真剣で一振りに恋しなさい!   作:火消の砂

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――私は騒ぐ。――

「たのもう」

 

 島津寮の扉を開けるとそこには一人の少年が立ち尽くしていた。

 

「……道場破りなら川神院へどうぞ」

 

 風貌からして武術家の総一郎を見て、先ほどの言葉を聞けばそう返すのも仕方がない。総一郎は後頭部を掻いて初手が不発したことに気が付いた。

 

「ああ、すまん。今日から島津寮にお世話になる塚原総一郎という者だ」

 

「あ、そうなの。俺は直江大和、大和でいい、みんなそう呼んでいるからな」

 

「そうか、よろしく大和。俺のことは総一郎でも総一でも、総ちゃんでもいいぜ」

 

「それはキモイ」

 

 総一郎は大和に近づくと右手を差し出した。

 

「取りあえず三年間よろしく、三年間よろしく出来ることを切に願う」

 

「……いきなり不吉なこと言うなよ」

 

 大和は右手を差し出して総一郎の手をしっかり握った。

 

 島津寮は一階が男子、二階が女子の部屋で区別されていて男子が許可なく二階に上がると袋叩きのさらし首にされるらしい。

 大和に荷解きを手伝ってもらいながら総一郎は他愛のない雑談を楽しんでいた。

 

「え? 女子が男子部屋に来てもお咎めは無いのか?」

 

「ない、酷い話だろう」

 

「区別は当然だとしても差別もあるとは……」

 

「特に俺は実害を受けるからな」

 大和が大きな溜息をつく。何かあるのか? と思い、総一郎は疑問を投げかけるが、玄関の方で声がし始めたので会話はいったん中止となった。

 

「ふう、酷い目にあったぜ」

 

 玄関に居た水を含んだバンダナを絞っているバンダナの男を見ると雨にやられたと見える、大和は男にタオルを渡して総一郎の方を指さした。

 

「キャップ紹介するよ、今日引っ越してきた塚原総一郎、四月から同じ川神学園に通う奴だ」

 

「どうも、塚原総一郎です。以後お見知りおきを」

 

「おう、俺は風のように自由を生きる男、風間翔一だ!」

 

 自己紹介も束の間、キャップは自分がびしょ濡れであることも忘れ総一郎の腰についている刀に目を光らせた。

 

「それってもしかして真剣か!?」

 

 大和が「そんなわけないだろう」とキャップを一蹴するも、総一郎は「そうだぜ」と言えば大和は口を開けて総一郎に視線を移していた。

 

「触らしてくれ!」

 

 と言えば、大和は「ダメに決まってくるだろう」とキャップを窘める、しかし総一郎は「いいぜ」と言い、大和は口を開けて総一郎に呆れ顔の視線を移していた。

 とはいえ、ここは室内でしかも寮、こんな狭いところで刀を振り回してしまえば壁や柱に刀傷が――柱だったら真っ二つになるかもしれない。

 ではどこで刀を出すかといえば、現在雨が降り注ぐ庭しかなかった。

 キャップは先ほど濡れて帰って来たばかりだというのに総一郎と庭に直行して鞘から刀を引き抜いていた。大和が「おいおい」と言うもキャップだけではなく総一郎も乗り気で、二人は雨に打たれながら無邪気な子供のように遊んでいた。

 

 真剣で。

 

 二人は一通り遊び冷えた体を風呂――島津寮は温泉が出ているため温泉で体を温めながら、キャップの冒険譚や総一郎の日本全国武者修行の旅を語り合い、気が付くと一時間以上が経過していた。

 湯あたりなどは全く気にしていなかったが、大和が様子を見に来ると二人の顔は真っ赤になっていたため強制的に風呂から上がることとなった。

 案の定、話の熱が冷め居間で二人は呻き声を上げながらソファに脱力していた。

 

「今日は親睦会なんだからしっかりしてくれよお二人さん」

 

「……親睦会? なんじゃそしゃ」

 

「あーそんなこと言ってたような、言っていなかったような」

 

 苦労人直江大和は本日何度目かの溜息をついて冷たいタオルをキャップと総一郎の頭に置く。

 

「総一には言ってなかったけど、寮生が今日みんなそろうからファミリーを集めて鍋パーティをするって一週間前に言ったろ……というかキャップが言い出しんたんだろ!」

 

 すると大和の大声が発破をかけるように居間の扉が開く、入ってきたのはひ弱そうな細い男と汗臭そうな屈強な男、伏し目がちな髪の短い女。

 

「来たよー、大和大声出してどうしたのさ」

 

「おう、大和、俺様腹をすかしてきたぞ」

 

「……ども」

 

 総一郎は顔にかかっているタオルの隙間から三人を見て「個性強いなあ」と思いながらふらつく足をどうにか立たせようとして近くにあった刀を杖代わりにする。

 無理をして立ち上がったのは自己紹介をするためだ。

 

「皆さんどうも、今日からここでお世話になる塚原総一郎です。今は生まれたての小鹿の様ですがどうぞよろしく」

 

 薄ら笑顔な総一郎を見かねて大和はソファに座らせる。座ってしまえば総一郎は脱力するほかなった。

 そんな総一郎を不思議に思いながらも三人は口を開く。

 

「あはは、何か大変そうだね。僕は師岡卓也、ここの寮生じゃないけど四月からは同じ学校に通うからよろしくね」

 

「俺様は島津岳人、ここの寮母は俺のかあちゃんだ。好きなものはプロテインと筋トレ、それと美人のお姉さんだ」

 

「……直江京、まあよろしく」

 

 律儀な自己紹介に応えたいけれども総一郎は片手を振って「よろしく」とするのが精一杯、キャップと総一郎が回復するのにはまだかかると大和は判断してパーティの準備に取り掛かった。

 取り掛かるといってもこの中で料理が出来るものはいない。

 鍋と野菜を簡単に切って四人はある人物を待っていた。

 

「おう、遅くなった」

 

 そう言うのは少し強面の青年、ここにいるということは大和の知り合いなのだろう。

 

「源さんお帰り、さっそくだけど鍋お願い」

 

「ったく、めんどくせえな……まあ、変に怪我して部屋に来られても困るから仕方ねえ」

 

 渋々――というか適当に理由を付けているようにも見える、源さんと呼ばれる男は荷物を置いて台所に立つ。

 そんな二人のやり取りを見て京は息を荒げるのだった。

 

 

 キャップと総一郎が湯当たりでダウンするというハプニングがあったけれども、鍋は無事完成をまもなく迎え二人も休んだ甲斐があったのか体調は正常になっていた、鍋パーティ親睦会は予定通り行われる。

 

「――肉は?」

 

 はずだった。

 

「肉がないぞ!」

 

「どういうことだ大和!」

 

 キャップと岳人は声を荒げて大和に猛抗議をする。

 

「まあ待て、肉はもうすぐ届く」

 

 二人を両手で窘めて大和はケータイを取り出す、総一郎はきっと肉に催促をしているのだろう――なんて考えていたが。

 

「――あ!」

 

 総一郎に視線が集まる。何事であるか。

 三十分前まで湯当たりのせいで思考回路がおかしくなっていたのか、目の前に食べ物がずらりとあっても気が付くことは無かった。

 

「……ああ、すまん。弁当を食っていないことに気が付いた」

 

 どうしたものか、そう思って頬杖をついた。――どうしたものかではない、あれには納豆が入っている。

 総一郎は部屋へ直行して弁当を確認する。不安は直ぐに拭われた、納豆は入っていたものの、納豆単体ではなく料理としての納豆であった。恐らく腐ってはいない。

 

「どうした総一」

 

 総一郎は両手に居間へ戻る。

 

「俺はこの弁当を食べなくてはならない。勿論、鍋も食う」

 

 大和の返事を待つことなく総一郎は席について両手を合わせた。開かれた弁当を見てみれば殆どが納豆、その場にいた全員が顔を顰めた。匂いにではなく光景に。

 さらには何の躊躇もなく弁当を食べ始めた総一郎は間違いなく異質であっただろう。箸の持ち方や食べ方、背筋が良いこと、食べる姿は良いところのお坊ちゃんの様。

 

「なあ総一、お前の家は金持ちかなんかか?」

 

「ああ、一応旧家だ。金はある、土地もある」

 

 ガクトの問いは妬み半分好奇心半分のようだったが、総一郎は悪意に勘づくこともなくただ箸を進めた。

 

「そうだ、こいつ真剣を持ってるんだぜ! 俺初めて触らしてもらったけど重いのな!」

 

 思い出したようにキャップは目を輝かせた。先ほどのやり取りが余程楽しかったのか、肉のことなど忘れてガクトに自慢話をし始めてしまった。

 

「真剣?! すごいね、流石に僕たちも真剣は見たことないや」

 

 今まで無言だったモロも男の子なのか話に食いついてくる。いつの間にか話は真剣話に変わってしまい、総一郎は居間で刀の自慢をし始める。

 すると今度は自己紹介以来一回も口を開いていない京が口を開いてきた。

 

「……塚原って京都剣客塚原信一郎の塚原?」

 

「わお、まさか同級生が父の名を知ってるとは思わなかった。流石直江さん、大和の恋人だけある」

 

「!……この人いい人かもしれない! 大和結婚しよう!」

 

 別に地雷を踏むつもりはなかった総一郎は突然の出来事に両手を前にして潔白を証明していた。

 

「確かに訂正はしていなかったが……簡単に地雷を踏むな総一!」

 

「すまん」

 

 京が落ち着くまでに数分かかってしまったが話題は刀の話ではなく、直前の話題へ回帰していた。

 塚原総一郎と言う男の話に。

 

「へえ、椎名さんの娘さんか、通りで」

 

「お父さんを知ってるの?」

 

「ああ、一度手合わせしたことがある」

 

 頬杖をついて総一郎はニヤつく。

 

「どうした?」

 

「いやあ、滅茶苦茶強くてさ、三メートル以内に近づけなかったんだよね」

 

 総一郎の強さも京の父の強さも知らない奴が聞いても理解できない言葉ではあったが、京は自分の父の強さを知っている。

 京は瞳孔を開いて驚愕していた。――父の間合いに限界まで近づいてニヤついていられるこの男はなんだ――

 

 そこで何度目かはわからないが、居間の扉が開く。

 そこには総一郎も知っている姉妹の姿があった。

 

「悪い遅くなった。肉をくすねる途中で爺に見つかった、説得するのに――」

 

 大量の肉を片手に言い訳をする美少女――川神百代は居間のある人物へ視線を向けていた。

 先に声を出したのは一子であったが。

 

「あ! 総ちゃん!」

 

 指を指しながら一子は総一郎に近づいてくる、傍に来るなり一子は物欲しそうな顔で

総一郎の懐に視線を集中させていた。

 総一郎は懐から何かを取り出した――ジャーキーだ。

 

「食うか」

 

「くれるの!? ぐまぐま」

 

 先にアクションを起こされた百代は総一郎に文句を言うタイミングを失っていた。一子にジャーキーをあげている総一郎の顔を見てしまえば仕方のないことだった。

 その表情はまるで主人と犬、まずこの二人がなぜ知り合いなのか――ということに突っ込むところだが、そんな二人に全員が呆れ顔だった。

 

「直江、いい加減飯にするぞ」

 

 そんな源さんの声で鍋パーティは始まった。

 

♦  ♦  ♦

 

 

 鍋パーティは戦場だった。腹を空かせた猛獣が食卓に半分以上もいたためである。主にキャップと一子の二人であったが。

 

 一通りの食事が終わり、後は締めのおじやを待つのみ。その間に質問タイムが行われていた。

 

「姉さんと一子は総一と知り合いだったの?」

 

 大和はみんなの心を代弁するかのように一番の疑問を呈した。

 

「……」

 

「ふふ」

 

 総一郎は笑みを溢しても百代は総一郎を睨みつけて一同に沈黙が走る。大和はまるで地雷を踏んだ気分だったが、それをどちらの意味で晴らしたのはファミリーのマスコットだった。

 

「昼にお姉さまと手合わせしてたのよ、その時に会ったわ! 私はジャーキー貰ったの、すごくいい人よ!」

 

 そこで一同は疑問に思った。

 手合わせをしてなぜ百代は不機嫌だったのか、戦闘狂でいつも対戦相手を探しているあの川神百代がなぜ手合わせをして不機嫌なのか。

 勿論、彼女をよく知るものならばその答えは見つからないだろう。

 

「ももちゃん、次の手合わせは何時にしようか? 次は負けないように本気で来てね」

 

 そんな総一郎の言葉に反応できるものは居なかった。次は負けないように――そんな言葉を百代に吐くものは今までに居たことは無い、なぜなら百代は負けないからだ。最強の武神と言う異名は古くからの仲間である彼らが一番知っている。

 ならなぜ彼はそんなことを百代に放ったのか。

 大和は百代が放つ闘気から全てを察した。というか既に総一郎は言っているのだ。

 

「……姉さん負けたの?」

 

「……ちょ、ちょっと油断していただけなんだ! 次は負けない……ぞ」

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

 ようやく理解した者達は信じられない――地球に太陽が衝突してきた方が信じられる――そんな表情だった。

 

「まあ、本当に手合わせさ。俺もそう簡単に一発貰うわけにはいかないしね、ちょっとした初見殺しさ」

 

「……新当流総代は伊達じゃないようだな」

 

 二人の間に闘気が交わされる。しかしそれは敵意ではなく、まるで握手のようだった。

 そんな総一郎にモロは質問を続けた。

 

「もしかしてだけど塚原ってもしかして塚原卜伝の塚原?」

 

「お、よく知ってるなモロ、そうさ、塚原卜伝は俺の先祖。新当流の開祖だ、そして俺が現新当流総代、有体に言えば川神鉄心と同じだ」

 

「つかはらぼくでん? 誰それ大和」

 

「俺様もわからねえぞ」

 

 総一郎は笑っていたが、自分の祖先を頭ごなしに知らないと言われれば普通であれば傷つく、大和はすかさずフォローを入れた。

 

「塚原卜伝と言ったら戦国時代の剣客で生涯一度も負けたことが無い、と言われている。恐らく最強の剣術家じゃないかな? ワン子にガクトこれぐらい知っていて当然だぞ」

 

 二人は「う」と言って萎縮してまった。大和のフォローに総一郎は気付いてアイコンタクトを取る。気にするな――という表情だが、今度は総一郎が場のフォローに入った。

 

「まあ、最近の人は知らないんじゃないかな? 俺もよく知らないし、祖先がどう思うかは分からないけど、そのために歴史を継ぐものが――俺がいるんだから」

 

 そんな大人びた発言に場の雰囲気は鍋パーティの頃に戻っていた、丁度おじやも出来たことで塚原への質問タイムも自然と打ち切られていった。

 

♦  ♦  ♦

 

 

 鍋パーティは終わったが親睦会は終わらない。片付けが終わり、みんなが風呂からあがると総一郎と源さんを除いた風間ファミリーは居間でキャップを中心に臨時会議を開いていた。

 

「総一をファミリーに入れたい!」

 

 キャップの突拍子もないことはいつものことであるが、今日の今日でこの話題が出るとは思いもしない、それがファミリーの思いだった。

 それもそのはず、このグループはかなり閉鎖的である。

 小学生から続くグループは早々ない、それは季節の変わり目や進路、心境の変化で自然と解散していくものだからだ。しかしこのグループがここまでこの形を保てて来たのはその閉鎖すぎる傾向のおかげともいえる。

 その一つが京の存在だ。

 彼女はファミリー以外に心を開かない。

 彼女が昔受けていたいじめが原因である、そしてそのいじめを助けたのが大和――そして風間ファミリーだった。

 その因果関係のせいか、幾分か改善はされたものの彼女の内向性は変わることがなかった。

 それは京のこと、平均的なことであって全員が内向的なわけではない。

 例えば一子や百代。

 

「私は賛成ね、絶対に悪い人じゃないわ!」

 

「癪な奴ではあるが面白そうなやつだ、私も賛成だ」

 

 開放的な二人は余程なことでもない限りこういう場で人には合わせない、自分に正直だった。

 

「俺様は反対だな、顔がいい奴は憎い!――まあ、良い奴そうではあるが」

 

 こう言う奴は例外中の例外。

 

「僕は反対だな、良い人そうではあるけれども早すぎるし、ファミリーに入るとなると話は別だと思う」

 

「私も反対」

 

 この二人――モロと京がこのグループの防壁となる。京は前述のとおりだがモロは京の意思を尊重するところがある。

 そうなれば後は大和の意見次第となる。

 彼はこの風間ファミリーでは軍師の役目を担っている。

 

 キャップが大将

 

 大和が軍師

 

 ガクトと一子が特攻隊

 

 百代が守護神

 

 京が狙撃

 

 モロは情報処理

 

 軍師であるからこそこういう場面での発言は大事だった。

 

「俺は――反対ではない、良い奴だと思う。正直気が合いそうだ――だけどファミリーに入るならもう少し様子を見ることが必要だと思う、よって俺は保留だ」

 

 キャップ以外の者は全員が大和の言葉に頷いた。

 

 しかしここで諦めるのではキャップとは言い難かった――

 

♦  ♦  ♦

 

 本人がいない間にそんな品定めがされているとは知らず、総一郎は洗い終わった弁当箱を綺麗にしまって椅子に腰を掛けていた。

 

「そうだ」

 

 思い出したように携帯を開いた。

 画面に映し出された名前は「スワロウ」と書かれていた。

 

『もしもし』

 

「よう」

 

『ようじゃない、連絡の一つも寄越さないとは。叔母様も心配してたよ』

 

「悪い悪い、結構ドタバタコメディでさ、やっと暇ができたんだ」

 

『もしかして武神と戦ったの?』

 

「ああ、強かったぜ、つーちゃんよりも」

 

『一言余計』

 

 電話の相手は燕だった。他愛のない会話であるが総一郎の顔はどこか緩んで穏やかな表情だった。

 別に惚気ているわけではない、単純に安心している――そういう表情だった。

 

「なんか安心した」

 

『え?』

 

「つーちゃんの声を聞くと安心するなあ」

 

『きゅ、急にどうしたのさ』

 

「軽いホームシックさ」

 

 総一郎はからかっているつもりだろうが、電話の向こうでは派手に紅潮している燕の姿があった。周りから見られてしまえばすぐに総一郎と電話をしていることに気が付かれるだろう。

 それから今日あった出来事を二人は話す。時間など忘れて――

 

「総一、オールトランプしようぜ!」

 

 恋人との緩んだ電話中の大声で思わず総一郎は携帯を落としてしまう。落ちている間に何度か拾おうとするけれども体勢を崩して椅子ごと倒れてしまった。

 

『――ん、――ん!?』

 

「あー悪い悪い、寮の奴が急に大声出すから」

 

『大丈夫? 大きな音がしたけれど』

 

「へーきへーき、『急に大声で入ってくるなよ、びっくりしただろう』」

 

「悪いな、総一」

 

 キャップの代わりに謝罪したのは大和だった。よく見ればその後ろには寮生どころかモロも百代も一子いた。

 

「なんだなんだ、『悪い、なんかトランプするみたいだ。また明日かけるよ』」

 

『うん、仲が良いことはいいけど体に気を付けて程々にね、お休み』

 

「お休み。――さあて、やるか」

 

 総一郎は大きなテーブルを出して中央に全員が集まった。

 

「おい、総一。さっき話してたのは誰だ!」

 

 と、何故かガクトが声を張り上げた。総一郎以外は何か勘づいている様子だったが。

 

「誰って……彼女だけど」

 

「なんだとー!」

 

 夜に大声を出してしまえば当然注意される。ここでの注意は百代による鉄拳という暴力でしかなかった。

 

「モテそうだもんな総一」

 

「ふふーん」と鼻で笑ってガクトを絶望させた総一郎、そんな総一郎にキャップは口角を釣り上げていた。

 

「総一!……今から風間ファミリー入団試験を行う!」

 

「――へ?」

 




今回はバトル無しです。
まあ、マジ恋はいつも戦っているわけではないですしね。

日常パート――基、自己紹介パートとも言いましょうか。


皆様の感想が励みになっています、完結させるぞ。

――追記――

 評価つけてくれるとなおうれしいです!

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