運命を覆す伐刀者   作:蒼空の魔導書

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サブタイトルの通り、選抜戦第十戦目が始まります。

・・・まあ、話の後半からですが・・・。






選抜戦第十戦目開幕!

・・・・・破軍学園第一訓練場のバトルフィールド内で摸擬戦をする二人の生徒の姿があった・・・・だがこれは戦闘と言えるようなものではない、何故なら一人の黒髪長身痩躯の少年が上空を飛び回ってもう一人の栗色の長髪三つ編みの少女を空から重力の魔弾や砲撃などによる空爆戦法で容赦なく一方的に蹂躙しているからだ。

 

「くっ!?外れない!」

 

栗色の長髪三つ編みの少女・・・東堂刀華はバトルフィールドの中央で五十にも及ぶ数のテニスボールくらいの大きさの重力エネルギーの魔力球に周囲を包囲されている中で黒く光る重力エネルギーでできた輪に両腕ごと身体を縛られて無防備状態だ、この輪は今刀華が戦闘をしている黒髪長身痩躯の少年・・・風間重勝の伐刀絶技の一つである《重力の拘束具(グラビディバインド)》である。

 

「閃理眼で行動が全て読まれているんだったらそれに合わせて誘導して行動を制限して解っていても対処できない状況を作ればいい・・・・・フィーネ(終わり)だぜ東堂・・・」

 

そう宣言して80m上空から柄に引き金があってその上部分に回転式弾倉(リボルバー)がある全体的に黒い色をした大剣・・・所謂【砲剣(ガンブレード)】型の霊装の切っ先を地上にいる拘束されて身動きが取れない刀華に向けて回転式弾倉を六回転(フルリロード)する。

 

重勝の霊装には自らの魔力を弾倉に籠める事によって弾倉に魔力を圧縮して貯蓄しそれをリロードすることによって一時的に自らの魔力を爆発的に高めることができるという能力がある、今重勝はそれによってAランククラスの魔力を身体中に纏っている、あまりにも高濃度の魔力なので重勝の身体に黒いオーラが纏わり付いているように見えた。

 

「・・・・・悪魔・・・」

 

ハイライトが消えた冷たい眼で刀華を見下ろす重勝を見て恐れるように刀華はそう言う、黒い魔力オーラは風の様に形を変え、彼の周囲を球形に漂い始めてそれは次第にうなりを強め対流を生み出し大気を震撼させた。

 

黒い魔力は更に濃度を上げて黒から白に色が変わり、それが重勝の背後に六翼の様に広がった、更に砲剣の切っ先にも膨大な白い超重力エネルギーが周りから集まる様に収束されて巨大な光の球が形成された。

 

「・・・・・お前がそう言うんなら・・・悪魔でも構わねーよ・・・」

 

重勝が冷たい声でそう言い返したところで・・・・刀華の世界は白く染まった・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!?」

 

刀華は破軍学園に関する資料が無数に散乱している机の上に伏して寝てしまったらしく、たった今悪夢(ゆめ)から目を覚ました。ここは破軍学園の生徒会室だ、刀華は周りを見回してみると自分の部下達がいつも室内を散らかす所為でガラクタが散乱している見慣れた風景を見てホッと一安心をした。

 

「あっ!刀華ちゃん!目を覚まされたのですね、大丈夫ですか?酷くうなされていたみたいですが・・・」

 

刀華が目を覚ますと近くの机で各部活動の予算の計算をしていた金髪長身で純白の鍔の広い帽子を被って同じ色のベルラインドレスを身に纏った貴婦人のような少女が立ち上がって刀華の身を安じるように彼女に声をかけて駆け寄って来た。

 

彼女こそが生徒会会計にして破軍学園序列四位【貴徳原カナタ】だ。

 

「・・・・カナちゃん?・・・」

 

駆け寄って来たカナタを見て呆ける刀華、寝ぼけているのだろうか?

 

—————何で今更あの時の夢なんか見たんだろう?・・・そういえば・・・。

 

刀華は思考を張り巡らせる、するとカナタが何かを察したみたいに話しだした。

 

「・・・刀華ちゃん、昨日わたくしの第十戦目の相手が風間さんに決まったと実行委員会からの連絡が来た時から気が気で無い様子でしたが・・・もしかしてそれが関係しているのでしょうか?」

 

「・・・・・・」

 

カナタの問いに刀華は無言のまま俯く、刀華はカナタが心配なのだ、カナタを信頼していないわけではないが風間重勝の実力は一年前に完全敗北をした刀華が一番よくわかっている、だから何も言い返せなかった。

 

だが沈黙は肯定と受け取ることができる、カナタは何も答えない刀華に対して笑顔を浮かべた。

 

「・・・刀華ちゃん」

 

「・・・カナちゃん?」

 

優しく声をかけるカナタに刀華は顔を上げて彼女と目を合わせる、カナタの表情はいつも通りの優雅な笑みだが眼は真剣だった、まるで覚悟を決めた戦士のように・・・そして———

 

「風間さんは刀華ちゃんが倒すとおっしゃっていましたが・・・別にわたくしが倒してしまっても構いませんわよね?」

 

その一瞬、カナタから発する濃密すぎる血の芳香が室内に広がったように感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『LET's GO AHEAD(試合開始)!』

 

「うぉおぉぉおおぉぉおぉぉおおお!!!」

 

『おぉぉっと!開始早々砕城選手が自らの霊装である《斬馬刀(ざんばとう)》を頭の上で振り回す!大質量が風を切る轟音が実況席まで届いてきそうな迫力だぁぁああ!』

 

————斬馬刀ってそのままじゃん!?ひねりがねぇな!

 

ここは破軍学園第二訓練場、今現在この場所では学内選抜戦の第十戦目の試合が進行中であり、今試合をしているのは幸斗と坊主頭で巨漢の男子生徒・・・・生徒会書記にして《城砕き(デストロイヤー)》の二つ名を持つ【砕城雷】だ、幸斗は砕城の霊装の名前が見たまんまなので心の中でツッコミを入れた、彼は砕城が振り回す斬馬刀の圧力など気にも留めていないようだ。

 

「問おう!貴殿は其(それがし)の能力を知っておられるか?」

 

頭上で斬馬刀を回転させながら砕城は幸斗に問う。

 

「あ、調べんの忘れてた・・・」

 

「フッ!流石【紅蓮の皇女】を倒した男、大した余裕だ」

 

「あはははは!わりぃわりぃ」

 

「されど・・・此度ばかりはその余裕は仇ぞ!」

 

轟音を鳴らして砕城は頭上で回転させていた斬馬刀を幸斗に向けて構えた。

 

「其の能力は【斬撃重量の累計加算】!振り回せば振り回すほどに重くなる!限界重量はざっと十トン!其の能力を知らずに限界までチャージさせてしまった貴殿の落ち度だ!」

 

「そうかよ・・・それが運命だって言うんなら————」

 

『おおぉっと!?真田選手、なんと自らの霊装である鬼童丸をリングに突き刺して手放した!?そして今まさに斬馬刀を打ち下ろさんとする砕城選手に左拳を振りかぶって突撃して行ったぁぁああっ!!なんたる無謀!真田選手は砕城選手の一撃など素手で十分だというのかぁぁああっ!!!』

 

「っ!?そこまで愚弄するか!・・・いいだろう!地に沈め、真田幸斗っ!!《クレッシェンドアックス》!!」

 

霊装を捨てて素手で向かって来る幸斗を見て嘗められていると感じた砕城は怒りを乗せた一撃で地を割る程の超重量を宿した斬馬刀を幸斗に打ち下ろした・・・しかし———

 

「———その運命を覆してやるっ!!」

 

「な、にぃぃっ!!?」

 

幸斗の左拳が打ち下ろされる斬馬刀と正面から激突して、なんと全く拮抗すらせずにバキィィンという音と共に斬馬刀が砕け散った、そしてその勢いのまま幸斗の左拳が砕城の顔面に叩き付けられた。

 

「ばかnぐごば%#*&ぶべ@じっっ!!!」

 

ジャ◯アンがの◯太の顔面を殴った時のように顔面が陥没した砕城は意味不明な言語で叫びながら真っ直ぐ吹っ飛び、後方の赤ゲートを通って軌道上にある壁を全て突き破って第二訓練場外に飛んで行った。

 

『なななななんということだあぁあぁぁああっ!!?真田選手、砕城選手の斬馬刀を素手で殴り砕いてそのまま砕城選手を吹っ飛ばしてしまったぁぁあああっ!!』

 

「嘘だろ?・・・」

 

「どんだけ化物なんだよアイツ・・・」

 

「ていうか霊装が砕けるところなんて初めて見た・・・・生きているのか砕城さん?」

 

「俺・・・・少しちびっちまった・・・」

 

またしてもとんでもない光景を見せた幸斗に一同は唖然とする、こう何度も人外な事をやってのける幸斗は破軍学園の生徒達に化物認定されていた。

 

・・・そして、10カウント場外ルールによってカウントダウンを行い十秒が経過した。

 

「砕城雷、場外!勝者、真田幸斗!!」

 

「グラッツェ!・・・少し物足りねぇけど・・・まあ、楽しいバトルだったぜ!」

 

レフェリーが幸斗の勝利宣言をすると幸斗は砕城が飛んでいった赤ゲートの方に指さしてそう言ってから青ゲートの方に退場して行った。

 

『砕城選手戻って来ません!【殲滅鬼(デストラクター)】真田幸斗選手これで十連勝!砕城選手の重さ十トンの一撃を素手で砕くという人外技で勝負を決めましたぁぁああ!いやぁしかしこの前のヴァーミリオン選手との試合の時に勝負を決めた龍殺剣といい、真田選手には驚かされてばかりです!』

 

「本当に凄まじいわね彼」

 

「うん、まあ彼はステラに勝ったんだしこれくらいはやってもおかしくはないかな?」

 

「いや、十分おかしいと思いますよお兄様」

 

「ははは・・・」

 

観客スタンド二階で観戦している一輝達がそれぞれ今の試合の感想を述べた。

 

————真田幸斗君か・・・僕よりも魔力量が少ないにも拘らず圧倒的にステラを上回る攻撃力・・・それにステラの天壌焼き焦がす竜王の焔(カルサリティオ・サラマンドラ)を打ち破ったあの時に彼が左腕に纏っていた光は一刀修羅の光に似ていた・・・・一体彼は何者なんだろう?

 

幸斗と同じ生まれながらにして才能に恵まれなかった身として一輝は幸斗に何か思うことがあるようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お疲れさん幸斗」

 

「いや、あれはお疲れって程じゃないわね、どう見ても楽勝だったし」

 

青ゲートの前で退場した幸斗を出迎えたのは重勝と涼花だった。

 

「ハハハハハ!まあ、少し手が腫れたけどな!」

 

「砕城の最大の一撃を素手で殴って腫れるだけってお前な・・・」

 

「いつもの事でしょ?気にしていたら身が持たないわよ重勝」

 

笑いながらとんでもない事を言う幸斗に呆れる重勝と涼花、だが呆れている暇はない、次は涼花の試合だ、バトルフィールドを見るとたった今赤ゲートから涼花の対戦相手であるステラが入場して来ていた。

 

『さあ注目のカードはまだ続きます!本日の第十九試合開始だ!まず先にリングに上がったのは皆さんご存知の破軍学園唯一のAランク騎士!【紅蓮の皇女】ステラ・ヴァーミリオン選手だぁぁああっ!!ヴァーミリオン選手は選抜戦第八試合目まで全て相手の棄権負けによって威圧だけで全勝をしていた七星剣武祭代表最有力候補だったのですが・・・前回の試合先程の試合で勝利した真田選手に惜しくも敗れ、七星剣武祭代表入りは厳しい状況になっています!しかし今回戦う相手は選抜戦九戦九勝無敗の選手である為この試合に勝利すれば七星剣武祭への道が拓けるかもしれません!だがそれは逆に考えるともう後が無いということ!ヴァーミリオン選手は文字通りの崖っぷちで試合に臨む事となります!!』

 

「・・・・行けるか涼花?」

 

この前よりも凄まじい気迫を纏ってバトルフィールドに立つステラを見て幸斗は不敵な笑みを浮かべて涼花に尋ねた。

 

「・・・正直魔力的にも能力の相性的にも厳しいわ・・・普通なら何もできずに負けるでしょうね・・・」

 

返って来た答えはかなり後ろ向きだった、これが普通の答えなのだろう・・・だが、この三人は世界最強クラスの傭兵団のメンバーだった三人だ、普通では無い。

 

「・・・でも、負ける気なんかないんだろ?」

 

「勿論よ!わたしを誰だと思っているの?わたしは元西風隠密機動部隊の【鉄の乙女(アイアンメイデン)】佐野涼花なのよ」

 

「愚問だったな幸斗、何故なら俺達は」

 

「ああ、わかっているぜ!」

 

「「「道理を叩き潰して運命をブッ飛ばす!!それがオレ(わたし)(俺)達【西風】だ!!!」」」

 

三人の心が一つとなり気合を入れて幸斗と涼花は交代するようにハイタッチを交わして涼花はバトルフィールドに上がって行った。

 

『そして次に現れたのはこちらも期待のルーキーである【月花の錬金術師】の二つ名を持つEランク騎士!佐野涼花選手だぁああっ!!前回の試合であの【無冠の剣王】が大苦戦をした【狩人】桐原選手の【狩人の森(エリア・インビジブル)】をリング全体に砂鉄をばら撒いて足跡を辿るという画期的な方法で破り頭角を現した可憐な華!ここまでの選抜戦の対戦成績は先程も言った通り九戦九勝無敗の素晴らしい成績を残しています!』

 

ステラの20m前に涼花は立って向かい合い、辺りの空気が二人の闘気と会場の大歓声によりヒートアップしていた。

 

「アンタ、確かリョウカっていったわね・・・悪いけどアンタの快進撃もここまでよ!」

 

「ご苦労なことね皇女サマ、心配無用よ!勝つのはわたしなんだからね!!」

 

「傅きなさい!妃竜の罪剣(レーヴァテイン)!!」

 

「希望(ゆめ)を創り出せ!鉄の伯爵(アイゼングラーフ)!!」

 

『さあお互いに固有霊装(デバイス)を顕現させて構えた!この試合、ヴァーミリオン選手が勝って自身の七星剣武祭代表入りの可能性を繋ぐのか!?それとも佐野選手が勝利して【狩人】に続いて【紅蓮の皇女】にもとどめを刺すのか!?それでは皆さんご唱和ください!』

 

『LET's GO AHEAD(試合開始)!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ジャ◯アンのパンチは約6tだとどこかの検証番組で言っていたが・・・。

では10tの一撃を霊装ごと粉砕してCランク伐刀者の顔面を陥没させてブッ飛ばした幸斗のパンチはいったい(汗)・・・。




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