運命を覆す伐刀者   作:蒼空の魔導書

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暑かったり雨で蒸し暑かったりマジしんどい・・・。

今回は他の学園の一部の戦力が判明!

更に幸斗と涼花の第十六戦目の対戦相手が決定!

そして最後はインフィニット・ストラトスのあの人が登場!

では、最後までお楽しみに!




政和の頼み事と第十六戦目の対戦相手

「【霊装と能力の無断使用】に【学園施設の一部全壊】、更には【羽田空港の便を二つ遅らせざるを得ない程の航空空路妨害】・・・・・貴様は戦闘する度に学園のみならず校外にまで迷惑を掛けるな・・・真田」

 

破軍学園校舎一階の男子トイレの入り口の前で黒乃は仁王立ちをして中で掃除をしている幸斗に説教をしている。

 

幸斗は黒乃が今言った罪状により罰として学園全ての男子トイレ掃除をさせられていた。酷い罪状の割には軽い罰のように見えるが破軍学園の敷地は東京ドーム十個分、そんな広大な敷地内にある全て男子トイレを掃除しろと言うのだからかなりしんどい罰である。

 

しかし今回は幸斗一人で全てを掃除しろというわけではない・・・何故なら———

 

「・・・何で破軍の生徒でもねぇ俺が・・・」

 

「自分から進んで戦闘行為をしたのだから当然だ、それに安心しろ、もう既に巨門学園に連絡して許可を貰っている、【ご迷惑をお掛けしたお詫びに好きなだけコキ使ってください】とな」

 

水切り掃除をしている幸斗の後ろでデッキブラシで床を磨いている政和も一緒に罰を受けているからだ。

 

「それじゃあ全ての男子トイレの掃除が終わったら理事長室に来い、伊達は私に何か頼み事があるのだろう?詳しい事はそこで聞いてやる、じゃあまた後でな」

 

黒乃はそう言ってその場を跡にした。

 

「・・・・・何でこうなったんだ?」

 

「知るかよ、こんなの全然フレッシュじゃねぇ・・・」

 

残された二人は掃除しながら不満を口にする、あんな所で戦闘をすれば当たり前だというのに自覚が無いのだからまったくもって質が悪い。

 

「・・・まあなんだ、ここは楽しい話でもしながら掃除するとしようぜ、お前他の学園にもAランクがいるって知っているか?」

 

沈む気持ちの中政和が話を振って来た、内容はステラ以外のAランク学生騎士についてだ。

 

「いや初耳だぜ、ヴァーミリオンだけじゃなかったのか?」

 

「ああ、今年留学や編入によって日本の伐刀者専門学校に入って来やがったからな、あの皇女サマ含めて四人いるぜ」

 

幸斗は政和の話に興味を示した、戦闘狂である幸斗にとって強敵が増える事は大変喜ばしい事だからだ。

 

Aランク—————伐刀者の最高ランク、英雄として必ず歴史に名を遺すと言われている規格外な能力者達・・・日本に在籍している学生騎士にそんな奴がステラの他に後三人もいると言うのだから驚きだ。

 

政和がデッキブラシで床を磨きながら日本在籍のAランク学生騎士について語り始める。

 

「まずはあの《七星剣王》が在籍する名門【武曲学園】、そこに【籍だけ置いている状態】の【風の剣帝】《黒鉄王馬(くろがね おうま)》だな、コイツは五年前小学生(リトル)リーグのチャンピオンになって以来ほぼ日本から失踪状態だったんだが最近になって姿を現したって話だ、噂じゃ七星剣武祭にエントリーするかもしれねーってよ」

 

「へぇ~、黒鉄王馬ねぇ・・・黒鉄?」

 

幸斗は話に出てきたAランク学生騎士の姓を聞いて首を傾げた、幸斗と同じ破軍学園の一年生である一輝と珠雫の姓と同じだったから彼等との関係を疑ったからだ。

 

「ああ、【無冠の剣王】と同じ【黒鉄家】の人間だな、と言っても奴は家の事より強敵と戦り合う事が全てみてぇだぜ、なんでも一族の面子ばかり気にする実家に嫌気がさしたみてぇで実家と決別したって話だ・・・ま、気持ちは分かるがな・・・」

 

一輝と王馬、珠雫の実家である【黒鉄家】は日本を第二次世界大戦で戦勝国へと導いた極東の英雄《黒鉄龍馬(くろがね りょうま)》———通称《サムライ・リョーマ》を排出した名家であり、それ故にこの一族は非常に自尊心が高い。

 

昨年一輝がまともに授業を受けさせてもらえず留年したのもそれが関係していた、魔導騎士の世界において黒鉄家の影響力は非常に高い、Fランクの落ちこぼれである一輝を魔導騎士にするのを黒鉄の恥として破軍学園に圧力を掛け一輝を卒業させないように仕組んだのだ、彼等は家の面子を護る為ならどんな汚い事でも行う、王馬が家を捨てるのも納得だ。

 

「その風の剣帝なんだが・・・俺は数ヶ月前、仙台で奴を見かけた」

 

いきなり神妙な表情になった政和が遠目で王馬を見かけた事を話だす、政和は宮城県の出身だ、それは休日地元に戻った時の事だと言う。

 

「広瀬川の近くを通った時の事だ、俺は突然聴こえてきた水を切る様な音が何なのか気になって川の浅瀬に目を向けた、そこに奴はいた、そよ風で漆黒の長髪を揺らし直立不動の状態で浅瀬の中央で眼を瞑って精神統一をしていやがった・・・奴はその時上半身裸でな、俺はその時奴の身体を見て目を疑った・・・奴の上半身は傷痕だらけだったんだぜ、どんな傷でも治せる再生槽(カプセル)の技術が発達したこの時代によ」

 

政和はその時見た王馬の異常性をデッキブラシを動かしながら語る、幸斗はその話を一言もしゃべらずに聞いていたが、政和はいきなりニヤリと笑った。

 

「俺は奴の身体に途方もない異質を感じたが・・・俺はどういうものだかなんとなくわかったぜ、【俺がよく知っている異質】だったからな」

 

なんと政和は王馬の異常性の正体を簡単に理解したと言った。

 

「何なんだそれは?勿体ぶってねぇでオレにも教えろよ」

 

「へっ!テメェなら奴に会えばすぐに気付けるだろうよ、何故なら奴の身体は—————

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

———————方向性は違ぇが【テメェと同じ】だからな」

 

政和は衝撃の発言をした、幸斗と王馬の異常性は同じ種類のものだと言うのだ。

 

「・・・・はぁ?」

 

意味不明、幸斗はそう思ったようだ。

 

「オレが黒鉄の兄貴と同じ?なに言ってんだオレの身体は傷だらけなんかじゃないぜ」

 

「・・・・テメェひょっとして理解してないのか?自分の身体が普通じゃねぇ事によ」

 

「オレは何事にも諦めねぇでひたすら団長やシゲが課した特訓をこなして強くなっただけだ、普通だろ?」

 

自分はあくまで普通だと言う幸斗に対して自身の額に右掌を当てて呆れる政和、考えてみれば幸斗の方が相当異常だろう、世界最低とも言える魔力量でありながらAランクを越える膂力を出し測定不能の攻撃力と判定が下される非現実的な伐刀者・・・彼を異常と言わずして何と言うのだ。

 

「まあそれは奴と会った時の楽しみとして取っておけよ、そんじゃ次は昨年までこれといって注目する伐刀者がいなくて目立たなかった【文曲学園】に彗星の如く編入して来たって評判のAランクの話だ」

 

政和は諦めてさっさと二人目のAランク学生騎士の事について語りだした。

 

「そいつの名は《千石万斎(せんごく ばんさい)》、二つ名は《届き得ぬ手腕(クリアアーム)》つって能力は《万物干渉の選択》っつう因果干渉系の能力らしいぜ」

 

次々と万斎の情報を口にする政和、どうやら彼は情報の秘匿ということをせずバンバン自分の手札(カード)を使っているらしい、よっぽど自信があるのかそれともAランク特有の傲慢さか・・・。

 

「・・・しかし、何でそんな凄そうな奴の名が今まで世間に知られなかったんだ?」

 

幸斗の言う事はもっともである、Aランクともなれば普通超が付く程の有名人になっている筈だからだ、増してや王馬以外の日本人学生騎士となればマスコミが放ってはおかない筈、一体何故?

 

「さあな、俺も驚いたがそんな事気にしてもしょうがねぇしな、戦ってみればわかるだろうよ・・・奴は文曲に編入してからというものの学園で無双の強さを発揮して僅か一ヶ月で文曲のトップになったって話だ・・・表向きはな・・・」

 

「表向き?」

 

男子トイレの床にバケツの水を撒きながら意味し気な事を付け加えて語る政和に水切りで床に撒かれた水を排水口に押し込みながら疑問を口にする幸斗。

 

「実は届き得ぬ手腕の野郎は文曲で二敗しているという噂がある、Aランクの面子を保つ為にその情報だけは学園が隠匿しているみてぇだが・・・他に注目する学生騎士もいねぇ文曲にAランクを倒せる奴がいるのか?俺としてはそっちの方が興味が引かれるぜ」

 

へっ!と笑みを浮かべて二人目のAランク学生騎士について語り終える政和、彼の興味は万斎よりも彼に勝ったという二人の伐刀者の方に行っているようだ。

 

—————そういや文曲といえば【あの二人】が入学した所だったな、アイツ等は西風の主力だったからAランクに勝ったっていうのはアイツ等の可能性が高ぇな。

 

政和の話を聞いて幸斗は文曲学園に入学したかつての仲間の事を思い出していた、その二人はかなりの実力者のようだ。

 

「そして最後はあの皇女サマの留学の話で持ち切りだった所為で注目度が薄かったイギリスの天才の話だ」

 

政和が最後のAランク学生騎士について語り始めた、それはステラと同じ外国からの留学生だという。

 

「奴は皇女サマと同じで今年日本に留学して来た伐刀者、入ったのは【廉貞学園】だ、名は《クリスフィール・アルルカント》と言って《クリス》という愛称で慕われているらしいぜ、《写し鏡の才女(クロスミラージュ)》と名高い天才学生騎士として有名だがあの皇女サマと比べるとかなり劣るらしくて留学した当時は連盟が発行する新聞の端に小さくその他扱いで載っているくらいだったんだが、あの皇女サマが選抜戦でテメェらに敗北して七星剣武祭に出場しない事が決まるや否や急に注目度が上がったというわけだ・・・これで全員だな」

 

政和が床を磨き終えた瞬間に話が終了した、話に出て来た三人はどいつもこいつも一筋縄ではいかなそうな奴ばかりで幸斗は胸を躍らせていた、七星剣武祭の楽しみが沢山増えたと。

 

「おしっ!なかなかフレッシュになったぜ、ここは終わりだな、次いくぜ」

 

「おう!」

 

この場の掃除を終えた政和がデッキブラシを右肩に担ぎバケツを右手に持って幸斗に次のトイレに移動するぞと促し、幸斗も水切りを左肩に担いでそれに同意した。

 

「・・・ところでテメェここへはオレと戦る為だけに来たのか?さっき理事長に頼み事があるとかなんとか言っていたけどよ・・・」

 

「ん?・・・ああ、ここへ来たのはテメェの腕が錆びついてねぇか見る為だぜ、だが【幻想形態で軽く打ち合っただけ】じゃあイマイチわかんねぇ、あれだけじゃ物足りねぇしな・・・そこでだ—————」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「つまりお前達は真田の試合を直接観戦したい・・・そういう事だな?」

 

「ああ、そうだぜ」

 

幸斗と政和が破軍学園の男子トイレを全て掃除し終えた後二人は理事長室に向かい、既にそこにいた涼花と十士郎を交えて政和は黒乃に頼み事をしていた。重勝と綱定は大事な話があるらしく別の場所にいて一輝達は気絶したステラを保健室に運んで行ったのでここにはいない。

 

「・・・まあ構わないぞ、どうせ勝手に動画サイトにアップされるのだから情報の隠蔽もなにもあったものではないのだしな・・・」

 

「よっしゃ、サンキューな!」

 

「すまない新宮寺殿、うちの馬鹿がとんだ我儘を・・・」

 

何を言っても無駄だと悟ったのか黒乃は政和の頼みをアッサリ承認した。政和の頼み事とは近日中にある幸斗の選抜戦第十六戦目を観客スタンドから生で観戦したいというものであり、それは幸斗の【実像形態】での斬り合いを見てその闘気と剣気を直接肌で感じる事によって高揚感を得る為であった。

 

「確かに動画で見るのと直接観戦するのとじゃ全然違うのは分かるけれどこのお馬鹿の実力だと並の相手じゃ瞬殺してしまって参考にならないと思うわ」

 

「そうだぜ、黒鉄とかとでも当たらない限りオレは一瞬で勝っちまうぜ、破軍全体の伐刀者の実力は大体把握したしな」

 

幸斗は破軍学園でトップクラスの実力者だ、その為選抜戦で彼と渡り合える相手と当たる可能性はかなり低い、それだと一瞬で終わってしまうので闘気を感じるもなにもないだろう。

 

「へっ!俺の予感はよく当たるんだ、テメェは次の試合でなかなかの相手と当たるぜ、きっとな!」

 

「けどよ、この選抜戦オレはヴァーミリオン以外全て一撃でケリがついてんだぜ、そんな簡単n————」

 

政和が自信たっぷりに幸斗の次の試合相手はかなりの実力者であると宣言して幸斗がそれを退屈そうにして疑うと幸斗と涼花の生徒手帳からメールの着信音が鳴り響き、二人は学生服のポケットから生徒手帳を取り出してディスプレイを見た。

 

『真田幸斗様の選抜戦第十六試合の相手は、一年四組・黒鉄珠雫様に決定しました』

 

「・・・・・黒鉄は黒鉄でも妹の方かよ・・・」

 

幸斗は一見呆れているような事を言っているが顔は笑っていた、相手にとって不足なし、そんな笑顔だ。

 

「へっ!どうやら俺の感は当たったみたいだな!」

 

「ああ、コイツとなら楽しい試合ができそうだぜ!・・・涼花はどうだ?」

 

「・・・・・・・」

 

幸斗は久々に強者と試合ができると胸を躍らせて涼花に彼女の対戦相手を尋ねるが・・・涼花は破軍学園に入学してから今までにないくらい真剣な表情でディスプレイを見ていた、幸斗はそんな涼花の隣に寄って彼女の生徒手帳を覗き込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『佐野涼花様の選抜戦第十六試合の相手は、三年三組・東堂刀華様に決定しました』

 

涼花の対戦相手は昨年の七星剣武祭のベスト4にして破軍学園序列二位、生徒会会長【雷切】東堂刀華、重勝が破軍で数少なく認める一流の伐刀者だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、第六訓練場内、今このバトルフィールド上は氷獄と化していた。

 

「な、なんだよ・・・あいつ」

 

「化物だ・・・」

 

「本当に五十人を・・・たった一人で倒しちまった・・・」

 

観客スタンドにいる生徒達が震えた声でそう言う、今から十分前この場に一人の一年生がやって来てその場にいた全ての伐刀者に挑戦を叩きつけた、そして癇に障った伐刀者達が一斉にその一年生に挑みかかり・・・結果は全滅だった。

 

「全然足りないわ・・・」

 

誰一人彼女に触れる事すらできずに一人残らず氷像にされてしまった・・・バトルフィールド中央に立って自分が作り上げた《凍土平原(とうどへいげん)》を眺めつまらなそうに溜息を吐いている【深海の魔女】黒鉄珠雫に。

 

「・・・だけど貴方は私を楽しませてくれるわよね?」

 

珠雫は自分の生徒手帳を左手に持ってディスプレイに書かれている対戦相手———幸斗の名前を見て凄艶な笑みを浮かべていた、自分が愛し尊敬する兄より少ない魔力量にも拘らず大気すら揺るがす無双のチカラを発揮する・・・間違いなくこの破軍学園で最も兄に近い伐刀者と戦える事に・・・全力で【壊せる】相手と戦える事に彼女は胸を躍らせていた。

 

———まあ、希望を言えば魔力制御S判定の風間先輩相手が一番望ましかったけれど———

 

幸斗も相手にとって不足はない、珠雫は昂る高揚感に我慢できなくなって高笑いをしだした。

 

「ふふ、あはははは!!」

 

彼女の深海の底から込み上げて来るような愉悦の笑い声が第六訓練場内に響き続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・なるほど、佐野さんが相手だと本気を出さざるを得ないか・・・」

 

ここは奥多摩の山奥にある破軍学園の合宿所、そこの正面玄関の前で自分の生徒手帳を手に持って届いた対戦相手の告知のメールを読んで刀華はそう呟いた。

 

何故彼女がこんな所にいるのかというと先日生徒会に黒乃から依頼を要請されていたのだ、この合宿施設の近くに不審者が出たので調査してほしいと。

 

そこで刀華は事前調査として単独で合宿所周辺を見て回っていたのだが収穫は無し、残りは合宿所の敷地内にある高山や森林のみ、しかしそれらを刀華一人で見て回るには厳しく、仕方なく一旦破軍学園に戻って対策を練ろうと合宿所の玄関口を出たのだが、そこでメールが届いて現在に至る。

 

「・・・この試合は間違いなくギリギリの戦いになる、だけど私は誰が相手だろうと負けるわけにはいかない、遥か高い空の上にいる最強の騎士に勝ち皆を導く為にも」

 

刀華は遥か彼方まで広がる夕焼け色の大空を見上げた、東を見てみるとその一部が黒く染まっていてそこには一際輝く赤い一番星があった。

 

「私は必ずあの星に刃を届かせてみせる、風間さん、貴方を倒さない限り私は私の想いを貫く事ができません、最後まで戦い抜いたカナちゃんや私を信じてくれている皆の為にも・・・私は勝ち続けます!」

 

自分が如何に小さい存在だと認識させられるような広大な大空に刀華は誓った、自分の信じる道を進み続ける為にあの星を———重勝を大空から引きずり落とすと。

 

この空に誓った想いを胸に刀華は帰路に着いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幸斗と涼花の試合当日の早朝、重勝は東京都内のある宿泊施設の廊下を歩いていた。

 

「・・・ここだな・・・」

 

重勝は384号室と書かれた扉の前に立ち止まる。

 

先日理事長室で幸斗達が黒乃と話していた時、重勝は綱定に学園の屋上で五年前の西風壊滅の真相について相談をしていた。

 

『北九州の村の大量虐殺をやったのは比翼じゃないと?』

 

綱定は重勝が述べた推測を復唱して首を傾げた。

 

『ああそうだぜ、あれはどう考えてもおかしい、待ち伏せしていた連盟の準備が良すぎる、俺はあの大量虐殺は連盟の暗部・・・《倫理委員会》辺りの誰かが怪しいと睨んでいる』

 

今重勝が言った国際魔導騎士連盟【倫理委員会】とは日本在中の学生騎士・魔導騎士達の【倫理】を監督し必要があれば指導や追放処分を申請するいわば【憲兵】ともいうべき部署だ、この部署は秘密警察との批判があり暗部の部類に入る、所属している人間は意地の悪い奴が多く昇進する為に気に入らない魔導騎士や学生騎士を貶めて強制的に追放したりするという黒い噂もある。

 

『・・・なるほどねぇ、あの汚い連中なら昇進の為にオイラ達西風を騙し討ちするなんて事十分に考えられんな』

 

『だろ?・・・だが決定的な確証がねーんだ、元隠密機動の姫ッチに頼んで調べてもらうって手もあるけど俺と違って真剣に七星剣武祭代表入りを狙っている姫ッチには選抜戦に集中してもらいてーんだ、どうしたもんか・・・』

 

腕を組んでん~っと唸り悩む重勝、そこに綱定は軽々しく提案をする。

 

『それなら【あの女】に依頼すればいいんじゃない?ホラ、昔テロ組織の揺動の依頼でお前が知り合ったあの女だよ、お前かなり懐かれていただろ?、あの女が在学してる学園は能力値選抜だから今暇なんじゃないの~』

 

『・・・・はぁ・・・それしかねーか・・・』

 

このような事があって重勝はある人物とこの場で【一方的に】待ち合わせする事となったのだった。

 

重勝の選抜戦第十六戦目は前日《重戦車(ヘビィタンク)》の二つ名を持つ《桃谷武士(ももたに たけし)》という生徒と試合をして試合開始と同時の砲撃で桃谷を瞬殺して早くも完全試合十六連勝目を挙げているので彼はしばらく試合が無い、幸斗と涼花の試合は気になるようだが選抜戦終盤に差し掛かった今、今日ぐらいしか学園を離れる事ができないので仕方がないのだ。

 

「・・・・入るぞ」

 

重勝は気怠そうに384号室の扉を開けた————

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お帰りなさい!ご飯にします?お風呂にします?それとも、わ・た・sうぎゃっ!?」

 

部屋に入っていきなり水色の髪で扇子を持ったグラビアアイドル顔負けのスタイルの少女が何故か裸エプロン姿で揶揄うようにそう言って寄って来たので重勝は躊躇わず無言の手刀をその少女の脳天に落とした。

 

「う”う”っ、まさか私が意識の死角を突かれるなんて・・・」

 

「お馬鹿な所に場所を指定してお馬鹿な行動をするからだ」

 

部屋の中は中央にハートが沢山ある布団が敷かれたキングサイズのベッドがあり、その上にはディスコなどにあるミラーボールがぶら下がっていて床も壁も天井も一面鏡張り・・・どう見てもラブホテルの一室だった。

 

「いたたた、せっかく私が緊張した雰囲気を解してあげようと思ったのに相変わらず可愛く無いんだから」

 

「頭いい癖に馬鹿な事ばっかり考えてんじゃねーよ《刀奈(かたな)》」

 

【不覚】と書かれた扇子を持った両手で頭を抱えて蹲る裸エプロンの少女に眼を細めて呆れる重勝、どうやらこの少女が重勝が倫理委員会への調査依頼をする相手のようだ。

 

「いくら二人きりだからといって一応今は仕事で会っているんだから【楯無】って呼んでよnってきゃああっ!?」

 

裸エプロンの少女が立ち上がってそう言いながら重勝にズイっと寄って来た、そして鬱陶しく思った重勝は全く躊躇せずに少女のエプロンをはたき落とした、エプロンが床に落ちて抜群のスタイルが目立つ彼女の大胆なビキニ姿が露になった、どうやら裸エプロンではなく水着エプロンだったようだ・・・。

 

不意を突かれた事による羞恥心で顔を真っ赤にしているこの少女こそが【貪狼学園】の生徒会長にして裏業界に精通する《更識家》の当主《更識楯無(さらしき たてなし)》、《霧纏の淑女(ミステリアス・レイディ)》の二つ名を持ち刀華やカナタと同じ【特例招集】を受けた事もあるBランクの実力者である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ハイ!気になるISキャラは完全無欠の生徒会長、更識楯無さんでしたっ!

・・・まああれだ、揶揄おうとした相手が悪かったと言う事で・・・。

現在ISは8刊まで見て現在9刊を読んでいる最中です、楯無さんとシャルロットがお気に入りのキャラだったりします(アニメは未視聴)。

朴念仁代表と言われている一夏がどんな奴か見てみましたがこれはヒドイ・・・一輝の爪の垢を飲ませてやりたいと思いました。


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