仕事が忙しくなかなか執筆が進まなく、今日やっと完成しました。今後もこんな事が増えるかと思いますがよろしくお願いします。
という訳で第9話です。
あの後、俺は第14層の森の中で猿型モンスターを相手にひたすらレベル上げをしていた。
「今日はこれくらいでやめておくか」
きりの良いところで俺はレベリングを切り上げて、なんとなくで第11層に転移した。
第11層の街を出ると、そこでキリトがギルドのメンバーらしき人達と一緒にいた。
なに?あいつギルド入ってたの?そんなこと一言も聞いてないよ?まあ、俺もギルド入ったとしても誰にも言わないだろうけど。
冷やかしてやろうと思い、俺はキリトの背後から声を掛ける。
「よう、キリト。お前ギルド入ったのか」
「うわあ!…って、ハチか…。驚かせんなよ」
「悪かったな。んで、なんで今更?」
「まあ、成り行きで…」
ああ、なるほど。つまりあれだ。このギルドのメンバー達が苦戦していたので、それを助ける形でモンスターを倒したら感謝され今に至るって所だな。やはりこいつはお人好しだ。そういう奴らは放っておけば良いものを。
この世界で助け合いは勿論必要だが、結局のところ自分で自分の身を守れないやつは生き残っていくことなど出来ない。少し無茶をすれば、たちまち敵に苦戦してHPが全損するだけだ。
「ま、俺には関係ないから別にいいけど。でも、自分のレベルは偽らない方がいいぞ」
「うん…。そうだよな…。月夜の黒猫団の皆には近いうち言うよ」
「あのギルド、月夜の黒猫団って言うのか。…まあ、そうしとけ。じゃあな」
あいつ本当に大丈夫か?絶対言う気がしないんだが…。まあ、俺には関係ない話だし別にいいか。そう言い聞かせて俺は第11層の宿屋で眠りについた。
次の日。俺は隠蔽スキルを使ってキリトのギルドを付けていた。なんだか、嫌な予感がするんだ。こういう時に限って本当に当たるから嫌になる。
キリトたちを追っていくと第11層ではなく、第13層にあるダンジョンに着いた。こいつら今日ここのダンジョンに潜る気か?キリトはどうして止めないんだ。いや、あいつの事だから止めたけど言う事を聞いてもらえなかったんだろう。
キリトたち一行はしばらくそのダンジョンでレベル上げを繰り返してはいたが、少し辛そうだ。ほとんどキリトがやっていると言ってもいいんじゃないかと言うくらいだ。
ダンジョンを進んでいくと、部屋の中に一つだけ真ん中にポツンと宝箱が置いてあった。あれは明らかにおかしい。絶対罠の類だとは思うのだが、βテスト時にはこういう罠は無かったので、実際開けてみないと分からないのだ。
その部屋をギルドのやつは見つけたのか走り出そうとする。
「これは罠だ!その宝箱は開けちゃいけない!」
「へーきだって、キリト!」
そう言ってギルドのやつらはキリトの言葉を無視して宝箱を開ける。開けた瞬間にブーっとなり始め、モンスターが部屋中にポップして部屋が締まり始めた。いくら何でもキリト1人では守りきることなんて無理だ。
「クソが…。だから他人なんて信用できねえんだよ!」
仕方なく重い腰を上げ、部屋に向かって走っていく。滑り込みで何とか部屋の中に入るとギルドの奴がパニックを起こしてモンスターに斬られていた。
「ボサっとしてないで早くモンスターと戦え!」
「あ…。はい…!」
怯えながらも戦っていくギルドの奴らだが、やはり苦戦しているのでほとんど俺とキリトで捌いていく。
「ハチ…!お前来てたのか…。助かるよ」
「…ま、ちょっと野暮用があったんでな」
こんなのはまるっきり嘘である。心配で付けてきたとは言えず、次々と出てくるモンスターを斬っていく。
「お前らはバラバラになるんじゃなくて固まってろ!その方が生き残れる」
「分かった…!皆、こっちだ!」
なんとか皆冷静さを取り戻していき、モンスターとパーティで戦っていく。
モンスターと戦ってから約1時間が経過したところで部屋内のモンスターは全滅した。何度か危ない場面もあったりしたが、なんとか切り抜けることが出来た。
「た、助かった…ありがとうございます!」
「いや、俺だけじゃあの数は捌けなかったし、いいよ。気にしてない」
ギルドの1人のやつが俺とキリトに礼を言う。やはりキリトは甘い。こういう奴らにはもっと強く言ってやらなきゃ伝わらないだろう。
「なあ。お前ら、なんでこの層の奴らと戦えるとか思ったんだ?」
「えっ、だってキリトがいたし大丈夫かなって」
「それが甘いんだよ。いいか?これはデスゲームだ。常に死と隣り合わせだ。お前らの普段やってるお遊びとはちげーんだよ」
「あ、はい…」
「もっと自分の命を大事にしろ。見る限りお前らのレベルだって20前半、良いところで26とか後半差し掛かったぐらいだろ?この層はそんな低レベルじゃすぐに命落とすぞ。お前らはもっとキリトの言う事を聞け。それが出来ないんだったら宿に帰れ。それだけだ。じゃあな」
これだから他人は嫌なんだ。キリトもキリトだが、あいつは甘すぎる。もっと厳しく言ってやらなきゃああいうのは分からないというのに。
俺が部屋から出ようとした時後ろから声を掛けられた。
「待てよ、ハチ!」
「…なんだ?」
「あそこまで言う必要なかっただろ」
「ああでも言わなきゃあいつらは分かんねーよ。それに、俺がいなかったらお前以外は全滅してたぞ。さっきのがいい例だ」
「それはそうだけど…言い方ってものがあるだろ」
「お前は甘いんだよ。そのうち痛い目見るぞ。けどまあ、お前の好きなやつが死ななくて良かったな」
「なっ…」
どうやら図星だったのか、キリトは見る見るうちに顔を赤くして俯いてしまった。なんだ、こいつ。そんなに恥ずかしかったのか。
「ハチ、気づいてたのか…」
「ああ、あの女のプレイヤーだろ?」
「…ちなみにいつから?」
「初めてあのギルドの奴と会った時から。チラチラと見てるのバレバレだぞ、あれ」
「そっか…。やっぱりハチに隠し事は出来ないな」
「…まあ、なんだ。上手くいくといいな。守ってやれよ、あの子」
「…ああ。なんだかハチがアスナを大事にする理由が分かった気がするよ」
「バッカ、あいつはそんなんじゃねーっての。ただこう、放っておけないだけだ」
「はいはい。そういう事にしといてやるよ」
そう言ってクスクスと笑いながらキリトはギルドの奴のところに戻っていった。
くそ、キリトのやつめ…。次会ったらタダじゃおかねえ。
まあ、もう俺がいなくても大丈夫だろう。これで俺の役目はおしまいだ。キリトたちをチラッと見てから、俺はダンジョンを後にした。