ヤンデレ系短編集。 作:異論反論は許すが無言低評価は許さん!
ただまぁ………作者クオリティじゃこうなるよなってのは多分慣れてきて読める人も居るんじゃないかとは思う。
「お兄様…なんで帰ってしまうの?」
あはは………いや、なんかちょっと実家で妹が危篤らしくて………いや、戻っては来るよ?
だからその手を納めて。マジで死んじゃう。俺人間だし。
ってうぉぉぉい!何『きゅっとして…』とか言ってんの!?ドカーンしちゃダメだよ!?
「………お兄様の妹は私だけなの」
い、いや確かにこっちに居た間ずっと兄みたいに接してたけどさ、それでも一応妹分的な感覚というかなんと言うか………い、いや確かにフランも大事だぜ?
でも血の繋がった肉親が危篤となると一応行ってあげない訳にはいかな………
えっちょっ、なんで虚空に向かって手を向けてるの!?何する気だよ!
「だってお兄様、血が繋がってるからその女に会いに行くんでしょ?だったらそれを壊しちゃえばいいじゃない?」
良くねぇから!全然良くねぇから!
血の繋がり壊したらダメだって!多分DNAとかその辺り破綻しちゃう気がしてならない!
こ、こうなれば背に腹は変えられん…半ば詐欺みたいな方法になるけどあぁすれば………
ね、ねぇフラン!?確かレミリアが言ってたけど吸血鬼に噛まれたら吸血鬼になるらしいぜ!?
「うん、そうだよ?」
いや、そうすりゃ人間じゃないから血の繋がりもへったくれも無………ゴファッ!?
フラン………いくらそのアイディアが素晴らしいからって急に押し倒すな………俺人間だってば…今は。
なんか良く分からん内に首筋に牙が刺さり、血が抜けていく気がする。
俺は数分間血を吸われたあと急にクラッとして、倒れかけた。
あ、そういや俺銀製のナイフ持ってたんだった(主にフランの暴走対策である)。
吸血鬼になったらそらクラッとするわな。ポケットから取り出して壁に投げつけた。
回転が掛かっていて刺さらず、地面に落ちた。咲夜のナイフ投げはどうやってやっているのか分からないがすごいと思う。
ただ、正直自分がいきなり人間じゃなくなったのを自覚すると多少ショックを受けざるを得ないね。
だって20年近く人間として生きてきたのに。
いや、別に吸血鬼だからって見た目が変わったわけでも無いから人間として生きるのは訳無いんだけどさ。
つまり一旦外に出て妹を見舞うのも出来ない訳じゃないんだ。
流石は俺、頭脳プレーだぜ。
「はい、これでお兄様が外に出る理由も無くなったよね?」
だがいくら頭脳プレーをしたところで強大すぎる力には敵わないようだ。
金髪幼女×上目遣い=俺に10倍ダメージだぞ。主に理性に。
俺が突然お前を襲ったらどうする気だ。
「おとなしく受け入れるだけ。そうすればお兄様は私から離れられないよね?」
やだこの子策士過ぎる。
確かに俺としては襲った相手に○り捨てみたいな事は出来んぞ。というか人間として…ねぇ?
そういう事だからさ、とりあえずそれはやめてくれ、マジで可愛すぎて色々辛い。
ほら、外に出る気力が奪われ………ってアホかぁ!
せっかく境界を越えてまで危篤の連絡が来たんだぞ!行かなくてどうする!
さぁレッツゴーだぜ俺!家から出r………
「お兄様?」
あ、ハイすみません嘘です。だからその手を納めてねー?
クッ…こうなれば最後の手段に訴えるか…?
俺の能力、【進める程度の能力】【戻す程度の能力】を使えば移動しながら10歩進んだ未来とかに移動出来る。
つまり擬似的な瞬間移動が出来る。
それを使ってフランをこの部屋に閉じ込め、一人ここから脱出すれば………
帰ってきた時強襲されて少なくとも五体満足でいられないのは自明の利ですねこりゃ。
どーしよ。理性では家族だったんだし一応行ってあげないといけないと考えているのに本能の部分で『フランから逃げるのは諦めようぜ?』と理性に訴えてくる。
というか理性でも諦めろコールが………
って、良く考えりゃ戻らなきゃ良いじゃん。
でも駄目じゃん。俺きっとフランが『戻ってきてね?』とか言うから『あぁ、戻るさ』とか言うんだろうし。
………そうだ、進める時と戻す時を釣り合わせて時間を止めてしまえば逃げられるや。
やり方分からんけど。
あー、こうすりゃ良いのか?
能力を使って動かす時間を進退ともに同じ時間にすれば止まったり………しねぇ!
「ん?お兄様?もしかしてここに居てくれる気になったかしら?」
しかもこの子全てを理解した上で最後通帳突き付けて来てる。
ならば………三十六計逃げるが勝ち、という事で全力でドロンさせてもらおう。
俺はフランとは正反対の方向にあるドアへ向かってダッシュを開始した。
そしてすぐに時間を進め、15秒先へ………え?
おいちょっと待て、確か俺ここのドアを1秒以内で開けられた筈なのにドアを通り抜けられてない?
「どかーん」
俺が能力を発動しても部屋から出られていない事に驚いていると、後ろから絶望の宣告が聞こえる。
「お兄様の記憶から、その女についての事を消したよ?」
フランの言葉の通り、どうにも今何かが抜け落ちたような気がする。
名前すら思い出せない。
「もう一回。きゅっとして………どかーん」
次にフランがその言葉を呟く………が、何も起こらない。
なんだ?何をしたんだ?
そんな疑問が頭をよぎるが、とりあえずここに居てはいずれ死ぬことになる。
だから今すぐ逃げる………ドアが開けられない。
いや、どういう訳かこのドアを開ける方法が分からない。
いつもなら確かこっちから押せば出られた筈なのに出ることが出来ない。しかも引いても無理だ。
まさか………俺の記憶を破壊した?
「お兄様、分かった?お兄様がここから出るにはそこを通るよね。だからそこの開け方の記憶を壊したの。凄いでしょ?ねぇ、褒めてよお兄様」
そう言って無邪気そうに俺に近付いてくる。
俺にはそれが、どうにも死神の足音に聞こえて仕方ない。
「あ、そうだ!」
俺が謎の戦慄を覚えていると、フランが俺に近づく途中で止まり、再び手を広げて閉じた。
「今度は、お兄様が私以外と関わった記憶を全部壊したよ?ね?これで………私以外誰も頼れない」
俺の中の記憶が壊れていくのが分かる。
恐らく、壊れた物が大きすぎて多少残留しているのだろう。
恐ろしいものだ。
だが、それより他に今の俺の思考を支配しているものがあった。
何故この純粋な少女がここまで狂ってしまったのか………
きっと俺のせいだろうか?
いや、分からない。
だがきっと俺のせいだろう。
だったら、俺も一緒に狂ってしまえば良いのかもしれない。
狂った奴同士なら、きっと上手くやっていける筈だ。
俺の意識はその思考を最後に、暗闇へ沈んでいった。
どれくらいの時が経ったんだろう?
3年?30年?もしかしたら300年?
いや、知らんがなとか悲しい事言わないで考えてくれ。今日はなんと俺が被介護者生活を始めてから丁度それくらいなんだ。
いやー、時が経つと基本的に年を数えるのがめんどくさくなってきてやだねー。人間ならもうとっくに死んでる歳………あ、思い出した300年目だ。
うんうん、今思えばあの時普通にフランを連れて行きゃ良かったなーって思うよ。
別にロリコン扱いされようと割りと昔からその気があると妹からも言われてたし。
今となれば妹の死後300年でもあるんだけどさ。
いやー、ほんとに時が経つのは早いや。
だってほら、あの時は18くらいだった見た目も21くらいになってるし。
あと足が動かないからって車椅子だし。
あぁそうそう、今俺はフランと二人暮らしだ。
あのあと咲夜が一応ただの人間だったから死んで、それを境に紅魔館の住人は離れ離れになった。
中国こと美鈴(コイツ歳とって無い。何故に?)は武者修行とか言って幻想郷最強を目指しているらしい。
レミリアはまぁ、その圧倒的カリスマで会社を作り、トップに立つと同時に下手な事をするか何か会社の価値そのものを下げる事が無い限り基本的に無限に廻せるシステムを作ってポストだけ残し隠居したらしい。
今は悠々自適な隠居生活だと。
あぁ、俺?俺はそうだね、まぁ離れ離れになってから幻想郷を抜けて、紆余曲折の末専業主夫。こう見えて紅魔館でも割とメシウマランキング的な物の上位に居たんだぜ。
そしてフランは…うん、なんか道端でぶつかった893さんを素手で半殺しにして以来893さんから定期的な献金を送られるようになっちゃった。
ただそれだけじゃ駄目な気がすると言ってたら気が付いた時には家に芸能事務所のFAXが。
本人いわく歩いてたら気持ち悪いくらい尾行してきた奴が居たらしいので軽くおねんねしてもらったとか。
それで一応フランに話を受けるか聞いてみて、受けないと答えたのでしばらくのんびり暮らして、今は人外の体力でスポーツとかやってたり色々人らしからぬ事をやってる。
アハハ、うんまぁ正直言ってあの時に考えてたこと、まったく無意味だったどころか俺が馬鹿なだけだったね。
そのあとのフランも俺が幻想郷から外に出るのをあきらめたらあっさり元に戻ったし。
ただ俺も逃げるに逃げられない理由を作らされたが………
まぁ、とにかくあれだよ。
終わりよければすべてよし。
例え足を動かせなくなり吸血鬼になりその上893さんとの関わりを持つ上端から見ればロリコンの変態にしか見えずとも、問題ないんだ!
ちなみに紅魔館組のその後的なあれは適当ですし、紫もやしと小悪魔がいないのは仕様です。
つまりは図書館から出なさすぎて忘れられていたという事に他ならな………
まぁ、おぜうについせはあれだよ。一人になってヤケクソでやってたらカリスマモード入って、『そうだ、楽して暮らすなら現代に行こう』とか思い至った上見た目だけ成長させて色々イカサマ的な手段も使って超お金持ちになった。
なおフランは書いた通りで。