運命を覆す伐刀者   作:蒼空の魔導書

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ジャンジャジャ~ン!今明かされる衝撃の真実ぅ!!(某真ゲス風)

倫理委員会が幸斗達傭兵団西風を陥れる為に行った非道な計画の真相が遂に明らかになります!




傭兵団西風壊滅事件の真相

幸斗達がカレーを食べている頃、重勝は先日更識楯無に依頼した【五年前の北九州市最北端の村で起きた大量虐殺事件の黒幕を探る為の国際魔導騎士連盟倫理委員会の身辺調査】の結果報告を聞く為、楯無を破軍学園第一学生寮にある自分の自室に招き入れていた。

 

「流石に仕事が早ぇーな、まだ一週間も経ってねーっていうのに呆れるぜ」

 

「いやーそれほどでもあるわねー、更識の仕事は迅速且つ正確さがモットーですから♪」

 

「だったら生徒会の仕事もこれぐらい真面目にやってくださいよね、この前虚(うつほ)さんが仕事サボった会長の分まで書類整理して【会長が真面目に仕事しない・・・】と小さく愚痴を零していましたよ」

 

重勝はリビングにある椅子に座り、テーブルを挟んで【出来る女】と書かれた扇子を開いて仰ぐ楯無と赤髪ショートヘアーで一見【ボーイッシュな少女】と見間違う程童顔な少年と向かい合って会話していた。

 

「あれはサボったんじゃありませんー!生徒達の活気を上げる為に私が企画した学園イベントを主催していたから忙しかったんですぅー!」

 

「【降参無しの野球拳大会】なんて学園イベントで開催するものじゃありませんよね!?おまけに【優勝者には学園の好きな異性と交際する権利を与える】なんて人権侵害にも程がありますよ!」

 

それだけ真面目に家の仕事を熟せるんだったら生徒会の仕事も真面目にやれと指摘する赤髪の少年に対してワザとらしく不貞腐れて言い訳をする楯無、しかし彼女が最近企画して開催したという学園イベントは学生が行うには些か破廉恥な内容の催し物だった上に優勝賞品が人としての権利から逸脱した内容だったので赤髪の少年は怒りのあまり楯無に文句を叫んだ。

 

話を聞いている限りでは楯無は貪狼学園の生徒会長という立場にも拘らず生徒会の仕事を定期的に放っぽり出して部下に押し付け、自分は突拍子の無い騒動を起こして毎度毎度学園中の生徒達と親睦を深めて楽しんでいるらしく、その所為で貪狼学園生徒会のメンバー達のストレスはマッハで溜まりまくっているという現状のようだったので話を聞いていた重勝は眼を細めて呆れている。

 

「はぁぁ~、まったく会長はいつもいつも・・・ごめんなさい重勝さん、久しぶりに会えたっていうのに見苦しいところを見せてしまって」

 

「ハハハ、なに気にすんなよ【スバル】、元気そう・・・じゃねーみてーだが昔の教え子に会えて俺は嬉しいぞ、久しぶりだな、まさかお前まで来るとは思わなかったぜ」

 

「っ!はいっ!僕も五年振りに尊敬する重勝さんと会えて感激しています!お久しぶりです!昔重勝さんに組んでもらった訓練メニューは一日たりとも欠かしていませんよ♪」

 

気苦労のあまりに溜息を吐き重勝に謝罪をするこの赤髪の少年の名は《美空スバル(みそら すばる)》、貪狼学園一年生で生徒会庶務の役職に就いているこの少年は幸斗と同じ元傭兵団西風【特攻部隊】の隊員だった過去を持ち、教官だった重勝の教え子の一人でもあり、重勝にキラキラした眼差しを向けて会えた事に凄く感激しているのを見ても解る通りスバルは自分の教官であった重勝の事を異常な程尊敬しているのが解る、スバルの発言を聞いて解る通り彼は幸斗にも劣らないくらい真っ直ぐな性格をしているようだ。

 

「へっ、眩しい眼をしやがって、お前は頭は悪いが問題ばかり起こす幸斗と違って昔から人の言う事を真面目に聞いて物事に取り組む優等生だったからなぁ・・・まあ、たぶんその所為で楯無に目を付けられて捕まったんだろーけどな・・・」

 

「学園の旧校舎に低ランクの生徒を連れ込んで酷い事をしていた不良グループを一つ叩き潰したところを会長に目撃されてスカウトという名の脅しをされたんですけどね!」

 

「あら人聞きが悪いわね、原則として学園敷地内では【摸擬戦場などの一定の場所以外での霊装と能力の使用は禁止】なのに無断で霊装を使用していた事を黙認してあげるから私の部下にならない?って交渉しただけよ」

 

「「それを脅しって言うんだ(です)よ・・・」」

 

「さて、それじゃあ本題に入りましょうか♪」

 

この女サラリと流しやがったと重勝とスバルは楯無にジト目を向けるのだが彼女はそんなのお構いなしに話を進める。

 

先程まで不自然な笑顔を取り繕っていた楯無の表情は消えて真剣な顔付きへと変化したので重勝とスバルも同じように真剣モードになって楯無の話に耳を傾けた、これから話す内容は彼等元西風にとって自分達のリーダーを死地に追い遣り、西風を壊滅させた仇が何者なのかが判明する重大な内容だ、一字一句聞き逃す訳にはいかないだろう。

 

「単刀直入に結論を言うと倫理委員会は・・・・・黒よ」

 

楯無は正面の椅子に座る重勝の眼を真っ直ぐ見てそう断言した。

 

「やっぱりな・・・となるとあの出世欲に塗れた連中の事だ、大方世界最強を誇る西風を陥れる事によって大きな手柄を手にするつもりだったんだろうよ、その為にあの【比翼】が日本のどこかに現れるのを見計らってその近辺の人里の人間を暗部を使って皆殺し、んでもって情報操作で比翼に罪を被せて西風にその偽の情報を流し、俺達西風と比翼を対立させ、あわよくば同士討ちを狙った・・・もし比翼が俺達を撃ち洩らしたとしても自分達の不祥事だけを偽って連盟の日本支部に事の顛末を伝える事によって日本の魔導騎士達を動かし、万全を喫した連中が港でボロボロになった俺達を一網打尽にする・・・大体そんなところだろ?」

 

「・・・はぁ、本当に呆れた洞察力ね、倫理委員会が黒幕だって言っただけでそこまで正確に推測するなんて、連盟の日本支部に直接出向いて侵入してまで調べて来た私の立場が無いわ・・・」

 

「れ、連盟に侵入したんですか!?データベースにハッキングを掛けたりしたんじゃなくて?」

 

「そんな後ろめたい記録なんて電子上には残さないわよ、腕利きのハッカーが居れば簡単に情報を抜き取られちゃうからね、倫理委員会の区画である地下十階の書斎から倫理委員会の起こした不祥事の記録が溢れる程保管されていたの、その中から見つけたのよ」

 

楯無は次に言おうとした倫理委員会の不祥事についての内容を重勝が推測だけで完璧に言い当てたので右掌を自分の額に押し当てて呆れた、その時に彼女は連盟に直接侵入した事を洩らしたのでスバルは驚愕した、その後楯無が言った内容が本当ならば彼女は相当優秀な諜報部員だと認識せざるを得ない、流石は対暗部の一族【更識家】だ。

 

「・・・チッ!俺達は奴等の出世欲の為にまんまと嵌められたってわけか・・・西風を舐めやがって・・・」

 

「重勝さん、僕、許せないよ、アイツ等の所為で団長が・・・重勝さんのお父さんが!」

 

「・・・ふぅ・・・まったく、裏でなにこそこそとやってんのかと思ったら、わたし達に黙ってそんな重大な事をやっていたのね重勝」

 

「・・・ってげっ!姫ッチ!?」

 

「涼花ちゃん!?いつの間に?」

 

「あら涼花ちゃん、ごきげんよう♪久しぶりね、元気そうでなによりだわ♪」

 

「お久しぶりね更識の当主サマ、そしてスバル、非常に興味深い話をしているわね、わたしも混ぜてもらうわよ」

 

五年前に西風を陥れて壊滅に追い遣った黒幕である倫理委員会に対し心の奥底から煮え繰り返るような怒りの感情を露わにする重勝とスバル、そんな時に突然室内に居ない筈の少女の声が響いたと思ったらいつの間にか重勝の隣の椅子に涼花が非常に不機嫌な顔をして座っていて濡れ煎餅をかじっていたので、重勝は内密にしていた話を聴かれたのでギョっとし、スバルは涼花が音も無くいつの間にかこの場に現れたので驚いた。

 

楯無だけは平静を保って涼花が普通に入り口から入って来たかのように微笑んで彼女と挨拶を交わしているが内心は———

 

———ちょっ!?脅かさないでよ涼花ちゃん!何でシゲ君といい君達はこうも簡単に私の意識の裏を突いてくるの!?私暗部の人間として自信無くしそうなんだけど!!

 

という感じで動揺しまくっていたが、涼花はそんな楯無の心情など気にも留めず会話に混ざろうとしている、因みに彼女は今涼花の存在を認識した瞬間仰天のあまりもう少しで失禁するところだったみたいだ。

 

———くっ、流石は姫ッチだ、調査報告を聞いてほんの少し気を散らしていたとはいえ俺が意識の死角を突かれるなんてな、やっぱ元隠密機動部隊は伊達じゃねーわ・・・

 

今回の件に係わらせたくなかった涼花に事のあらましを聴かれてしまったので重勝は表面上は無言で平静を保ち続けているが内心は凄く動揺していた。観察眼が非常に優れている涼花はそんな重勝の心情を察したようであり、一度小さく溜息を吐く。

 

「はぁ・・・そんな不満そうな顔したって無駄よ、元西風の一員としてこの件は見過ごせないわ」

 

「姫ッチ・・・」

 

「重勝、わたし達は西風時代にどれだけアンタと一緒に過ごしていたと思っているの?アンタは他人には無関心だけど身内は鬱陶しいくらい大切にする人間なのは知っているわ、そんなアンタの事だからどうせ幸斗とわたしには選抜戦に集中してもらいたいから黙っていたんでしょうけどね」

 

「・・・・」

 

「それならわたしは問題ないわね、進行状況から視るにこの選抜戦は全勝した生徒が代表枠を占めるのはもう確実と言っても過言じゃない、この前の試合で会長さんに負けたわたしは代表入りする事は無いだろうからアンタの心配は無用よ」

 

平静を保って無表情に見つめてくる重勝に自分もこの件に係わらせてほしいと食い下がる涼花、彼女も元西風だ、自分の団を壊滅に追い込んだ仇が判明したというのに当事者の一人である彼女が見過ごせる筈なんてないだろう。

 

「・・・はぁ・・・仕方ねーな、幸斗には黙っていろよ・・・」

 

全く引き下がる気配のない涼花に重勝はとうとう折れた。

 

「言われなくても幸斗にだけは絶対に言うつもりはないわ、あのお馬鹿の事よ、この件を知ったら絶対に単独で連盟に乗り込んで倫理委員会の連中を潰しに行こうとするに決まっているんだから・・・」

 

「それはやめてほしいわね、不本意な事にあんな腐った連中でも日本の伐刀者達を取り締まるのには必要なのよ、完全に潰れたら日本に伐刀者の不正行為者や犯罪者が大幅に増加するでしょうね」

 

「だからと言って出世なんて物の為に僕等を陥れた落とし前を付けない訳にはいきませんよね重勝さん?」

 

「当たり前だ、西風に舐めた喧嘩売りやがったんだ、五年前の後始末はつけねーとな・・・」

 

倫理委員会を物理的に潰すのは重勝達元西風には簡単だ、彼等は昔から連盟の定めた法を無視して自分達の意志で行動して来たので連盟にしがらみなど全くない、伐刀者の秩序が乱れようが崩壊しようがまた昔みたいに自分達の意志で行動するだけなのだから・・・しかし一輝達のような普通の学生騎士や黒乃達のような連盟の魔導騎士にとっては大問題だ、伐刀者の不正を取り締まる人間が不足し秩序が乱れれば増加した犯罪者を取り締まる手が回らなくなるだろうし、そうなったらプロの魔導騎士を目指す学生騎士達も未熟なまま戦場に駆り出されて多くの犠牲を出す事態になる事だろう、それだけは避けたいところだ。

 

しかし西風を汚いやり方で陥れた後始末はつけなければならない、西風は魔導騎士制度法を無視した非合法伐刀者集団なので潰されただけならまだ納得できただろう、だが倫理委員会は彼等を潰す為に罪の無い北九州の村の人々を皆殺しにするという卑劣な行為を行った、しかも動機は出世欲、断じて許す訳にはいかない。

 

「だったらどうするの?組織そのものを叩き潰す訳にはいかないんだし」

 

「俺達を陥れようとしてクソみたいな計画を考えた首謀者が倫理委員会の中にいる筈だ、ソイツを潰す!」

 

「決まりですね・・・会長、北九州の村の人間を皆殺しにして僕達を比翼にぶつけると計画した首謀者は誰なんですか!?」

 

計画を実行したのは倫理委員会であるなら計画を考えた首謀者はその中にいる、当然楯無は卑劣な計画を立てた首謀者についても掴んでいる。

 

「・・・首謀者は————」

 

楯無の口から首謀者の名が語られる、今明かされる五年前の事件の黒幕、その首謀者とは?

 

先程まで快晴だった窓の外は・・・雲行きが怪しくなっていた・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼食のカレーを食べ終えた幸斗達はある程度腹具合が落ち着くのを見計らってから山の散策を始める事にした、引率である刀華が班分けを行ない、砕城を緊急時の為に合宿場に待機させて、彼等は山を登り始める。

 

まず、一輝とステラの班が先行して行き、少し遅れて泡沫と恋々の班が別のルートを進む、そして——

 

「やっぱ野生の蛇はマズイ・・・」

 

「真田君、捕まえた蛇を焼いて食べながら登らないでください、行儀悪いですよ」

 

斜面がきつく草木が生い茂る山林の中を幸斗と刀華の二人が歩く、伐刀者の訓練施設であるこの山の道は険しい上に茂みの中から毒蛇などの危険生物が奇襲して来るのも珍しくはない。

 

だが傭兵時代に何度もサバイバルな状況を乗り越えてきた幸斗にとってはこの程度の山道など苦難の内に入らないようであり、先程の茂みで捕まえたマムシを串に刺しバーナーで良く炙って食しながら余裕そうに山の斜面を登って行くので、彼の数メートル後方から若干きつそうな表情をして斜面を登る刀華が幸斗を行儀が悪いと戒めるのだが、果たしてツッコムのはそれだけでいいのだろうか・・・。

 

「食い物を粗末にする方が行儀悪いと思i——っ!冷て・・・」

 

そんなやり取りをしていると、いつの間にか快晴だった空が雲で覆われていて空からぽつりと雨粒が幸斗の頭上に落ちた。

 

「うわ、雨かよ、面倒だな・・・」

 

「日本は最近亜熱帯化の影響で豪雨(スコール)が多く発生していると聞いたけれど本当のようですね・・・さっき通った道の側に雨宿りできそうな横穴がありました、そこまで引き返しましょう」

 

刀華の提案に従って二人は段々と激しく降って来る雨の中山道を下り横穴がある場所に向かって行く。

 

今回の目的である巨人はまだ見つかっていない、果たして彼等を待ち受ける巨人とはいったい何者なのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




・・・って真相が明らかになると言っておいて肝心の首謀者が誰なのかを仄めかしているじゃん!?(まあ、たぶん読者の皆さんは大体見当が付いていると思いますが)

そして新キャラ【美空スバル】の登場!

彼の容姿イメージはリリなのStrikerSのスバルを性転換させて赤髪にした感じです。



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