「…ちっあのクソ盾、相変わらずうぜぇな!!」

 

彼が悪態をつきながら見据える視線の先には1体のダーカーがいる。アークスの中では「ガウォンダ」。ボスクラスではないダーカーの中では上位の大きさで人型、右手にはそんな巨体に匹敵する大きな盾が一体化してあり、左手には魚のヒレのようなブレードを持ち、盾で押しつぶしてきたり、ブレードを振り回して攻撃してきたりする。

 

この盾、かなり厄介な頑丈さで攻撃を一切受け付けず挙句の果てに壊れない相当な代物だ。上位クラスのアークス以外は弾き飛ばされ無防備にされたりもする。近接戦闘を得意とするアークスでは正面からはまともに立ち向かえないので、どれだけ上手く背後を取り弱点のコアを突くかが鍵となる。

 

「あの野郎…さっきから攻撃しようとしたら盾的確に出してくるか一歩下がって攻撃範囲外に出やがって…おちょくってんのか!!」

 

依然敵の数は多く、「ガウォンダ」を中心にまだ数体のエネミーが残っている。

 

「普段は原生種とダーカーで小競り合いしてる癖に、アークスが通りかかるとすぐに徒党を組んで襲ってきやがる、マジ巫山戯んな!!」

 

文句を言いながらも自分の近くにいるエネミーは次から次へと殴り飛ばし始末しているあたり、優秀なアークスなのだろう。

 

しかし、船団側に連絡ができず、帰還する事が不可能になって連続で戦い続けていたためか、次第に疲れも見え始めた。だから、気が付くのに少し遅れてしまった。

 

「ブォオオ!」「--上っ!?」

 

上から飛び降りてきた新手のエネミーの存在に。

 

飛び降りて来たのは原生種「マルモス」小型の象型エネミーで、雪玉を投げつけたり、突進攻撃を仕掛けてくる。背中には突起があり、その突起が弱点だ。

 

「ちぃっ、おわ!?」

 

反応に遅れた彼は、咄嗟に腕を正面でクロスさせて飛び降りてきた衝撃に備える。しかし、やはり不意をつかれてしまったために万全の態勢を整えられず、吹き飛ばされてしまい、背中から地面に倒れこむ。

 

彼の不幸はまだ続く、吹き飛ばされた先は厄介なことに「ガウォンダ」の真正面であり、奴も待ち構えていたと言わんばかりに盾を振り上げて押しつぶそうとしていた。

 

(ここまでかよ…っ!!)

 

彼の脳裏に走馬灯が走る、アークスになってから、ずっと戦いだけし続けた。口が荒く、戦い方もかなり強烈で、そのため他のアークスと共闘する際も、遠巻きに恐れられるような目で見られ、彼は常に一人だった、その寂しさを紛らわせるように更に戦いにのめり込み、まるで負のサイクルだった。

 

悔しそうに口を思いっきり噛み締め、せめてもの反撃と思いっきり睨みつけるが、そんな事が通用するような存在では無い。

 

無情にも盾が振り下ろされたその瞬間、

 

「お邪魔しまァす!!アークス2名不意打ちお届けに参りましたァ!!」

 

「お代はテメェの命で結構だ、遠慮するな全力で受け取れェ!!」

 

「グォオ---!?」

 

「………はっ?」

 

彼を押しつぶそうとしていた「ガウォンダ」が突然吹き飛ばされ、思いっきり壁に叩きつけられそのまま消滅した。あまりの急展開にかなり間抜けな声が口から溢れる。

 

(はっ?何がどうなってやがる?俺は今死を覚悟したんだぞ?なんでダーカーの方が吹っ飛ばされて死んでやがるんだよ?つか、今のセリフはなんだよ?って、まだ敵は残ってるだろうが気を持ち直せ俺!)

 

この間数秒、いや戦場では数秒もぼーっとしてたら致命的だろうがそれでも急展開に対する対処としては早い復帰だった。すぐ様起き上がり体勢を整え直すとそこに広がっていたのは……

 

「オラオラオラァ!こんだけ数がいて何も出来ないのか、こちとらデッキブラシだぞ!!」

 

白いトレンチコートに身を包んだマフィアの様な風貌の青年が<パルチザン>として何故か登録されておりダーカーに対して特攻性のある潜在「負滅牙」を宿す<デッキブラシ>をPA<スライドシェイカー>で振り回し、周囲のエネミーを殲滅する。

 

「だから、自慢げにデッキブラシ振り回して戦ってるんじゃないっての…あーもう!なんでツッコミ入れながら戦わなきゃいけないんだよぉ!!」

 

白い長袖のパーカーと、黒いズボンという普通の風貌の青年がツッコミを入れながら<カタナ>の一つ<剣影/リヒト>を用いて高機動でエネミーを斬り捨て、集団に飛び込んだと思いきやPA<カンランキキョウ>で円を描くように抜刀し、殲滅する。

 

突然乱入して暴れまわる二人のアークスの姿が映ったのだった。

 

「……………はっ?」

 

今の今まで遭難していて、ずっと一人だった彼は、更なる急展開に、間抜けな声を溢すのだった。

 

 

 

 

 

出会いの章

Chapter of the encounter 2

 

暴走の出会い

~Encounter of runaway~

 

 

あのフィールドワークからおよそ三ヶ月。

A.P.238 2/20に行われた修了任務で俺たちはアークスとなった。

 

修了任務では、俺、オキさん、それからアフィンという三人で行動を取る事になった。そんな修了任務の最中、突如として起きたダーカー大量発生、俺達は無事に状況を切り抜け、何とかゼノって言う先輩アークスと合流。途中俺とオキさんだけが助けを求める声が聞こえた気がするのだが、それを確かめる余裕も無く撤退、ひとまず無事任務を終え、アークスとなった。

 

目の前で犠牲になった人もおり、少しショックだったがこれからはこんな事がいつ起きてもおかしくはない場所で戦っていくんだって、覚悟を改めて持つことが出来た。

 

シップに戻り、ひとまず買い物をして今後に備えようとショップエリアに向かった俺とオキさんは、そこで謎の女性「シオン」に出会う。オキさんを待っていた、と言う彼女はオキさんに「マターボード」という謎の道具を渡しといつの間にかいなくなっていた。

 

「マターボード」なる道具は何かを示しており、オキさんと俺はそれに従う形で活動を開始、示された特定のエネミーを倒し情報となる物資を得たり、指示された時間にその場所を訪れる等して修了任務の時の話や他のアークスの人達と交友を深めていく。

 

そうしてだいたい「マターボード」を埋ると、再びショップエリアでシオンと再会。シオンに言われ、導かれるままにナベリウスの森林に向かう事になった。……そこはなんと修了任務当日で、俺とオキさんは時間が戻ったことを意識できたんだが、アフィンはその日そのままで、ひとまず再び修了任務を進んでいく。

 

そしてダーカーが大量発生したあの場所で、俺とオキさんは少女の「助けて」という声をはっきりと聞き、声が聞こえた方に歩みを進める。森林の奥に進んでいき、その奥にいたのは弱っていた白い少女「マトイ」彼女を助け出した所でダーカーの発生が収まり、俺たちはマトイを保護してシップに帰還した。

 

その後、三度シオンと再会、感謝をされ、新たな「マターボード」を渡された。俺とオキさんは「マターボード」の先に何かがあると判断し、それに従って基本的に活動しようと決め、俺とオキさんでチーム「ペルソナ」を発足。なんでペルソナなのかって聞いたら、

 

「なんとなく」

 

…だそうだ。

 

「マターボード」に導かれるまま様々な問題に立ち向かい、時に発生する市街地への緊急のダーカーの襲撃を対処しながら着実に実力を伸ばしていき、新人のアークスとしてそれなりに名が知れるようになってきた。そんなある日いつものようにクエストカウンターに行くと「凍土」で行方不明になったアークスがおり探索任務が出ており、俺たちはその任務を受けることになったのだった。

 

 

---時間は冒頭の出来事の30分前に戻る。

 

「相変わらず寒いなここは」

 

「だね、もうちょい着込んでくればよかった」

 

俺とオキさんは凍土で行方不明になったというアークスの捜索をしながら先に進んでいた。探索エリアはかなり奥地で、どうやら大気フォトンも乱れてるようで通信ができず、テレパイプも展開できない状態だ。若干吹雪いており、視界も良くない。しかもかなり険し目の道と来たもんだ。

 

「少し急がないとね、この吹雪かなり荒れそうだ。そうなったら俺らも遭難して二次災害だよ」

 

「確か行方不明になったアークスと連絡が途絶えたのはもう2日も前だったか、死んでなきゃいいけどな」

 

「大丈夫だと思うけどね、実力はかなりのものらしいし」

 

「情報確認しとくか、名前は「コマチ」、クラスは<ファイター>俺らと同じ修了任務でアークスになり、その後は単独で活動を続けている、と実力はルーキーの中でもトップクラス、か」

 

「パティさん達に情報聞いたけど、結構声がデカくて口が悪いとかなんとか…」

 

「ま、なんとかなるだろ。とりあえず急ぐぞはやまん」

 

「OK」

 

情報を確認しながら俺たちは少し駆け足で先に進むのだった。

 

しばらく進むと

 

「-------んだよ、もうっ!!」

 

遠くから声が聞こえた。

 

「オキさん、今の」

 

「ああ、多分例のアークスだ。行くぞはやまん!」

 

武器を取り出し先に走っていく、頼もしのだが………。

 

「なぁんで持ってきた武器の一つがデッキブラシなんですかねぇ」

 

ダーカーに有効だって言われてるけど、なんかさ、シュール。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

---

 

「いた、あそこだ!」

 

「だな、状況的にかなり劣勢っぽいぞ」

 

先に走っていたオキさんに追いついた俺は例のアークス「コマチ」と思われる人影を目視した。遠巻きに見えるその姿は神職者の様に見える。多数のエネミーに囲まれており、状況はあまりよくないようだ。

 

「…やばい、あいつ上から来てるマルモスに気が付いてないぞ!」

 

「急ごう、このままだとやられるよ!」

 

マルモスにガウォンダの目の前まで吹き飛ばされ、そのまま背中から倒れこむコマチ、それにあわせる様に盾を振り上げて潰そうとしているガウォンダ。

 

「やらせる……かっ!」

 

「合わせるよ、オキさん!」

 

俺とオキさんは同時に飛び込み、背中を見せているガウォンダに対し思いっきり飛び蹴りをブチかます!!

 

「お邪魔しまァす!!アークス2名不意打ちお届けに参りましたァ!!」

 

「お代はテメェの命で結構だ、遠慮するな全力で受け取れェ!!」

 

「グォオ---!?」

 

「………はっ?」

 

俺とオキさんの蹴りは見事にガウォンダの背中のコアに当たり、思いっきり吹っ飛んで壁にぶち当たりそのまま消滅する。コマチはあまりの急展開に倒れたまま呆然としてる。

 

蹴り飛ばした勢いのまま地面に着地して更に地面を蹴って奥にいるエネミー達に飛び掛る。

 

「オラオラオラァ!こんだけ数がいて何も出来ないのか、こちとらデッキブラシだぞ!!」

 

オキさんは主にダーカーが群がっている場所に飛び込んでPA<スライドシェイカー>で纏めて倒す。

 

「だから、自慢げにデッキブラシ振り回して戦ってるんじゃないっての…あーもう!なんでツッコミ入れながら戦わなきゃいけないんだよぉ!!」

 

俺はオキさんにツッコミを入れながら残りの敵を斬りながら集団に飛び込みPA<カンランキキョウ>で纏めて切り捨てた。

 

「……………はっ?」

 

一方体勢を立て直した彼、コマチはこの光景を見てまた呆然としているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

エネミーを全滅させた俺とオキさんは武器を仕舞いながらコマチの元に近づいていく。

 

「よ、大丈夫か?救援に来たぜ」

 

「確認ですけど、コマチさんであってます?」

 

「あ、ああ…俺がコマチだ。ひとまず助かった」

 

オキさんは軽く挨拶するノリで声をかけ、俺は確認をとる。どうやらコマチ本人であっているようだ。

 

「うっし、んじゃ目標も発見したことだし、戻るか。はやまん、テレパイプ」

 

「おっけー……と言いたいところなんだけどさ、多分今出しても機能しないと思う」

 

「あー、そういえば大気フォトン乱れててテレパイプ出せないんだっけか」

 

「うん、俺とオキさんが初めて会った時と同じ状況だね」

 

フォトンが安定しているところまで移動しないとこのままじゃ戻るのは無理だ。そうやって俺らが話をしているとコマチが話しかけてきた。

 

「…あんたら、何者だ?アークスってのはわかるが」

 

コマチは何とも胡散臭いものを見るような目でこちらを見ている。若干警戒もされているようだ。

 

「そういや、自己紹介がまだだったな、俺はオキだ。チーム「ペルソナ」のリーダーをやってる」

 

「同じく、チーム「ペルソナ」のハヤマ。サブリーダーって奴だね。今のところ2人しかいないけど……っと、オキさんここまで行けばテレパイプ出せるかも」

 

俺は自己紹介しながら地図を確認して得た情報を伝える。

 

「更に奥に進まなきゃいけねーのか、とはいえ、それほど離れてはいないな」

 

「ここも大分奥地だからね、この辺りは凍土ボスのスノウバンサーとバンシーがいるっぽいし。高確率で戦闘になると思う」

 

凍土ボスエネミー「スノウバンサー」「スノウバンシー」2体で行動する原生種で素早い動きと強力な氷のブレス、周囲にいる敵を吹き飛ばす咆哮などを使ってくる。基本的にはバンシーのみが攻撃してくるのだが、バンシーが瀕死に陥ることでバンサーも乱入し、混戦になる。とにかく素早く、引っ掻いてきたり、捕まえて噛み付くなどかなり近接タイプのアークスはここで挫折させられる者が多いと言われるほどの「最初の近接殺し」このエネミーを近接で倒せるようになればかなりの実力と見なされる。

 

「油断はしないほうがいいか、コマチさんよ、まだ戦えるか?」

 

オキさんがコマチに問いかける。2日もフィールドに降りて戦っていたのだ、体力は結構ギリギリだろう。

 

「…問題ない、まだやれるさ」

 

コマチは肩を回したり足を曲げたりしながらそう言った。どうやら大丈夫なようだ。

 

「そしたら急ごう、吹雪が強くなる前に座標まで向かわないと」

 

俺がそう言って、皆で座標地点に向かって行動を始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

---

ナベリウス凍土エリア

座標指定ポイント

 

座標位置は吹雪が嘘の様に晴れており、空には雲一つない青空が浮かんでいた。この辺は広い平地になっており、走り回るのが得意そうな奴らにはうってつけの場所だった。

 

「さて、この辺だが…やっぱ、いやがったな、スノウ夫婦」

 

オキさんが<ワイヤードランス>の一つ<デイライトスカー>を構えながら奥に見える高台を見る。そこには白黒の縞模様の毛皮に覆われ、青い鬣と鋭い爪を4足の脚に持つ、いかにも機動力が高そうな2匹の巨大な獣がいた。

 

「来るぞ、油断すんなおめーら!!」

 

「勿論、コマチさん行くよ!!」

 

「…ああ!」

 

武器を構え飛び降りてきたスノウバンシーに突撃する。

 

「おらっ!」

 

一番リーチが広いオキさんがワイヤーを飛ばしバンシーに引っ掛けるとそのまま軽く飛び引っ張られるままに蹴りをお見舞いする。しかし、引っ掛け方が浅かったのかすぐに抜けられて避けられてしまう。それどころかカウンター気味にバンシーは右前足でオキさんを殴り飛ばそうとした。

 

「させるか…よっ!!」

 

それをすぐさま俺が横から入り込み、鞘で受け止め反撃の抜刀、逆に傷をつけられたバンシーは一度後ろに下がる。

 

「ちぃ、逃げやがって…!」

 

後ろに下がったバンシーを追いかける様にコマチが突撃し、腰をひねりながら右フックで殴るPA<ダッキングブロウ>で攻撃を仕掛ける、しかし更に一歩下がり攻撃を避ける。

 

「避けんなっ糞がっ!!」

 

コマチは更に追従するようにフォトンを込めて突撃するPA<すとれいとチャージ>で攻撃をする、それに合わせるかのように反転したバンシーはそのまま突進を行い、コマチに襲いかかる。

 

「なっ、急に反転するじゃ…ねぇよ、糞っ!!」

 

コマチも攻撃をキャンセルし、すぐさま横に避けるが、少し掠ったのかそのまま横に軽く飛ばされる。

 

「ちっ…やっぱ思うように体が動かねぇ!」

 

コマチは悪態をつきながら起き上がる。無理もない、こんな場所に2日も前からいて、戦闘が続けば体力だって厳しいだろう。

 

「コマチっ無理しねーで、一旦下がれ!」

 

「オキさん俺が引っ張る!」

 

すぐさまオキさんがコマチの前に出てフォローに入り、俺がバンシーに突撃してヘイトを取る。

 

少し苦戦している俺たちを高台で見ているバンサーの方は猫のように後ろ足で耳の後ろを掻いており、まるで興味なさげだった。その様子を起き上がったコマチが偶然視界に入れてしまった。

 

-ブチッ

「………けんな」

 

「ん?」

 

コマチを庇うように立っていたオキさんは何かがキレる音とコマチが俯きながら何かを言っているのを聞き、コマチをチラリと見やる。そこには…

 

「ザッケンなこんの糞犬がぁあああああああああああああああ!!高みの見物決め込みやがって舐めてんじゃねぇぞ!!」

 

ブチギレて声を張り上げたコマチの姿だった、その声のあまりの大きさに全員の動きが止まる。

 

「うぉおおおおおおおお!!」

 

その隙に、という訳では無いがコマチは全力でバンサーのいる高台の下まで走り、その勢いのまま

 

「落ちやがれこの糞犬があああああああああああああああ!」

 

ドッッッッガン!!

 

思いっきり壁をぶん殴り、高台を揺らした。かなり衝撃があったのか上で耳を掻く最中のまま止まっていたバンサーはバランスを取れずそのまま真下に落下、体勢を崩して転げまわっていた。

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァアアアアアアアアア!!」

 

コマチは体勢を崩したバンサーの腹の前に素早く移動するとPA<ペンデュラムロール>を使い連続で殴り続ける。そりゃもう酷いくらいに。

 

「ぶっ飛び…やがれぇえええええええ!!」

 

最後にPA<スライドアッパー>を腹に叩き込み殴り上げる。なんとバンサーの巨体はその勢いで上空に飛ばされ、高くまで上がり抵抗もろくに出来ずそのまま地面に叩きつけられる。叩きつけられたバンサーはそのまま破裂するような勢いで消滅してしまった。

 

なお、この一連の出来事は20秒の間に起きたことである。

 

「………」

 

「………ミンチよりひでぇや」

 

俺はバンシーの前で思わず固まってしまい、オキさんも顔を引きつらせながらそう言った。

 

 

 

 

 

 

---その後、バンシーは全力で逃走、俺らはそれを追うことすら出来ず、思いっきり息の上がったコマチを落ち着かせるのだった。

 

そうしてひと段落着いて帰還し、報告を終えた俺らはオキさんの提案で一緒に飯を食いに行くことになった。

 

「……あんたら、俺の事怖くねーのか?」

 

席の隅っこに座り込んでいたコマチが食事の手を止めて、徐に問いかけてきた。

 

「何が?」

 

オキさんがそう尋ねると、コマチはバツが悪そうな顔で話し始めた。

 

「いや、な。さっきの見ただろ。俺がブチギレて、酷い戦い方したのをよ」

 

「んー……、別に?確かにすげぇ戦い方だけどよ。なあ、はやまん」

 

「そうだね、強烈だったけど、それだけ実力があるって事でしょ?」

 

オキさんに問いかけられた俺は思った事を口にする。

 

「それに、そういう事を自分で聞いてくる人に悪い人はいないって俺は思ってるし、気にする必要性は感じないね」

 

「………」

 

俺の言葉にコマチは目を見開いた顔をしていた。

 

「確かにあんたは見た目ちーっと厳つくて、口も悪いしけどよ、少なくとも共に戦って、こうやって同じ釜の飯食ったんだ。それだけで十分だろ」

 

「…けどな」

 

オキさんの言葉を聞いてコマチは俯きながら何かを言おうとしていた

 

「だぁあああ!!いいか!口が荒かろうが見た目が厳つかろうが俺らが良いっていえば良いんだよ!わかったか、おら!!」

 

「お、おう…」

 

その前にオキさんがキレてコマチを見ながら言う。コマチはあまりの勢いに若干後ろに引いていた。

 

「ぶっちゃけ見た目とかはオキさん言えないからね、マフィアだし」

 

「…それもそうだな」

 

「うっせーよはやまん!こまっちー!お前も同調するな!!」

 

「こ、こまっちー!?」

 

オキさんに突然あだ名で呼ばれたコマチは驚いたようにオキを見る。

 

「おう、いいあだ名だろ」

 

「え、は、あ!?」

 

「あだ名か、いいね。俺はこまっちゃんって呼ぼうかな」

 

「こ、こまっちゃん!?」

 

コマチ…こまっちゃんが混乱してるところに畳み掛けるように俺も呼ぶと更に慌てた様子になる。

 

「…くっ」

 

「…ぷっ」

 

「「あっははははははは!!」」

 

そんなこまっちゃんの様子がおかしくて俺とオキさんはたまらず笑ってしまった。

 

「何なんだよ、もう!!」

 

こまっちゃん本人はどうしたらいいのかわからないと言った様子だった。

 

「あー、笑った」

 

「久しぶりに爆笑したよ」

 

ひとしき笑った俺達は、こまっちゃんに問いかける。

 

「なー、こまっちー。よかったら俺らのチームはいらねーか?」

 

「……あんたらのチームに?」

 

「おう、まだ2人しかいなくてな、こまっちーなら実力も申し分ないし、何より面白いし。どうよ?」

 

「こうやって出会ったのも何かの縁だし、仲良くしたいからね」

 

「……俺なんかでいいのか?」

 

こまっちゃんは少し不安そうな顔で聞いてくる。

 

「当たり前だろうが、俺は気に入った奴しか誘わねーんだよ」

 

「どうかな?こまっちゃんが嫌なら無理強いはしないけどさ」

 

「………」

 

考えているのか目を閉じて顔を伏せている。しばらくして顔を上げたこまっちゃんは真っ直ぐ俺らを見ながら

 

「こんな俺で、良ければ、お願いする」

 

と言ってきた。

 

「うっし、決まりだな。改めて俺はオキだ。呼び捨てでいいぜ」

 

「俺はハヤマ、同じく呼び捨てでいいよ」

 

「…ああ、よろしくな。リーダー、はやまん」

 

そういったこまっちゃんの顔は自然と笑っている様子だった。

 

 

 

 

 

 

---

 

初めてだった。俺の事を怖がらないで、受け入れてくれたのは。嬉しかった。こんな俺を、受け入れてくれた事が。

 

「ちょ、リーダーっておま」

 

「あー…やっぱはやまん安定なのね、俺」

 

だから、俺も大事にしたいと思う。この出会いと、絆を、これからも……

 

 

 

 

 

 

---その数日後、ペルソナチームルームにて

 

「おい、なんでチーム倉庫が素材でいっぱいになってんだよ、全然埋まってなかっただろ!?」

 

「あぁ、俺の倉庫に入りきらなかったの入れたらそうなっちまった。悪い悪い」

 

「うわ、これ…ヴォルドラゴンの肉とかボス級エネミーの素材が999個スタックされてるっていうか全素材999個あるぞおい!?」

 

「はっはっは」

 

「「笑い事じゃねーよ!!」」

 

……また賑やかになったのだった。

 




サモナーのレベリングしたり急な予定がはいってコマチ編までしかかけませんでしたすいません!!
ミケ編は早めに上げますのでどうかお楽しみに!!
それでは!

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