また、今回の話は若干のグロ描写がありますので注意してください。
「なっ!?空を飛びながらあの数の魔力球を制御しているっていうの!?」
「ただ五十の魔力球を操っているならともかく、重力操作と魔力の放出をして安定した飛行をしながら全ての魔力球の位置を把握して同時に全て別々の動きをさせている・・・これは下手をしたら珠雫以上の魔力制御能力だわ」
「・・・これが・・・学園序列一位の実力の一端か・・・」
観客スタンド二階の席で観戦をしている一輝達が上空から怒濤の攻めをする重勝を見て驚いている、彼等は数刻前に先程の試合で敗北して医務室に運ばれて行ったステラの所に行こうとしたのだが、これからも選抜戦を勝ち抜いて行く為には学園最強クラス同士が戦うこの試合を見逃すわけにはいかないと判断しステラの様子を見に行くのを後回しにして観戦を続けることにしたのだった。
————この学園にこんなに魔力制御能力の優れた先輩がいたなんて・・・どうやら私のこの学園の学生騎士への認識は甘かったみたいですね、私が一番かと思っていたのですが・・・。
三人の中でも特に一年生最高の魔力制御能力を持つ珠雫は魔力制御能力だけは自分が破軍学園一だと思っていたのでショックを受けると同時に今までの自分の認識の甘さを改めていた。
「実力の一端?どういうことなの一輝、あれでもまだ本気じゃないって事?」
有栖院は一輝が呟いた言葉に疑問を抱いたので一輝にその疑問を言ってみると一輝は眉を寄せて真剣に話しだす。
「・・・アリス・・・風間さんは昨年の七星剣武祭を試合当日に棄権して裏切り者扱いされている事は知っているよね?」
「ええ、学園のそこら中で彼の悪評は耳にするしね」
「その七星剣武祭後の夏休み明けの日に風間さんと学園序列二位の東堂刀華さんが決闘をしたんだ、何故だかは知らないけれど七星剣武祭を勝手に棄権をした風間さんは序列一位に相応しくないと当時の理事長が仕組んだ決闘だというのが有力説だね、本当の理由は当人達しか解らないだろうけれどそれは重要じゃない、問題はその決闘で風間さんが全くの無傷の完全試合(パーフェクトゲーム)で東堂さんに勝利した事だよ」
一輝はバトルフィールド上空で未だに無傷の重勝を目で追いながら話を続ける。
「僕はその決闘の時に学園の郊外で鍛練をしていたから気が付かなくて見逃したんだけど・・・去年の七星剣武祭でベスト4に入った【雷切】の二つ名で知られる東堂さんの実力を考えると・・・風間さんが今本気を出していると仮定するなら東堂さんが完全試合で負けるなんてあり得ない、彼女ならこれぐらい余裕で攻略するよ・・・だからこれは風間さんの実力の一部だけだと考えたって事さ」
「・・・つまり詳しい事は分からないって事ね・・・」
一輝が当時の決闘を見逃したと聞いて呆ける有栖院、しかし一輝は構わずそのまま話を続ける。
「まあそうなんだけどさ・・・僕はそれ以外の風間さんの今までの公式戦・摸擬戦・学園イベント戦の動画は全てに目を通したよ・・・だけど風間さんはどの試合も今目の前で試合をしている風間さん以上の戦闘力を出さずに全て勝利しているんだ、つまり東堂さんとの決闘で風間さんは破軍学園に入学して一番高い戦闘力を出したということが簡単に予測できる・・・少なくとも目の前の風間さんはまだ本気じゃないって事だよ」
恐らく風間重勝という伐刀者の底はまだまだ深い、一体彼はどれほどの実力を隠しているのか?一輝はそれが気になり、同時に選抜戦で自分が重勝と当たった場合にどういう戦術なら彼を地に墜とせるのだろうかと考えながら観戦を続けるのだった。
「くっ!この数をコントロールしながら自らも自由に動いて遊撃・・・貴方は本当に人間なのですか!?」
五十の魔力球と連携を取りながら容赦なく攻めて来る重勝に対して襲って来る魔力球を必死に迎撃しながらカナタは悪態を吐く、重勝は時に二・三球の魔力球を自分の後方から追従させて近接戦を仕掛け襲い掛かって来る星屑の剣を魔力球でブロックしつつ凄まじい剣速の剣閃で斬り掛かり、時に複数の魔力球を操って彼女の行動を制限させて動きが止まった所で砲撃を撃ち込むなどをして徐々にカナタを追い詰めていた。
「どうしたんだ貴徳原っ!?まだ一つも俺にお前の刃は届いてないぜっ!」
一瞬の隙を突いてカナタに接近して剣閃の連撃を彼女に振るう重勝、それに対してカナタは漆黒の刃でその身を斬り刻まれながらもなんとか致命傷となる攻撃だけは上手く逸らして必死に耐えている。
「う”っ!ぐっ!・・・まだ・・・まだですわっ!!」
「おっと」
カナタは重勝の上段から下段への直斬りを右側に躱して一瞬にして星屑の剣を彼の口内に向けて飛ばすものの、並外れた反射神経でそれに反応した重勝は地に振り下ろした砲剣をすぐさま切り返して振り上げる事によってその風圧で眼前に迫った無数の刃を吹き飛ばし、カナタが更に追い撃ちを掛けて来ようとしていたので重勝は後方上に大きく跳び退いて飛行して宙に逃れるが————
「逃がしませんわよっ!」
すぐさまカナタは無数の刃を重勝の後ろから追撃させる、だがそれはすぐ近くに漂っていた四つの魔力球が飛んで来てお互いに相殺されて追撃は失敗に終わり————
「甘えよ貴徳原」
「しまっ!?」
「収束重力砲(ストライクブラスター)っ!!」
重勝は一瞬の隙を突いて十二の魔力球でカナタを包囲して彼女の動きを妨害し砲剣の回転式弾倉(リボルバー)を五回転させて圧縮された魔力を彼女の方に向けた切っ先に収束し、高重力エネルギーの砲撃を行動を制限されたカナタに撃ち、直撃と共に大爆発した。
『風間選手の収束重力砲が炸裂ぅぅううううっ!!これをまともに受けたら無事では済まないぞぉぉおおおっ!?貴徳原選手万事休すかああぁぁああぁああっ!?』
大爆発によって発生した爆炎と煙が徐々に晴れてきて完全に消えるとそこにカナタの姿は無かった。
『とっ、貴徳原選手が消えたぁぁあああっ!?どういう事だあああああぁぁぁっ!!?もしや今の砲撃で木っ端微塵になってしまったのかあああぁぁあああぁあっ!!?』
実況解説の女子生徒の絶叫が響き第二訓練場内の観客の生徒達の顔が真っ青になり静まり返る、カナタは今の砲撃で粉々になってしまったのか?————
「・・・おいおい、聞いてねーぞ?まさかお前も飛べるなんてよ・・・貴徳原」
地上60m上を飛行する重勝がそう言ったのが聞こえてきたので観客の生徒達は全員ハッと上を見上げた、するとそこには重勝の20m手前で【宙に制止して】息を荒く吐きながらも堂々と彼と向かい合うカナタの姿があった。
『なっ!?ななななななななんと貴徳原選手は無事だったぁぁああああぁあぁぁああっ!!しかもなんと貴徳原選手も空を飛んでいます!これは一体どういう事だあああああぁぁぁっ!!?さっきから私は叫んでばかりでそろそろ喉が痛くなってきたぞぉぉおお!水っ!水ぅぅぅうううっ!!・・・って空ぁぁぁぁあああっ!!?』
実況解説の女子生徒の悲痛な叫びが会場全体に響き渡る、その実況解説席の真上の階の観客スタンド最前列の席を見るとそこにいる寧音が150mℓ入るペットボトルの水をがぶ飲みする姿が見えた(笑)。
「・・・わたくしは自分の操る星屑の剣の上に乗っただけ、要は使いようですわ・・・貴方が零か無限(ゼロ・オア・インフィニティ)を上手く応用して飛行しているのと同じです風間さん」
カナタの足下を見てみるとそこに薄ぼんやりと光る透明な足場が構築されていた、確認するまでもない、これは星屑の剣の集合体だ、カナタは飛行しているのではなくこの足場に乗って立っているだけなのだ。
そもそも重勝の【零か無限】は空戦に特化した能力というわけではない、これは彼の規格外な魔力制御能力あってこその空戦スキルだ、ただ飛行するだけでさえ珠雫と同等の魔力制御能力が必要とされるのにそれに加えて五十もの数の誘導重力球を操り尚且つ自分自身も動いて空と地上の近中遠全ての距離の戦闘を制するある意味ステラ以上のオールラウンダー、重勝の魔力制御がどれだけ規格外なのかが良く分かる。
「そうかよ・・・んじゃ、このまま空中戦と行くか!」
重勝は空中を漂う全ての誘導重力球を自分の周りに集合させて自らも攻撃体勢に入る、五十あった魔力球もいくつかカナタに斬り墜とされるか被弾するかして数が減り今は先程と同じ三十二球となっていた。
「風間さん、行きますよ!」
二人がそれぞれ誘導重力球と星屑の剣を飛ばし合って互いに正面衝突したのを合図に激しい空中戦が始まった。
「なるほど!同じ場で戦ってアドバンテージを無くせば同ランクである風間重勝と互角に渡り合えるってわけだ!流石カナタ!!」
観客スタンド最上階の通路にある手摺りに座って観戦する泡沫が興奮気味にカナタを絶賛する、泡沫はそもそも今までカナタが一方的に押されていたのも一年前に刀華が完全試合で負けたのも全て重勝が制空権を奪取したことによるアドバンテージの所為だと思っていたのでそのアドバンテージさえなければ刀華もカナタも負けたりしないと踏んでいた。
「・・・・・・いや、これは愚策だよ・・・」
しかし、隣で観戦している刀華はそうは思わなかった。
「は?何でだい刀華?」
「確かに同じ土俵で戦えばやりやすくはなるよ・・・だけどそれだと風間さんはまた別のアドバンテージを得る事になるんだよ・・・」
「別のアドバンテージ?」
「そう、うた君も分かっているとは思うけど相手の土俵で戦って勝つには少なくとも相手より三倍以上強くなければいけないの、空戦に慣れている風間さんと慣れていないカナちゃんとじゃどちらが有利かは明白だよ」
刀華は説明しながらバトルフィールド60m上空で戦闘を繰り広げる二人を見上げた。
無数の刃が一つの魔力球を斬り墜とした隙にカナタの後方から接近して彼女の背中を斜めに斬り付けて大ダメージを与え、激痛による悲痛な叫びを上げる彼女に容赦なく四発の魔力球を上から勢いよくぶつけて追い撃ちをかける重勝・・・戦況は全く好転していないどころか寧ろカナタの戦闘力が落ちて状況が悪化しているようにも見えた。
「ただでさえ慣れない空中戦なうえに多くの星屑の剣を足場としてコントロールしながら足場を作った為に大幅に数を減らした星屑の剣で無茶な対応をしなければいけない・・・空での戦闘は地上での戦闘と比べて視界が広くなるからより多くの対応能力が必要になる、カナちゃんの空間認識能力と魔力制御は優れているけれど風間さんのと比べると正直御粗末と言える・・・風間さんの凄まじい空戦スキルは彼の持つ規格外な魔力制御と空間認識能力あってこその物だから、今のカナちゃんは絶対的に不利な選択をしたんだよ」
「・・・そんなの・・・アリかよ・・・」
刀華の説明を聞いて落胆する泡沫、こんな無茶な選択をした親友に困惑せざるを得ない刀華はどんどん傷付いていくカナタを見て疑問を抱いた。
「そんな基本的な事カナちゃんだって分かっている筈・・・なのにどうして?」
「ぐはぁあああっ!!・・・まだ・・・まだですわっ!!」
行く手を阻む無数の不可視の刃を一振りで薙ぎ払って正面からカナタに接近した重勝は彼女の腹部に水平蹴りを叩き込んで蹴り飛ばす・・・今のカナタの姿は試合前の気品に満ちた貴婦人の姿はどこにもない悲惨な姿である、いつも被っていた鍔の広い純白の帽子は多くの魔力球の被弾によって弾け飛んで無くなり、身に纏った純白のベルラインドレスは漆黒の刃で斬り裂かれ魔力球が被弾して弾け飛んだりした為に上半身の布は身体の大事な部分を隠す僅かな布しか残っておらず、下半身の長いスカートは所々に穴が空いていたり左右がスリットの様に縦に斬り裂かれたりしていて下着と生足が見えていて既にスカートの役割を果たしていない、そして何よりも悲惨なのは身体中の至る所に付けられた傷口から流れ出る血が白い肌と残った僅かな布を緋色に染めていて見るに堪えない、正直鮮血で染まっていない箇所を探す方が困難だった。
その彼女の負傷が未だに無傷の重勝との実力の差を物語っていた、しかし彼女は諦めない、勢いに乗って更に追撃を仕掛けて来る重勝の一瞬の隙を突いてカナタは無数の刃を彼が振るってくる漆黒の刃にぶつけて拮抗させる。
「風間さん!貴方は一体何を考えているのですか!?」
「ん?」
至近距離で漆黒の刃と無数の刃を拮抗させている状態を保ちながらカナタは問う、親友を苦しめる存在である目の前の黒い剣士にずっと前から聞きたかった疑問を。
「学園中の人達の想いと責任を踏みにじって皆を敵に回して!皆の想いを背負って戦う刀華ちゃんの事を何とも思わずに容赦なく叩き潰し邪魔して!!それなのにこうして選抜戦に出てわたくし達の邪魔をして!!一体何のつもりなのですか!?わたくし達は・・・・・刀華ちゃんは応援してくれている《若葉の家》の子供達や学園の皆さんの希望となって前に進む勇気を与えようとしているのに!それを貴方はっ!!」
悲痛な想いを星屑の剣に乗せて重勝を後方に弾き飛ばす、皆の希望である刀華の道の邪魔はさせない、その友への強い想いが最早立っているのが不思議なぐらい身体の限界を超えている彼女を動かしていた。
カナタは反撃の隙は与えないとすかさず無数の刃を飛ばして重勝を追撃する・・・しかし————
「・・・・・そうかよ」
「えっ!?」
無数の刃が重勝を斬り刻んだと思った瞬間にいつの間にか無傷の重勝がカナタの背後を取っていた。
相手の意識の死角を突いて見失わせ回避する【集中回避】だ、元【西風】の団員だった重勝も当然この技術を身に付けていたのだ、そしてこれを使われたら対処するのは基本不可能だ。
「ぐはぁあああっ!!」
何度も傷つけられたカナタの背中に右斜めの剣閃が叩き込まれて彼女はまた一つ大きな傷を負い激痛で悲痛な叫びを上げる。
狂う様に悲鳴を上げて苦しむカナタを見ても重勝(悪魔)は容赦はしない。
「があ”あ”あ”あ”あ”あ”っ!!!」
なんと重勝はカナタを天井に吹っ飛ばすように零距離で彼女に砲撃を撃ち込んだのだ。
『貴徳原選手砲撃ごと天井に叩き付けられたぁぁぁあああっ!!まるで勝負にならなぁぁあああいっ!!風間選手圧倒的強さで格の違いを見せつける!これが序列一位の実力だぁぁあああっ!!』
砲撃がカナタごと天井に直撃した事によって被爆し、直撃した箇所に大穴が空いて蒼穹の大空がそこから顔を出した。
「・・・・・」
意識はあるものの最早身体にチカラが入れられないボロボロのカナタが星屑の剣の足場を失い、まさに今落下しようとしている——————
・・・だがここで彼女が楽になる事を重勝(悪魔)は許さなかった。
「っ!!?」
穴が空いた天井の手前で落下しかけたカナタの右手首に突如出現した黒い輪が嵌められ、右腕を宙吊りにする様な恰好にして彼女をその場に拘束した。
「・・・【重力の拘束具(グラビディバインド)】・・・」
宙吊り状態のカナタがチカラの無い声で重勝が使った伐刀絶技の名を呟く、一年前の決闘で重勝が刀華の身体をこれで拘束して無防備状態にしてそのままとどめを刺した忌まわしき輪・・・それが今自分の右手首に嵌まっている事実が彼女の心に苦虫を噛み潰したような遣るせ無い想いを抱かせた。
「・・・貴徳原・・・」
砲剣の切っ先をカナタに向けて回転式弾倉を五回転させる重勝、最後は高重力エネルギーの砲撃でとどめを刺すつもりのようだが重勝はまだ切っ先に重力エネルギーを収束しない。
「【若葉の家】っていうのは何だかわからねーけど・・・お前・・・東堂が活躍するのを見てアイツ等全員が前に進んでいると本気で思っているのか?」
「・・・・・えっ!?」
重勝はさっきのカナタの問いに対して問い返したい事があったのだ、彼が問うのは刀華が本当に破軍学園の生徒達が前に進む為の希望になっているのかという疑問だった、何を訳のわからない事を言うのかと思ったカナタは呆けた、それもそのはず、刀華は破軍学園の生徒会長にして昨年の七星剣武祭ベスト4まで勝ち進んだ英雄、皆が彼女を慕い、尊敬し、信頼している・・・刀華は確かに皆が目指すべき目標になっている筈だ・・・カナタがそんな想いを馳せていたその時、地上の観客スタンドから罵声の嵐が飛んで来た。
「ふざけんなよ裏切り者が!」
「テメェに勝ち進む資格なんかねぇっ!引っ込みやがれ!」
「そうよそうよ!」
「会長達は俺達の為に戦ってくれているんだ!てめぇと違ってな!」
「貴徳原さんを放せ人間のゴミが!高ランクだからって好き勝手やれると思ったら大間違いだ!」
「そうだ!お前なんか会長がきっとぶちのめしてくれる!いつまでも調子にのっているんじゃないぞ!」
次々と飛んで来るブーイングの嵐、裏切り者の重勝を罵倒し刀華達を信頼する声。
—————ほら、やっぱり刀華ちゃんは間違ってなどいません、こんなにも大勢の人達が刀華ちゃんを信頼してくれて。
カナタは心の中で安堵した、刀華が正しいという事は皆の信頼が証明してくれているからだ。
「そうだ!会長がきっとやってくれる!」
「ああ!絶対に会長が俺達の代わりに全てを成し遂げてくれる!」
「あの人は俺達凡才と違って特別だからな!お前なんか目じゃないんだよ!」
「そうだ!だから会長達の邪魔してんじゃねぇよ!」
—————・・・・・えっ!?
安堵していたカナタだったがしばらくブーイングを聞いていると何か違和感を感じた、何かが変だ、何かが引っ掛かると。
皆が刀華やカナタの事を信頼してくれているのは確かだ、なのに何故か変な感じをカナタは感じたのだ、一体どうしてと思っていたところで重勝が口を開いた。
「そういえば【落第騎士】と【狩人】の試合の時もアイツ等はこんな感じの罵倒をしていたな、【Fランクのくせに背伸びしてんじゃねえよ】とか【狩人の邪魔するな】とか【騎士の風上にも置けないクズだ】とか自分達より低ランクの黒鉄を馬鹿みてーに笑ってよ、あれ聴くに堪えなかったぜ、自分達は立ち向かう事さえしない癖にさ」
重勝が呆れるように話をすると重黒の砲剣に変化が起こった。
『な、何だこれはぁぁあああっ!?風間選手の霊装の刃が真ん中から二つに割れてその中から黒い砲塔が出て来ましたぁぁああああっ!!』
漆黒の刃が二つに割れてそれが花弁の様に開き、中から姿を現した黒い砲塔が上で拘束されているカナタにその砲口が向けられる、砲口の中を良く見てみると奥に圧縮された黒い重力エネルギーが渦を巻くように収束されていた。
「悪いな貴徳原、質問には【つい最近やりたい事ができたから】としか答えられねーわ!今教えたら意味がねーからな・・・んじゃちょっとキツめのいくぜっ!!」
カナタは感じた違和感と余計に謎を残す重勝の答えを聞いた為に動揺して混乱しているが重勝はカナタが考えをまとめるのを待つということをせずに容赦なくその真っ黒な筒の中で渦巻く暴力の塊を発射した。
「《収束重力大砲(ストライクカノン)》!!」
収束重力砲(ストライクブラスター)が巨大な重力エネルギーの塊を砲弾として撃つのならこれは黒い極太レーザーだ、無慈悲を体現するような黒い砲撃が拘束されて動けないカナタを飲み込み蒼天を駆けて行った。
さて、今回も重勝が刀華の生き様に共感しない理由の伏線が引かれました、果たしてその理由とは?そして重勝がこの選抜戦に出場した目的とは?
次回、重勝VSカナタの試合はクライマックスを迎えます!・・・たぶん?