運命を覆す伐刀者   作:蒼空の魔導書

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活動報告にも書きましたが、原作10刊の序盤を見て『日米学生騎士交流戦』編は原作設定的に無理があると判断したのでストーリーを変更してこの第六話から書き直しました。

読者の皆さんには迷惑をかけてしまい本当に申し訳ありませんでした。




如月兄弟との邂逅と重勝の裏切りの理由

一ヶ月前に破軍学園の近くにある大型のショッピングモールでテロリスト【解放軍(リベリオン)】による襲撃事件があり、この事件は一輝達の活躍によって解決していて、この休日の夕方に幸斗達は重勝の数少ない友人である【序列三位】で《空間土竜(ディメンショナルモール)》と呼ばれているBランク伐刀者《如月烈(きさらぎ れつ)》を誘ってこの場所の三階にある定食屋で夕食を取っていた。

 

「「・・・・・・・・」」

 

「ん?どうしたんだいおふたりさん?そんなふうに気分悪そうな表情で見つめられると食べ辛いってリユウなんだけど」

 

「そりゃあそうだろ・・・」

 

自分の黒髪のアホ毛を弄りながら自分が注文したサンマ定食のライス・味噌汁・サンマの全てに自分がいつも携帯している【MY焼肉のタレ】を満遍なくかけるという悍ましい行為をしている烈を気持ち悪そうに見つめている幸斗と涼花、烈はかなりの変食家のようだ。

 

「マヨラーとかなら聞いたことがあるが何なんだよそれ?」

 

「ジャ◯だが」

 

「そういうこと聞いてんじゃねーよ、それが変だっつってんだよ」

 

「変じゃないぞ、ジャ◯は何にでも合うように作られているってリユウだ」

 

なんでもかんでも焼肉のタレをかけて食べることを変だと重勝は言うが烈はそれを否定する。まあ、好みは人それぞれなので三人はこれ以上なにも言わずに食事を始めて雑談をする。

 

「ところで真田、あの【紅蓮の皇女】を倒したそうだな、メッチャ話題になっているから気になってたんだが皇女様の事はどう思った?」

 

「ん?はい、かなり強かったと思うがオレには七星剣武祭でブッ倒したい奴がいるんだ、ヴァーミリオンにはク◯ーバー王国から遥々留学して来てんのに悪いけどオレだって譲れなかったんでな」

 

「ヴァーミリオン皇国よお馬鹿、確かにブ◯ックク◯ーバーのあの兄弟も紅蓮で炎で王族でヴァーミリオンだけど」

 

「・・・・そういえばお前倒したい【龍】って言っていたけれどひょっとして巨門学園の大型新人(スーパールーキー)の《蒼雷龍(ブルーライトニングドラゴン)》か?」

 

「!!・・・知ってるんですか!?アイツの事」

 

「ああ、摸擬戦で《氷の冷笑》を瞬殺したって噂を聞いたってリユウだ」

 

「アイツ・・・へっ!上等だぜ!」

 

「やる気になるのはいいがドカドカ龍殺剣ブッ放すなよ幸斗、命がいくつあってもたりねーしな」

 

「ああ、あれとんでもなかったな、あの皇女様じゃなかったら塵になってたってリユウみたいだしな」

 

「それだけでもAランクが規格外だって事がわかるわねホント」

 

「そうだな・・・ところで佐野、お前この前の狩人との試合の影響で《月花の錬金術師》って二つ名が付いたリユウなのは知っているのか?」

 

「・・・何よその二つ名・・・」

 

「俺も聞いたなそれ、確かに姫ッチは【鉄化(エンダーンアイゼン)】で手拭いを鉄化してそこらの火で焙って一瞬で色んな武器作ったりするから錬金術師っぽいな、ハハハハハ!」

 

こんな感じで雑談をして盛り上がっていた。

 

「ついでに思ったんだが姫ッチ、お前その格好寒くないのか?」

 

「動きやすい格好で来たんだけれどね、まあ問題ないわ」

 

幸斗達は学園が休みなので今日は私服で来ている、涼花の今の服装はピンク色のノースリーブタンクトップと青いホットパンツ姿だ(当然左腕には無数の手拭いを巻いている)、現在は五月であり少しずつ暖かくなってきてはいるものの涼花の服装は真夏にする格好であった為に重勝は心配していたが涼花は気にしていない。

 

「目のやり場の問題なんだがな・・・・・スマン、ちょっと便所行ってくる」

 

重勝は席を立ってトイレに行った。すると幸斗と涼花はアイコンタクトで意思疎通をしてから烈に尋ねた。

 

「なあ烈先輩、聞きたい事があるんだけど」

 

「ん、何?」

 

「この前シゲと生徒会長さんがもめていたんだ、だからなにがあったのか教えてほしい」

 

真剣な表情で烈に頼む幸斗、彼が言ったのはこの前の重勝と刀華と泡沫とのやりとりだ、重勝は二人に何でもないと言ったがそれは二人に余計に心配させるだけだったのだ。

 

「・・・・・そうだな、まずは去年の七星剣武祭で風間は【辞退】じゃなくて【サボって不戦敗になった】リユウを話させてもらうぞ」

 

どうやら烈は教えてくれるようだ。

 

「去年風間は七星剣武祭で戦いたい伐刀者がいたらしいが、七星剣武祭開幕の前々日に開かれる出場選手達を招いた立食パーティーの時にその伐刀者は代表に選ばれなかったって事を知ったってリユウだな、そいつはその時三年だったらしいから風間が今回の学内選抜戦にエントリーしているリユウはわからないがその時はそんなリユウで風間はやる気をなくしてサボったんだ」

 

「・・・・重勝の性格を考えたらそうでしょうね、アイツは自分がやる価値が無いと思ったら絶対にやらないからね・・・それで?それが生徒会長さんとの険悪な関係の理由はなんなの?」

 

「まず破軍学園での順位は公式戦での成績で決まる事は知っているな?風間は破軍学園に入学してからその不戦敗を除けば公式戦、摸擬戦、学生イベント戦と敗北したことが無い無敵の序列一位(エース)なんて去年の七星剣武祭の前まではそう呼ばれていた破軍の英雄だったんだが・・・」

 

————英雄とかシゲのガラじゃねえな・・・。

 

————絶対嫌がってたわね、その呼び名。

 

「そんなリユウで風間は学園中から期待されていたんだ、奴なら《七星剣王》になれる、破軍を七星の頂きへと連れて行ってくれるってな、だけど風間はその期待を最悪な形で裏切った為に学園中から非難されたってリユウだ。特に東堂は風間をライバル視していた上に責任と人の想いを背負う重みを何よりも大事にする真面目大王だったからな・・・」

 

「つまり、生徒会長さんは学園の期待を裏切ったシゲが許せなかったって事?」

 

「そうだな、ただ東堂は自分の価値観を人に無理矢理押し付けるような奴じゃない、恐らくそれ以外にもライバル視していた風間と戦う事を楽しみにしていたのにそれも無下にされた事や自分が七星剣王になれなくて皆の期待を果たすことができなかった事なんかで気が動転していたってリユウだろうな、どうせアイツ東堂にサボったリユウを話してないんだろうしな、そんなリユウで東堂は風間に摸擬戦形式で決闘を挑んだんだが・・・」

 

烈は何を思い出したのか、気まずそうな表情で話しを続ける。

 

「これが一方的な試合でな・・・風間は試合開始すぐに【零か無限(ゼロ・オア・インフィニティ)】を使って空中を飛行して制空権をとってな、それから空中から一方的に重力エネルギーの魔弾や砲撃を容赦なく乱射して東堂は逃げ回りながら雷撃をちまちま放って牽制することしかできなかったってリユウだな、いくら東堂が《閃理眼(リバースサイト)》で相手の身体に流れる伝達信号(インパルス)を感じ取って相手の動きが読めるからといっても制空権を取られている上に自分の身体能力で対処しきれない程の弾幕を撃ってこられたらどうしようもないからな・・・」

 

空を飛べるというのはある意味桐原静矢の【狩人の森(エリア・インビジブル)】より厄介だ、大体の伐刀者は制空権を取られただけで行動が制限されてしまい、《身体強化系》の能力しか使えない伐刀者に至っては何もできずにただ一方的に空から爆撃されるだけという圧倒的なアドバンテージを得るからだ。

 

「・・・それだけならまだ良かったんだが・・・【あの止め】はえげつなかったな・・・」

 

「幸斗の龍殺剣よりはマシだ」

 

「「「シゲ(重勝)(風間)!?」」」

 

いつの間にか重勝がトイレから戻って来ていた。

 

「人が目を離している隙に勝手にベラベラと人の過去を話しやがって」

 

「黙ってても無駄だと思うぞ、この二人の眼はなんとしてでも目的を果たそうって眼だ、ここで話さなかったら学園のデータベースにでもハッキングするとかのアホな行動をしそうだったから話したってリユウだ」

 

「・・・・幸斗はともかく姫ッチはできそうだな・・・はぁ・・・仕方ねーか」

 

「・・・つまり生徒会長さんは重勝が学園中の期待を裏切った上にそんな戦い方をされて負けたから恨んでいるって事なの?」

 

「それは無いな、アイツは一流の伐刀者だぜ、戦いに卑怯だの難癖つけるような三流とは違う、そう言った奴等は無理だと決めつけて今回の選抜戦にエントリーしていないザコ共だけだ」

 

「じゃあ何でだ?」

 

「東堂は責任感の強い奴だからな・・・たぶん焦ってんだろ?生徒会長としても学園中から期待を背負った身としても、自分が何とかしなければいけない、この現状を変えなければいけないってな」

 

大勢の人達の想いの重みを背負う【善意】、これが東堂刀華の強さだ、しかしそれ故に何かあったら他人よりも自分を戒めるのだ、つまり七星剣武祭で負け続けている破軍学園の現状を変えようと必死になっている為に重勝に勝たなければいけないと思っているのだ。

 

「これでいいだろ、それよりも烈、お前は今日弟が迎えに来るって言ってたよな?」

 

「ああ、多分そろそr「烈、また焼肉のタレをかけて食っているのか?」・・・噂をすれば来たな」

 

そろそろ話を終わりにしてこの場を解散しようかと思ったその時、定食屋の暖簾を潜って入店して来た一人の少年が幸斗達の前にやって来て呆れたように烈に話しかけて来た。

 

その少年は165cmぐらいの低身長で蒼い袴を履いていてそれと同じ色の甚平を着ていてその上から紅い上着を着ているという変わった服装であり、整った黒髪が夜に良く合っていて中性的な顔立ちだが可愛いと言うより凛々しいと言った感じの不愛想な雰囲気であり、水晶の様に綺麗に透き通った蒼い眼はまるで全てを見通すかのような神秘的な印象を感じた。

 

「前から言っているだろう【絶】ジャ◯は何にでも合うように作られているリユウだって」

 

「そう感じるのは貴様だけだ」

 

【絶】と呼ばれた少年は烈の言葉を無情に否定する、どうやら彼が烈の弟のようだ。

 

—————ん?コイツどこかで・・・。

 

幸斗は絶を見てどこかで会ったような気がした、なんとか思い出そうとそのスッカラカンな頭を振り絞ろうとするが、その前に涼花が絶に話し掛けた。

 

「こんにちは・・・いえ、もうこんばんわの時間ね《如月絶(きさらぎ ぜつ)》君」

 

「・・・ああ、まさかこんなところでクラスメイトと会うとはな・・・」

 

「は!?クラスメイト!?」

 

絶は幸斗と涼花と同じ一年二組のクラスメイトだった。

 

「・・・・何故驚いている真田?まさかクラスメイトの顔も覚えていないわけではあるまい」

 

「・・・きっとそのまさかよ、このお馬鹿は親しい人間と剣を交えた人間の事しか覚えられないんだから」

 

「・・・・・・」

 

クラスメイトの顔すら覚えていない幸斗に対して押し黙ってしまう絶、あまりのお馬鹿さに呆れてしまったのだ。

 

静寂が辺りを流れて数秒経ったその時、幸斗と涼花と重勝の生徒手帳から同時に着信音が鳴ったので三人は生徒手帳をポケットから取り出してディスプレイを見た、送信者は《選抜戦実行委員会》からだ。

 

「・・・・へっ!面白そうな相手じゃんか!名前的に強そうだし」

 

「・・・・ふっ!ランクも圧倒的に上だし能力の相性も最悪の相手ね・・・でも、だからこそ倒し甲斐があるわ」

 

「・・・・・・アイツか・・・」

 

選抜戦実行委員会からのメールということは次の対戦相手が決まったということだ、幸斗と涼花と重勝はそれぞれディスプレイに表示された対戦相手を見て三者三様の想いを馳せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『真田幸斗様の選抜戦第十試合の相手は、二年二組・《砕城雷(さいじょう いかずち)》様に決定しました』

 

 

『佐野涼花様の選抜戦第十試合の相手は、一年一組・ステラ・ヴァーミリオン様に決定しました』

 

 

『風間重勝様の選抜戦第十試合の相手は、三年三組・《貴徳原カナタ(とうとくばら かなた)》様に決定しました』

 

どうやら第十戦目も波乱を呼ぶ試合となりそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




破軍学園壁新聞(再販)


佐野涼花

PROFILE

所属:破軍学園一年二組

伐刀者ランク:E

伐刀絶技:鉄化(エンダーンアイゼン)

二つ名:月花の錬金術師

人物概要:ちょっぴり毒舌な戦術家

ステイタス

攻撃力:F

防御力:E

魔力量:D

魔力制御:D

身体能力:A

運:C


かがみんチェック!

いつも不機嫌そうだけど小柄でピンクブロンドがカワイイ女の子!、彼女の能力は指貫グローブ型の霊装【鉄の伯爵(アイゼングラーフ)】で触れた生物以外の物を何でも鉄に変えてしまう【鉄化(エンダーンアイゼン)】!、この能力と並外れた身体能力で相手を自分の戦術に嵌めるのが彼女の十八番なんだって!その為なら何でもするみたいだけど・・・・・この前の桐原先輩に対する罵倒の数々は自業自得とはいえ流石にかわいそうに思ったかな(汗)・・・。

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