リディーとスールの二人と一緒に試験のために卵の採取へと向かうことになったのだが、二人の護衛の人と門の前で待ち合わせすることになっているのだけど……
「それっぽい人がいないな……」
「うん、まだ来てないみたいだね」
「ねぇ二人共……」
何というか遅れてくるっていうことは、普段は忙しい人なのか?
「少し待ってみようっか」
「そうだな」
「ねぇ……」
さっきからリディーがなにか言いたげだった。流石に気にしないようにしていたけど……
「何だ?リディー」
「あのひとじゃないの?」
リディーが指を指したほうを見るとそこには、貴族っぽい服に何だかぷにのマスクをかぶった人がいた。
「……あの人だったら正直嫌だぞ……」
絶対にすれ違う人に変な誤解を生みかねてしまう。僕はスールの方を見た。スールは頷き
「よし、通報しよう」
「そうだね」
僕らは通報をしに行こうとすると、変態マスクの人は慌ててこっちにやってきた。
「ちょっと待った待った。頼むから通報だけは勘弁してくれ」
駆け寄ってきた男がマスクを取った。金髪で美形の人だったのか。にしてはあのマスク姿は……
「いきなり通報されるなんて……」
「あっ、この間のナンパ男!?変態マスク男に転職してたなんて、人生楽しそうだね」
ナンパって、二人のことをナンパしてたのかこの人は……
「さんざんな言われよう……君たちとやっていけるか、早くも不安になってきたぞ」
「えっ?それって……やっぱり護衛って変態マスク男さんなんですか?」
「だから変態マスク男じゃなくって、俺はマティアス」
変態……マティアスさんが護衛なのか……とはいえ二人はまだ警戒してる
「えっと、マティアスさんですか……私は……」
「知ってる。リディー、スール、それと物語師のコハクだろ」
「うわっ、私達の名前をもう覚えてるなんて……」
「コハクくんの名前まで……」
「何だか僕も身の危険を感じてきたんだけど……」
「違うから、お前たちの名前は姉貴から聞いたんだよ!」
何だか色々と誤解しているということで、マティアスさんは僕らに事情を説明した。
マティアスさんはお城の受付にいたミレイユさんの弟で、今回の護衛の件をミレイユさんに頼まれたみたいだった。
リディーたちもミレイユさんの紹介だと聞いて、警戒心を解くのであった。
「まぁいい人みたいだから大丈夫だな」
「ちょっとコハク、マティアスがなにかしてきたらちゃんと守ってよね」
「お願いね。コハクくん」
「なぁ、何だか泣きそうになってきたんだけど……というか姉貴から聞いたけど本当にこの二人の婚約者なんだな。お前」
「婚約者って言ってるのはこの二人だけだから……」
僕はため息を付きながら、とりあえず四人で採取へと向かうのであった。
僕らは新緑のオーダリアに来て、リディーたちの試験である卵集めをしていたのだけど……
「あはは、囲まれちゃったね」
「囲まれちゃったね……じゃないよ~」
僕らはグリフォンの群れに囲まれていた。そりゃ大事な卵を取られたのだから怒るのは無理も無いよな
「仕方ない。モンスターの攻撃は俺が守ってやる」
マティアスさんは剣を構え、僕は四方の筆を取り出した。
「この数相手じゃきついから……追っ払うだけにしておくか」
僕は何もないところに『爆音』と描き、
「みんな、耳をふさげ!!」
僕がそう指示を出した瞬間、文字から大きな音が鳴り出し、グリフォンたちは驚き逃げ出していった。
「ふぅ」
「ありがとう。コハクくん」
「その筆、戦いに使えるって便利だよね」
「まぁ色んなものを作り出すことはできるみたいだから……」
剣と書けば、回転しながらモンスターに迫っていったりもできる。あとは隠してある能力があるけど……
「とりあえず追っ払っただけだからな……卵も十分集まったし戻るとしようか」
マティアスさんの提案を聞き、僕らは街へと戻るのであった。
「大きな音が聞こえたけど、あいつの使ってたのって……」
「ハルカ~どうしたの~」
「ん?何でも無い」