運命を覆す伐刀者   作:蒼空の魔導書

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どうも~、新作を書いたりFFⅩⅤをプレイしたりして更新をすっぽかしてました・・・すいません・・・。


この話で遂に二人の【最弱】が知り合います、ではどうぞ!




【最弱】の邂逅

『・・・そうか・・・姫ッチは負けたか・・・』

 

涼花VS刀華の試合終了から約一時間後、幸斗は誰も連れずに一人で学園の校舎内の廊下を生徒手帳を耳に翳し通話しながら歩いていた。

 

『まっ、あの東堂が相手なら順当と言ったところだろうな・・・』

 

「そうか?結構紙一重だったと思うぜ」

 

『だろーな、姫ッチの事だからたぶん【雷切】は攻略したが魔力が足りなくなって降参したってところだろうしな』

 

「・・・シゲ、お前本当に試合観に来ていなかったのか?・・・」

 

幸斗は通話の相手である重勝が試合を観ていないのに憶測だけで試合結果を言い当てた事に驚きを通り越して疑うように呆れる、コイツは予知能力でも持っているのかと・・・。

 

『ハハハハ・・・・んで今姫ッチはどうしているんだ?アイツは選抜戦に腕試し目的でエントリーしていたから落ち込んじゃいねーと思うけど』

 

「涼花なら医務室の再生槽で斬られたトコ治した後に【疲れたから戻って寝るわ】っつって寮に帰った」

 

『だろーな、姫ッチらしいぜ』

 

「ったく・・・シゲ、オレ達の試合を放っぽってまで何してたんだ?」

 

『ん?・・・ああ俺の用事な、お前更識家の当主の事覚えてるか?』

 

「?・・・楯姉(たてねえ)がどうしたんだ?」

 

『・・・覚えてたか、まあお前楯無の事姉のように慕ってたからな・・・・・』

 

重勝は懐かしそうに言うと次にどう言おうか迷っているかのように間を空けてから話を続けだした。

 

『・・・俺の用事ってのは今日その楯無に仕事を手伝うよう頼まれてな、それでお前等にはちょっと悪いと思ったんだが、昔S級テロ組織の殲滅作戦に手を貸してもらった借りもあったから仕方なく手伝っていたんだわ』

 

一応嘘は吐いていない、頼まれたのは会った時だが・・・。

 

重勝は今五年前の西風壊滅の真相を掴む為に動いている事は幸斗達には内密にしている、これは幸斗達に余計な懸念を植え付けて選抜戦に支障を出さないようにする為だ、元教え子達には選抜戦に集中してほしい、重勝はそう願っているのである。

 

『だから悪ぃな』

 

「別にいいけどよ・・・それならそうと言ってから行けよ」

 

『ん?言ってなかったか?』

 

「言ってねぇから!初耳だっての!・・・で?用事は終わったのか?」

 

『まーぼちぼち終わったぜ、夜には学園に戻れると思うから心配すんな♪』

 

「ああ、分かった・・・んじゃまた後で・・・楯姉によろしくな」

 

幸斗はそう言って通話を切り生徒手帳を学生服の内ポケットにしまった。

 

「さてと、夜まで暇だな・・・サティスファクションバーでも買ってくるか・・・」

 

試合以降今日は特に用事がない幸斗はとりあえずアイスでも食うかと思い購買に向かう事にした。

 

————毎度の事だがシゲの奴いつも突拍子も無く何かをやっているんだよな・・・今日の事だって朝に突然【悪りーな、今日学園外に用事があるからお前等の試合観に行けねーや】なんて言いやがったしよ。

 

幸斗はズボンの脇ポケットに両手を突っ込んで廊下を歩きながらさっきまで通話していた自分の元教官の事を想い悩む。いつも飄々としていて捉えどころが無く何を考えているのかよく解らない男だがいつも自分達の成長を手助けしてくれて目標を達成した時は心から祝福してくれる、鳥のように自由奔放で風のように自分達を導き、近いようでどこか遠い、そして蒼い天(そら)のように惹かれる大きな背中で大空のような強さを持った兄のような存在・・・しかしその眼は時々どこか遠い空を見ているように見える、何だかいつか遠い空の彼方へと行ってしまうのではないかという印象と不安を抱いてしまう・・・幸斗は重勝の事を少々危なっかしく思っていた。

 

————シゲのやる事にとやかく言うつもりはねぇが、なんかいつも誤魔化されている気がするんだよな・・・。

 

一体いつも何をやって・・・そう考えたところでT字路となっている場所を横切ろうとした時曲がり角から【変なもの】が現れた。

 

————ん?・・・何だコイツ?プリントの山?

 

天井に着きそうなくらい高く積まれた真っ白な長方形の紙の束を何者かが両手に抱えて運んでいるみたいだ。その何者かは「うん・・・しょ・・・」というキツそうなうめき声を出していて明らかに無理をしているようだ。

 

「あ、危なっかしいわね・・・」

 

「そうだね、手伝ってあげたほうがよさそうだ」

 

たった今幸斗の反対の道から現れた男女もそれを見て不安に思い心配して声を掛けようとしている、紙の山がグラグラと揺れていて見るからに不安定なのだから当然だ、幸斗はその二人に任せておけばいいかと思いさっさと立ち去ろうとしたのだが———

 

「きゃああああああ!」

 

「うわぁあ!?」

 

「ちょっ!?んぶっ!!」

 

男子生徒が声をかけた瞬間に紙の山を持った人物が驚き、つまずいて前に転倒した為に正面から声をかけた男子生徒に大量の紙をぶちまけてしまい、丁度その直線上にいた幸斗も不幸な事に巻き添えをくらい紙の雪崩に飲み込まれて埋もれてしまった・・・。

 

「あーあ、何やってるのよ・・・って!?」

 

「あわわっ!ご、ごめんなさい!前に人がいるなんて思ってなくて!」

 

「いや、こっちこそいきなり声をかけて脅かしてごめn——ぶっ!」

 

「ううっ・・・何なんだよ、気を付けろ・・・・・おい・・・」

 

「あうぅ、めがね・・・めがねどこぉ?」

 

紙の海から這い出た時幸斗の目に入ったのは栗色の三つ編みの女子生徒が四つん這いになりさっきの男子生徒の眼前に純白のショーツに包まれたぷりぷりした尻を突き出して艶めかしく振っている時が凍り付くような衝撃の光景だったので眼を細めた、どうやら栗毛の女子生徒が紙の山を運んでいた張本人らしく倒れた時にスカートが捲れ上がってしまったのだろう、他人が見たら間違いなくあらぬ誤解をしそうな絵面だ。

 

「ちょ、貴女!スカート!スカート捲れてる!」

 

「え?・・・いやぁあああああああっ!!!」

 

男子生徒の連れである紅毛の女子生徒が栗毛の女子生徒に注意すると彼女は羞恥心のあまり悲鳴を上げて慌ててスカートを元に戻した。

 

———・・・間抜けなうえに人騒がせな奴だなオイ、一体どこの誰・・・ん?

 

幸斗は栗毛の女子生徒の両腕両脚に包帯が巻かれているのに気が付いた、なんとも痛々しい姿だ。

 

———おいおい、こんな怪我しててあんなメチャクチャな量のプリントを運んでたのかよ・・・。

 

怪我人に無理させてんじゃねぇよと栗毛の女子生徒に紙の山を運ぶよう指示を出した見知らぬ誰かを軽蔑する幸斗、その時男子生徒と紅毛の女子生徒が痴話喧嘩のように揉めている横で幸斗は床に転がっている丸メガネを見つけて拾い上げた、栗毛の女子生徒の近くに落ちていたところを見るとどうやらこれは彼女の物らしい。

 

———・・・なるほど、さっきの変態行動はこれを探してたんだな・・・。

 

別に初対面の男に眼前で履いているパンツを見せつける痴女じゃなかったんだなと失礼な事を思った幸斗はその栗毛の女子生徒に歩み寄って拾った眼鏡を差し出した。

 

「なあ、さっきからアンタが探していたのってこれだろ?」

 

「あ!そうです!ありがとうございます!これがないと私なんにも見えなく・・・て・・・・・真田君?」

 

「ん?・・・・・生徒会長さん?」

 

眼鏡を受け取った女子生徒と顔を合わせてみるとその女子生徒は幸斗が・・・いや、破軍学園中の生徒達が良く知っている人物にして一時間前に涼花と死闘を演じた上で紙一重で勝利した学園序列二位、【雷切】東堂刀華であった・・・更に———

 

「あ、貴女はもしかして・・・東堂刀華さん!?・・・それに——」

 

「あ、アンタユキトじゃないの!なんでこんなところに?」

 

顔を合わせて固まっている二人の顔を見て男子生徒と紅毛の女子生徒———黒鉄一輝とステラ・ヴァーミリオンが驚きのあまり声を上げていた。

 

「・・・・おいおい、これってどういう顔触れなんだ?・・・」

 

なんて異色な組み合わせだと思った幸斗はそう呟いていた・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とりあえず幸斗と一輝達は紙を運ぶのを手伝う事にした、どうやら刀華は生徒会の仕事に関する資料を生徒会室に運んでいる途中だったらしい、なんでも溜まった仕事を急いで片付ける必要があるらしく涼花との試合での負傷を再生槽でなんとか仕事ができるくらいにまで中途半端に治療し無理して仕事を強行したというこの少女を流石に放ってはおけないだろう、四人は床に散らばった資料を拾い集めてそれを四分割し全員で運ぶという順当な方法で行く事にして現在資料を抱えて生徒会室に向かっているところだ。

 

本当は負傷が治りきっていない刀華の分も自分が持つと一輝が申し出たのだが仕事の全てを他人に任せるのは刀華の責任感が許さないらしく彼女は申し訳なさそうに拒否していた。

 

道中擦れ違う学園の生徒達が刀華に尊敬の眼差しと共に挨拶をしてきてそれを彼女は一人一人丁寧に名前を呼んで対応したり、ステラが幸斗に「来年は絶対にアタシが勝つんだから首を洗って待ってなさいよ!」と啖呵を切ってきたので幸斗が「へっ!そうはいかねぇよ!次も勝つのはオレだ!」と宣言したり、一輝とステラが刀華に涼花との試合の感想を聞いて刀華が気まずそうに答えたりしながら五分程歩いた後、四人は生徒会室の前にたどり着いた。

 

「ふーっ、やっと着いた、生徒会室って意外と遠いのね」

 

「皆さんどうもありがとうございます、ぜひ中でお茶でも飲んでいってください」

 

「じゃあお言葉に甘えて、ステラと真田君は?」

 

「アタシも、喉カラカラだもん」

 

「丁度暇してたからな、別にいいぜ」

 

「ではどうぞ中へ――――ふぎゅ!!」

 

刀華が生徒会室の扉を開いて三人を先導しながら室内に足を踏み入れると彼女が足下に転がっていたダンベルに足をつまずかせて前のめりに転倒した、尻を上に突き上げた体勢で突っ伏し再び刀華の純白のショーツが丸出しになっている。

 

「・・・スカート仕事しろよ」

 

「・・・ねえイッキ、この人のパンツに広告載せたらスポンサー料とれるんじゃない?」

 

「その発想はなかったよ」

 

純白のショーツに包まれた刀華の尻を見て三者三様の言葉を口にする幸斗達、この人はいつか自分のドジッぷりで某君と響き合うRPGのヒロインのように壁に自身の形をした壁穴を空けてしまうのではないだろうか・・・。

 

「あいたた・・・・もーなんなn————な、何これぇぇえええええええっ!!?」

 

刀華が起き上がって改めて生徒会室内を見た瞬間、甲高い彼女の悲鳴が室内に鳴り響いた。本棚という本棚から本が、引き出しという引き出しから雑貨を、とにかく室内の物という物が無差別無秩序に散乱していて散らかし放題散らかっていたからだ。

 

「まるでゴミ屋敷だな、テレビで見た事があるぜ・・・」

 

身も蓋も無い事を呟く幸斗、室内には現在入院中のカナタを除いて生徒会メンバー全員が集まっており、書記である砕城は議事録をまとめたりして真面目に仕事をしているのだが、副会長である泡沫がテレビゲームに興じていて仕事をサボリ、その隣でランニングシャツとショーツ姿の庶務・恋々がゲーム画面を眺めながらエキスパンダーで筋トレをしてこちらも仕事をサボッていた。

 

「あれ~?かいちょー帰ってきたんだー、おかえりー」

 

「あはは☆刀華はドジだなぁ、また転んだのかい?」

 

室内を散らかした張本人である二人がなんの悪気も無しに気さくに入り口の前で固まる刀華に声をかけてきた、その瞬間に刀華の奥底でわなわなと煮え滾って来た何かが弾けた。

 

「・・・・黒鉄さん、ステラさん、真田君・・・ちょっとだけ外で待っていてくれませんか・・・」

 

笑顔が怖い(汗)、有無を言わさぬ圧力で幸斗達を廊下へと追いやり、ゆらりとアンデットのように扉を閉めると一瞬の静寂が過ぎると共に耳が割れそうになる怒声と地獄の奥底に響くような悲鳴による協奏曲(コンチェルト)が周辺区域を蹂躙した、薩州弁のような言葉が聴こえてきたような気がしたがあまりにも耳に響く怒声だったので三人は耳を塞がざるをえなかった。

 

やがて納まると代わりにドタバタするような擬音が聴こえてくる、刀華(オカン)監修の下室内を片付け始めたようだ・・・。

 

「・・・なんっつうキィーキィー声だ・・・ガラスを鉤爪で思いっきり引っ掻いている音みてぇ・・・」

 

「く~・・・鼓膜が破れるかと思ったわ・・・」

 

「ははは・・・ちょっと驚いたね・・・」

 

怒声が止むのを見計らって耳を開放する幸斗達、刀華の怒声に相当堪えたようでありキィーンと耳鳴りがしている。

 

ドタバタ音はしばらく続きそうであり、すぐには入らせてくれそうにないので三人は仕方なく少し話をしながら待つ事にした。

 

「・・・それにしてもアンタ等とここで会うとは思ってなかったぜ」

 

「それはこっちのセリフよ、リョウカはどうしたのよ?十文字以内で簡潔に答えなさい」

 

「ステラ、それはちょっと横暴なんじゃない?」

 

「部屋に帰って寝た」

 

「本当に十文字以内で答えたよこの人!?」

 

ステラの先制がピッチャー返しのように返され一輝のツッコミが冴えわたったところで話が止まる、話題が尽きたのかそれとも何から話せばいいのか分からないのか・・・恐らく後者だろう、今日の試合で幸斗は一輝の妹である珠雫を下している、しかも先月そこにいる彼の恋人を16.8PJのオーバーキルで叩き潰し二人で誓い合った約束を水泡に帰させた張本人でもある、基本自分と仲間を含めた知り合い以外の心境なんてどうでもよく思っていて空気を読まない幸斗だがむやみに理由も無く相手を無下にする発言をするようなクズではない、今この二人に何かを言ったところで気分を悪くするだけだろうと思ってこれ以上口を開こうと思わなかった幸斗だったが——

 

「・・・真田君、今日の試合凄かったね、あのリミッターはいつの頃から着けているんだい?」

 

そんな考えを知ってか知らずか一輝が今日の試合について切り出してきた、何言ってんだコイツと思った幸斗は溜息を吐いて質問を質問で返す。

 

「・・・黒鉄・・・お前オレの事良く思ってねぇんじゃないのか?オレは今日お前の妹をブッ飛ばした男だぜ?」

 

「【一輝】でいいよ・・・試合に関しては勝負なんだ、珠雫は自分の全てを出し切って立派に戦った、君はそれを真っ向から受けて立ち存分に応えてくれた、僕にとってはそれが全てだよ、妹の想いを受けきってくれた事に感謝こそすれ、恨むなんて事しないさ、だから君が僕に気を遣う必要はないよ」

 

少々気まずそうにしている幸斗の眼を見て真っ直ぐと答える一輝、これは彼の偽る事の無い本心だ、そんな想いを感じて受け取った幸斗は【ならいいか】と現金な事を思い気軽になって返した。

 

「そうか・・・ならオレの事も【幸斗】って気安く名前で呼んでくれて構わねぇよ、ヴァーミリオンもな」

 

「うん、わかったよ幸斗君、改めてよろしくね」

 

「アタシも【ステラ】で構わないわ、リョウカにもそう伝えときなさいよ!来年はアタシが絶対に勝つんだからね!」

 

「それさっきも聞いたぜ・・・でも何度でも言うが何度だってオレが勝つ!」

 

「いいえ、絶対にアタシが勝つわ!!」

 

「いやオレがっ!!」

 

「ははは・・・」

 

友好を築く筈が何故か幸斗とステラの意地の張り合いになってしまった事に苦笑いをする一輝、だが試合で負ける気はないのは一輝だって同じだから仕方がない。

 

なんにせよこれで幸斗と一輝———二人の【最弱】が邂逅を果たした。この二人がこの先、魔導騎士の世界にどのような未来を齎すのか、今はまだわからないのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




多くの作品のキャラが登場する血迷った多重クロスジャンルの新作、【幻想戦記クロス・スクエア】の投稿を去年の大晦日より開始しました!

このストーリーには一輝やステラなどの落第騎士の英雄譚のキャラも複数登場します。

現在第三話まで投稿済みで、第二話では一輝が初登場しその話で一輝はオリ主と共闘して早速物語で活躍をしています♪

もしよかったら暇つぶし程度に読んでみてください。

———宣伝終了———



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