運命を覆す伐刀者   作:蒼空の魔導書

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まさかの三日連続投稿だ!力尽きたぜ!(笑)

涼花VSステラ、決着です!


一流の戦術家の条件は!

涼花VSステラの試合は肉弾戦で自分が放った拳を悉く潰されて攻めあぐねるステラが我慢の限界に達して右拳を大振りしようとした事で試合が動いた。

 

「はああああああっ!!」

 

重心を前に倒して涼花に渾身の右ストレートを叩き込もうとするステラ、涼花はそれを見逃さずしゃがんでステラに足払いを掛ける。

 

「キャアッ!?」

 

涼花は前から引っ掛けるのではなく後ろから払う様にステラの脚のバランスを崩し、意表を突かれたステラは後ろに尻餅を着くように倒れようとする。

 

「はぁっ!」

 

「がっ!」

 

そして涼花は倒れようとするステラの真横に回り込んでステラの身体を上空に蹴り上げた。

 

50m程斜め上に蹴り飛ばされたステラは若干気を失いかけたがなんとか意識を保つ、だが涼花の猛攻は止まらない。

 

「《絶影乱舞(ぜつえいらんぶ)》!!」

 

「っ!?ぐっ!がっ!!ごっ!!げっ!!ぎっ!!」

 

涼花は右脚を軸にして一回転すると普通の人間の目では捉えられない程の速度でステラのいる位置まで跳躍してまた彼女の身体を蹴り飛ばし、そのまま空気を蹴って超高速移動をしてステラの飛ばされた方向に回り込みまた蹴り飛ばしてそれを六回続ける。

 

右、左、後ろ斜め上、右手前、左斜め上とまるでピンボールの球の様に蹴り飛ばして行き———

 

「ぐはぁぁぁああああああああああっ!!!」

 

最後に自身の身体を縦に一回転させてその遠心力を利用した踵落としをステラの頭に叩き込み、ステラはバトルフィールド中央・・・彼女の霊装である妃竜の罪剣のすぐ真横に叩き付けられた。

 

「・・・・・・・」

 

戦塵が舞い、煙がステラの姿を覆い隠す、涼花はステラが落ちた20m手前に着地してステラのいる場所を睨みつけた。

 

「・・・いやぁ、イッキといい、ユキトといい、アンタといい、まったくもって日本の伐刀者は強い強い」

 

煙が晴れるとそこには横に突き刺さっている妃竜の罪剣を手に立ち上がりかけているステラの姿があった、彼女の眼には燃えるような闘志が宿っている。

 

「アタシの国やクレーデルラント王国の伐刀者達の百倍は歯応えがあるわ・・・」

 

身体中から火の粉を巻き上げ戦う意志を消さないステラ、彼女の心は今最高に高ぶっている、このような自分を追い詰めるような実力者と戦い高みを目指す為に彼女は日本に来たのだ、一人の騎士として魂の震えが抑えられないだろう。

 

「・・・だけど、これじゃあ終われない!」

 

ステラは地に足を踏みしめて立ち上がり燃えるような眼差しを涼花に向ける。

 

「ああっ!!終われないわよn—————」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ステラが床に突き刺さっている妃竜の罪剣を引き抜いた瞬間に彼女の足下の床が崩れ落ちた。

 

「小細工が駄目なら大細工よ」

 

「おわぁぁあああっ!?」

 

『おぉぉぉぉぉぉおおっとっ!!?突然のアクシデント発生だぁああああっ!!ヴァーミリオン選手突如足下の床が抜けて深い穴が空いた為にそのまま落ちてしまったぁぁぁあああっ!!』

 

『うははははっ!いや、これはアクシデントなんかじゃあないよ、さっき地中に逃れた時に涼ちんはもう一つ落とし穴を作っていたんだぁね、強い衝撃を与え続けると崩れ落ちるように計算してさ!そんでもって今紅蓮の皇女が霊装を引き抜いたのが引き金(トリガー)になったみたいさね!』

 

「くっ!やってくれるじゃないn——————ちょっ!?普通そこまでやるぅぅううううっ!!?」

 

落下して行くステラが目にしたのは穴の底に仕掛けられた無数の鉄の剣山だった。

 

「・・・嘗めん・・・じゃないわよぉぉおおおおおおっ!!!」

 

このまま落ちればステラは串刺しになってしまうのだがAランク伐刀者である彼女はこの程度の事ではやられたりしない、ステラは剣山が自分の身体を貫く前に妃竜の羽衣を纏って全ての剣山を一瞬にして溶かし尽くした。

 

そのまま穴の底に着地したステラは大剣を上に掲げて地上にいる涼花に向かってドヤ顔で叫ぶ。

 

「どうよリョウカッ!!アンタがどんな事をしたってアタシには通用しなi—————へっ?」

 

しかし上を向いた瞬間にステラの目に飛び込んで来た光景は上から落下して来る彼女の視界を埋め尽くす程大量の土と瓦礫だった。

 

「ふざけんなああああぁぁあああああぁあぁぁあああっ!!!」

 

そしてそのままステラは絶叫と共に圧倒的な質量に押し潰されてしまった。

 

「悪いわねステラ、わたし・・・魔力制御は得意じゃないの・・・」

 

ステラが落ちて数秒後に穴の端から崩れ落ちて埋まった穴を見ながらそう呟く涼花、彼女の魔力制御はDと測定されている、これは伐刀者として平均的なランクだ、鉄化する前に形ができているブーメランや投擲槍ならともかく鉄化させる範囲指定を繊細にしなければならない落とし穴を作る場合彼女の魔力制御だとどうしても多数の綻びが生じてしまうのだ、故にステラが穴の底に着地した反動でもろい側面が崩れてしまったということだ。

 

『ああああぁぁっと!?ヴァーミリオン選手生き埋めになってしまったぁあああああっ!!』

 

実況の女子生徒が絶叫し終わると辺りは静まり返り第二訓練場にいる人間達は全員息を呑んだ。

 

『・・・・・ヴァーミリオン選手が生き埋めになった穴からは何も反応がありません・・・これで勝負有りか?』

 

しばらくしてレフェリーがこれで勝負は決まったと判断して涼花の勝利を宣言しようとしたその時———

 

「ステラ・ヴァーミリオン、戦闘不能!勝者、佐野涼k—————」

 

爆発音と共にステラが生き埋めになった穴から巨大な炎柱が立ち昇り、炎柱の中からステラが燃えるような髪をたなびかせてゆっくりと出て来て不死鳥の様にバトルフィールド上に舞い降りた。

 

『おおおおおおおっ!!もはや勝負は決したかと思われましたが、なんとヴァーミリオン選手!佐野選手が仕掛けた罠など意にも返さずに全てを焼き尽くしてリングに舞い戻ってきましたぁあああっ!!これがAランク!戦術・戦略ではどうすることもできない圧倒的なチカラ!運命を押し通す事が出来る神に愛された人間だぁぁあああああああああっ!!!』

 

ステラが涼花の戦術や罠をチカラ尽くで突破して舞い戻った瞬間に第二訓練場内には大歓声が響き渡った。

 

「Aランクはやっぱ凄いわ!」

 

「流石としか言いようがないな!」

 

「やっぱり敵うわけがないよな、あんな化物にさ!」

 

「落第騎士や殲滅鬼に負けたのだってきっと何かの間違いだったのよ!」

 

「戦術や剣技なんて意味無いぜ!圧倒的な才能の前にはな!」

 

「バカじゃねぇのかあの女?戦術なんかでAランクに勝てるわけがないのにさ!」

 

観客の生徒達が好き勝手な事を言って騒ぐ、それを聞いてステラは不快に思った、まるで自分が才能だけでここまできたように聞こえたのはもちろん、自分を負かした一輝や幸斗・・・そしてここまで自分を追い詰めた涼花を嘲笑する声まで聞こえてきたからだ。

 

ステラは怒りのあまりに怒声をあげたくなるが、それをグッと堪えて目の前にいる涼花を燃え盛る眼差しで見据えて彼女に妃竜の罪剣の切っ先を向け—————

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・次にアンタは【残念だったわねリョウカ、アンタの戦術じゃアタシは倒せないわ!】と言う」

 

「残念だったわねリョウカ、アンタの戦術じゃアタシは倒せないわ!・・・・・・ハッ!?」

 

言い放つ言葉を涼花に当てられて驚いたステラが目にした光景は涼花が無数にある何かを両手でおもいっきり引いている姿だった。

 

涼花が手に握っている物をよく見てみると彼女の手の中から様々な方向に延びている無数の線の様なものが見えていた。

 

「何よそr———————ぐはぁあ”あ”あ”っ!!?」

 

次の瞬間に様々な方角から鉄のブーメランが飛来してきてステラの身体のあちこちに突き刺さった。

 

「なん・・・ですっ・・・て・・・」

 

身体中から血潮が噴出し床にうつ伏せに倒れるステラ、その瞬間に大歓声に包まれていた第二訓練場内は一瞬にして静まり返った、一体何が起こったというのか?ステラは痛みよりも困惑に満ちた表情をして自分を見下ろしている涼花と目を合わせた。

 

「何がなんだかわからないって顔ね・・・じゃあ聞くけど、魔力量が平均的なわたしがそう何回も能力を行使できると思う?」

 

「それは・・・」

 

「できないわよね・・・これはアンタがさっき吹っ飛ばしたヤツなのよ」

 

「・・・・は?」

 

涼花が言っているのは彼女がステラの一撃をくらう前にステラが自身の魔力を放出させて吹き飛ばした無数のブーメランの事だ、今ステラの身体中に突き刺さっているのは全部それだと言うのだ。

 

「実はこれ全部鉄化を使う前の手拭いの時に糸を一本解れさせて伸ばしておいたの、つまりこれは全て鉄糸付きのブーメランだったのよ」

 

「う・・・そ・・・」

 

「アンタが吹っ飛ばしたブーメランはこの第二訓練場の様々な場所に突き刺さったわ、わたしは今それから延びた鉄糸を手繰り寄せて引き抜いて手動でコントロールしてアンタにぶつけたってわけ、さっき魔力を収束させて練り込んで耐熱性を上げたってアンタ自身が見破ったでしょ?だからアンタの炎で溶けずに突き刺さったのよ」

 

「・・・・・じゃあ・・・さっきアンタがブッ飛ばされる前に信じられなさそうな顔をしていたのって・・・」

 

「勿論ただの演技よ・・・残念だったわね」

 

それを聞いたステラの意識は段々朦朧としてきた。

 

「チカラも、異能も、小細工も、全てを正面からねじ伏せることができるからAランク?・・・そんなことで破られる戦術なんて五流以下よ・・・覚えておきなさい皇女サマ」

 

涼花は意識を失いつつあるステラの目をよく見て言い放つ。

 

「圧倒的なチカラも、恐るべき異能者も、神に愛された存在でさえ、全てを手玉に取って勝利する、それが出来て初めて【一流の戦術家】って言うのよ」

 

さっきの言葉の仕返しだ、重勝が言った通り涼花はステラのさっき言った言葉が癇に障っていたのだ。

 

—————・・・悔しいなぁ・・・

 

意識を失う前にステラはここまでの事を思い返していた。

 

—————最初イッキとの出会いは最悪だったけれど、彼の生き様を見ているうちに段々と愛おしくなっていたのよね・・・そんでもってイッキが選抜戦第一戦目の相手に・・・名前忘れたけど粋好かない男にイッキが馬鹿にされて周りもそれに便乗してイッキを馬鹿にしたのを見て我慢できずに叫んじゃったのよね・・・今思えばこれ、全生徒の前で愛の告白をしたようなものだったわ・・・幸い誰も覚えていなかったみたいだけど・・・でも、そのお蔭でアタシとイッキは恋人同士になれた・・・

 

思い返すのは彼女の最愛の恋人との記憶、そして彼女の今までの戦いの軌跡だ。

 

————そしてアタシはイッキと約束をした・・・七星の頂きを懸けた戦いで再び剣を交えるって約束を・・・でもアタシは負けた・・・あの鬼のように強い伐刀者に・・・そしてせっかく回って来たチャンスでさえアタシは失おうとしている・・・悔しいわ・・・七星剣王になるって言って国から飛び出して来たっていうのに・・・

 

七星の頂きへの道は自分の思っていた以上に険しかった・・・そう思いながら彼女の意識は消えていく。

 

————・・・でも・・・来年はアタシが勝つわ!・・・イッキ、ユキト、そしてリョウカ、首を洗って待ってなさいよ・・・

 

そしてステラは清々しい顔をして気を失った・・・。

 

「ステラ・ヴァーミリオン、戦闘不能!勝者、佐野涼花!!」

 

紅蓮の皇女ステラ・ヴァーミリオンの七星の頂きを目指す戦いは・・・ひとまず終わりを迎えた・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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