前回の続きからです
モンスターに襲われていたイルメリアとエリスの二人を助けた俺とリア姉。
二人は怪我しているため、俺達のテントまで連れていき、怪我の応急処置をしていた。
「これでよし、二人共軽い怪我ですんでよかったわね」
リア姉がそう言いながら、処置を終えた。
「あ、ありがとうございます」
「よかったね。イルちゃん。でもびっくりしたよ。いきなりハルカとリア姉が怪我した二人を連れてくるから……」
「悪かったわね。フィリス、迷惑かけちゃったみたいだけど……」
「ううん、気にしないで、こういう時助け合うのが普通だから……」
「……本当にありがとうね。フィリス」
フィリスたち三人がそう言う中、俺はエリスに声をかけた。
「大丈夫か?」
「……これぐらいの怪我……」
「大したことないって言いたそうだな」
俺がそう言うとエリスは黙り込んだ。
何だか彼女は何かを思い詰めている。何だかあんまり自分を大切にしていないみたいだった。
するとイルがエリスに近寄り……
「エリスの……馬鹿!!」
平手を喰らわした。
俺達は急な平手と大声で驚いていた。
エリスは叩かれた頬を抑えていた。
「エリス、あんたは自分のこと役立たずだって言ったわね。自分には居場所がないって言ったわね。あれはどういうことなの?」
「………私はお父様やお母様、姉様とは違って錬金術の才能がない。私の存在理由は姉様を守るだけの護衛。でも姉様を守れなかった私にはもう居場所なんて……」
「そんな事……お父様やお母様が私が言うわけ無いでしょ!」
「でも……」
何だか姉妹喧嘩に巻き込まれたな……
するとリア姉が二人の間に入ってくれた。
「はいはい、喧嘩はそこまで、二人共怪我してるんだから響くわよ」
「ちょっとこれは私達の……」
「イルちゃんたちの問題なんだろうけど、こんな所で喧嘩してる以上、関わらないといけないからね」
「で、でも」
「イルちゃん、関わっちゃった以上、二人だけの問題じゃないよ」
フィリスもリア姉と同じことを言っている。
確かに話を聞いた以上、何かしてあげないといけないよな……
「錬金術の才能がないっていうことは別の才能があるんじゃないのか?」
「……別の才能?」
何となく思いついたことを言ってみた。
「イルって錬金術師の名家みたいだけど、もしかしたらエリスだけ才能がないっていうことは、他の才能があるんじゃないかって思って……」
「確かにそういうことってあるわね。ねぇ、エリスちゃん。何か得意なことってある?」
「得意な事……ずっと姉様を守るためにナイフ術を学んでた」
ナイフ術だけって、凄いことだけど他にもないのかな?
するとフィリスが何か思いついた。
「それだったら、ハルカみたいに物語書いてみたら?」
「……物語?」
「うん、今までのことやこれからのことを物語として書いてみるの。それじゃダメかな?」
「それいいわね。エリスって意外と本とかも読んだりするから案外書けるかもしれないわね」
「……出来るのかな?」
「試しにやってみたらいいじゃないか」
俺は紙とペンを渡すとエリスは早速書き始めた。
しばらくしてからエリスは書いてみた物語を見せてもらった。
錬金術の才能を持った姉と才能を持たない私、
私はずっと姉を守るためだけに生まれてきたんだと思った。
守れなかったらもう居場所がない。きっと役立たずだって言われる。
ずっとその事を胸に秘めていた私。
だけどそんな時に私は知った。
物語を書くということを……
「コレぐらいしかできなかったけど……」
「どうだった?」
「……楽しかった。どんな風に書いたらいいのかいっぱい悩んだけど、それでも楽しかった」
笑顔を見せるエリス。きっと彼女にも物語師としても才能があったからこそ楽しく書けたんだな。
「これから物語を書き続けていいと思うぞ」
「でも……」
「錬金術師の名家だからって関係ない。物語を書くことがお前の才能なんだから……それに錬金術師と物語師は深い繋がりがあるって前に師匠やソフィーさんも言ってたしね」
あの二人もプラフタさんにそう言われたって言ってたな。
錬金術師と物語師は別々の道を歩んでいるはずなのに、錬金術から物語が生まれ、物語から錬金術のレシピが生まれるとかって……
「もしも両親が反対したら、賛成してくれそうな物語を書けばいいしね」
「………そうだよね。姉様」
「何?」
「物語師として姉様の隣りにいてもいい?」
「いいに決まってるじゃない。あんたは私の妹で立派な物語師を目指しなさい」
「うん」
こうして新たな物語師が生まれるのであった。
だけど物語師にはやっぱりアレが必要だけど……今度会ったら聞いてみるか。
夢想の筆と時空の筆みたいなものが他にないかって……