運命を覆す伐刀者   作:蒼空の魔導書

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ライバル、それは・・・【強敵】と書いて【とも】と読む!

??総統「男の中の男達、出て来いクマァァー!」

運命を覆す我らが鉄砲玉!【バカとチカラと限界突破】!【真田幸斗】!!

幸斗「その運命を覆してやる!!」

わたしの戦術と濡れ煎餅は絶対無敵!【鋼鉄の毒舌姫】!【佐野涼花】!!

涼花「そんなので破られる戦術なんて五流以下よ」

勝敗に気持ちの強さは関係ないだろ?言葉と剣で切り捨て砲撃で沈める!【破軍学園の黒い魔王代行】!【風間重勝】!!

重勝「背負った想いが違うから負けない?とんだロマンティストだな」

戦え!たった一人の生き残りの座を懸けて!!

幸斗「いや、懸けねぇよ!何だよこの茶番!?」






ライバル、それは・・・【強敵】と書いて【とも】と読む!

曾て日本を中心に活動していた世界最強クラスの非合法傭兵団【西風】。

 

世界で五本の指に入る実力を持ち【傭兵王】の二つ名で知られる伐刀者【風間星流】を筆頭に【ひたすら前に突き進む志】を秘めた男達が伐刀者・非伐刀者・年齢問わず集まり結成されたこの傭兵団は五年前に団長である星流を失い壊滅した。

 

当時、福岡県北九州市のはずれにある小さな村で起きた大量虐殺事件の犯人である凶悪な伐刀者の討伐依頼をその村の村長から受け、その伐刀者が恐ろしく強く現在この村より北西に位置する【死絶島】を根城にしているという情報をその村長から貰った星流は西風全軍を率いて死絶島に乗り込んだ。

 

だがそこで待ち構えていたのは世界最悪の犯罪者にして世界最強の剣士【比翼】の【エーデルワイス】であった。

 

数々の特殊スキルを使う精鋭である西風の団員達も強すぎるあまり捕らえることを放棄された程の実力を持つ彼女には足下にも及ばない、総力を結集してかかった団員達は彼女の剣技の前に次々と倒れ西風は壊滅的な打撃を受けてしまう。

 

死力を尽くしてエーデルワイスに一太刀を入れ僅かな隙を作った星流は団員全員に撤退命令を出し、彼が追撃して来るエーデルワイスを食い止めている間に団員達は船に乗って死絶島を脱出した。そして星流はその戦いの中で命を散らしたのだった。

 

命辛々死絶島を脱出した西風の団員達は北九州の港に停泊するが、そこに待ち構えていたのは国際魔導騎士連盟から選抜された精鋭魔導騎士達と【特例招集】を受けた優秀な少年伐刀者達であった、彼等は待ち伏せしていたのだ、まるで西風が死絶島に出向きエーデルワイスに敗北してこの港に逃げ帰って来るのを解っていたかのように。

 

西風の団員達は彼等を相手に激しく抵抗するものの全員が満身創痍である為に満足に実力を出す事ができずに鎮圧され、戦闘の最中に海に落ちて行方不明となった数名を除き全員残らず連盟によって拘束されてしまい、この日をもって西風は壊滅した。

 

ほぼ全員が魔導騎士の資格を持たないで活動していた彼等は魔導騎士制度法違反によって【元服】している団員達の殆どが連盟が管理する伐刀者専用の監獄に投獄され、元服していない十五歳以下の少年伐刀者達は連盟が管理する教育施設で再教育を受ける事となった。

 

・・・その少年伐刀者達の中に当時十歳にして【子破王】と恐れられた真田幸斗の姿もあった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

教育施設の面会室、一枚の強化硝子が面会者との間に隔たるこの部屋で前に朱いメッシュが入った夕焼け色の髪で灼熱の様な瞳で相手を焼き焦がすような眼をした両頬に二重三角形のタトゥーが彫られている十歳の少年・・・真田幸斗は面会に来た同い年の右眼を白いガーゼで覆った黒髪の少年と張り詰めた空気を漂わせて面会をしていた。

 

「よお、二週間振りだな真田幸斗」

 

「・・・何しに来たんだ?」

 

「へっ、最初の言葉がそれとはつれねぇじゃねぇか?この右眼を潰した奴がよ」

 

面会に来た隻眼の少年に対して素っ気無い態度をする幸斗、現在彼がこの施設に入ってから二週間が経っておりこの隻眼の少年と幸斗はその二週間前の北九州の港で相対していてその戦闘中に幸斗が少年の右眼を潰したという因縁ができていたのだ。

 

この隻眼の少年はなんと十歳という幼さで【特例招集】を受けた天才児であり今回は彼の初陣でもあった、その洗礼がこの右眼というわけである。

 

「恨み言でも言う為に来たのか?・・・なら帰れよ」

 

「んだよフレッシュじゃねぇな、この右眼を潰したテメェに興味が湧いて来たんだぜ、そのショボイ魔力量なうえにボロ雑巾な状態でこの俺と互角に戦ったテメェにな・・・」

 

「オレは男に性的な興味を持つ変態じゃねぇから断るぜ」

 

「俺だってねぇよタコ!」

 

張り詰めた空気だったのに話が逸れてきた為に緩くなったので一呼吸置いた隻眼の少年が気を取り直して幸斗に向き合う。

 

「そんなテメェに聞きてぇ・・・テメェはこれからどうするつもりだ?施設で再教育プログラムを受けるのは【元服】する十五歳までだろ、その後どうする?」

 

伐刀者は《元服制度》によって十五歳で成人とされる、幸斗達が再教育プログラムを受けるのはその間だけだ、隻眼の少年は満身創痍で自分を傷つける程の実力者である幸斗がその後どうするのか興味があった、故に彼は敵同士であるにも拘らず幸斗と面会に来たのである。

 

「・・・その後も決められてんだよクソ、俺達は全員強制的に連盟に入れられて正式な魔導騎士の資格を得る為に騎士学校に入学させられるんだとよ、チッ!好き勝手に人の人生決めやがって、一応騎士学校には入学するがオレは連盟の言いなりになる気はねぇ、オレはオレ自身が決めた道を行く」

 

幸斗はその灼熱のような目線で隻眼の少年を睨みつける。

 

「魔力量で決められた運命なんて覆してやる、邪魔する奴はブッ飛ばす!」

 

当然の如くこの面会室には盗聴器が設置してあるというのにお構いなしに伐刀者の有り様に喧嘩を売るような事を言い放つ幸斗、これを聞く連盟の役人は相当腹を立てることだろう、しかし————

 

————・・・へっ!二週間前と同じいい眼をするじゃねぇか、まるで付けられた足枷を今にでも引き千切って暴れ出そうとする鬼の様だぜ、施設に入って腑抜けたかと思いきやとんだフレッシュな野郎じゃねぇか、おもしれぇ!

 

直接その言葉を聞いた隻眼の少年は口の端を吊り上げて凶悪な笑みを浮かべた、まるで面白い事を聞いたとにやけるやんちゃボウズのように。

 

「おもしれぇ事言うじゃねぇか真田幸斗・・・そういえば二週間前は結局横槍が入って一対一じゃ決着つけられなかったな」

 

そう言って隻眼の少年は真っ直ぐ幸斗の灼熱の様な眼を見た、獲物を目に捉えるような鋭い眼で。

 

「ならこの決着、お互い騎士学校に入学する五年後に最強の学生騎士を決める大会・・・【七星剣武祭】の舞台で決着を着けようぜ真田幸斗!まさか受けねぇなんて言わねぇだろうな!?」

 

不敵な笑みを浮かべて幸斗に提案をして挑発する隻眼の少年、どっちが強いのか白黒ハッキリ付けなければ気が済まない、彼の心の中は今幸斗への対抗心でいっぱいだ・・・そしてそれは幸斗も同じだ。

 

「・・・上等だ、オレを誰だと思ってやがる!西から吹き荒れる猛き熱風!天下無敵の傭兵団西風特攻部隊のエース!運命を覆す【子破王】真田幸斗とはオレのことだ!!・・・いいぜ、その喧嘩・・・買った!!」

 

これが幸斗が七星剣武祭の出場を目指す理由だ、この時倒すと誓ったこの少年と戦って倒す為に彼は前に進むのだ、運命を覆し、その未来(さき)に進む為に。

 

「フレッシュだぜ!そう来ねぇとな!・・・鬼は龍が喰らう、真田幸斗!テメェはこの《伊達政和(だて まさかず)》が直々にブッ倒す!!」

 

二人はこの時をもってライバルとなった、互いに高みに上り詰める為の最強の好敵手同士に・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの激動の選抜戦第十戦目から約一ヶ月が過ぎた、衣替えによって学生服は夏服に変わり薄手になり季節の変わり目を感じさせる。あれからも幸斗達は順調に連勝を重ね次の試合でもう第十六戦目、学内選抜戦はいよいよ終盤に差し掛かっていた。

 

「うおおおおおおおぉぉおおおぉぉおおおっ!!」

 

この日、地球温暖化の影響か最大気温三十度以上の真夏日のような暑さでありギラギラとした熱線の様な太陽光が地を焼く中、幸斗・涼花・重勝の三人は基礎戦闘力向上の為のトレーニングを行う為に破軍学園の敷地より約2km北にある山岳道路に来ていた。

 

「見ているだけで暑苦しいわね・・・」

 

無数の大型トラックのタイヤをワイヤーで後ろに繋いで引きずる特殊合金製の競輪自転車を漕ぎ砂煙を巻き上げながら猛スピードで坂道を駆け上がる幸斗、大量の汗を流して雄叫びを上げながら自転車を漕ぐその姿はただでさえ暑いのに余計に熱気をまき散らして周囲の気温を上昇させるかのような錯覚を感じさせるので坂の頂上付近の木の陰で見ている涼花は顔を引き攣らせた。

 

幸斗がやっているトレーニングは【マウンテンサイクリング】、急斜面の坂道をギアの無い競輪自転車を漕いで登ることによって効率良く脚力を鍛えるトレーニングである。

 

「・・・二分八秒・・・こりゃあまた異常なタイムだな・・・」

 

幸斗が山岳道路を登りきり、坂の頂上でタイムを計っていた重勝が止めたストップウォッチの記録を見て顔を引き攣らせる・・・この山岳道路は全長1.2kmあるうえに斜め三十八度の急斜面であるのでそれを無数の大型トラックのタイヤを引きずりながら歩くよりもキツイ自転車を漕いで登って来ておいてこんな異常なタイムを叩き出した幸斗にドン引きしたのである・・・。

 

「・・・ふぅ・・・よしっ、絶好調だ!もう一度」

 

「そのくらいにしておけ、いくつ自転車をお釈迦にするつもりだ?」

 

「そうよまったく、この自転車特別発注するの高くて大変なんだからね」

 

坂の頂上に到着した幸斗は調子に乗ってもう一度やろうと既にボロボロの自転車に乗って坂を下ろうとするがそれを重勝と涼花が引き留める、特殊合金製のこの自転車は幸斗の為に特別発注したものであり値段が非常に高いからだ。普通の自転車ではAランク伐刀者を大幅に超える幸斗の脚力に耐えられない、故にこの特殊合金製の自転車を西風時代のコネを使って特別発注したのだが、幸斗は今日このトレーニングで既に五台もの自転車を使い物にならなくしていたのだった。

 

「だったら次のトレーニングをy「今日はここまでだ、全教科テスト赤点の補習のストレスを解消したいんだろうけど過度なトレーニングを長時間続けると選抜戦に支障が出るからな」おい!テストの事はもういいだろシゲ!」

 

戦闘を生業とする魔導騎士でも社会の基礎知識は必要だ、騎士学校である破軍学園にも当然一般知識の授業およびペーパーテストは存在する、先日ペーパーテスト全教科全て80点以上の高得点を取ると息巻いていた幸斗だったが結果は全教科全て30点以下の赤点・・・見事に惨敗だったので幸斗は数日前まで補習授業を受けさせられストレスが溜まっていた。

 

「特に五教科は酷かったわね、現代国語15点、理化学12点、現代社会7点、英語12点・・・そして数学に至っては0点・・・合計46点・・・またしても50点の壁は越えられなかったわね」

 

「りょ・う・かぁぁあああ!!」

 

「そもそも間違える度に腕立てやスクワットを千回やるとかいう時間を無駄にするような勉強方法で上手く行く筈がないでしょお馬鹿」

 

「うがぁぁああああっ!!」

 

涼花に馬鹿にされるように指摘され腹を立てて余裕そうに逃げ回る彼女を追い回し始める幸斗———その時、破軍学園の敷地の方から爆発音が聴こえてきた。

 

「なんだ?」

 

異常に思った幸斗達は切り立った崖の上から2km先に見える破軍学園の敷地を見渡し、何かが爆発したような黒煙が敷地の入り口付近の広場から上がっているのが見えた。

 

「なっ、何だよあれ!?」

 

「・・・敵襲か?」

 

幸斗は煙が上がっている辺りを良く見てみるが遠すぎて詳しくは分からない、重勝も眼を魔力で強化して見てみるが広場に人だかりができているのが見えただけで誰がいるのかは解らなかった。

 

「・・・面白い人達が来ているみたいね」

 

そんな中で異常な視力を持つ涼花には広場にいる人間達一人一人が誰なのかがハッキリと見えたみたいであり、広場の中央にいる三人を見て彼女は笑みを浮かべていた。

 

「解ったのか姫ッチ?これをやった奴等が」

 

「ええ、わたし達が良く知っている奴等よ、特に今広場の中央で大勢の学園の生徒達を相手に無双している男なんて幸斗の因縁深い人間よ」

 

「オレの因縁深い人間?・・・まさか!」

 

笑みを浮かべながら語る涼花の言った男の事が誰なのかを察した幸斗は驚愕と共に心の奥底から闘争心が湧いて来て不敵な笑みを浮かべるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「安心しな、不本意だが幻想形態だ」

 

「ひいぃっ!?」

 

右眼に黒い眼帯をして背中に三日月が刺繍された蒼い上着を羽織った伊達男が蒼い刀身の太刀の形をした霊装の切っ先を尻餅を着いて後ずさる男子生徒に突き付けている。

 

—————何なんだコイツ!?普通能力は一つだけしか使えない筈だろ!?

 

周囲にはこの男と戦って倒れている破軍学園の生徒達が気を失って倒れていた、それらは炎症や凍傷、鎌鼬で切り裂かれたように学生服がズタズタにされていたり感電していたり様々な状態で倒れていて、これらを一つの能力でやったと説明するには明らかに不自然である。伐刀者の能力は一人一つしか使えないのが常識だ、それをこの隻眼の少年はまるで複数の自然干渉系の能力を行使して戦闘しているように見えるので異常に感じるのだ。

 

「喧嘩売られたからとは言えやり過ぎだろ政和・・・」

 

「やり過ぎか?挨拶程度だっていうのにやられるコイツ等が弱いんじゃね?」

 

隻眼の少年の後ろにいる右頬に斜め二本の傷がある極道の息子っぽい少年が唖然として呟き、その隣でしゃがみ込んで退屈そうにしている不真面目な雰囲気の少年がそれを聞いて自分の意見を言った。

 

そんな事を言っているうちに隻眼の少年は男子生徒を太刀で一閃して気絶させていた、問答無用である。

 

「こんな雑魚共じゃ全然フレッシュにならねぇ、挨拶に来たんだからとっとと出て来いよ・・・真田幸斗!」

 

身体と太刀に突風を纏い蒼いプラズマ現象が蛇の胴体を持った龍を模る、この隻眼の少年こそが巨門学園の大型新人(スーパールーキー)【伊達政和】、【蒼雷龍(ブルーライトニングドラゴン)】の二つ名を持つ幸斗の最大のライバルだ。

 

 

 

 

 

 

 




バトル物に最も必要なのは、ヒロインでも踏み台でもない!最高のライバルだ!!

ぶっちゃけ自分は踏み台なんか出すよりも強力なライバルを出した方が有益だと思っています。

てか踏み台って何か意味あるのだろうか?強力なライバルと熱い死闘を繰り広げて競い合う方がよっぽど盛り上がると思うのですが?



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