腐った私と腐った目の彼   作:鉄生

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このSSを読んでくださる方々に感謝し、できるだけ楽しんでもらえるよう頑張ります!

今回は八幡視点です。

自分が大好きなあの子も出ます。


不本意ながら彼女との関係は終わらない

「学校行きたくねぇ……」

 

俺は小町の作ってくれた朝食を食べながら、あの出来事を思い出しついぼやいてしまう。

 

修学旅行からの帰りの新幹線を待つクラスメイト。突然俺の腕に抱きついてきた海老名さん。一気に注目を集めてしまった俺はその視線に耐えきれず、新幹線乗車のギリギリまでトイレに身を潜め、新幹線に乗車するとすぐに目を閉じた。

なんとか誰にも話しかけられる事なく帰宅したはいいものの、学生である俺は今日も今日とて学校である。

 

「お兄ちゃん、なんかあった?」

 

何もないとは言えないが、ありのままの話をするわけにはいかず、適当にごまかす。

 

「まぁあれだ、なんもなかったとは言えないんだが、正直俺自身も理解が追いついてない部分もあってだな……」

 

「まーたなんかやらかしたのかこのごみいちゃんは…仕方ないなぁ、小町も一緒に考えてあげるから一つ一つ話してみそ!」

 

「そう言われてもだな…」

 

修学旅行でクラスメイトの女の子に告白したらおっけーもらって彼女ができましたまる。

なんて素直に言えるわけないんだよな…

 

「あのな、正直ちょっと俺もわかってないことが多すぎるんだわ。曖昧な部分が多すぎてそれがどういう事になってるかは多分これから学校へ行けばわかるんだろうが今の段階ではなんとも言えない。だがそれをはっきりさせてしまうとおそらく俺はとてつもなく面倒な事に巻き込まれそうなんだ。だから学校に行きたくない。なんならこのまま引きこもりたいまである」

 

「はぁ…」

 

ちょっと小町ちゃん?何その目?お兄ちゃん泣いちゃうよ?

 

「とりあえず!お兄ちゃんは学校へ行きなさい!そして色々とはっきりさせて、全てを!事細かに!小町に報告しなさい!じゃないと一生口きかない!」

 

はぁ……

小町にここまで言われてしまったら仕方ない。俺は重い腰を上げ、学校へ向かう決意をした。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

教室に到着するなり机に突っ伏し、なんとか午前中の授業を乗り切った。

昼休みになると俺はすぐに教室を脱出し、購買にてパンを買い、愛しのマッ缶も購入しベストプレイスへと向かう。

心が休まる時間を、ようやく迎えられたというのに、ベストプレイスにはすでに誰かがいるようだ。まぁ誰かって言っても海老名さんなんですけどね。はい。

 

「やぁやぁヒキタニくん、はろはろ〜」

 

「え、なんでいんの?」

 

「やだなぁ、せっかく彼女が一緒にランチしようと思って来たのに、その言い方〜」

 

「いや、俺一人で食いたいんだけど…というかなんでこの場所知ってんの?」

 

「ヒキタニくんの事で、私が知らない事なんてないのだよ!」

 

えっへん!とでも聞こえてくるような態度で胸を張る海老名さん。

まぁちょうどいい。この間の件についてしっかりと話をしておきたいと思ってはいたしな。教室で俺から声をかけるわけにもいかんし。

 

「はぁ…まぁいいわ。隣座るぞ」

 

「どうぞどうぞ」

 

ある程度の距離をとって座り、買ってきたパンを食べながら話を始める。

え?なんでこの子近づいてくるの?俺のこと好きなの?

 

「あのさぁ、その彼女ってやつなんなの?俺、あの告白はなしってことでって言ったよな?」

 

「あぁ〜、言ってたねぇ。けど私、それを了承した覚えはないし、了承するつもりもないよ?」

 

「いや、おかしいでしょ。好きでもないやつと付き合う必要ないし、付き合う事にメリットがない。戸部だってすぐに告白しようなんて思わないだろうしな」

 

「ヒキタニくんこそ私の話聞いてた?私、ヒキタニくんの事嫌いじゃないよ。」

 

「嫌いじゃないから付き合うって意味わからんでしょ…つーかこの間はちゃんと俺の名前呼んでなかった?」

 

「あははー、気になっちゃう?一応学校では周りに合わせといたほうがいいかなーって思ってね」

 

「まぁなんでもいいけどよ…とりあえず付き合うってのはなしな。海老名さんの周りにはそっちから説明しといてくれ。俺はそんな説明して回るのはごめんだ」

 

「うん、やだ。あと彼女なんだし姫菜って呼んでいいよ。海老名さんってなんかよそよそしい」

 

「は?いやいや待ってくれ。俺と付き合うメリットもないし、だいたいこれ、付き合ってるってことになってんの?そのへんすら曖昧なんだが」

 

「へ?ヒキタニくんが私に告白をしてくれて、私はそれを受けたんだから付き合ってるでしょ?」

 

何言ってんだこいつ?みたいな表情をする海老名さん。

とりあえずこれだけははっきりした。俺と海老名さんは不本意ながら付き合っているらしい。だったら…

 

「そうか、だったら別れてくれ。あの告白は間違いだ。俺は海老名さんのことを好きともなんとも思ってない」

 

「や」

 

「いや、やってなんだよやって…」

 

「あ!もうすぐ昼休み終わっちゃうよ。そろそろ戻ろうか〜ヒキ…『八幡』くん」

 

「は?」

 

そう言うと海老名さんは俺の袖を掴み、一緒に教室へと向かって歩き出す。

いやいやいやいや話がまったくわからん。というか通じない。え?本当に付き合うの?マジで?

海老名さんは何を考えてんだよ…

 

そうこう考えているうちに教室へと辿り着く。その時、俺と海老名さんへ、またあの時と同じ目線が向けられる。あぁ、またかこの感じ。なんだかお腹痛くなってきたな…

 

「はぁ…帰りたい…」

 

俺は即座に自分の机に突っ伏し、午前中と同じように狸寝入りを始めるのだった。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

放課後、HR終了とともに俺は教室から逃げ出す。だがそのまま素直に部室へ行く気にはなれず、マッ缶片手に校内をぶらついていた。時刻は16時を過ぎたあたり、俺はまだ部室へ行くのを躊躇っていた。

 

「はぁ…本当に行きたくねぇ…もういいかな帰っちゃっても…」

 

と言いつつも、ようやく部室前に到着する。中からは二人の話し声が聞こえる。

 

「っし、行くか…」

 

ガラッ…

 

部室のドアを開けると、二人の会話は止まる。なんなら空気が止まったまである。

気にせずに定位置に座り、読みかけの本を開くとふいに声がかけられる。

 

「ようやく来たわね」

 

「あぁ…」

 

「では、どうなっているのか全て説明してもらいましょうか」

 

雪ノ下、めっちゃ笑顔。何その笑顔。えーやだ超怖いんですけどー…

 

「京都駅ではクラスメイトの前でイチャイチャと腕を組み、今日の昼休みは手を繋ぎながら教室へ戻ってきたそうね。これはどういう事かしら?あなた私達に言った事を忘れたの?付き合うつもりはない、話はつけてくると言ったわよね?話をつけたうえで、あなたはこんな行動しているのかしら、チャラ谷くん」

 

「ちょっと待て、手は繋いでない」

 

「そんな事どうだっていいからちゃんと説明してヒッキー!姫菜に聞いても『あははー』とか『えへへー』とか、そんな感じでしか答えてくれないし、クラスの子達はみんなヒッキーと姫菜が付き合ってると思ってるよ!優美子だってヒッキー呼び出して話つけてくるとか言ってたんだから!」

 

「あー…めんどくせ」ボソッ

 

「比企谷くん、なにか?」

 

「い、いえ、なんでもないでしゅよ?」

 

なんで聞こえてんだよ怖えよ思わず噛んじゃったよ!

 

「簡単に説明すると、俺は海老名さんと付き合ってる、らしい。不本意だが」

 

「「は?」」

 

ハモるなよ怖えって…

 

「あなた、海老名さんとどういう話をつけにいったの?今後の交際について?」

 

「違ぇよ…俺はちゃんとあの告白はなしだと言ったんだが、海老名さんはそれを了承しなかった。だったら別れてくれとも言ったが「や」の一言で済まされちまったんだよ。俺にはあの人が何を考えてんのかよくわからん」

 

「や」って言われてなんだこいつかわいいなとか思ってしまったのは秘密だ。

 

「じゃあ本当にヒッキーと姫菜は付き合ってるの?」

 

「形上そうなるな。不本意だが」

 

「そう…なんだ…」

 

「あぁ、だから今後どうなるか今の段階ではまだなんとも言えんが、俺は交際を続けていくつもりはないぞ」

 

「けどさ、姫菜が本当にヒッキーを好きで、ヒッキーも姫菜のいいところを見つけて好きになっちゃったら?」

 

「いや、俺なんかを好きになるやつなんているわけないだろ。海老名さんも、俺のことは嫌いじゃないと言うだけで、好きとは言われてない」

 

「「はぁ…」」

 

今度は二人揃って溜め息ですかそうですか。

 

コンコン…

 

そんな時、部室のドアをノックする音が聞こえた。

 

ガラッ

 

「邪魔するぞー。少し頼みたい事があるんだが…ん?何かあったのかね?」

 

平塚先生、あんた今輝いてるよ。ようやく質問攻めが終わる…

 

「いや…それよりなんか用で「比企谷くんに彼女ができたらしいので話を伺っていました」すか…」

 

おい!余計なこと言うな!平塚先生、開いた口が塞がってないだろーが!

 

「えぇ〜!?比企谷くん、彼女さんができたの〜!?」

 

「城廻先輩?」

 

「あ、いきなりごめんね〜。ちょっと相談したいことがあって…入っていいよ」

 

「失礼しまーす」

 

「あ、いろはちゃん!やっはろー!」

 

「結衣先輩、こんにちはでーす!」

 

そこには見知らぬ女子生徒が立っていた。

八幡センサーが告げている、関わると面倒な事になると。

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「生徒会選挙の候補者?」

 

「はい!…あ、今向いてなさそうとか思いませんでした?よく言われるからわかるんですよ〜。トロそうとか〜鈍そうとか〜」

 

「あ、いや、別に」

 

何なのこの子やりづらい。

 

「あのね、一色さんは生徒会長に立候補してるんだけど…その…当選しないようにしたいの」

 

「ならなぜ立候補を?」

 

「私が自分で立候補したんじゃなくて〜勝手にされてて〜」

 

え?なにそれどこのアイドル?…しかしあれだな、こいつ本当に女子に嫌われてそう。

かわいい自分を見せて男子を手玉にとるのは上手いんだろうが、そんな姿見てたら女子からは反感をかう。

 

「やりたくないなら選挙で落ちればいい。というかそれしかないだろ」

 

「う〜ん…ただ立候補が一色さんだけだから…」

 

「となると、信任投票ですね」

 

「信任投票で落選って超かっこ悪いじゃないですか〜」

 

「応援演説をやる奴は決まってるのか?」

 

「いえ…」

 

「なら手っ取り早い。最悪、信任投票になっても確実に落選できて、一色はノーダメージで切り抜けられればいいんだろ?だったら応援演説が原因で不信任になればいい。それなら誰も一色のことは気にしないだろ」

 

「ねぇ、その演説ってさ、誰が、やるのかな……?」

 

「……そのやり方を認めるわけにはいかないわ」

 

「理由は?」

 

「確実性がないからよ。第一、どこかの誰かさんはつい先日、他の誰かの代わりに好きでもない人に告白をして、予想外のOKをもらって付き合う事になってしまうという失敗をしたじゃない。全てがあなたの思いどおりになると思って?弄び谷くん」

 

…ここで、この状況でそれ言う?

 

「すぐに結論は出なそうだな…城廻、一色、今日のところは一度帰りたまえ。また後日にしよう」

 

城廻先輩と一色が部室を後にし、雪ノ下は何かを思い出したように先生に尋ねる。

 

「平塚先生、今のところ勝敗はどうなっていますか?」

 

「勝敗って」

 

「…誰が一番人に奉仕できるか、人の悩みを解決できるかって勝負だな。勝ったらなんでも言うことを聞いてもらえる」

 

「そんなのあったんだ!?」

 

「…………あ。そ、そうだなぁ、まだまだ勝敗を判断するには皆の奉仕が足りないかな!あはは…」

 

「はぁ…つまりまだ勝負はついていないと?」

 

「そういうことになるな」

 

「なら私達の意見が割れてもなんら問題ないというとになりますね」

 

「まぁそうだな。お互い無理に合わせる必要はない」

 

「わかりました。由比ヶ浜さん、ちょっと…」

 

そう言うと雪ノ下は由比ヶ浜に何かを耳打ちしている。

嫌な予感しかしねぇ…ここは退散するか…

 

「そういうことなら、俺はこれで」

 

ガラッ…

 

俺は奉仕部をなんなく退室できた。これはこれでなんか怖い。

廊下を歩いていると、不意に肩を掴まれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「比企谷!彼女ができたとはどういう事かね!?ラーメンでも食べながら詳しく話を聞こうかこの裏切り者が!!!!!!」

 

残念!静ちゃんでした!!!!

 

一難去ってまた一難とはまさにこの事である。

 




いかがだったでしょうか。一部原作に忠実になりすぎた部分もあったとは思いますが、今回はこんな感じです。

次回は姫菜視点になります。早く一色ちゃんと絡ませたいですね…

最後まで読んで頂き、ありがとうございました!

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