俺はアラヤ師匠と一緒にソフィーさんのアトリエに戻ろうとしていた。
「とりあえずはハルカには、筆の使い方をもう少し上手く出来るように教える」
「物語の方じゃないんですか?」
「物語は人によって書き方は違うから、変に口を出さないほうがいいかなって思って」
確かに、昨日の夜は互いの物語を読んだけど、俺と師匠の書き方は確かに違う。
「まぁ筆の使い方っていうか。もう少し使い方を教えるくらいなのと」
師匠は腰につけた剣を見た。
そういえば基本的に筆を使うのに何で剣を装備してるんだろう?
「師匠、どうして剣を持っているんですか?やっぱり護身用ですか?」
「ん?いや護身用ではないけど、まぁ必要な時に使うように持っているだけだよ」
必要なときって一体どういう時なんだろうと聞こうとしたけど、この時の師匠の顔は何だか悲しそうだったから、聞けなかった。
そうこうしているとソフィーさんのアトリエに着くと、フィリスが既に来ていたけど、何だか機嫌が悪い
「どうしたんだ?フィリス」
「あっ!ハルカ。聞いて、お母さんもお父さんも酷いんだよ」
「喧嘩でもしたのか?」
「喧嘩って言うわけじゃないけど、私が錬金術を学んで外の世界に行くって言ったら、凄い反対するの。危ないからとかフィリスにはまだ早いからとか、だから……」
「………もしかして家出してきたのか?」
「家出って言うわけじゃないけど……」
正直ちゃんと謝れって言いたいけど、フィリスがこうなった以上は意地でも帰らなそうだな。
俺はソフィーさんの事を見た。
「私の方は別に大丈夫だよ。アトリエの中広いし」
まぁソフィーさんがいいって言うならいいのかな?
「とりあえずはフィリスはソフィーの弟子になったって言うことなのか?」
「うん、アラヤの方もハルカが弟子になったみたいだね」
「まぁな、とはいえ僕もまだまだだし、弟子ができたからって自惚れちゃダメだから、一緒に鍛えないとな」
「流石はアラヤですね。ソフィーも気を引き締めて下さい」
「は、はい」
師匠、ソフィーさん、プラフタさんは何だか楽しそうだな……
とりあえず俺と師匠はアトリエから離れて、長老から採掘場の使用許可をもらい、採掘場に来ていた。
あと使用許可を得る時に、長老に自分も旅に出ると伝えた。
長老は驚き、はっきりとした返事をもらえなかった。
「それじゃ特訓を始めるか」
「はい、師匠」
「まぁ、そんな厳しい特訓じゃないけど、気を引き締めろよ」
「はい」
「とりあえずは僕が今から攻撃を仕掛けるから、お前はそれをすべて防げ」
師匠はそう言って、筆で何かを描き始めた。
すごい速さで描き終え、現れたのは何本もの槍だった。
そのまま槍は俺にめがけて、襲い掛かってきた。
俺は盾という文字を書き、防いでいくが……
(何だ!?この槍、俺が書いた盾より固くて、盾がもたない……)
そうこうする内に、盾は破壊されてしまい、槍が俺の足元に突き刺さった。
「ほら、まだ終わりじゃないぞ。もう一回行くからな」
「はい!」
再び槍が襲ってきた。
今度は盾の文字を何重にも書き、さっきより固い盾が出来た。
だけど、盾はすぐに消えた。
「ど、どうして!?」
「どうしても何も使い方を間違ったんじゃないのか?」
槍が襲うのをやめ、師匠は別の何かを描き始めた。
それはぷにの絵だったけど、完成した瞬間、消えていった。
「夢想の筆は動物や食べ物とかは描けないんだ。それと同じように時空の筆は文字を重ね書きとか出来ないみたいだな」
全然知らなかった。今までは何となく使っていただけだったから、もしこれが外で魔物と戦っていた時にやっていたら…‥……やばいことになっていた。
「ちなみに夢想の筆は思いを込めれば、ただの盾でもかなり堅い盾が描ける。だけどハルカの時空の筆はそれ以上のことが出来ると思うけどな」
それ以上のことって、思いを込めるってどういう風にやればいいんだよ。
何かいい方法は……
暫く考えるとある事を思いついた。
「師匠!試したいことがあります。もう一度お願いします」
「分かった。それじゃ」
師匠は何本もの槍を描き、俺に向かって放たれた。
俺はさっきと同じように文字を書いた。
だけどさっきとは違う。今度は……
「出来た!!防げ!!」
新しく出来た盾で槍を弾いた。
やっぱり使い方はあっていた。
「すごいな。どうやったんだ?」
「一文字書くんじゃなく、しっかりとした意味を持った文字を合わせたんです」
俺は盾という文字と強固と文字を書くと、強固な盾が出来た。
「これなら何とか出来ないかって思って……」
「なるほどな。2つの文字を合わせて、ひとつの物を作り上げた。時空の筆は簡単に出来る錬金術みたいだな」
師匠はそう言って、一本の剣を描いた。
「それじゃ、今度はその盾がどこまで持つか調べるのと、どこまで応用が効くか調べるだな」
「は、はい。っていうか腰の剣を使わないんですか?」
「この剣については特訓が終わってから説明する」
それから師匠の攻撃を盾で防いだり、どんな盾を書けるかなどの特訓が続いた。
「もう戻るか。明日は次の特訓に移るけど……大丈夫か?」
「い、いや、ここまで動いたのは久しぶりなので……師匠は剣とかは一体誰から習ったんですか?もしかして凄い使い手とか……」
「いや、そんなんじゃない。僕はソフィーの採取に付き合ってたし、街に騎士の人がいて少し手合わせをしてもらったりしたから……」
齧ったくらいっていいたいんだろうけど、師匠の攻撃はすごく鋭かった。下手をすれば切られてたし……
「とりあえず動けるまで待つか?」
「そ、そうしてもらえると……」
「あら、お疲れみたいね」
ふっと誰かが声をかけてきた。振り向くとそこにはリア姉がいた。
「えっと?」
「そっか師匠は初めましてだよな。この人はフィリスの姉で」
「リアーネっていいます。昨日来たソフィーさんのお供の人ですよね」
「あぁ、アラヤっていうんだ」
「何だかフィリスちゃんやハルカがお世話になってるみたいだけど、迷惑かけてないですか?」
「いや、そんなことない。僕の場合は改めて特訓も出来るから……」
「そうですか、それはそうとハルカ」
「何?」
「ちょっとフィリスちゃんに話したいことがあるから、一緒に来てもらっていいかな?」
「別にいいけど、俺に関係することなのかな?」
「まぁ、そうね」
「それじゃ早速って言いたいけど、動けない」
さっきまで特訓してたから、身体が重くて動けない。
するとリア姉は怪しい笑みを浮かべていた。
「それじゃ、お姉ちゃんが久しぶりにおんぶしてあげよっか?」
「い、いや、流石にそれは……」
「遠慮しないの」
正直おんぶは勘弁というか、男が女性におんぶなんて恥ずかしいだろ