リア姉から告げられたのは、フィリスと血のつながった姉妹ではないとのこと。そして俺とリア姉が同じ村の出身で、幼い頃から一緒だったということ……
「ハルカが来る前に私はあの村にたどり着いて、今のお母さんとお父さんに拾われたの。そして、ハルカとハルカのお爺ちゃんが来た時、凄く嬉しかった。だけど、ハルカのお爺ちゃんから言われたの。あの村で起きたことを話すなって……」
「どうして……」
「その時ハルカの記憶からあの村で起きたことが消えてたみたい。だからこそ思い出すようなことはしてはいけないって言われた」
お爺ちゃんが俺のために……
「でもいつかハルカが大きくなったら話すようにって言われたけど、今がその時だよ」
「リア姉……」
「本当は村を滅ぼした存在と戦うつもりだったんだけど、中々決心がつかなくってここにいたんだけど……まさかハルカたちがたどり着くなんて……」
リア姉は知っているのか?村を滅ぼした存在が何なのか……
「ハルカ……これは私のけじめ。ハルカたちを巻き込むことはできない。だから最後にお願いがあるの………フィリスちゃんのことお願いね。ハルカなら……」
リア姉が立ち去ろうとした瞬間、俺は駆け出しリア姉の腕をつかもうとしたが、その前に突然フィリスが現れ、リア姉を押し倒した。
「フィ、フィリスちゃん!?」
「リア姉……駄目だよ。一人でいっちゃ……」
「フィリスちゃん……聞いてたの?でもフィリスちゃん、これは私の問題だから……」
「血がつながってなくっても、私達は姉妹だよ!!大好きなリア姉が危険な目に合うなんて耐えられない。だから……私も一緒に……」
「駄目……駄目よ……フィリスちゃんを巻き込みたくない」
「……リア姉」
誰も巻き込みたくなくって、一人でケリをつけるっていいことかもしれない。だけどフィリスはリア姉の悲しみも色んな事全部いっしょに背負いたいんだろうな。それは……
「俺は巻き込まれるのは嫌だと思わない。逃げ続けてリア姉が傷つくなんて嫌だからさ……」
俺は筆を取り出した。もしかしたらコレが俺にとって本当の始まりの物語かもしれない
「リア姉がどんなに嫌がっても俺は付いていくし、フィリスもおんなじだろ」
「うん、一緒に行こう」
「フィリスちゃん………ハルカ……」
リア姉は涙を流し、大声で泣きじゃくるのであった。姉妹だからこそ幼馴染だからこそ一緒にできることをやる。
「何というか出づらいな」
「あはは、仕方ないよ」
「それでふたりとも、やはり協力するのですか?」
「もちろん、可愛い弟子のためだもん」
「そうだな……それに僕はあいつの可能性を見てみたい」
「お節介焼きですね。あなた方は……」
テントに戻り、師匠たちにも事情を話し今後どうするのか話し合った。
「村を滅ぼした存在は竜の巣と呼ばれる場所にいるらしいわ」
「竜の巣って確か砂嵐に囲まれていて、入ることができない場所ですよね」
「えぇ、だけどその砂嵐は奴を封印する装置みたいなの。ある錬金術師にそう聞いたわ」
いつ聞いたんだ?もしかしてライゼンベルグで別れた時に……今はそんなことを聞く状況じゃないな。
今はその例の存在をどうにかしないといけないのか
「装置は破壊すれば砂嵐が消え、奴が現れるらしいけど……」
「倒せるかどうかか……」
俺たちが頑張って倒せるかどうか……どうしたものか……
「………いや、倒せるんじゃないのか?」
突然師匠がそんな事を言いだした。簡単に言うけど……
「そうだね。私達が力を合わせればきっとね」
「ソフィー、簡単に言いますけど……」
「プラフタ。大丈夫だよ。あのときだって力を合わせて勝ったんだから」
「そうだな。錬金術師と物語師が力を合わせればなんとかなる。僕はそう思ってる」
師匠たちは一体どんな敵と戦ってきたんだ。だけど力を合わせればか……
「フィリス、師匠たちの言葉を信じてやってみる価値はあると思う」
「うん、私もそう思う。行こう!!」
「みんな……ありがとう……」
俺たちは決意し、出発しようとするが師匠が何故か止めた。
「少し準備をしておきたい。まぁ準備って言っても戦力を整えるくらいだけどな」
整えるって、どうするんだ?もしかして助っ人を呼ぶとか?
「ソフィー、ライゼンベルグに行くぞ。あそこにまだいると思う」
「うん、そうだね。フィリスちゃんたちは道具を整えておいて、きっともしかしたら……ううん、フィリスちゃんなら聞こえるはずだから」
「えっと……聞こえるって?」
「聞いてみれば分かるよ。きっと同じ思いかもしれないから」