やはり俺のゲーム攻略は間違っている。   作:湊眞 弥生

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第5話 そして比企谷八幡は仮想世界でも間違える。

 

ボス攻略会議が行われた次の日の朝。今日はいよいよボス攻略戦だ。俺らは既にボス部屋の前にいた。そして、ディアベルが号令を掛ける。

 

「俺からは一つ。勝とうぜ、皆!」

 

うおぉー!と大きな声が迷宮区に響くと同時にディアベルが、「戦闘開始ー!」とボス部屋に入っていく。すると、部屋の灯りが付き、ボス部屋の真ん中には今回のボスであるコボルトロードと取り巻きのセンチネルがいた。

気合を入れてそれぞれのパーティは自分らの役割を果たそうと攻撃を開始する。ちなみに俺らの班は取り巻きのセンチネルが相手になる。

 

「はあぁぁー!」

 

先陣を切ってキリトがセンチネルにまず一撃入れていく。

 

「アスナ、スイッチ!」

「てやぁぁぁー!」

 

キリトのスイッチという掛け声に即座に反応して、アスナがソードスキルのリニアーを放つ。アスナがリニアーを放って硬直した一瞬の隙に俺が追い討ちを掛けるためにセンチネルを斬った。するとセンチネルはポリゴンとなって砕け散った。

 

「いいぞ、ハチ!この調子で他のセンチネルも上手くやるぞ!」

「おう」

 

そして、俺らが数体のセンチネルを倒した時だった。ボスであるコボルト・ロードのHPバーが赤に入る。通常通りなら武器が曲刀に変わるはずだが…。以前俺がアルゴに情報を聞いた時は迷宮区のモンスターの攻撃パターンが変わっているということを聞いていたのでもしかしたらボスも変わってるかもしれない。

 

「皆下がれ!ここは俺が行く!」

 

そしてディアベルが他を待機させて突っ込んでいく。まあ、大方LABが狙いなんだろうが。ボスが武器を取り出すが、明らかにあれは曲刀じゃない…。野太刀だ…!

 

「ダメだ!全力で後ろに飛べ、ディアベル!」

 

キリトが大声で呼びかけるも、それを無視してディアベルは斬りかかりに行く。ボスのコボルト・ロードは旋車でディアベルを撃ち下ろし浮かせる。反撃しようとディアベルがソードスキルを放とうとするが。そこに追撃で浮舟でディアベルにトドメを刺した。

キリトが走って近寄り、回復ポーションを使おうとするがあえなくディアベルはポリゴンとなって砕け散った。リーダーであるディアベルが死に、他のメンバーが動けないでいた。でも、誰かがやらなければ、このままでは全滅する。それはなんとしても避けなければいけない。ここは俺らが行くしかないか…。

 

「くそ…。行くぞ、キリト、アスナ!」

「うん、分かった!ハチくん!」

「くっそぉぉぉ!」

 

まず俺がボスの刀をソードスキルのレイジスパイクで弾く。そこにすかさずアスナがリニアーを放つ。ボスも刀を振り、アスナを斬ろうとするが、それをギリギリでアスナは避け、ボスの攻撃がマントに当たり、マントは耐久値を無くしポリゴンとなって消えた。アスナの栗色の髪が靡き綺麗な顔が姿を現す。それを見て他のプレイヤーはそれに見蕩れていた。そりゃそうだろうな。俺もちょっと見蕩れてたし。リニアーがボスにヒットし、ボスのHPが削れる。ボスのHP残り僅かの所にアスナが追撃を入れようとするが、それを幻月のフェイント攻撃に惑わされ倒れたところにボスが追い討ちで緋扇の3連攻撃を撃ったところだった。このままではアスナが死ぬ。それを悟った俺は自然と身体が動いていた。

 

「アスナは俺が守るって約束したんだ…。ここで死なせてたまるか…!届けぇぇぇ!」

 

俺がレイジスパイクを打つが今のままでは間に合わない。くそ…。くっそおおお!

と、その時だった。

黒人みたいなプレイヤーが両手斧のソードスキル、ワールウインドで迎撃してくれていた。

 

「アスナを助けてくれてありがとうな」

「いいってことよ。お前らが戦ってるのに黙ってみてるわけにもいかねえだろ?」

 

ボスが野太刀を振り下ろし、攻撃してこようとしていたところにキリトがソニックリープで迎え撃ち、ボスの野太刀を弾く。そこにすかさず俺がレイジスパイクで追撃をした。

 

「今だ、キリト!ここで決めろ!」

「うおぉぉぉー!」

 

キリトがトドメのバーチカル・アークを決め、ボスはポリゴンとなって消えた。

 

「やったな、キリト」

「ああ、ハチとアスナのおかげだ」

 

皆がボスに勝利したことを分かちあっていた時だった。

 

「なんでや!」

 

モヤっとボール頭のキバオウが叫び、皆がそれに気付き振り向く。

 

「なんでディアベルはんを見殺しにしたんや!」

「そんなつもりは…!」

「おどれ、ボスが使う技を知っとったやないか!」

 

確かにキリトはボスの技を知っていた。だが、それは元βテスターだからであったためだ。

それの発言を知って、他のプレイヤーが騒ぎ始めた。

 

「そうか…。あいつ元βテスターだ!だからボスが使う技を知ってたんだ!」

 

余計な一言のせいで、非難の声がどんどん膨れ上がっていく。こうなったらやるしかないか。すまんな、雪ノ下、由比ヶ浜、俺はこの世界でもまた間違えるらしい。

 

「確かに、そこにいるキリトは元βテスターだ」

「ハチ…。お前まさか!」

「だからって、それがなんだって言うんだ?ボスの使う武器が明らかに曲刀じゃないと分かったからディアベルを止めた。だが、あいつはそれを聞かなかった。俺も元βテスターだが、タルワールなんてβテストの時には出てこなかった。だからキリトはボスの使う技を知ってたわけじゃない。もちろん、俺も知らなかった。それと、お前ら初心者は知らないだろうが、ボス攻略にはLABと言うものがある。あいつはそれ欲しさのために、欲望のためにキリトの警告を無視して突っ込んだ。だからあいつは死んだんだ」

 

俺は周りのヤツらを悪く言い始める。すると、周りのヤツらは今度はキリトではなく、俺に非難をし始めた。そうだ、それでいい。これで誰も傷つかずに済む。

 

「ディアベルはんを悪く言うな!そういうアンタはどうなんや!」

「俺か?はっ…。俺をあんなヤツと一緒にするんじゃねえよ」

「あんなヤツやと…!」

「ああ、あんな欲望まみれのヤツと一緒にされたら反吐が出そうだ。それに、俺にはある目的がある。それの為にお前らを利用してたに過ぎないからな。正直、誰が死のうと構わない」

 

このセリフを聞いて周りからの目がどんどんキツくなっていく。そうだ、これでいい。これで誰も傷つかずに済むんだから。キリトをちらっと見ると、またそんなやり方で解決するのかって顔をしていた。

 

「つーわけだ。俺に利用されたくなかったら金輪際俺に関わらないことだな」

「待てよ、ハチ!話はまだ終わってない!」

「俺から話すことなんてもうない。じゃあな」

 

そう言って俺はキリトの声を無視して第2層への階段を上っていく。途中でアスナに声を掛けられ、俺は足を止めた。

 

「待って!」

「…なんだよ」

「なんであんな言い方したの…?」

「それが手っ取り早いと思ったからだ。それに、俺はこのやり方を変える気はない」

「それで誰も傷つかずに済むとか思ってる…?そんなの間違ってるから。少なくとも、私やキリト君は傷ついたよ」

「…そうか。じゃあな」

「まだ話は終わってない!私のこと、守ってくれるんじゃなかったの…?」

「…残念だが、アスナ達と一緒に居られるのはここまでだ」

 

俺だって本当は一緒にいたい。だが、今ここでキリトやアスナを連れていってしまったら、こいつらに被害がいくのは目に見えて分かる。だからこそそれを避けるためには、ここで別れなければいけない。

 

「…私も一緒に行く!」

「ダメだ!お前はキリトと一緒にいるんだ。俺とはここでお別れだ」

「嫌よ!この世界に来て、折角信頼出来る人に出会えたのに…」

「それならキリトが居るだろう。俺にはもう関わるな」

「…また、会えるよね?」

「…さあな。あと、最後に一つ」

「何…?」

「ーーーー」

「……!うん!私もっと強くなる。強くなってハチくんと並べるように頑張る!」

「…そうかい。じゃ、今度こそ俺は行くぞ」

「うん、またねハチくん」

「…おう。また何処かでな」

 

そして、フレンドの中にあるアスナを消し、キリトとアスナをパーティから外し、俺は第1層を後にした。また、何処かでキリトやアスナと会えると信じて。

 

 

 




これでSAOの始まりである第1層の話は終わりです。個人的には、SAOはここまでがプロローグだと思っています。次回からは、キリトと八幡が出会うキッカケになった過去編を少し挟みます。過去編ではキリトsideからの視点と八幡sideからの視点を書く予定です。なので、それぞれの視点である2話分を合わせて1話とさせて頂きます。ですが、その2つの視点は同時に更新させていただきます。本編を楽しみにしてくれてる読者の皆様、申し訳ございません。もう少しだけお付き合いください。
一体どのようにしてキリトと八幡は出会い、仲良くなったのか。是非お楽しみにください。

あ、それと、最後に八幡がアスナに言った言葉は今後の本編で入れていくつもりなので今この話では出しません。ですから、それまでは読者様のご想像にお任せ致します。
少し長々と話してしまいましたが、これで後書きとさせていただきます。感想待ってます。では、また次話をお楽しみに!

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