最後の部分で妄想が膨らみすぎまして…
気づけばUAが7000を超え、お気に入りも300を超えていました。
自分の未熟な文章を読んでくれている方々に感謝です。
今回は姫菜視点になります。
彼が奉仕部の部室を出たことを確認した後、私はこの扉の前に立っていた。
さすがにね、この部活の人達にはしっかりとお話しておこうと思ったんだ。
結衣には悪いことしちゃったかな。でもね、私はもう引くつもりないんだよ。
コンコン…
私は柄にもなく深呼吸をして気持ちを落ち着けてから、部室の扉を叩いた。
「どうぞ」
「失礼しまーす。やぁ結衣、雪ノ下さんも、はろはろ〜」
あぁ、そんなキョトンとした顔しちゃって。
二人共私がいきなり来たことに驚きを隠せてない。
「いきなりごめんねー。二人には、ちゃんとお話しておこうと思って。もう本人からも聞いてると思うけど、私と『八幡』くん、付き合うことになったから」
私が彼を名前呼びした瞬間、雪ノ下さんは表情が固まり、結衣は口を開けたまま文字通りぽかーんとしている。
「……彼がどこの誰と付き合ったとしても、私達には関係のないことなのだけれど」
雪ノ下さんが話始める。素直じゃないなぁ。
「そっか。まぁそうだよねぇ。けど一応、八幡くんと同じ部活のお二人には『彼女』の私からもちゃんと伝えておきたかっただけなんだよ」
あれれ?私こんなキャラだった?
「姫菜さ、教室で聞いてもちゃんと答えてくれなかったけど、本当にヒッキーと付き合うの?その…ヒッキーのこと、好き、なの?」
「付き合うよ。離れるつもりもないしね。好きかどうかと聞かれると…私って恋愛経験ないからよくわからないんだけど、八幡くんのことは嫌いじゃないよ」
「好きでもないのによくあんな男と付き合おうなんて思えるものね。彼はあなたと付き合うことを不本意だと言っていたわ。つまりお互い好き同士というわけではない。そんな気持ちのまま交際をしてもお互いメリットがないと思うのだけれど」
「あははー、雪ノ下さん、何か勘違いしてない?」
「どういうこと?」
「好きの反対は無関心だってよくいうけど、私はそのとおりだと思う。私もね、それなりに男子から声をかけられたり、告白みたいなことをされたこともあった。けど、その男子達には興味をもてなかった。けどね、八幡くんは違うんだ。少なくとも嫌いじゃないと思えるくらいには惹かれてるって言えばいいのかな?」
「あなたの気持ちはわかったわ。けれど比企谷くん自身が付き合うことを不本意だと言っている以上、まともな交際にはならないと思うわ」
あぁ、そうなのか。
雪ノ下さんも結衣も、奉仕部として同じ時間を過ごしていたはずなのに、彼の本質に気づいていないんだ。彼は多少強引にいかないとビクともしないだろうに。
二人のことはライバルになるかもしれないと思ってたけど、これなら……
「それはまぁ、これから私がどうにかするよ」
それだけ言い残して、私は奉仕部をあとにした。
―――――――――――――――――――――――――――――
奉仕部をあとにした私は、八幡くんの最寄駅に来ていた。
なんで最寄駅を知ってるかって?
八幡くんの事で私が知らない事なんてないのだよ!
…とまぁ、冗談はおいといて、あのあとメールで結衣に聞いたのだ。
その理由としては、八幡くんの連絡先を手に入れるためだったりする。
付き合い始めたのにお互いの連絡先を知らないというのはさすがにね……
あと、ちょっと聞きたいこともあったり。
けれど私は八幡くんの家までは知らないので、たまたま会えたらいいなぁ、くらいの気持ちで最寄駅に来てみたのであります。
ただそこはさすがというかなんというか、八幡くん、いました。
駅前のドーナツショップの中で、綺麗なお姉さんと他校の女子二人に囲まれてね。
ほほぅ…これはあまりいい気分にならないなぁ…
これが嫉妬って感情なのかな?まぁとりあえず、行ってみますか。
「八幡く〜ん!」
「うわぁ……」
いやいや思いっきり嫌な顔しないでよ!
「え、なんでいんの?ここ地元じゃないよな?」
「違うよー。けど、八幡くんにちょっと用があって。たまたま見かけたから声をかけに来たんだよ」
「比企谷くん、お姉さんにこの子紹介してほしいなぁ☆八幡くんって呼ばれてるけど、まさか彼女さんとかー?」
綺麗なお姉さんが私を値踏みするように上から下に目線を向けながら声をかけてくる。
「いや、こいつは普通にただのクラスメ「彼女ですよー」イト…」
「ふーん。その話、詳しく聞きたいなぁ」
「比企谷に彼女とか、ウケる!」
他校の女子生徒さんも会話に入ってきた。
あ、私きっとこの人苦手だ。
「あ、じゃあ俺このあとちょっとあれがあれなんで…」
私はとっさに八幡くんの腕を掴んでいた。
「はぁ…マジでなんなんだよ今日は…せっかく平塚先生から逃げ切ったっつーのに…」
「はじめまして。私は海老名 姫菜といいます。八幡くんとは同じクラスで、修学旅行のときに告白されてお付き合いをしてます」
「ちょっ!」
「はじめましてー。私は雪ノ下 陽乃ね。そっかそっかー。今日だけで比企谷くんが告白した女の子二人に会えるなんてお姉さんは運がいいなぁ」
「二人?」
「あ、はじめましてー!私、折本 かおりっていいます。比企谷とは中学の同級生ですー。私も中学のとき比企谷に告られてさー」
ふいと私から顔を逸らす八幡くん。
これは後で詳しく話を聞く必要があるね。
「そうだったんですか。あの、私ちょっと彼とお話があるので、連れて行ってもいいですか?」
「えー!これから隼人もくるし、よかったら海老名ちゃんも一緒にお茶していかない?私、比企谷くんとのこともっと詳しく聞きたいなぁ」
ハヤ×ハチ…だと…?
……っていやいや違う。今日はそんな目的で来たわけじゃない。
「すいません、私門限があるのであまり遅くなるのはちょっと…」
「そっかそっかー。ま、今日はいいや。比企谷くん、この子達には私から隼人を紹介しとくから、帰ってもいいよー」
「……うす」
こうして、私と八幡くんは無事にドーナツショップから脱出した。
―――――――――――――――――――――――――――――
「まぁ、なに、あれだ、俺もあの場からはさっさと退散したかったんだよ。だからまぁ…助かった。とりあえず送ってくわ」
照れくさそうに頭をガシガシとかく彼。
あぁ、これが噂の捻デレか。思ってた以上の破壊力だ。
お言葉に甘えて送ってもらっている私は、ふいに彼に話しかける。
「…八幡くんてさ、ああいう子がタイプだったんだね。なんか意外」
「ばっ、ばかおまえあれはあれだ、タイプとかそういうんじゃねぇよ」
「でも好きだったから告白したんでしょ?」
「いや…あれを好きだったとは言わねぇよ。勝手に自分の理想を相手に押しつけて、勝手に期待してただけだ。ようするにノーカン」
「へぇ〜…」
「なんだよその反応…つーかさらっと名前で呼ぶのやめてくんね?勘違いしちまうだろ」
「彼女に名前で呼ばれることに勘違いもなにもないんだけどなぁ…あ、そうだそうだ、私八幡くんに用があったの。あそこの公園にちょっと寄っていいかな?」
帰り道にある小さな公園に寄ろうという私の提案を、彼は渋々ながら受け入れてくれた。
二人で公園のベンチに座り、話を始める。
「で、用って何?俺は早く帰って愛しの妹が作ってくれる夕飯食いたいんだが」
「まずさ、八幡くん、私に連絡先教えてよ」
「え、やだよ」
即答!?これはひどい…けど八幡くんだしね…
「大丈夫、私はそこらへんの女の子達とは違うし、毎日メールしてーとか毎日電話してーとか言わないからさ。ただ、本当に用があったときに彼氏の連絡先知らないって不便だなーと思って」
「そういうことならまぁ…ほれ、勝手にやってくれ」
「あっさり人に携帯渡せるってどうなのかな…って、この星だらけのゆいってまさか結衣?」
「あ?あぁそれな。由比ヶ浜のやつが勝手にやったんだが、変えるのが面倒だからそのままにしてあるだけだ。むしろ変え方知らん」
なるほど…
なら私は『愛しの姫菜ちゃん』っと。
あれ?これまた私のキャラじゃないかな?
登録を終えた私は彼にスマホを渡す。
「ん。…ってなんだよこれ普通に名前で登録しろよ!」
「いやいやー、結衣がそれなのに彼女の私が普通じゃつまらないかなーって」
「あのなぁ…昼にも言ったが、おまえ本気で俺と付き合うつもりか?俺はおまえのことをなんとも思ってねーんだぞ?」
「うん。というか八幡くん、いい加減観念して私の名前呼んでくれない?」
「いや、いきなり無理だから恥ずかしいわ普通に」
「まぁいいや、名前呼びはそのうちね。じゃあ次の話。八幡くんさ、なんでそんなに私と付き合うことを嫌がるの?不本意なんて言われて傷ついちゃったなー」
八幡くんがまだ私のことを好きではないとわかってはいるけど、ここまで拒否反応を示す理由はなんだろう。それが私は気になっていた。
「いや、だっておまえ、由比ヶ浜とか三浦とかと話してる時もなんとなく自分を隠してるだろ?一歩引いてるっつーか、どっか遠慮してるっつーか。そんな人が俺みたいなやつといきなり付き合うってなんだから信用できるわけねーだろ。なに?罰ゲーム?」
驚いた。素直に驚いた。
教室で結衣や優美子達と話しているときは、私は楽しんでいるつもりだった。
あの場所が好きだし、なくしたくないとも思ってた。
なのに彼から見た私は、どこか遠慮が見えたのだろう。やっぱり…
「やっぱり…やっぱり私、八幡くんとならうまく付き合えると思う。八幡くんは気づいてくれたみたいだけど、私って他人に一線引いちゃうんだ。けど、今いるあの場所は本当になくしたくないと思えるくらい大切なはずだったんだけどなぁ…」
「まぁ、一回癖になっちまったもんはそう簡単にはなくならねぇだろ。そう思えるようになったってだけでも充分な進歩なんじゃねーの?知らんけど。つーかそれでなんで俺とうまく付き合えるって話になんだよ」
「だって八幡くん、私のそういうとこ、気づいてくれてたんでしょ?理解してくれてたんでしょ?」
「まあな。ぼっちの人間観察スキルなめんな」
「私のこと観察してたんだ…」
「い、いやおまえ今のはだな…」
「あはは〜。ごめん、いじわる言っちゃったね」
あぁ、楽しいなぁ…
素直に人と話すのって、こんなに楽しかったのかな。
でも、こんな私の本音を引っ張り出せるのは、きっと彼だから。
「ねぇ、八幡くん。真面目なお話するね。やっぱり私、八幡くんのこと嫌いじゃないよ。むしろ惹かれてるんだと思う。けどね、私って基本的に腐ってるから、本気で人を好きになったことってないんだ。だからこの感情が好きってことなのかはわからないんだけど、やっぱり八幡くんとは付き合っていきたいと思うの」
「お、おう…」
「……あなたのその目から見た今の私は、嘘をついてるように見えますか?」
「俺の目ってなんだよ腐ってるってこと?」
「茶化さないで」
「はぁ…わかったよ。今のおまえが嘘をついてるようには見えん。これでもし嘘だったとしたらおまえは某超強化外骨格以上ってことになる。そんな人間いてほしくない」
「なにそれ…」
「ただまぁやっぱり、俺なんかと付き合っていくってきついんじゃね?クラスでもぼっちだし、文化祭のせいで悪名高くなっちまったし、そんなやつと付き合ってたらおまえもなんて言われるかわかんないだろ」
「もしかして私のことを心配してくれてる?」
「い、いや、別にそんなつもりじゃねぇけど…」
やっぱりこの人はずるい。
あっさりと私の偽りの仮面の下を見破り、蓋された心を見透かし、さらにそんな私の心配までしてくれるんだね。
「はぁ…もしこれで今後付き合ってくれないとか言うならハヤ×ハチの薄い本を描いて校内にバラまくからね。あ、トツ×ハチのほうがいい?」
「やめろ!マジでやめろ!けどトツ×ハチは個人的にくれ。戸塚の魅力を余すことなく描きあげてくれ」
「ん、じゃあよろしくね?八幡くんにはこれからどんどん私を好きになってもらうからさ」
そっと私は彼に手を差し出した。
「はぁ………マジでか………しゃーねぇな。わかったわかった」
彼はビクつきながらも私の手を握ってくれた。
「じゃあとりあえず私のことを名前で呼んでみよっか」
「いや、そういうの無理なんで」
「んー…じゃあ、えいっ」
私は握った手を引き、そのまま彼の腕に抱きつく。
そして、実は先程から準備していた自分のスマホを構える。
パシャッ
おお、我ながらいいのが撮れました。
スマホの画面には、自分でも初めて見るような笑顔の私と、うっすらと頬を赤くし、面白い顔をする彼が写っていた。
「今日はこれで勘弁してあげるね。今度ちゃんとしたのも撮ろうね!あ、これ私の待ち受けにしとくから」
「あの…キャラ変わりすぎじゃないですかね?」
「八幡くんの前でだけだよ」
私がそう言うと彼はまた照れくさそうに頭をガシガシとかきながら立ち上がる。
彼も少しは私に心を開いてくれたかな?
「とりあえずもうこんな時間だし帰るぞ。さっさと送ってくから」
「うん!」
帰り道、私は自然に彼と手を繋げていた。
私と彼の恋人同士の関係は、ようやくスタートできた気がする。
これからもよろしくね、八幡くん。
いかがだったでしょうか。
海老名さんはこんなキャラじゃねぇよ!って思ってしまった方がいましたらすいません。
きっとデレたらこんなふうになるだろうなっていう私の勝手な妄想でございます。
今回もいろはすと海老名さん絡ませられませんでしたが、そのお楽しみはまた次回!
次回は八幡視点になります。