不思議な錬金術師と物語師   作:水甲

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第4話 準備はしっかりと

リア姉におんぶされながら、アトリエまで戻ってきた俺たち。

 

その間、師匠はずっと笑いを堪えるのに必死だった。

 

というか師匠も笑うことないのに……

 

「……師匠、いつまで笑っているんですか?」

 

「悪い。でもハルカの反応を見たらついな」

 

ついで笑うことないのに……

 

俺はため息をつき、アトリエに入ると、フィリス、ソフィーさん、プラフタさんの3人の他に村長がいた。

 

「村長、どうしたんですか?」

 

「あぁ、ハルカも来たか。ついさっきフィリスに外に出るための条件を伝えておいたんじゃ」

 

「条件?」

 

「そうなの、リア姉が説得してくれたんだけどね。外に出る条件として村の悩みを解決してほしんだって」

 

悩みって何だろう?

 

というかまさかと思うけど、錬金術を使って解決しろってことか?

 

「とりあえずはフィリスはさっき出した条件を期間内に解決すること。そしてハルカよ」

 

「は、はい」

 

「お前もまたフィリスと共に外へ出てもらいたい。いやそうするべきだ」

 

村長はそう言いながら、一冊の本を取り出した。

 

確かその本って……

 

「お爺ちゃんが旅に出たら書こうとしていた本?」

 

「そうじゃ、あやつが残した書きかけの本だ。お前にはこの本の続きを書いてもらいたい。それがあやつの願いなのだから……」

 

お爺ちゃんの願いって……

 

俺にそれを叶える資格はあるかどうか分からないけど、やってみなきゃいけないってことだよな。

 

とはいえ

 

「俺にも条件があるんだよね」

 

「そうだ。ハルカはそちらのソフィーさんの旦那と……」

 

「いえ、ソフィーとアラヤはまだ夫婦ではありませんよ。未だに恋人です」

 

すかさず訂正をするプラフタさん。

 

師匠たちは顔真っ赤にさせているし……

 

「ま、まぁ、他の人から見たらそんな風に見られるのかな?」

 

「べ、別に嫌じゃないけどな」

 

とりあえず村長の話の続きを聞かないと

 

「失礼した。アラヤさんだったな。彼に色々と訓練しておるみたいだし、期間内に外に出るくらいの実力をつけるようにしてもらうかのう」

 

期間内に……村長が言うには一ヶ月以内か……

 

やる価値はある。

 

「師匠。俺に出来ますよね」

 

「まぁ、十分すぎるくらいの期間だな。一応は3つある訓練の内、ひとつは今日クリアしたし」

 

「お願いします。師匠」

 

「あぁ」

 

 

こうして俺とフィリスの二人は外に出るために条件クリアを目指すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

フィリスは村のみんなの悩みを聞きながら、錬金術で解決するように頑張っている中

 

俺はと言うと

 

「昨日は防御の訓練だったな。次は攻撃の訓練だ」

 

師匠はひとつの岩を描いた。

 

「この岩はそう簡単に割れないようにできてる。ハルカにはこの岩を割ってもらう」

 

割ってもらうって、簡単に割れないんじゃないのか?

 

でもこれも訓練のひとつだ。

 

無理とか言ってられない。

 

俺は剣という文字を書いて、岩を切ろうとしたが、すぐに剣は折れてしまった。

 

「簡単に折れた!?」

 

「昨日の訓練を忘れたのか?こういう時はどうするんだ?」

 

そうだった。

 

俺は強固と剣の文字を書いて、岩を切っていく。

 

さっきとは違い、少しだけど切れ目が入った。

 

このまま続けていけば……

 

「そのままだと時間がかかるぞ。あっという間に指定された期間が終わる」

 

師匠の言葉を聞いて、剣を消した俺。

 

確かにこのままだと時間がかかる。

 

どうすればいいんだ

 

俺はその場に座り込んで、考え始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハルカが考え込んでいる中、僕の所にリアーネがやってきた。

 

「フィリスの所に行かなくていいのか?」

 

「私は錬金術は専門外だからね。それでハルカは何を悩んでるの?」

 

「そうだな。言うなれば物凄く堅い岩をどうすれば割れるかだな。リアーネならどうする?」

 

「そうね………矢を同じ場所に射っていくかな?同じ場所に衝撃を与えていけば、割れると思うけど」

 

「まぁ、それも一つの正解だな。僕の場合は爆弾を描いて爆破かな?」

 

「色んな答えの中で、ハルカは何を選ぶのかしら?」

 

「それはハルカの答え次第だな」

 

 

 

 

 

 

 

 

強固な剣だと少しだけど、岩が削れる。

 

だけどそれだと時間がかかりすぎる。

 

他に方法があるとすれば………

 

「試してみるか」

 

俺は剣の文字と重いという文字を書いた。

 

すると岩の上に黒い剣が現れ、岩に落ちると、岩は簡単に割れた。

 

「なるほどな。重い剣なら上から落とせば、衝撃で割れるな」

 

「これで合ってますか?」

 

「岩が割れたんだ。正解だよ」

 

俺は安心すると、師匠は何故か筆を取り出した。

 

まさかもう一個割れとか言わないよな

 

「次で最後の訓練だ。最後は僕と戦って倒してみろ」

 

師匠はそう言って、無数のナイフを取り出した。

 

俺は盾をすぐに書いて防いでいくが、師匠はすぐに距離を詰めて、蹴りを入れてきた。

 

「どうした?その程度か?」

 

「くっ、これなら……」

 

重い剣を書いて、師匠の頭上に落とした。

 

だけど師匠はそれを避け、石の拳を描き、俺に放っていく。

 

「どこを攻撃をするかわかり易すぎる。だからすぐに攻撃を読まれるんだぞ」

 

師匠は鎖を描き、俺の体を縛り上げた。

 

「これで今日の訓練は終わりだな」

 

「くっ」

 

まさかここまで手も足も出ないなんて……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家に戻り、俺はすぐにベッドに横になった。

 

体中が痛い。

 

かなり攻撃を食らったせいだな。

 

どうすれば師匠に勝てるのか?

 

考えても答えは見つからない。

 

俺はそのまま眠りについた。

 

 

 

 

 

 

「……カ」

 

誰かが俺のことを呼んでいる?

 

「……ルカ」

 

この声は……もしかして

 

「ハルカ」

 

目を開けるとそこには心配そうにしているフィリスがいた。

 

「フィリス?なんでここに」

 

「何でって、どんな感じかなって気になってきたんだけど……大丈夫?体中傷だらけだよ?」

 

「まぁ何とか、フィリスの方は?」

 

「私は頑張ってるよ。村の皆の悩みを聞いて、錬金術で解決してて、夕方に村長から炭坑まで来てほしいて言われてるの」

 

何だかフィリスに追い抜かれたかな?

 

「そっか、頑張ってるんだな」

 

「ハルカの方は?」

 

「俺は……」

 

フィリスに訓練の成果を話した。

 

最後は師匠との戦いだったけど、全然勝てなかったことを

 

「どうすればいいのかな?」

 

「う~ん、書いた文字で攻撃するんじゃなくって、書いて出来たもので戦ってみたら?」

 

「書いて出来たもの?」

 

それってつまり………それならどうにか出来るか?

 

あとひとつだけ思いついたものがあるけど……それでも何とか出来るか?

 

でもやってみる価値はある

 


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