ではどうぞ。
試合開始と同時にステラは燃えさかる火炎をドレスのように身に纏い彼女を中心に炎の海がバトルフィールドに広がった。
ステラの伐刀絶技《妃竜の息吹(ドラゴンブレス)》は摂氏三千度という馬鹿げた炎を操る能力で今までの対戦相手は全てその桁外れのエネルギーの威圧感に怖気づいてしまい降参している。当たり前だ、こんなのに挑む事は自ら焼身自殺するようなものである、利口な人間ならば無謀なことはせずに降参するだろう。
・・・だが、この真田幸斗という男は・・・バカだった。
「うおおおおおぉぉぉぉぉっ!!」
「えぇっ!?」
『おぉっと!真田選手試合開始と同時に正面から突っ込んだあぁっ!』
—————アタシ(Aランク)相手になんの魔力強化もしていない生身の突進だなんて・・・やっぱり期待外れだったわね。
ステラは心の底で失望した、どんな凄い策や技がでるのかと期待したのだがやってきたのはバカのように何も考えずに突撃、EランクがAランクにチカラ押しで勝てるわけがないのに無策で正面から攻撃を仕掛けに来る幸斗を今までの対戦相手の誰よりも愚か者だとステラは思った。
「・・・いいわ・・・叩き潰してあげる!」
「はああああぁぁぁっ!!」
ステラは妃竜の罪剣を振り上げ迫る幸斗を叩き伏せるべくチカラいっぱい振り下ろす、同時に幸斗もステラに接近すると振り下ろされてくる大剣と正面衝突させるように鬼童丸を下段から振り上げ、衝突と同時に第五訓練場そのものが激震し二人を中心に大爆発が起きた。
『試合開始早々大爆発(エクスプロージョン)!!チカラとチカラの正面衝突だぁぁあっ!!』
「ふぅ・・・随分と早く決着がつきましたねお兄様」
「そうだね、あれは完全に正面からぶつかった、ああなったら完全に攻撃力の勝負だ、流石にステラ相手にEランクが攻撃力で勝てる筈がないしね」
観客スタンドで観戦をしている一輝の隣の席で一緒に観戦をしていた短い銀髪で淡い翡翠色の瞳の美少女で一輝の妹である《黒鉄珠雫(くろがね しずく)》がつまらなそうに一輝にそう言い、それに同意する一輝。
————あの不安はやっぱり気のせいだったのかな?・・・まあなんにせよこれで決まっただろう、流石ステラだ。
不安が消し飛び心の中でステラを絶賛する一輝、どうやら自分の心配は杞憂に終わりそうだと安堵した・・・だが—————
「ねえ一輝、珠雫、あれって・・・」
珠雫の反対側の隣の席で観戦していた眉目秀麗な長身で女性口調で話す男子生徒《有栖院凪(ありすいん なぎ)》が大爆発によって煙が充満しているバトルフィールドの奥の青ゲートの上を指さした。
「どうかしたn・・・・・・えっ!?」
「まさか?」
一輝と珠雫が有栖院が指さしたところに目を凝らすとそこには青ゲートの上にクレーターができていてその中心に人が大の字でめり込んでいたのが見えた—————
———めり込んでいたのは・・・・・ステラだった・・・。
「なっ!!?ステラッ!!」
「嘘・・・」
あまりにも信じられない光景に声を上げる一輝に絶句する珠雫と有栖院、皆の予想を裏切った結果に会場はどよめいていた。
『ああぁっとこれは予想外っ!!ヴァーミリオン選手がふっ飛ばされて壁に叩き付けられています!一体何が起きたというんだ!?』
「一体どうして・・・・・まさか一ヶ月前のテロリストのような能力じゃ!?」
一輝達は一ヶ月前のある休日にテロリスト———《解放軍(リベリオン)》のビショウという伐刀者と戦闘をしていた、ビショウはあらゆる有害を【罪】として吸収しそのチカラを【罰】という魔力に変えて敵に撃ち返すことができるという能力を持っていて、そのときに戦ったステラの一撃がそれによって防がれてカウンターをくらいステラは敗北したという事があった。
ひょっとしたら幸斗の能力はそのようなカウンター系の《概念干渉系》の能力なのかもしれないと一輝は思い《生徒手帳》を開いてディスプレイを操作して幸斗のデータを調べる。
破軍学園の学生証は身分証明から財布に携帯電話にインターネット端末となんにでも使える優れものでありそれを使って幸斗のデータを調べてディスプレイに表示して一輝はそれを見る。
「!!?・・・・何、このステイタス・・・」
「クッ!・・・・嘘でしょ?・・・」
青ゲートの真上の壁に叩き付けられてめり込み意識が飛びそうになっているステラが呻いた。
——————今の一撃は何か能力を使った感じはしなかったわ・・・つまり———
「純粋な攻撃力で負けたっていうの?冗談じゃないわ!」
ステラはそう言って後ろに魔力を放出して壁を爆破するように砕いてその反動を利用して飛び出しバトルフィールド上へと着地する。
すでに煙は晴れていてバトルフィールド中央にいる幸斗は【どうだっ!】と言っているかのような不敵な笑みで太刀を構えてステラを睨んでいた。
「・・・イラッ!とくるわ・・・」
ステラはそれが気にくわなかった、今まで負けたことは少ないながらもあったが攻撃力で負けたのは生まれて初めてだったからだ、自分の一番の長所で負けて気にしない人間などそう多くはない。
「この程度じゃねえだろアンタ?早く掛かってこいよ!」
「ッ!!・・・嘗めんなっ!!」
幸斗の挑発を受けてステラは激怒し特攻する。
『ヴァーミリオン選手猛攻っ!!しかし真田選手はそれをいとも簡単に弾き返し続けヴァーミリオン選手は一撃毎にふらついてまるでアクションゲームのプレイヤーが破壊不能オブジェクトに攻撃し続けて弾かれ続けるかのようだ!』
「はああああぁぁぁっ!!」
「いっ!?」
斬り合う最中に鍔迫り合いの体勢になった瞬間に幸斗がステラを押し込みながら前に走り出し完全にチカラ負けをしているステラは何度も身体を浮き上がらせながらバトルフィールド端まで押し込まれ————
「おらぁっ!!」
幸斗の太刀のによるフルスイングによって上斜め四十五度の角度でふっ飛ばされて青ゲート側の観客スタンドの階段に叩き付けられあまりの威力だった為にその勢いのまま階段を跳ね上がり最上階でまた吹っ飛び壁に激突してその壁すらブチ破り場外に吹っ飛んで行った。
『ヴァーミリオン選手壁を突き抜けて場外までブッ飛ばされたああぁっ!!真田選手なんという膂力!彼は本当に私達と同じ人間なのでしょうか!?』
「ステラアァッ!!?」
「信じられない・・・あのステラさんがこうも簡単に・・・」
「・・・一体何者かしらあの子?」
あまりにも常識破りの光景にどよめく第五訓練場内、当然だ、EランクがAランクを相手に圧倒・・・しかも正面からの真っ向勝負で圧倒しているのだか目を疑うだろう。
『一体ヴァーミリオン選手はどこまで吹っ飛んだのか!?これはもう勝負はk「まだ終わってたまるもんですかあああぁぁっ!!」と思ったら天井を突き破って上から舞い戻ってきたぁぁぁっ!!ヴァーミリオン選手凄まじい執念だぁぁっ!!』
もう勝負は決したと思われたその時にステラが天井の一部を爆破して上から飛び降りてバトルフィールド上の幸斗にその勢いのまま炎を纏った妃竜の罪剣を叩き付けるが鬼童丸の一振りであっさりと弾き飛ばされて幸斗の50m前方のバトルフィールド上にスタイリッシュに着地した。
—————ステラ、よかった・・・。
観客スタンドで顔を青くしていた一輝が胸を撫で下ろしてホッとする、この第五訓練場の中で一番驚愕に思ったのは間違いなく彼だろう、それほどステラ・ヴァーミリオンという伐刀者の実力を評価しているのだ無理はない。
「・・・煮え滾ってきたわ・・・」
再び睨み合った幸斗に対して身体から火の粉を巻き上げながらステラが口を開く。
「アンタの攻撃力は確かにアタシより上よ、悔しいけど認めるわ・・・けれどそれはあくまで物理攻撃の話」
話しながら妃竜の罪剣に摂氏三千度の炎を纏わせて真上に振り上げるステラ。
「Eランクのアンタにこの炎は破れないわ!覚悟しなさいっ!!」
その瞬間に炎は光の柱に変わり————
「蒼天を穿て、煉獄の焔」
光の柱が伸びて天井を溶かして貫き百メートルを優に超える光の刃となった。
『出た!ヴァーミリオン選手の《天壌焼き焦がす竜王の焔(カルサリティオ・サラマンドラ)》だっ!!』
破壊の限りを尽くす光の刃を幸斗に向かって振り下ろすステラ、だがその時ステラは信じられない光景を見た。
「なっ!?何をしているの!?早く逃げなさい!!消し炭になるわよ!!」
なんと幸斗は逃げずに片手で鬼童丸を振り上げて光の刃が迫るのを迎え撃とうとしているのが見えた。
「・・・勝手にかなわないと決めつけんじゃねぇえええっ!!!」
「っ!!?」
この瞬間に観客スタンドで観戦を続ける一輝だけが幸斗の振り上げた片腕に一瞬だけ纏った青色の焔の様な光が見えた。
—————あれは・・・《一刀修羅》の光?
真田幸斗 十五歳 破軍学園一年生
伐刀者ランク E
各ステイタス
防御力 F
魔力制御 F
運 D
身体能力 A
魔力量 F-
攻撃力 EX(測定不能)
次の瞬間に幸斗は太刀をチカラいっぱい振り下ろし、その瞬間に振り下ろされた太刀の先から巨大な光の波が発生して天壌焼き焦がす竜王の焔を呑み込んでステラの真横を通過して後方の壁を突き破って行った。
「・・・・・は!?」
ステラは唖然としていて第五訓練場内も絶句した、試合が始まってから今までも信じられない光景の連続だったがそのどれもが霞む程の想像を絶する光景だった。
『な!?ななななんという事だああっ!!ヴァーミリオン選手の放った天壌焼き焦がす竜王の焔が真田選手の放った閃光に打ち破られたぁああっ!!一体何なんだ今のは!?これが真田選手の伐刀絶技なのか!?』
「ちょ!?ちょっと待ちなさいよアンタ!」
ステラが声を荒げて幸斗に抗議する。
「今の伐刀絶技明らかにEランクの放つ威力じゃないわ!アンタランクを偽っていたのね!!」
幸斗に指をビシッとさして言い放つステラ、Aランクの伐刀絶技を正面から打ち負かす伐刀絶技を放つような奴がEランクなわけが無いと。
しかし幸斗はステラをその灼熱の眼で真っ直ぐ見据えて答えた。
「オレはれっきとしたEランクだ、測定器にもそう出たしな、それに何言ってんだアンタ?今のは伐刀絶技じゃねぇ————————
————————【剣圧】だ」
驚愕の一言を放った。
今のは月〇天衝じゃねぇ、剣圧だ。
本当は一話で決着をつける予定だったのですが、この小説はあまり長々と書かずに長くなりそうだったら区切って投稿するスタイルで行きたいと思います。
次回、幸斗VSステラは決着すると思います。
ではまた次回!