運命を覆す伐刀者   作:蒼空の魔導書

26 / 54
*この二次創作小説の原作はあくまでも落第騎士の英雄譚です。

今回他作品のような空中戦が展開されますが、それを忘れないようにして下さいね。




蒼穹の激闘

果てしなく広がる蒼穹の大空をバトルフィールドとして戦闘が開始された。

 

向かって来る重勝と楯無の存在に気が付いた白騎士がプラズマブレードを構え、残像が発生する程の超加速をもって二人に向かって先制攻撃を仕掛けに行く。

 

———へぇ、なかなか速ぇじゃねーか。

 

白騎士の機動力が予想より遥かに高かったので感嘆とした重勝は砲剣を振るって迫る白騎士のプラズマブレードを迎え撃とうとする・・・だが———

 

「ふっ!」

 

重勝は砲剣がプラズマブレードに接触する直前に砲剣を引き身を反らし宙返り(ループ)でプラズマブレードを躱すと———

 

「隙ありぃっ!」

 

ドリルのように螺旋回転する水の突騎槍(ランス)を生成した楯無が上を宙返りで飛んで下に背を向ける重勝の下を潜り、プラズマブレードを振りきって大きな隙ができている白騎士目掛けて水の突騎槍による強烈な突きを放つ。

 

対する白騎士はなんと一瞬にしてプラズマブレードを切り返して楯無が突き放つ水の突騎槍を正面から迎え撃つ。

 

———なるほど大した反射速度ね・・・でもダイヤモンドすら切り裂く高圧水流を螺旋回転で循環させて生成した絶対的な貫通力を誇る水の槍———私の伐刀絶技《蒼流旋(そうりゅうせん)》ならこんな剣ぐらい———

 

【一撃で突き破れる】、楯無が内心でそう言おうとした瞬間、白騎士のプラズマブレードが蒼流旋の切っ先に食い込んで水飛沫が迸った。

 

「ほぇっ!?」

 

予想外の現象に戸惑い素っ頓狂な声を出してしまった楯無、だが呆けている場合ではない、白騎士の凶刃が蒼流旋を斬り裂いて彼女に迫るが、それは宙返りで彼女の真後ろに来た重勝が彼女の左腕を掴んで引き寄せる事によって空を切った。

 

「はあっ!」

 

重勝は楯無と入れ替わり様に前に出て白騎士の脇腹に強烈な蹴りをかまして白騎士を吹っ飛ばす事によってなんとか体勢を立て直す時間を作り、二人は横に並んで30m先に吹っ飛んだ白騎士を見据えた。

 

「油断したわ、まさか私の蒼流旋が正面から切り裂かれるなんて・・・」

 

「・・・どういう原理かしらねーがどうやらあの剣は伐刀絶技を無力化するみてーだな、ついでに言っておくと装甲は運命鉱製のようだぜ、蹴り入れた時幸斗に付けたリミッターと同じ感触がしたから間違いねーぞ」

 

「つまり剣を掻い潜って直接攻撃を入れても物理攻撃以外吸収されてしまうって事ね・・・」

 

「そういうことだな、さてどうするか?」

 

体勢を立て直して再び正面から向かって来る白騎士を迎え撃つ為に身構えながら首を捻って攻略法を考える重勝と楯無、伐刀絶技は斬られるか吸収される、敵は人型だけど兵器だから対人戦用の武術では決定打は与えられない。

 

———運命鉱の性質から考えて恐らく霊装による直接攻撃も霊装ごと吸収されちまうな・・・あの剣も魔力をブッた斬れるみてーだからもしさっき奴の剣をそのまま霊装で受けていたら俺の身体ごと真っ二つだったところだ、霊装も魔力で形成させてっからな、危ねー危ねー・・・。

 

重勝は一歩間違えれば即死だった事実に額に冷や汗を掻き、立てた仮説を踏まえてどうするかを考える、だがじっくりと考えている時間はない、雲海を突き抜けて猛スピードで一直線に飛翔して来ている白騎士がもう目の前に迫って来ているのだから。

 

「・・・仕方ねーな、物理的な方法で応戦しながら考えるとするか・・・楯無」

 

「ん?」

 

重勝は一振りの短刀を取り出して楯無に投げ渡した。

 

「とりあえずそれ使え、幸斗の攻撃でもなかなか破壊できない特殊合金製だ」

 

「へぇ~、なかなかの業物じゃない♪」

 

渡された短刀を見回すように眺めて絶賛する楯無、かなり気に入ったようだ。

 

そして重勝も同じ特殊合金製で造られた一本のダガーを取り出し一旦霊装を消滅させて既に目の前まで迫って来ている白騎士を迎撃する為に身構えた。

 

「・・・いくぜっ!」

 

目の前の雲が爆散し白騎士が弾丸のように突撃して来る、神速のプラズマブレードが重勝に振るわれそれを重勝はダガーで受け止める、強烈な剣撃の威力に若干表情を歪める重勝であったがなんとか持ち堪える事ができた。

 

鍔競り合い状態の中で楯無が重勝の右側から割り込み鋭い剣閃で白騎士の首を落とさんとする、白騎士はスラスターを逆噴射して後方に緊急回避、楯無の刃が空を切る。

 

後方に緊急回避した白騎士を楯無は直進横転飛行(エルロンロール)をして追撃、遠心力を利用した変則軌道の剣閃を繰り出そうとするが、一瞬にしてプラズマブレードを構え直しスラスターを吹かして急速方向転換をして来た白騎士の刃が既に振るわれていた。

 

楯無はプラズマブレードを横転旋回(バレルロール)で回避、白騎士と擦れ違うように右側を通り抜けた。

 

選手交代と言わんばかりに楯無の後方に控えていた重勝が隙を突いて白騎士の懐に潜り込み、奴の鳩尾に強烈なボディーブローを叩き込み、身体が【くの字】に曲がった瞬間に胸に回し蹴り上げをブチ込んで上空にブッ飛ばした。

 

雲を突き抜けた先には既に楯無が先回りしており、彼女は雲に大穴を空けて下から飛ばされて来た白騎士の背中を短刀で一突きにしようとするが、短刀が突き刺さる直前で白騎士が左にスラスターを吹かして急旋回(ブレイク)し短刀を高速回避してしまう。

 

白騎士はそのまま楯無の背後に【捻り込み】、突きを放った体勢で隙だらけになった楯無の背中に向けてプラズマブレードによる袈裟斬りを繰り出した。

 

絶体絶命かと思われたが、超音速の垂直上昇機動(ヴァーチカルブースト)で真下から飛来して来た重勝が間に割って入りダガーでプラズマブレードを受け止めた。

 

「楯無っ!一気に押し切るぜっ!!」

 

「OK!ガンガン行くわよっ!!」

 

互いをカバーし合う交代(スイッチ)と流れるような連携で白騎士を激しく攻め立てる二人、しかし人型だと言っても相手は機械だ、撃墜するには大きな火力が必要だろう。

 

———さて、どうしようか?・・・このままやってもジリ貧だわ、そうなったらそのうち私達は魔力が尽きて海にダイブする事になっちゃう、どうしよう着替え持ってきてないのに。

 

白騎士が繰り出すプラズマブレードの連撃を短刀で捌きながらそんな事を考えている楯無、困っている割には随分と余裕そうだ。

 

「「ハァッ!!」」

 

ガキィィインッ!という剣撃音が蒼穹の大空に鳴り響く、重勝のダガーの刀身と楯無の短刀の刀身が交差するように重なりその中心で白騎士が振るったプラズマブレードを受け止めたのだ。

 

「・・・楯無」

 

「・・・何?」

 

「物理攻撃なら通用するんだよな?」

 

「・・・そうね」

 

二対一の鍔競り合い状態———身体がほぼ密着した超至近距離で目を合わせて確認し合う重勝と楯無、あと数センチで唇同士が触れ合いそうなこの状態で二人は何かを企んでいる悪人のような凶悪な笑みを浮かべていた———

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

よく周りを見てみたら薄い霧のようなモノが彼等の周囲の空域を包み込んでいた、心なしか気温が若干上昇しているようにも感じる。

 

そして二人はニヤリと笑うと突然腕のチカラを緩めワザと白騎士に弾き飛ばされた。

 

「・・・今だ楯無っ!!」

 

弾き飛ばされた事を利用して発生した霧の外に二人が飛び出した瞬間重勝が楯無に合図を出し、楯無は自身が身に纏う全身装甲型の霊装———【霧纏の淑女】に全身全霊の魔力を流し込み淡く発光させ———

 

「おねーさんの熱き想いをくらいなさい!《清き熱情(クリア・パッション)》!!」

 

楯無が伐刀絶技の名を言い放った瞬間に霧に包まれた空間の温度が一気に急上昇して大爆発が発生した、【水蒸気爆発】という現象はご存知だろうか?水は熱せられて水蒸気となった場合に体積が約千七百倍となる為多量の水と高温の熱源が接触した瞬間水の蒸発による体積の増大が発生してそれが爆発となるという現象だ。

 

楯無の伐刀絶技【清き熱情】は周囲の空間の水素に魔力を流し込み温度を露点温度まで下げ霧を発生させて周囲を包み、頃合いを見て発生させた霧に再び魔力を流し込んで温度を急上昇させ【物理的】な水蒸気爆発を引き起こすというものである。

 

「壁一つ無い空の上だったから上手く行くか不安があったけれど都合よく無風だったからねぇ、手際よく事を進められたわ♪引き金が魔力でも【攻撃そのものが物理攻撃となる伐刀絶技】なら運命鉱の魔力吸収効果も意味を成さないわね♪」

 

そう、運命鉱が吸収するのは魔力だけなので魔力を使っていても攻撃そのものが物理攻撃ならば吸収できないのだ。

 

しばらくして爆風が止むと案の定水蒸気爆発に巻き込まれた白騎士は無惨な姿になっていた、頭部のフルフェイスには亀裂が入りひび割れ装甲はボロボロ、手に持っているプラズマブレードは刀身が折れて先が無く、身体全体から黒い煙を排出していて機能がほぼショートしていた、もはや戦闘の続行は不可能だろうし運命鉱の装甲も最早使い物にならないだろう・・・。

 

この時点でミッションクリアーの筈なのだが・・・これで終わりにしてくれない悪魔がいる事を忘れてはならない・・・。

 

「よくやったぜ【刀奈】!・・・これで終いだっ!!」

 

「・・・へ?」

 

楯無の隣でいつの間にか重黒の砲剣を再顕現させていた重勝がその切っ先を見るも無惨な姿の白騎士に向け、回転式弾倉(リボルバー)を五回転させて重力エネルギーを切っ先に収束していた。

 

「収束重力砲(ストライクブラスター)ァァァァアアアアアアアアッ!!!」

 

まさにOVER KILL!(汗)、無慈悲な漆黒の砲撃が哀れな白き騎士を飲み込み母なる海へと還した・・・。

 

「・・・・・」

 

海が割れて天まで昇る巨大な水柱を目の当たりにして開いた口が塞がらない程唖然とする楯無、やっぱりこの男は悪魔だと彼女は思った。

 

天にも届きそうな水柱はやがて沈静化し広大な海に白騎士の残骸が散らばって浮かび上がった、砲撃で木っ端微塵となったようだ。

 

「よし、これで契約成立だな!倫理委員会の内部調査、頼んだぜ!」

 

白騎士の撃破を確認した重勝は砲剣を肩に担ぎ楯無に不敵な笑みを向けてそう言った。

 

「・・・ふふっ、任せなさい!【更識楯無】の名に懸けて必ず五年前の真相を掴んでみせるわ!」

 

「へっ、期待してるぜ!」

 

自身の豊満な胸を叩いて自信満々に約束をする楯無を見て重勝は彼女になら安心して任せられると思った、五年前に西風を壊滅に追い遣った真の黒幕の解明を。

 

「・・・さてと、こっちはこれで一件落着だ、幸斗と姫ッチの試合はどうなっただろうな・・・」

 

重勝は広大に広がる蒼穹の大空を見上げ、今日学園トップクラスの実力者と死闘をする事となっている元教え子達の事を想って黄昏る。

 

———幸斗は相当ヘマしなけりゃ問題無く勝てるだろうが・・・気になるのは姫ッチだな・・・。

 

重勝が心配しているのは涼花だ、当然だろう、涼花の対戦相手は刀華———重勝が破軍内で数少なく認める一流の伐刀者なのだから。

 

「・・・東堂・・・はぁぁ・・・」

 

重勝は自分に刀の切っ先を向けて敵意と信念を向けてくる刀華の姿を思い浮かべて面倒くさそうに溜息を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『一年・佐野涼花さん、三年・東堂刀華さん、試合の時間になりましたので入場して下さい』

 

「・・・・・」

 

破軍学園の第四訓練場の赤ゲート側の控室内に騎士達に戦いの場に出るよう指示するアナウンスが響き渡る、神妙な静寂の中で携帯ゲーム機のような端末———【仮想戦術シミュレーター】を椅子に座って声一つ発さずに真剣に眺めていた戦術家の少女が端末を机の上に置いて静かに立ち上がった。

 

戦術家の少女——涼花は戦場に赴く戦乙女(ヴァルキリー)のような引き締まった表情をしていてまるで余裕が感じられない、無理もない、彼女がこれから相対する相手は破軍学園で二番目に強く【雷切】の二つ名で知られる実力者である東堂刀華なのだから。

 

「・・・電子上の計算なんてこんなものね・・・いいわ、幸斗が運命を覆すように、わたしもわたしの戦術を以って運命を覆してみせる」

 

入場ゲートに向かいながらそう呟く涼花、彼女は懐から好物である濡れ煎餅を取り出して景気付けにそれを一口かじり、入場ゲートを潜って行った。

 

・・・机の上に置かれた仮想戦術シミュレーターは伐刀者のステイタスとこれまでの公式戦のデータを基に何通りも戦闘シミュレーションを行ない勝率を計算するものである。

 

今、この端末の画面には上に【佐野涼花VS東堂刀華】と表示されており、左下には佐野涼花の勝率が表示されていた————

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・勝率————3%と・・・。

 

 

 

 

 




破軍学園壁新聞


更識楯無

PROFILE

所属:貪狼学園二年

伐刀者ランク:B

伐刀絶技:清き熱情(クリア・パッション)

二つ名:霧纏の淑女(ミステリアス・レイディ)

人物概要:貪狼学園の生徒会長にして更識家の当主

ステイタス

攻撃力:B

防御力:A

魔力量:B

魔力制御:A

身体能力:B+

運:A


かがみんチェック!

ある時は世にも珍しい全身装甲型の霊装【霧纏の淑女(ミステリアス・レイディ)】をその身に纏い大空を華麗に舞うBランク騎士!またある時は親しみやすい人柄で誰もが慕い憧れる(蔵人などの一部は除く)貪狼学園のカリスマ生徒会長!然してその実体は裏の世界に生きる暗部の一族【更識家】の当主、更識楯無!!こういうお姉様って憧れるなぁ、それになんだか私と気が合いそうな気がするし♪・・・よしっ!今度お近付きになって取材してみよっと、風間先輩の恥ずかしい秘密とかも教えてもらえるかもしれないし♪


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。