不思議な錬金術師と物語師   作:水甲

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第8話 夜の人形師

ホルストさんのカフェに依頼を見にソフィーと一緒に行くとホルストさんとテスさんが何か話していた。

 

「本当に出るんですって、無人の小屋に夜な夜な不気味な声が……もしかしたら幽霊が……」

 

「いやいや、そんな事あるわけないじゃないですか」

 

「本当ですって」

 

何だか幽霊関係の話をしてるのか?気になった僕は二人に声をかけた。

 

「幽霊でも出るんですか?」

 

「あっ、アラヤにソフィーも、丁度良かった。二人に頼みたいことが……」

 

「もしかしてさっきの話の幽霊をどうにかしてくれってことですか?」

 

テスさんの事だからそんな頼み事しそうだとは思ってたけど、ソフィーはいうと何だかビビってるし

 

「そ、そんなテスさん、無理ですって……本当に幽霊だったら……」

 

「でも街の人も幽霊騒ぎが気になって夜にあんまり外出しなくなったりしてるし、夜に行商に訪れる人も怖がって来なくなっちゃうし………」

 

「それはそれでうちとしては困った事になりますね。とはいえ幽霊でもないかもしれませんし、アラヤ、ソフィー、頼めますか?報酬も支払いますよ」

 

ようするに依頼って言うことか。まぁ別にいいか。もしかしたら幽霊じゃなくって魔物だったら……魔物の中にも幽霊みたいな奴がいるし

 

「分かりました。ソフィー、行こうか」

 

「えっ?今回はアラヤ一人でも……」

 

「一人で何とか出来なさそうかもしれないから……誘ってるんだけど……」

 

「で、でも、」

 

「というか幽霊くらいで驚いてどうするんだよ。僕らは幽霊より不気味な喋る本だっているんだから」

 

「そ、それはそうだけど……なんか有ったら守ってね」

 

「解ってるって」

 

何とか納得させたソフィーと一緒に噂の幽霊の棲む小屋へと行くことになった。だけどもしも強い魔物がいたら僕らだけで何とか出来るものか……ここはあの人にも声をかけておくか

 

 

 

 

 

 

夜になり、噂の小屋の前に行くこととなった。流石に僕らだけじゃ心もとないのでジュリオさんに声をかけておいた。

 

「すみませんね。こんなことで声をかけて……」

 

「いや、大丈夫だよ。僕自身その噂が気になっていたからね」

 

「幽霊じゃなく魔物かもしれないって?」

 

「えぇ、噂では不気味な声が聞こえるというのもありますし、もしかしたら人語を話す魔物がいるかもしれないからね」

 

確かに喋る本がいるんだから喋る魔物もいるかもしれないな。とはいえ、さっきから僕の腕を掴んでいるソフィーはどうにか出来ないものか

 

「は、放さないでね。お願いだから」

 

「いや、離すも何もソフィーが掴んでるんだから……」

 

「アラヤは怖くないの?」

 

「いや別に……見たことのないからかな。見て怖かったら怖がるよ」

 

「ふふ、アラヤは面白いことを言うね」

 

「ジュリオさんは怖くないんですか?」

 

ソフィーは僕と同じように怖がった様子を見せないジュリオさんに話しかけるが、ジュリオさんは何故か俯いた。

 

「僕としては幽霊よりも救う手立てがない人のほうが怖いよ」

 

救う手立てがない人ってどういうことだろうか?

 

「さてここがそうみたいだね」

 

そうこうしている内に噂の小屋にたどり着いた。すると確かに小屋から声が聞こえた。

 

「ふふふふふふ」

 

「ひぃ、聞こえてきた。やっぱりもう帰ろうよ」

 

「いや、帰る訳にはいかないだろ。扉を開けて確かめてみようか」

 

僕は扉を開けると中には人の腕を掴んだ男がいた。

 

「これは!?まさか殺人鬼か!?」

 

ジュリオさんは大剣を抜くとそれに気がついた男が咄嗟に机に置かれていた双剣を抜いた。

 

「行きます!!」

 

ジュリオさんは大剣を大きく振ると男は双剣で受け止めた。

 

「ほう、誰だか知らないがやるな」

 

「あの小屋で一体何をしていたんですか!」

 

ジュリオさんの剣舞はあの重たい大剣で出来るのも凄いが、それを全部受けきるあの男の人も凄いな。

 

「何だかすごい人がいるんだな」

 

「で、でも、ここにあるのって人の……」

 

「いや、そういうわけ無いだろ。何しろ」

 

僕は机に置かれた腕を掴んでソフィーに見せた。ソフィーは恐る恐る僕の持っている腕を見ると……

 

「これって……人形?」

 

「そう、普通だったら血とかあるだろ。まぁ暗かったから分かりづらかったけど……さてと」

 

僕は夢想の筆を取り出し、二人の戦いを止めるために何かを描いた。

 

「ここは……」

 

二人の前に巨大な壁を出した。そして二人が止まった瞬間

 

「ジュリオさん、勘違いだよ」

 

「勘違い?どういうことだい?」

 

 

 

 

 

僕はジュリオさんに事情を説明すると小屋にいた男に謝るのであった。

 

「本当にすみませんでした」

 

「いや、私の方こそ勘違いさせるような事をしていたのだからね。私はフリッツ。旅先で人形劇をやっているものだ。これらもそれに使う人形を作っていたのだよ」

 

「でも、どうしてあの小屋に……」

 

ソフィーも人だと分かって安心したのか僕の腕をつかむことをしなくなった。

 

「いやちょっと休憩のつもりがつい集中してしまってね。悪いが街までの道を教えてくれないか?」

 

「えっと……」

 

ソフィーは街までの道を教えるとフリッツさんはそのまま街まで行くのであった。

 

「でも人形師か。何だか変わった職業もあるんだな」

 

「そうだね。アラヤの物語師もね」

 

こうして幽霊騒ぎは解決するのであった。そんな中、ジュリオさんは僕の夢想の筆を見つめていた。

 

「もしかしたらあの筆で……」

 

 




これでパーティーメンバー全員出せたのかな?次回はあっちでアラヤとソフィーが出たようにこっちに一人だけ出す予定です。

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