やはり俺のゲーム攻略は間違っている。   作:湊眞 弥生

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という訳で、八幡とキリトの出会ったきっかけである過去編始まりです。次回もこうしてキリト目線とハチマン目線で書くかはわかりませんが、お楽しみに。


第6話 こうして比企谷八幡と桐ヶ谷和人は再会する。 sideハチマン

 

奉仕部から帰り家のポストを見ると、ある一通の手紙が俺宛に来ていた。俺は部屋に戻り手紙の封を破り読んでいく。すると、そこにはこう書かれていた。

 

『比企谷八幡様へ

 

この度は、ソードアート・オンライン βテストへのご応募ありがとうございます。

厳正なる抽選の結果、貴方はソードアート・オンライン βテストに当選致しました。

付きましては、運営からソードアート・オンライン βテストへのご案内をさせていただきます。

下記に記載されているログインコードを入力して、ゲームログインをして頂きますようお願い致します。

 

ログインコード ××××××

 

ソードアート・オンライン 企画運営係より』

 

ソードアート・オンライン。つい先日発表されたVRMMORPGだ。これはそのβテスターを応募の中から抽選で決めるというものだった。このゲームには少し興味があったから、受からないだろうと思いつつも試しに応募してみたら当選したらしい。こんなこともあるんだなと思いつつ俺はナーヴギアを装着し、ログインする。

 

「…リンクスタート!」

 

ログインコードを入力し、アバター作成を済ませて、俺はソードアート・オンラインの世界に入った。特に変える必要もないだろうと思い、姿や髪も現実の時のまんまにした。

 

「おぉ…。これ本当に仮想世界かよ…。実は現実の世界で瞬間移動しただけとかじゃねぇの、これ…」

 

初めて浮遊城アインクラッドを見た感想は、本当にこれが仮想世界かと疑いたくなるようなほど…綺麗で美しかった。というよりは、こう表現せざるを得ないぐらい凄かった。

そういや、昔近所にいたアイツもゲーム好きだったな。もしかしたらSAO予約してたりするのかな。

 

そう、それは俺が小学3年くらいの頃の話だ。近所の公園でたまたまある1人の男子と出会い、一緒に公園で遊んでいた。しばらくして段々仲良くなり、一緒の学校に通っていたということもあって、俺はそいつの家でよくゲームをやっていたりもした。だが俺が小学5年の頃の話だ。そいつは急に俺の前から姿を消した。別れも告げずに。しばらくの間は気にしたりもしていたが、時間が経つにつれ、その事を俺は今の今まで忘れていた。何年も前の話だし、無理もない。

 

第1層ー始まりの街ーを少しの間見て周り、勇気を振り絞って街の人とかに話しかけてみたりもしたが、間違いなくNPCだったのでここが仮想世界だという事を改めて実感した。

アイテムや武器を買い揃え、始まりの草原に走って飛び出た。

 

「お、あの猪ってもしかしてモンスターか?やっぱり、ここはゲームの世界なんだな…」

 

猪型のモンスターであるフレンジーボアに向かって走り出し、俺は片手剣を抜いて振り抜いた。すると、見事にヒットしHPバーが少し削れた。

 

「すげぇな…。確かに超楽しいわ。そりゃあ、ここまで予約とか殺到するわけだよな…」

 

クラスのやつも凄く話題にしていたので、実は俺もこっそりと予約をしていた。ただ、予約殺到の電話が凄すぎてなかなか繋がらないんだが、俺はたまたま電話が繋がって予約が出来た。そしてその後に興味本位で送ったβテストが当選してしまったので買う必要もなくなり、予約をキャンセルした。

 

始まりの草原でしばらくモンスターを狩り、次の街についた頃にはソードスキルとかも普通に使えるようにはなり、レベルは5まで上がった。ただ、こうしてモンスターと戦っていて分かるのは、レベル上げってこんなにしんどいんだな。いつもPSPやDSのゲームをしていたのでそこまで苦ではなかったが、こうして自分の身体を動かしレベル上げをしてみると、それの大変さが分かる。次からはPSPとかのゲームをやる時はキャラにもう少し優しくしてやろう。うん、そうしよう。

辺りがすっかり暗くなっていることに気づき、ふと時間を見てみると、いつの間にか10時になっていた。やべ、夕飯食ってないじゃん俺。戻ったら小町怒ってそうだな…。だが、幸いにも今日は金曜日。明日は今日よりももっとゆっくり出来るから続きは明日にするか。

こうして、俺のSAO1日目は終わり、ログアウトをする。

部屋を出て階段を降り、リビングに行くと俺の夕飯であろう皿に綺麗にラップがされ、紙が1枚置いてあった。

 

『ゴミいちゃんの事さんざん呼んだのにいつまで経っても降りてこないから、先に食べちゃったよ。

夕飯食べる時はレンジで温めて。

あと、お皿は自分で洗ってね。

小町は勉強してくるから、何かあったら部屋に来てね。

 

小町』

 

やべーよ、小町のやつ超怒ってるよ。後で誤りに行こう。許してもらえるか分からないけど。

夕飯を温めて、1人黙々とテレビを見ながら済ませ皿を洗う。

2階に行き、小町の部屋のドアをコンコンと叩くと中から「どうぞー」と声がしたので中に入った。

 

「あ、お兄ちゃん。もう、部屋で何してたの!小町散々夕飯だよって声かけたのに降りてこないし」

「悪いな、部屋でゲームしてて気づかなかったんだよ」

 

仮想世界に潜ってゲームをしていたから嘘は付いていない。説明を省いただけだからな。

 

「うわあー…。ゲームしてて気づかないとか流石ゴミいちゃんだね。小町的にポイント低いよ」

「小町ちゃん、紙にも書いてあったけどゴミってちょっと言い過ぎじゃない?なんなの?俺のこと嫌いなの?泣いちゃうよ?」

「あー、はいはい。そういうのいいから。次からはちゃんと降りてきてね」

「悪かったな。今度何か買ってくるからそれで許してくれ」

「どうしようかなー。小町は勉強が忙しくて駅前に新しく出来たケーキ屋さんのケーキを買いに行けません。だから誰か心優しいお兄ちゃんが買いに行ってくれないかなー。あー買ってきてくれないと雪乃さん達にこのこと言いふらしちゃいそうだなー」

「よし、今すぐ買ってくるから待ってろ小町。お兄ちゃんがすぐに食べさせてやる!」

「もう、どんだけ雪乃さん達に知られたくないのさ!お兄ちゃんのそういう所は小町好きだけど、ケーキ屋さんもうやってないからね。明日でいいよ。あ、今の小町的にポイント高い!」

「あーはいはい。じゃあ明日な。遅くなる前に寝ろよ」

「はいはーい。おやすみ、お兄ちゃん」

 

なんとか許してもらえて良かった。その代わりに俺のお財布ポイントが飛ぶが、小町のためなら仕方ないな。今日はもう寝て明日の朝速攻買いに行くか。そうと決まれば風呂に入ってもう寝よう。

風呂を済ませベッドに横になり、俺の暇つぶし兼目覚まし時計のスマホを少し弄ってから俺は深い眠りについた。

 

次の日の朝。俺は小町の言う駅前のケーキ屋に並んでいた。にしてもすごい行列だな。こんなに人気あるなんてお兄ちゃん知らなかったよ小町。こんなに混んでるって知ってたら本の一つくらい持ってきてたのに。

待つこと30分。ようやく俺の順番が回ってきたのでモンブランやショートケーキなどをいくつか買って家に帰った。

 

「ただいまー」

「あ、お兄ちゃんおかえりー。ケーキ買ってきれくれたんだね!小町的にポイント高いよ!」

「ま、昨日約束したからな。ほれ、これケーキな。適当に1個だけ残しといてくれ。後で俺が食うから」

「りょーかいでありまーす!」

 

ニコッと笑いながら小さく敬礼する小町はとても可愛かった。やっぱり小町は世界一可愛いな。異論は認めん!

部屋に戻り、俺は早速ナーヴギアを被りSAOを始める。

 

「リンクスタート!」

 

さて、この世界に戻ってきたわけだが、今日は何をしよう。なんでも、ボスの部屋に行くためには迷宮区というところに行かなければいけないらしい。仕方ない、迷宮区行くか。

重い足を動かし、道中モンスターを狩りながら迷宮区の前に到着した。中に入り、モンスターを狩りながらマッピングをして、次のモンスターを倒そうと思い、剣を振り下ろそうとした時だった。後ろからソードスキルを発動させ、目の前で1人のプレイヤーにモンスターを倒された。えっ、そいつ俺が倒そうとしてたのに。

 

「ああ、悪い。もしかして今のモンスター、アンタが倒そうとしてた?それなら悪いことしたよ。俺の名前はキリト。アンタは?」

「ハチマンだ。よろしく」

「よろしくな、ハチマン」

 

これが俺とキリトの出会いだった。だが、あの時近所でよく遊んでいたやつが、まさかキリトがそいつだったと気づいたのは、この世界で一緒に過ごしてもう少し先になってからのことだった。

 


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