フィリスのアドバイスを貰って、次の日
「さて今日はどうかな?」
師匠は筆で描いた鎖を取り出し、俺に向けて放った。
俺は一本の剣を書き、それを手にして鎖を切っていく
「ただ剣を書いて放つだけじゃダメだって気がついたか」
「はい、それにこれは……」
更に襲いかかる鎖を切り裂いていく。
それを見て師匠は考え込んでいた。
「なるほどな。鎖を切るだけの剣ということか。それだったら……」
師匠は石の拳を描き、放ってきた。
俺は一本の槍を取り出し、石の拳を受け流した。
「この槍は攻撃を受け流すようにしてあります」
「それじゃこれは?」
今度は無数の矢を放ってきた。しかも鏃には炎が灯っていた。
俺は普通の盾ではなく、水の盾を作り出して防いだ。
「そうだ。相手の使う属性に対応した防御を学べ。外にはそういう魔物がいるからな」
師匠は筆をしまい、腰の剣をつけた。
「これで訓練は全部終わりだ。お祝いにこの剣がどういうものかおしえて……」
師匠が剣を抜こうとした瞬間、突然村長がやってきた。
「大変じゃ、フィリスが……」
村長のその言葉を聞いた瞬間、俺はすぐに駆け出した。
炭坑に行っているって聞いていたから、きっとそこにいるだろうけど……一体なにがあったんだ?
「早いな。それで村長。何があったんですか?」
「アラヤくん。実は滅多に入ってこないはずのグリフォンが炭坑にいたのだよ。わしはただフィリスにはぷにと戦わせようと……」
「閉ざされた街なのに、グリフォンが?」
「唯一空が見える場所から入ってきたのだと思う」
「厄介なことになったな。ハルカだけで大丈夫か?」
俺は急いでフィリスのもとにたどり着くと、フィリスはグリフォンに襲われそうになっていた。
「だめ、このままじゃ……」
このままじゃフィリスが危ない。だけど距離が遠すぎて文字での攻撃ができない。
どうにかしないと……
俺はある方法を思い浮かんだ。
だけど下手をすればどうなるか分からない。
でもやるしかない。
俺は強化の文字を書いた。
その瞬間、俺の体が真っ赤な光をまとった。
「これなら……」
俺は地面を思いっきり蹴り出すと、凄い高く飛んだ。
そのままグリフォンに向けて蹴りを喰らわした。
グリフォンは思いっきり吹き飛んだ。
「あ、あぁ」
「大丈夫か?フィリス」
「ハルカ?どうしたのその体?真っ赤に光ってるよ」
「試しに体を強化してみたんだけど、強化しすぎたな……」
俺は吹き飛んだグリフォンを見た。
グリフォンは起き上がると思いっきり突っ込んできた。
俺はグリフォンの突進を受け止め、上へと投げ飛ばした。
「トドメだ」
幾つもの剣を書き、空に上ったグリフォンの体を突き刺していく。
グリフォンを退治できたけど、フィリスは腰を抜かしてしまい、動けないと言うので、俺はフィリスをおんぶすることに……
「大丈夫?重くない?」
「フィリスは軽いほうだろ。おまけに強化がまだ続いてるから重さなんて感じないし……」
「……ありがとうね。ハルカ」
「別に……フィリスは大丈夫なのか?外にはグリフォン以上のすごい魔物がいるかもしれないんだぞ」
「……魔物は怖いけど、ハルカが守ってくれるよね」
「あぁ、当たり前だろ」
俺は顔を真赤にさせながら、村へと歩いていくと、師匠とリア姉がこっちにやってきた。
「フィリスちゃ~ん!?大丈夫!?怪我はない?」
「あはは、腰抜かしちゃって……」
「もう心配したんだから、ハルカ、後は私が背負うから」
「お願い。何だか強化も切れてきて……すごく……」
強化が切れた瞬間、俺はそのまま気を失ってしまった。
気がつくとそこは自分の家だった。
「俺は……どれくらい寝てたんだ?」
「2日くらいだよ。たくっ、無茶な方法をして……」
そこには師匠が本を読んでいた
「す、すみません。できそうかなって思って……」
「あれぐらい僕にも思いついたけど、どうやらお前の場合は最初から体の上限を突破するくらいの強化をしたから、倒れたんだな。次からは気をつけて体の強化をしろ」
「は、はい。そういえばフィリスは?」
「外で待ってる。外って言っても村の外だけどな」
村の外って……置いてかれた?
「急がないと本当に置いていかれるぞ」
「はい」
俺は急いで、扉から外に出た。
というか師匠はいつの間にかいなくなってるし、
外に出るとそこはどこまでも広がる青空が最初に目に入った。
「………世界ってこんなに広いんだ」
俺がそう言うと外で待っていてくれたフィリスも同じことを言った。
「うん、私も初めて………ってハルカ、起きて大丈夫なの?」
「フィリス、置いていくなよ」
「でも私だって、外でハルカが来るのを待ってたんだよ」
「そう、なのか?」
「うん、でも来てくれた」
「あぁ」
フィリスの笑顔を見て、顔を真赤になった俺。
「あら、私がいること完全に忘れられてるわね」
フッと後ろを見るとリア姉がいた。
もしかしてリア姉もついてきてくれるのか?
「フィリスちゃんとハルカのお目付け役として付いてきたのよ。それとフィリスちゃんには新しい目標ができたから」
「新しい目標?」
「そう、一年以内に公認錬金術師になれるように頑張らないと……」
また期間内か。
でもフィリスならきっとなれて、外を自由に旅をできるようになるだろうな。
俺はそう思いながら、二人と一緒に歩き出した
「お別れ、言わなくていいの?」
「別に永遠というわけじゃないだろ」
「やれやれ、二人して同じことをいいますね。似たもの同士ですか?」
「もうプラフタったら」
「とりあえずこれからどうするんだ?」
「う~ん、推薦状をもらわないと……行こう。アラヤ」
「あぁ」
序章が終わり、3人の旅が始まります。