それで五十話達成を記念した企画を実施したいとおもいます!詳しくはあとがきにて!!
刀華と子供達を連れて重勝がやって来た場所は破軍学園の敷地から少し離れたところにある林、その中央に大きな穴が開いたみたいに存在している円形の湖の南側の畔から数メートルに渡って湖の内側に架けられている桟橋付近であった。
「うわぁ~」
「すごく・・・大きいね~」
「それにキレー!宝石箱みたいにキラキラしてるー♪」
水底が視認できる程水が透き通っていて雄大な湖を前にした子供達が感動のあまりはしゃいでいる。その隣で重勝が少し誇らし気に微笑してから足を前に踏み出して桟橋に向かい歩き出した、その左手には一振りの木刀が握られている。
「ふ~んふん、ふふふ~ん、ふ~ん♪」
「・・・風間さん、こんな場所に連れて来て一体今から私達に何を見せるというんですか?」
「ん?決まってんだろ?【水切(みずきり)】をやるんだよ」
木刀を左肩に担いで鼻歌を歌いながら桟橋の上を軽やかな足取りで歩く重勝の背中を刀華は怪訝な目で見つめて気になって仕方がない事を口にする。
それに対して重勝がこれからやると返答した【水切】とは剣や手刀の一振りを水面に振り下ろし、その風圧をもって水面を両断するという素振りのトレーニング法である。これはスイングの速さと鋭さと振り下ろす角度の精密さが要求され、水が割れる規模を測る事によってその一振りの威力が明確に表れる、故に剣による一撃の速度と威力を他者に示すのに【水切】はまさに打って付けと言えるだろう。
「成程、確かにそれなら【雷切】と比較する事が可能でしょうね・・・ですが風間さん、本当に魔力を使わずに雷切を超えるつもりでいるんですか?」
「ああもちろんだ、俺はできない事は言わねー主義なんでな」
「つまらない冗談ですね。言っておきますが私は【雷切】を完成させた当時、水切をやってその威力を測った事がありました」
自分の自慢の必殺技である雷切を軽々しく超えられると言う重勝にムッときた刀華は水切で雷切の威力を試した時の事を語り出す。
「雷切は居合いなので水面の上を薙ぎ払うという正規の水切とは若干異なる方法でやらざるを得ませんでしたが、その時に発生した衝撃波は水面どころか手前の水底まで削り取り、この湖の約三分の一の水を吹き飛ばしています。驕っているつもりはありませんが、幾ら風間さんでも魔力を使わずに私の雷切を超えられるとは到底思えません。これを聞いてもまだ超えると言い張るんですか?」
「うるせーな、いいから黙って見ていろよ。やってみれば判るんだからよ」
刀華の言う事を鬱陶しそうに跳ね除けながら重勝は桟橋の最端に立ち湖の先を見定める。
「それじゃ———いくぜ・・・」
肩に担いでいた木刀を正面に翳し切っ先を向こう岸に向けてそう言うと重勝の飄々とした雰囲気が真剣なものに変わった。夏なのに木枯らしが吹くような錯覚を感じさせて周囲に緊張が走る、夜空のような黒い瞳で湖の先を見据える重勝の背中を刀華が固唾を呑んで見守っており、先程まではしゃいでいた子供達も今は重勝が何をはじめるのか興味津々にしていてワクワクとその一挙手一投足を見つめている。
———魔力が発せられる感じはしない・・・本当に素で雷切を超えるつもりでいるみたいですね・・・。
超えられる筈がない・・・そう思う刀華であったが、この【裏切り者の序列一位】風間重勝という男はいつだって何をしでかすか判らない人だ。
【無敵のエース】と呼ばれた時代もその英雄ぶりが気に喰わずに突然挑み掛かってきた上級生全員を一分も掛からずに鎮圧してその全員を【罵ってください】と書かれた看板を付けて校舎の屋上に吊るしたり、突然授業をサボッたと思ったら学園敷地内にステルス能力を使って潜伏していた伐刀者の野盗を見つけ出して叩きのめしヒヨコの着ぐるみを着せて鶏小屋に放り込んで拘束し見世物にするなど、彼のやる事はいつだって予測不能でブッ飛んでいた。
そんな重勝がハッタリを言うだけ言って結局ハッタリだけであるなんて事は刀華には考えられなくて【もしかしたら】と一瞬脳裏に過ぎった瞬間・・・沈黙は破られるのだった。
「ふっ———」
そんな掛け声が小さく聴こえて来た瞬間、刀華は時が止まったかのような感覚に襲われた。
———なっ!!?木刀を持っている風間さんの左腕が・・・消えた?
今刀華が立っている位置は重勝の真後ろにいる子供達より少し左側である為、木刀を持った重勝の左腕が斜め後ろからギリギリ視認する事ができる。従って重勝が技を放つ瞬間を認識する事ができ、刀華が目の当たりにしたのは正面の湖に木刀を翳していた筈の重勝の左上腕部から先が突然複数の残像を残して一瞬木刀ごと消滅するという不可解な現象であった為に彼女は目を丸くして驚愕と困惑を露わにしたのだった。
・・・そして時は動き出す・・・刹那、重勝の目の前の水面が水飛沫を上げて爆砕され、それが奥に道が伸びるように次々と連鎖的に強烈な水飛沫が吹き上がっていく。
「「「「おおおおおぉぉおおおっ!!!」」」」
「「「「キャアアアアアアアアッ!!!」」」」
爆発的に鮮烈な現象に冒険心の強い男の子達が歓喜の声をあげ、吹き荒れる暴風と降り注ぐ水飛沫に晒されて女の子達が悲鳴をあげる。一直線状に伸びる水飛沫は一秒も掛からずにほぼ一瞬で最奥の対岸まで行き届き、激突すると共に天に達する程の高さの水柱が爆発するように聳え立った。
「———《閃光剣(せんこうけん)》・・・なーんてなっ!」
「ぁ・・・あ・・・」
若干恰好を付けて技名を明かす重勝の後ろで刀華は開いた口が塞がらなく唖然と対岸まで一直線に割れた湖を直視している。それはまるでモーゼが大海を割ったかのような光景であり、水底の水までもが幻想的な水壁となって左右に分断され、開通した砂利道の大通りが湖の向こう側にまで伸びていたのだから驚愕するのも無理はない。
そして数秒後には空いた穴を埋めるように元の静寂で豊かな湖へと直り、未だに興奮冷めやらぬ子供達は一斉にワイワイと重勝に詰め寄るのだった。
「すっげぇぇぇぇえええっ!!今のどうやったの!?」
「湖の水がパカッと二つに割れちゃったよぉ!」
「うん!まるで神様みたいだった!!」
「ねぇお兄ちゃん、今の本当に魔力を使わなかったの?」
すると重勝は——
「ん?まあな。お前達には言ってもまだ解んねーかもしれねーが、今のは剣を振り出す瞬間に一瞬だけ脳のリミッターを解放してその時に出るチカラを全部集中的に振る腕に使ってその一瞬の剣速を極限まで撥ね上げたんだよ」
と若干ニヤけながら説明をするのだが当然子供達は説明の意味が分からなかったらしく、可愛らしく首を傾げた。
「何それー?全然わからないんだけどー!」
「だよな・・・まあ簡単に言うと【火事場のバカヂカラで剣を超速く振った】って訳さ。だから今すぐは無理だけど頑張ればお前達もコレができるようになるかもしれねーぞ?」
「マジ!?」
「ああ。さっきも言ったように保証はできねーけど、努力次第だな」
【努力を頑張れば将来できるかもしれない】という重勝の言葉に「ヤッホウ!」と飛び跳ねて歓喜を露わにする子供達・・・だがこれは並の努力でできる技ではない。
重勝が今放った【閃光剣】は本来なら彼の重力操作能力の斥力をもって得物を振るう腕を極限まで高速化する伐刀絶技なのだが、彼は今言った通りの方法で魔力を使わずしてそれと全く同じ速度と威力を再現してみせた。
常人や並の伐刀者どころか一流の魔導騎士にすら剣の振りを視認する事が不可能なそれは黒鉄一輝のオリジナル剣技の一つ、第七の秘剣《雷光(らいこう)》に近い一振りなのだが、この一振りは一瞬の全力を振るう腕だけにチカラを集束し、尚且つ脳のリミッターを瞬間的に解放した事で一瞬だけ極限まで跳ね上がった筋力を完全に制御して真っ直ぐ一閃を放つ事により空気を容易く切り裂き雷すらも超越する閃光の剣を実現する。故に【閃光剣】。
———凄い・・・剣速そのものは私の雷切の方がほんの少しだけ速いような気がするけれどその差は殆ど無いかもしれないし、威力に至っては間違いなく雷切を超えていると言っていい。それに見た感じだと今の技には構えが無い、それはつまり剣さえ手に持っていればどういう体勢からでも今の技を繰り出せるという事・・・もし私と風間さんが試合をして【雷切】と【閃光剣】で真っ向勝負をした場合、ほんの少しでも剣を抜くタイミングが風間さんの振るう砲剣より遅れてしまったら確実に私は・・・・・負ける。
大はしゃぎの子供達に囲まれてそれに軽く対応をする重勝の姿を刀華は後ろで内心戸惑いを覚えながら見つめていた。彼女は重勝の閃光剣の凄まじさを目の当たりにして咄嗟に想像してしまったのだ、自分の雷切が重勝の閃光剣に敗れて自分が重黒の砲剣に斬り伏せられる場面を・・・。
———・・・やっぱり遠いな・・・私は風間さんを倒す為にこの一年間必死に修練に励み、彼をこの大空から引き摺り下ろす為の新たな伐刀絶技まで編み出して、先日までその背中はもう手の届くところにあるだろうと思っていたけれど———
実際はその差は全然縮まってなどいなかった・・・それどころか彼の閃光の一振りを目の当たりにして更に差を広げられてしまったとすら思ってしまった・・・これでは何の為に自分はこの一年間必死に頑張ってきたのか分からない。刀華はそんな悲愴な感情を噛み締めて前を見た。
「よぉしっ!超努力して将来絶対に凄い魔導騎士になるぞぉぉーーーっ!!」
「あたしはお花屋さん!」
「おれはパイロットになって飛行機で空を自由に飛び回るんだ!」
「「「「がんばろーーー!おおーーーーーーっ!!!」」」」
そこには子供達の笑顔がある。みんなが自分の理想とする未来を目指してこの空に羽ばたこうとしている。
「護りたい・・・どんなに理想を否定されてもやっぱり私は人が安心して自分の道を進めるような未来を造っていきたい!」
それは思わず声に出ていた・・・これは刀華が心から抱く本心そのものだ。
破軍学園生徒会長【雷切】東堂刀華の慈愛の心はこれから未来(さき)も変わる事はないのだろう、それは揺らぎのない強さだ、失っていいものでは断じてない・・・しかし、それだけではこの大空に手が届く事は無いのもまた事実。
「だけどそれだけじゃ駄目なの、遥か彼方の空に届く為には想いもチカラも不十分。私はそれを満たす為の切っ掛けが欲しい、だから———」
刹那、必死に求めるように空に手を伸ばす刀華の呟きを遮るように、湖の周囲の木々に留まっていた鳥達が一斉に音を立てて空へと羽ばたき出した。
色取りどりの無数の鳥達が蒼穹の空に独特な絵画を描き彼方へと翔けて行く。なんと壮観な光景であろうか、将来の自分を妄想して浮かれ跳び回っていた子供達もその美しさに目を奪われて空を見上げていた。
「うおぉー!」
「鳥さんがいーーーっぱいだぁ」
「キャッキャッ!凄いすご~い!!」
皆幻想的に彩られていく大空に感動している、あの重勝でさえも「へっ!」という笑みを浮かべて飛んで行く鳥達を眺めてしまう程だ。
「おーおー、よく飛ぶな!あんなに高くまで飛んでアイツ等いったい何を考えているんだろーな?」
額に手の横を当てて飛んで行く鳥達を見上げる重勝が何気なくそう呟いた。すると彼の横で同じように空を見上げていたタケシがなんの疑問も迷いもなくそれに答える。
「きっと空高くまで飛びたいからだよ!」
「ん?なんでそう思うんだよ?」
「だって飛びたいと思わなかったら飛ばないでしょ?おれだって魔導騎士になりたいからそれを目指して頑張っているんだし」
———・・・・えっ!?
気付けば刀華は重勝とタケシの会話に耳を傾けていた、その会話の内容がおもいっきり重勝が自分に課した課題と同じもので、しかも自分よりもずっと歳下の少年がアッサリとそれに答えていたからだ。
【鳥は飛びたいから空を飛ぶ】・・・タケシが言った答えはあまりにも短絡的で清々しい程単純だが真っ直ぐ過ぎるくらい純粋な回答であった。
「ふーん、【飛びたいから】な・・・・・へへっ!」
「あ、笑ったなっ!何が可笑しいんだよ!?」
「いや悪りーな、別に馬鹿にして笑った訳じゃねーんだ。ただ、俺のダチと同じ事を言うもんだからつい・・・な」
「・・・・・」
重勝が嘲笑したと勘違いをして頬をプンプンと膨らませて怒るタケシを重勝が両手で押すようなジェスチャーをして宥める姿を眺めて刀華は気が抜けるようにポカンとする。
「へっ!良いじゃねーか、好きだぜそういうの。単純明快で分かり易い、バカっぽいけど素直な気持ちが前面に押し出されていて【空を飛ぶ】という行動理念がハッキリとしているな」
「バカっぽいって言~う~な~よ~!」
「ははっ!別に悪い事じゃねーと思うぜ?こういうのは利口ぶって頭を固くして難しく考えるより、バカみたいに自分の思ったままの事を信じた方がいーんだよ。だって———
————偏見や常識に当てはめて考えた事を【決めつける】よりも自分の想いを【信じる】方が人っていうやつはチカラを発揮するもんだからな。そういう人間はいろんな意味で強いんだよ」
「・・・ぁ・・・」
タケシにポカポカと叩かれている重勝が何気なく放った言い草を耳にした瞬間、こんがらがった糸が解けるような感覚が刀華の脳内に齎された。悩みのあまり強張っていた顔が柔らかになり、凝り固まった考えばかりしていた所為で常に寄り固まってしまっていた眉間のシワも消えていく・・・。
———そうか・・・私、難しく考え過ぎていたんだ・・・。
重勝とタケシから視線を外して再び空を見上げ、刀華はそう思い耽る。
実は幸斗VS烈の試合が行われたあの日の夜、彼女は副会長である泡沫に重勝が課した課題の解答について相談をしたのだが———
『あんな奴が出してきた課題なんてやる必要ないのに、刀華は真面目だなぁ・・・・・そもそも鳥が空を飛ぶ理由の答えなんて決まっているだろ?鳥はね、飛ばなくちゃいけないんだよ。何故なら彼等は空を飛ぶ事ができる翼を持っている、だから彼等にとって空を飛ぶ事とは生まれ持った使命なのさ。映画とかで言ってただろ?【大いなるチカラを持つ者には大いなる責任が伴う】ってさ☆、チカラを持つからにはそのチカラを使ってやれるべき事をやる、それが【チカラを持つ者が背負うべき責任】ってものだぜ☆』
と、どこまでも刀華の持つ【人の想いを背負う強さ】を絶対視してそれに依存している泡沫は【翼を持っているならば飛ばなければならない】という道理的な事を言っていた。それは世の中から見れば正しい答えなのかもしれないが、刀華はどうにもそれは自身が思う答えとは少々ズレている気がしてならなかった・・・人の想いと責任を背負う事は当然大切だと思ってはいるがそうではないのだ。
———風間さんは私・・・東堂刀華自身が導き出す答えを求めているんだ。だから【責任】なんて言葉で言い訳しちゃいけない、【純粋な本当の気持ち】で答えを導き出さなければいけなかったんだよね・・・今、やっと解ったよ。合宿場の山奥の横穴で真田君が言っていた【本能】・・・【純粋な本心】で相手にぶつかる事の意味が。
『確かに他人のチカラになるってのも会長さんの本心なんだろうよ、だがそれは周りを見て抱いた【理性的な本心】じゃねぇか、オレが言ってんのは自分(テメー)の魂の奥底から湧き出る想い・・・【本能で抱いた本心】の事を言っているんだ』
『オレは自分の教官だった男の剥き出しの本心によって救われたんだ、内に秘めた自分(テメー)の本心をブチ撒けたら相手を傷つけるかもしれねぇ、そうじゃなくともそれを聴いた第三者に失望されるかもしれねぇ、けどそんなものにビビッてたんじゃあ遠い空に剣は届かねぇぜ・・・生徒会長さん、アンタ有るんだろう?その男にぶつけたい本心ってやつが・・・【善意】や【責任感】なんて理性からの本心じゃねぇ、魂の奥底に眠る【純粋な本心】ってやつがよ』
———そう、確かに私には風間さんに戦いでぶつけたい本当の想いがある、だけどそれは私が彼の前に剣を持って立った時に言うべき事だから・・・だから今はそこを目指してただ進もう——
自分の【本能で抱く想い】をもって・・・難しく考えて正しいものを決めつける必要はない、あの子供達のように自分の純粋な想いを信じれば良いのだから・・・。
【鳥は何故空を飛ぶのか?】・・・彼女の答えはもう、決まっていた。
タケシ等子供達と別れを告げ、重勝と刀華は破軍学園の敷地内に戻って来た。
時刻は丁度午前七時、約束の時間だ。二人は約束の場所である林の休憩所の木の下で互いに面と向かい合っていた。
「それじゃあ聞かせてもらうぜ。お前の思う【鳥が空を飛ぶ理由】をよ」
「・・・はい」
重勝が隠している真実を知る為に、刀華は純粋な想いで答え出す。
「私は最初、鳥が空を飛ぶ事は飛ぶ能力を持った鳥の責任だと思っていました・・・ですが責任というならば親鳥は空を飛ぶ事のできない雛鳥を護る義務がある筈です」
それは弱き者を護る事、チカラを持つ者に生じる義務・・・。
「そこで私は【自分がもし親鳥だったら】と考えました。私は・・・雛鳥達が空を飛べるようになるまで彼等を護りたい、そして見届けたいと思いました、彼等が巣から飛び出して大空を舞うその瞬間まで・・・」
だが彼女の言う義務とは人の摂理から来る強制ではない、自分自身で決めた成すべき事である。
「だから私はこう思います———鳥は【雛鳥達が巣立って行くその時まで、彼等を上から見守る為】に空を飛ぶのだと!」
自身の豊満な胸の上に右掌を当て、目の前に立つ裏切り者の少年の瞳を正直な意志を秘めた眼で真っ直ぐと見つめて刀華はチカラ強くその答えを伝えきった。これが【雷切】東堂刀華が導き出した【鳥が空を飛ぶ理由】であった。
「・・・成程な。それがお前の答えか・・・」
「はい・・・」
「ふーん・・・まっ、お前らしいくていいんじゃね?」
ズテッ!何を言われるのか内心で身構えていた刀華は重勝のザックリとした物言いを聞いて思わず足を滑らせてその場で横にコケてしまった(汗)。
制服のスカートが捲れて下半身の恥部を包む桃色のショーツを外部に晒したまま彼女はコケた際に落とした眼鏡を手探りで探し、なんとか眼鏡を探し出した彼女はそれを目に掛け直して不愉快そうに立ち上がって重勝にズンズンと詰め寄った。
「な・ん・で・す・か・そ・の・か・る・さ・はぁぁあああっ!!?」
「おいおい何怒ってんだよ?」
「今のは普通私の答えに対して真剣に感想を言ったり指摘をするところですよね!?何が【お前らしくていいんじゃね?】ですか!!他に何か言う事は!?」
「ねーよ。お前が自分の考えで答えを出したんならどんな内容だろーがよかったんだ、この課題は一種の心理テストのようなものだったからな」
「き、聞いてないですよそんなの!!」
「ん?言ってなかったか?」
「一言も言ってません!やっぱり私を揶揄っていたんですね!!もう頭にきた!轟け、鳴か——」
「それよりお前、スカートが服の裾に引っ掛かってパンツが丸見えだぞ、高三にもなってピンクとか可愛らしいな」
「って、キャァァァアアアアアアッ!!?どこ見ているんですかっ!ふざけるのもいい加減にしてください!!大体貴方は何時も何時も(クドクド)」
「いいからとっととスカート直せよ・・・」
緑生い茂る静寂な林の休憩所が一瞬で騒がしくなった。なんとも締まらない二人なのだろうか、偶然周囲に誰も居なかったからよかったものの、もし誰かがこの休憩所で一休みをしていたら大迷惑だっただろう。
「まったく、散々悩んだのがバカらしくなったじゃない・・・・・さあ!私は貴方の課した課題にちゃんと答えましたよ!約束です、貴方が隠している事を洗い浚い全て白状してください!!」
悩みに悩まされた課題は終わりだ。捲れ上がったスカートを直した刀華は当然のように課題の報酬である【重勝が隠している事実】についての開示を本人に求める。(頬を朱らめて怒鳴るように言ったのは穿いているショーツを見られた事による恥ずかしさが治まりきっていないからである)
「そうだな、約束は約束だし・・・いいぜ、教えてやるよ」
さすがに自分が出した課題に真剣に取り組んで答えた人に対して約束事を破る程重勝は人でなしではない。無論重勝は刀華の要求に応じたのだった。
「まずはそうだな・・・俺が去年の七星剣武祭をサボッた動機でも話すか」
彼がおもむろに語り始めたのは重勝が裏切ったあの日から今まで刀華が一番知りたかったであろう【無敵のエース】の裏切りの真相であった。
「あれは一年の冬休みの時だったな。新しく身に付けた【光翼ノ帝剣(アストラル・ブレイカー)】を完全にモノにする為に極寒の山奥に短期で修行に行こうと北海道に行った際に俺はとある面白い男と出会ったんだ・・・———
———・・・その男の名前は《壱道歩(いちみち あゆむ)》・・・その当時、禄存学園に所属していた俺より学年が一つ上の学生騎士で《雑魚騎士(ザ・ルーザー)》と呼ばれていたEランク伐刀者だ」
今回、重勝が使った【閃光剣】はまたまた彼の容姿モデルである【空戦魔導士候補生の教官】のカナタ・エイジが使う戦技ですが【光翼ノ帝剣(アストラル・ブレイカー)】と同じく繰り出す原理が異なっていたりします。
さて、まえがきでも言いましたが今話をもって【運命を覆す伐刀者】は五十話を達成しました!!(パチパチパチ!)
それを記念して活動報告にて【運命を覆す伐刀者】のキャラクター人気投票を行います!!
詳しい内容は活動報告で!皆さんの投票をお待ちしています!!
※活動報告にも書きましたが感想での投票は無効です。投票は活動報告のコメントにしてください。