不思議な錬金術師と物語師   作:水甲

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今回からフィリス編スタートです。

自分は今のところ試験合格した所まで進めました。


フィリス編
第1話 閉ざされた街の物語師


閉ざされた街エルトナ

 

そこは岩石をくりぬいて作られた地中の街。そしてその街は外の世界と交流を閉ざした鉄の扉があった。

 

その鉄の扉を見つめる一人の少女がいた。

 

「はぁ~開かないよね」

 

少女はため息をつくと、一人の少年がこっちにやってくるのが見えた。

 

「あっ、ハルカ」

 

「フィリス。また扉を見てたのか?」

 

「うん、扉が開きやすくなってるかなって思って」

 

俺も鉄の扉を見た。

 

正直あんな鉄の扉がいきなり開きやすくなるとは思えないけど……

 

「フィリス。長老に呼ばれてるだろ。早く行かないと怒られるぞ」

 

「う、うん」

 

俺はフィリスのを見送ると一冊の本を取り出した。

 

「…………」

 

いつもと変わらない街。

 

この街はどんなに時間が進んでも、ずっと閉ざされている。

 

一人の少女はそんな閉ざされた街で、外の世界に憧れていた。

 

だけど憧れだけじゃ扉を開くことは出来ない。

 

物語を途中まで書き、ページを破った。

 

この文章だけ何年も書いては破り捨ててる。

 

「外の世界か………」

 

フィリスが憧れるのはよく分かる。

 

俺も外の世界に行ってみたいと思ってる。

 

もしかしたら外の世界にいけば、あのことも分かるかもしれない

 

「俺も帰るかな」

 

俺はそう呟き、家に帰ろうとすると扉が開いた。

 

「?」

 

扉から入ってきたのは黒髪の女性リアーネだった。

 

「あら、ただいま。ハルカ」

 

「おかえり。リア姉」

 

リア姉は外の世界で狩りをして、街の食糧事情を救ってくれている人でもあり、フィリスの姉でもある

 

「フィリスちゃんは?」

 

「仕事。きっとリア姉が戻ってきたの知ったら、外の世界のこと話してくれってせがまれそうだね」

 

「そうね~でもそういうフィリスちゃんも凄く可愛いんだよね~」

 

また始まったよ。リア姉のフィリス語りが……

 

リア姉は物凄くフィリスの事を溺愛してる。言うなればシスコンだ。

 

でも確かにフィリスは可愛くなってきてるからな………

 

「あら?ハルカったら、またフィリスちゃんの事考えてるわね」

 

「な、なんで分かるの!?」

 

「だって、ハルカがフィリスちゃんのこと考えてると顔がすぐに真っ赤になるんだもん。すぐに分かるわ」

 

そ、そんなに俺は分かりやすいのかな?

 

「私としてはハルカならフィリスちゃんの事任せられるんだけどな~」

 

「べ、別にフィリスの事は………その、ほら早くフィリスに会いに行かなくていいの?」

 

「そうだったわね。それじゃあね。ハルカ」

 

「うん」

 

俺はリア姉と別れ、家に帰るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

家に帰るが、誰も出迎えてくれない。

 

「ただいま」

 

誰もいないから返事も返ってこない。

 

「………………」

 

俺はもう一度扉を見に行くのであった。

 

 

 

 

 

扉に行く途中、大きな音が聞こえた。

 

「何だ?何が起きたんだ!?」

 

俺は急いで音が聞こえた所まで向かった。

 

音が聞こえた場所は扉がある場所だった。

 

だけど扉は壊されており、そこには倒れているフィリスと二人の女性と一人の男性がいた。

 

「わぁ!?どうしよう。扉の近くにいたなんて」

 

「だからあれほど気をつけてくださいと」

 

「だって返事がなかったから……」

 

「というか爆弾で壊そうとするなよ。下手をすればこの街が潰れてたかもしれないぞ」

 

「それじゃアラヤだったらどうしたの?」

 

「僕だったら……」

 

何か喋ってるけど、俺は男が懐から何かを取り出そうとしているのを見た。

 

もしかしてこいつらは……エルトナを襲いに来た奴らか。

 

長老たちに知らせないと、というかリア姉が来てくれればかなり助かるんだけど……時間がかかる。

 

その間にフィリスの身に何かあったら……それだったら

 

俺は一本の筆を取り出し、目の前に文字を書いた。

 

『矢』の文字を書く、謎の三人組目掛けて矢を放った。

 

「ん?ソフィー、プラフタ。後ろに下がって」

 

「えっ?」

 

「アラヤの言うとおりにしましょう」

 

二人の女性が後ろに下がると、男は一本の筆を取り出し、何かを描くと巨大な盾が現れ、矢を防いだ

 

「今のは!?」

 

「侵入者用の罠だったら壊せばいいけど、人だったら……話を聞いてくれないかな?」

 

「…………悪いけど、話を聞くなんて出来ないな」

 

俺は三人組の前に出た。

 

「あんたらがこの街を襲いに来たのなら、俺が追い返してやる」

 

「そうか……勘違いしてるみたいだけど、今の状態では話を聞くつもりはないみたいだな。だったら」

 

俺と男は同時に筆で書き始めた。

 

一瞬男は戸惑った風に見えた。

 

俺はその内に『風』の文字を書くと、三人組に強風が襲いかかる。

 

これなら吹き飛ばせるはず。風も上手く調整してフィリスに当たらないようにしてあるし

 

だけど男は笑みを浮かべていた。

 

「まさかあの二人の言うとおりにあるなんてな。というか絶対知ってただろう。だったら……」

 

男は何かを描き終えると、俺の目の前に竜巻が現れ、俺は思いっきり巻き上げられ、地面に落ちそうになった。

 

だけど、どこからともなく現れたクッションで地面に叩きつけられずにすんだ。

 

「落ち着いたか?まだ落ち着かずに戦おうって言うなら……こっちも本気を出す」

 

男は腰につけた剣を見せつけながら、そう言った。

 

「くっ」

 

「落ち着いたみたいだな。なら話を聞いてほしい。僕らは別にこの街を襲いに来たわけじゃない。あとそっちの子は怪我もない。多分だけどいきなり爆発が起きたからびっくりしたんだろ」

 

男はそう言うと、俺はフィリスの事を見た。

 

フィリスが起き上がると……

 

「あれ?さっき声が聞こえて、そしたら扉がいきなり爆発して……」

 

「フィリス。良かった」

 

「えっと、そのごめんね。声をかけたんだけど誰も返事しなかったから……」

 

「おかげで彼女は気絶。彼はそれを見て勘違い。ソフィー、あとでお説教です」

 

「は、はい」

 

「とりあえずは扉を直そうか」

 

男が筆で何かを描いた瞬間、壊された扉が元の形に直っていた。

 

「う、うそ、扉が一瞬で……」

 

「やっぱり今の筆って……」

 

「えっと、びっくりさせちゃったよね。私はソフィー・ノイエンミュラーで、こっちは」

 

「プラフタです」

 

「僕はアラヤ・レン」

 

「えっとフィリス・ミストルートです」

 

「ハルカ・フリューリング」

 

俺とフィリスはこの三人組と出会った。

 

この出会いは俺達にとって大きな出会いになるのであった。




フィリス編第一話でした。

この先どうなるかはお楽しみに。

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