運命を覆す伐刀者   作:蒼空の魔導書

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社会に復帰してから初めての投稿です、三連休万歳ですね!

クオリディア・コードがなかなか面白かったので原作シリーズを買ってしまいました、今『いつか世界を救うために—クオリディア・コード—』の第1刊を読んでいる最中です。






伊達政和の伐刀絶技

果てしなく広い蒼穹の大空・・・この広大なフィールドを朱と蒼、二つの閃光が駆け抜け、交差し、せめぎ合い、衝突し、火花を散らしていた。

 

「五年ぶりだな真田幸斗!あの時以上の凄げぇ闘気じゃねぇかよ!フレッシュだぜ!!」

 

「へっ!テメェこそあの時より剣のキレが増してやがんじゃねぇかよ!それでこそオレがブッ倒すと誓った【龍】だぜっ!!」

 

足で空気を蹴って超高速で地上2000mにある雲の中を【跳び回る】朱(幸斗)と蒼(政和)はその中心で鍔競り合い状態で互いの再会と再戦を喜ぶように不敵に笑い、自分の宿命のライバルが五年前の邂逅の時より圧倒的に実力を付けている事を感じ取り称え合う。

 

「嬉しいぜ真田幸斗!こんなにも早くテメェと刃を交えられるなんてよっ!!」

 

政和がハイテンションでそう言い放った瞬間に二人は交えている太刀を弾き互いに後方に弾き飛んで距離が開いた、あまりの威力に衝撃波が発生して雲が消し飛び大気を揺るがした。

 

「へっ、そうかよっ!随分暇なんだな伊達!」

 

幸斗は空気を蹴り前傾姿勢を取って更に上空に跳んで政和に皮肉を言うが内心は嬉しそうにしている、七星剣武祭まで戦えないと思った最大のライバルと思いがけない所で戦えるのだから無理もないだろう。

 

「でもせっかく来たんだ、土産代わりにオレの鬼童丸の刃をたっぷりくらいやがれ!!」

 

「ハッ、そりゃこっちのセリフだ!挨拶代わりに俺の《蒼龍丸(そうりゅうまる)》の斬撃を山程プレゼントしてやるよ!!」

 

「上等だっ!!うおりゃぁぁぁあああああっ!!!」

 

「《螺旋風(らせんぷう)》!!はぁぁぁあああああっ!!!」

 

空気を蹴った跳躍で超高速で上昇し雲海を突き抜けた幸斗は朱く煌く鬼童丸を下方の雲海に向けて振るいステラの天壌焼き焦がす竜王の焔(カルサリティオ・サラマンドラ)を大きく上回る威力の剣圧を放ち、それと同時に政和が雲の中を落下しながら身体中に強烈な蒼いプラズマ現象を発生させて蒼く輝く蒼龍丸の刀身に竜巻を纏わせそれを巨大化させて上空に撃ち放った。

 

巨大な閃光と竜巻が正面衝突、極大球状に大爆発し雲海が爆ぜ大気が衝撃波によって激震した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「真田君・・・伊達君・・・」

 

「・・・私・・・夢でも見ているの?・・・」

 

「・・・あの二人・・・本当に人間なの?」

 

遥か上空で朱と蒼の閃光が縦横無尽に駆け抜け何度も交差しその度にまるでTNT(トリニトロトルエン)爆弾で爆破された建築物の如く雲が次々と爆散していく、その光景は戦争していると錯覚してしまう程あまりにも苛烈な戦闘であったので一輝達は戦慄した。

 

「まったく、こうなる事は予想していたが喧嘩っ早いたらありゃしないな」

 

「幸斗の奴・・・また腕を上げたっていうか、人外になったっていうか・・・」

 

政和の仲間である二人は遥か上空で戦闘を繰り広げる幸斗と政和を見上げて呆れていた、するとそこに———

 

「あちゃー、幸斗の奴やっぱりもう戦闘してやがったか」

 

「本当にもう、我慢という言葉を知らないのかしらあのお馬鹿?ここから2kmも離れている山岳地帯の高台から跳躍して行くなんて呆れてものも言えないわ」

 

「ん?」

 

「お前達は・・・」

 

涼花をお姫様抱きにしている重勝が北の方角から飛来して来た、どうやら幸斗は単身でここまで跳躍して来たようであり彼が空から現れたのはそれが理由であったようだ。

 

「ん?・・・ひょっとしてお前・・・綱定か?」

 

「あ、ホントだ、久しぶりねツナ」

 

「幸斗がいるんならお前らもいるとは思っていたけどお前らも空から来るのな重勝、姫・・・て言うか姫、いい加減【ツナ】って呼ぶのやめてくれない?オイラはマフィアのボスの十代目じゃね~ぞ」

 

重勝は政和の仲間二人の背後に着地して涼花を降ろすとやる気のなさそうな少年が自分達の知り合いである事に気が付いて涼花と共に声を掛け、声をかけられたやる気のなさそうな少年は重勝達が現れた事にさほど驚いた様子もなく答えた。

 

「綱定、知り合いか?」

 

「おう、オイラの古巣の仲間だ」

 

このやる気のなさそうな少年の名は《鬼庭綱定(おににわ つなさだ)》、彼は五年前幸斗達と共に連盟が管理する教育施設で再教育を受けた元西風の団員であり役職は《追撃部隊》、西風時代の二つ名は《絶止の追撃者(ロックチェイサー)》という、つまり幸斗達の元仲間だ。再教育を受けて十五歳になった元西風の団員達は全員が同じ学園に入学するわけではない、実戦経験豊富な彼等を一つの学園に集中させると学園のパワーバランスが崩壊するので可能な限り別々の学園に入学させるのだ、幸斗と涼花と重勝が同じ学園に入学したのは偶然ということであった。

 

「そうか・・・」

 

重勝と涼花が綱定の元仲間だと聞いた二本傷の少年は重勝と涼花に向き合った。

 

「初めましてになるな、俺は《片倉十士郎(かたくら じゅうしろう)》、上で暴れている馬鹿の昔馴染みのダチだ、まあよろしくとだけ言っておくぜ」

 

「片倉?」

 

「片倉って、あの《瞬剣(しゅんけん)》の片倉?」

 

十士郎がざっくばらんに名乗ると重勝と涼花は驚きの声を上げた。

 

「お兄様、瞬剣の片倉って?」

 

「うん、昨年の七星剣武祭で一年生でありながらベスト8まで勝ち進んだ巨門学園の実力者だよ、彼の能力は【身体の活性化】、自身の五感や反射神経や膂力など様々な身体能力を瞬間的に超強化する事ができる身体強化系の能力でそれは人間の限界すら越えるらしいね、霊装は刀と脇差の二振り《神無月(かんなづき)》、片倉さんはこの霊装と【身体の活性化】をもって放つ相手の急所である【額】【首】【心臓】【鳩尾】【金的】の五ヶ所を同時突きする伐刀絶技《点衝剣(てんしょうけん)》を決め技として使い破竹の勢いで勝ち進んで行ったんだけど、ベスト8で東堂さんと当たり、点衝剣が東堂さんに届く前に雷切で斬られて敗北したんだ」

 

「凄く微妙な成績ね」

 

「聞こえてるぞ・・・」

 

話を聞いていた一輝達はひそひそ話をしていたが聴力を超強化していた十士郎には丸聞こえだった、その時———

 

「うおっ!?」

 

「何だ!?」

 

ガキィィンという大きな剣音が聴こえて来たと思ったら上空から超高速で垂直に落ちて来た何かが一輝達と重勝達の間を挟む位置に叩き付けられて砂煙が舞った。

 

「・・・チッ!相変わらずの馬鹿力だなあの野郎!」

 

砂煙が晴れるとそこには政和が地に片膝を着いて悪態を吐いていた、どうやら彼は幸斗の一撃を受け止めてチカラ負けして上空から叩き落されたようだ。

 

「・・・また砂漠化している・・・」

 

一輝は動揺している、政和が遥か上空から叩き落されて無事なのは地面に叩き付けられる前に落下地点を【砂漠化】してクッション代わりにしたからだ。

 

「伊達ぇぇえええええっ!!」

 

「チィッ!」

 

そしてすぐに上空から流星のように落下して来た幸斗がそのままの勢いで政和目掛けて突っ込み鬼童丸を振るい、政和は幸斗が突っ込んで来る前にその場を跳び退いて回避し、幸斗が政和がいた砂漠地点に落下と同時に爆発したかのように再び砂煙が舞った。

 

「メチャクチャだわ・・・」

 

「もう今更だぞ姫ッチ・・・」

 

「まさか政和のような馬鹿がもう一人いたとはな・・・」

 

「衝撃波で周囲の木々が薙ぎ倒されているじゃんか・・・」

 

涼花達は周囲の被害に無関心な幸斗の暴風のような戦闘を見て唖然としていた、この前黒乃に学園を荒野にするなと諦め気味に注意されたのだが、どうやら聞いていなかったようだ・・・。

 

砂煙が晴れ、あんな勢いで落下して来たにも拘らずピンピンしている幸斗が姿を現す、幸斗は砂漠地点の上に堂々と立って30m前方にて不敵な笑みで蒼龍丸を構えている政和に鬼童丸の切っ先を向けて楽しそうに不敵な笑みを浮かべているが何故か右肩が【氷結】していた。

 

「行くぜ!伊達ぇぇえええええっ!!」

 

「来い!真田ぁぁあああああっ!!」

 

幸斗は右肩の氷結など気にも留めずに雄叫びを上げて政和へと突攻して行った。

 

「・・・一体何なんだ彼の能力は?」

 

「これで一つの能力だって言うの?」

 

一輝と有栖院が困惑気味に呟く、【酸欠】【砂漠化】【竜巻】【氷結】・・・どう考えても一つの能力だと思えない能力なので二人が困惑するのも無理はないだろう。

 

それを見兼ねた十士郎が仕方ないと言うかのように一輝達に歩いて近づき語り出した。

 

「政和の能力は確かに一つだ・・・だがこれを一つだと言うのは全ての自然干渉系の伐刀者に喧嘩を売っているとしか思えないけどな・・・」

 

後方で木々を薙ぎ倒し学園施設を破壊しながら暴れている幸斗と政和の方に十士郎は不服そうに振り向いて説明する。

 

「政和の伐刀絶技は自分の半径10m以内に様々な自然現象を発生させる《自然災害(ナチュラル・ハザード)》だ」

 

【自然災害】———危機的な自然現象によって人命や人間の社会的活動に被害が生じる現象の事をいう。日本の法令上【自然災害】は異常な自然現象により生ずる被害と定義されていて、その種類は【暴風】や【地震】【津波】【噴火】など多種多様、超常現象を操る伐刀者のチカラを持ってしても完全に防ぐ事はできない未だに人類に牙をむく強敵だ。

 

「ちょっと待ってください!それではあの方は無敵じゃないですか!?そんな人がどうしてBランクなんですか!?」

 

政和の能力の説明を聞いた珠雫が疑問を抱き十士郎に抗議した、政和が自由に自然災害を起こせるのなら彼はAランク認定されていてもおかしくはない筈だからだ。

 

「それは政和の【自然災害】は環境に依存するからだ、雪の無い場所で【雪崩】が起きるか?・・・つまりそういう事だ」

 

政和が【自然災害】を使うには条件が揃っていなければいけなかった、この日は真夏の様な日差しが降り注いでいる、【酸欠】は熱で酸素を燃焼させて真空状態にしてその空間を魔力で固定、【砂漠化】は土を乾燥させて乾いた砂を作り出し、【竜巻】は上昇気流を伴う気流の渦巻きを発生させて魔力で太刀に固定したり飛ばしたりしていたということだ。

 

「なら彼(幸斗)の右肩が【氷結】していたのは?この暑さの中で凍り付くなんて説明できるのかしら?」

 

今度は有栖院が十士郎に説明を要求した。

 

「さっきまで雲の上で暴れていやがっただろう?雲は水滴の塊だ、そして雲の上は真夏でも温度が氷点下まで下がっている、【氷結】現象を起こす条件は十分だぜ」

 

十士郎が難なく質問に答えたので一輝達は無理矢理納得する、納得いかないとは思っても目の前で起こっている以上受け入れるしかないのだから。

 

「・・・だが政和は【自然干渉系】の伐刀者に対しては確かに無敵だな、自然干渉系の能力は環境を変える、それに適応した自然現象を起こせばいいんだからな・・・」

 

そう、例えばこの広場に政和にやられて倒れている生徒の中に【凍傷】状態の生徒がいる、彼は氷の礫を飛ばす能力を持っていてその原理は空気中の水素を【冷やして】凝固させるというものなので彼が能力を使った瞬間その範囲に【自然災害】を使ってそれを相手にぶつければいいのだ。

 

「さて、そろそろ避難した方がいいかもな・・・」

 

「「「えっ!?」」」

 

「これでフィーネ(終わり)だぜ伊達っ!!オレの最強の一撃をくらいやがれっ!!!」

 

「フレッシュだぜ真田っ!!真っ向から叩き潰してやるよっ!!!」

 

十士郎が神妙な顔をしてそう言ったので一輝達は驚いた、既に爆心地と化している幸斗と政和がいる場所を見てみると二人は40m間を挟んで睨み合い、幸斗は鬼童丸を両手持ちにして構え、政和は天に龍が昇って行くと錯覚する程のプラズマ現象を発生させて蒼龍丸を構えていた。

 

「あのお馬鹿、龍殺剣(ドラゴンスレイヤー)を放つ気!!?」

 

「こりゃあやべぇな、止めるぞ姫ッチ!綱定!」

 

「逃げるなら・・・いや、もう遅いか・・・」

 

幸斗が龍殺剣を放つ体勢だと気が付いた涼花と重勝は幸斗達を止める為に急いで幸斗達に向かって駆けだし、綱定はアッサリ諦めてその場に座り込んでいた。

 

「言い忘れていたが政和が自然災害を発動する時必ず蒼いプラズマが発生する、それが蒼い龍に見える事からアイツは【蒼雷龍(ブルーライトニングドラゴン)】と呼ばれt「説明はもういいですから急いで止めに入りましょう!!このままだと破軍学園が消えてなくなってしまいます!!」・・・やれやれ、あの馬鹿が・・・」

 

この非常にマズイ状況で右手の人差し指を立てて説明する十士郎に二人を止めに行こうと叫ぶように必死に説得する一輝、それを聞いて十士郎は仕方が無く一輝達と共に幸斗達を止めに駆けだして行った。

 

そして幸斗と政和が太刀を振るおうとした所で二人は綱定を除く全員に取り押さえられて事態は終息した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




幸斗と政和の空中戦は『劇場版戦国BASARA—The Last Party-』の真田幸村VS伊達政宗の最後の戦闘シーンを想像してください。

ではまた次回!




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