あれから1週間が経った頃。俺はキリトってやつと行動を共にしていた。ソロでやって行こうと思っていたのでパーティ組んだ時の戦い方なんて何も知らなかったため、教えてもらいながらクエストをこなしたりしていた。
キリトに戦い方を教えてもらいながら約1時間ほどして、戦い方も大分マシになったところで俺らは今日迷宮区をマッピングしていた。教えてもらいながらやってみて思ったのは、こいつの戦い方凄く上手いってことだった。
「ハチ、戦い方大分様になってきたな」
「ああ、何処かのお人好しのお陰でな」
「戦い方知らなかったみたいだから教えただけだろ?」
「にしたってお前上手すぎでしょ。お前だってこのゲーム始めた日は俺と変わらないだろうに」
「まあ…これに似たゲーム結構やってたからな。これくらいは出来るよ」
「ああ、そうかよ」
コイツあれか。生粋のゲーマーなんだな。だからこんなに戦い方もかなり上手いのだろう。俺はナーヴギアをつけてやるゲームはこれが初めてだったし、仕方ないのかもしれないが。
ゲーマーといえば、小学生の頃遊んでたアイツもそう言えるよな。名前は忘れてしまったが、遊んだ記憶は覚えている。あんなに遊んだのに名前を忘れるとは、俺結構酷いやつなんじゃね?
「なあ、ハチ」
「ん?なんだ?」
「あのさ…いや、何でもない」
「なんだよ…変なやつだな」
何か言おうとしてたんだろうが、俺には関係の無いことだ。だからそっちから言ってくるまでは聞かない。別に俺から問いただすことなんて特にないしな。
「そんなことよりマッピングだ、マッピング。続きやるぞ、キリト」
「あ、ああ、そうだな。じゃあ行くか」
まあ、そのうち言い出してくれるだろう。そしたら聞いてやればいい。別に急かす必要は無いんだ。
こうして、俺とキリトは今日は特に何事もなく終わった。
次の日。今日もキリトに迷宮区に行く約束をされてしまったためこうしてSAOにログインしていた。自分のペースでやるのが一番ではあるのだが…。約束をしていて俺が以前行かなかった時、あいつにめちゃくちゃ怒られた。あいつを怒らせると怖い。なんか物凄い形相で俺に迫ってくるからな。だから、こうしてサボらず来てるわけなのだが…。
「…遅いな」
そう、待ち合わせの時間から15分が過ぎようとしていた。普段は遅刻することも無かったから、こんなことは初めてだった。もう帰っていい?
約束の時間から約20分後。ようやくキリトが走ってこっちに来た。
「遅れてごめん、ハチ!待っただろ?」
「いや、俺も今来たとこだし別に気にすんな」
「でもさ…」
「いいんだよ。こういう時は気にすることねーよ。誰だって遅刻することあるしな。俺なんか学校とかしょっちゅう遅刻してるし」
「ハチ、それ威張るほどのことじゃないぞ?」
遅刻したこと気にするとか小さいな。そんなこと言ってたら俺なんかどうなるんだよ。平塚先生のパンチ何回食らったことやら。そんなんだから結婚出来ないんだよ。誰か!早くもらってあげて!
「なあ、ハチ」
「あ?なんだよ?」
「信じてもらえないかもしれないけど俺さ、小学生の時千葉に住んでたんだよ」
「いきなりなんだよ。しかもリアルの時の話持ち出すとか、らしくねーな」
こういうゲームの中では、基本的にリアルの話はタブーだ。それを散々言ってきたこいつは一番それを理解している。だからこそこいつからいきなりリアルの話をされるのは変なわけだ。
「まあ、そうなんだけどさ、言っとかないといけないかなってさ」
「お、おう、そうか。で?千葉に住んでたからどうしたって言うんだ?」
「俺が千葉に住んでた頃、公園で知り合ってから一緒に遊んでたやつがいたんだ」
「あー、俺もそういうヤツいたぞ。よくある話だからな」
「でさ、仲良くなってからゲームして遊んだりもしたんだ。けど、ある日俺の親が急に転勤する事になっちゃって、別れも告げられずに千葉を去ったんだ」
「……そうか」
おそらく、この話は本当だ。そんでもって、一緒に遊んでたヤツというのは俺のことだろう。時期も重なるし、公園で知り合ったのも一緒だ。なるほど、キリトがあの時一緒に遊んでたやつだったのか。
「けど、つい最近再会出来たのはいいんだけど、その時のことをどう謝ればいいかなって思ってな。それに、そいつ謝って許してくれるかな」
「…まあ、許してくれるんじゃねーの?そういう事情があったから別れも言えなかった。そんな小さいこと気にしないだろ、そいつも」
「…そっか。ハチは相変わらずだな」
「うっせえ。そんなこといちいち気にしてたらキリがないっつーの」
「…久しぶり、ハチ」
「…おう、そうだな」
「また、これからよろしく頼むよ」
「…はいよ」
連絡取れなかったことなんて気にする必要ないし、焦る必要なんて無い。これからはこの世界で連絡も取れるのだから。
こうして俺は本当の意味でキリトと再会したのだった。