ガンパレード・マーチ episode OVERS   作:両生金魚

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投稿が遅れてすみません……
某ポストアポカリプスゲーを買い心に致命傷を負ってました……

何となく昔話していた思いついたIF話を投稿です。


リハビリ短編8【ちょっとしたIF話・お薬編】

 有史以来、人類はあらゆる技術を争いに、そして軍事へ利用してきた。世で開発された技術は、ほぼ全てが軍事に転用できないかと考えられてきたと言っても過言ではなく、また近代では軍が主導して開発した技術が、民間へと流れて世を発展させる。

 そして、古くから軍事と切っても切れない技術の一つが、薬学である。人体の治癒は言うに及ばず強壮、鎮痛など、あらゆる薬が兵士たちのために考え出されてきた。――そして、麻薬もその一種である。

 麻薬は恐怖を消し、疲れを忘れさせ、兵を長時間戦わせる様にすることが出来る。その効用は例え副作用を知っていても手を出したくなるほどに魅力的であり、現代軍でさえしばし濫用が見られる。

 この世界においては、多目的結晶が体に埋め込まれているために、植物の生成や薬品の合成に頼らないプログラミング技術さえあれば誰でも作れるブレイン・ハレルヤ等の電子ドラッグが大きく問題となった。

 

 何が言いたいのかといえば、ドラッグは軍事史、ひいては人類史における一種の闇であり、心有る者が仲間が使用しているのを見れば、とても衝撃を受けるということである。

 

 さて、ここで我らが主人公の猫宮悠輝では有るが、実は割と薬を使っているのである。そりゃー副作用は有るのだが、別ゲーから引っ張ってきたようなドラッグであるので副作用も他の薬を一発ブスっとやれば完治する程度のものであり、体力を回復したり仕事効果にブーストをかけたり、O.A.T.Sを連続使用するためにわんこそばのように薬をぶすぶす打ったりめっちゃ濫用してきたのである。某水中都市で超能力を使うために腕にぶっ刺しまくるのを想像してもらえれば分かりやすい。

 

 本人としてはアクションゲームで回復アイテムをぐびっとやるような感覚である。だがしかし、もしそれを見られてしまっていたら……これはそんなIFのお話。

 

 

 連戦に次ぐ連戦、各機体や各部隊がそれぞれローテーションで休憩をとっているが、一番動き回っているのが猫宮であった。何せ最悪一人放り込めばその戦域の戦闘は何とか立て直せたりするのである。必然、単独で救援に赴くことが多くなる。だがしかし、単独での行動は敵の攻撃を避けるため、また広範囲を一人でカバーするため機体の動きが激しくなり必然的に体力の消耗も大きくなる。このままではいけない、と思いつつ善行や久場、瀬戸口や芝村にまほや凛など、部隊の誰もが休んでくれとは言えなかった。言える、戦況ではなかった。

 

 補給と小休止の為に、整備テントに潜り込ませた機体からのコックピットを開けると、急いで駆け寄ってきた田代と狩谷に引っ張り出されて即座に水を渡される。

 

「いや~ははは、ごめんね手間かけさせちゃって」

 

「バカヤロウ!んな事気にしてる暇が有ったらとっとと休め!」

 

「栄養補給は大丈夫かい? レーションは用意してあるが……」

 

「いや、ザラメにしておくね」

 

 つまりは、胃が受け付けないということだ。その事実に二人の表情が曇るが、猫宮は相変わらず大丈夫大丈夫と言うだけである。

 

「ほら、二人共整備と補給お願いね! こっちは大丈夫だから!」

 

 心配する二人やその他整備班に手を振りつつ、テントを出て、雑多な物資が積まれている所の物陰へとそそくさと移動する。

 

 ごそごそとポーチを開き、一つシリンダーを取り出すと針を飛び出させる。そして、首筋に一発ブスリと。

 

「ふぅ……。やっぱりいい感じに効くねこれ……」

 

 普段なら誰にも見られないのだが……

 

 

 

【西住みほの場合】

 

 パシャっと液体がぶちまけられる音と、コロコロとカップが転がる音が響く。

 

「あ、あ、あ、あぁぁ……」

 

 そして、更に聞こえるよく知った声。かつて無いほどのやばい予感を感じて冷や汗を吹き出させつつ、振り返るとそこにはみほがいた。

 

 だが、そこにはいつもの優しげだが気丈な顔はそこにはない。ふるふると震えていて、口を手で抑え、既に両目からは涙が溢れていた。凄まじい罪悪感に襲われる猫宮。慌ててポーチに戻すが、口から手を離したみほが全力で駆け寄ってきて、ポーチを奪取した。そして、ひっくり返すとボトル入りの水やら栄養ブロックやらザラメ入りの袋の他に、カランカランと落ちてくるシリンダー。しかも、複数である。どう考えても言い訳のしようがない状況だ。

 

「ねこ、みやさん……どうして……どうして言ってくれなかったんですか……そんなに、辛いのに、どうして……」

 

 泣きながら猫宮にくっつき、ぽかぽかと胸を叩く。肉体的な痛みはないが、心に凄まじいダメージを受ける猫宮。良心がキリキリと痛む。

 

「い、いや別にこれは副作用とか大して無いし……」

 

 勿論そんな事信じられる訳が無い。

 

「いつも…いつも…誰かのために……なのに、猫宮さんが、一番…なんで……そんなに、私達は……ばか。ばかぁ……」

 

 しゃくりあげつつあげる涙声は、言いたいことが止めどなく溢れてくるのかしどろもどろ。ぽかぽかぽかぽか叩きながら、押し止められない言葉が幾らでも湧いてくる。

 

「わたしも、おねえちゃんも……頼りに……いつも、心配ばかりかけて……役に、立てない…嫌です……」

 

 ぽかぽかぽかぽか。みほの手はとまらず、逃げられない猫宮。

 

 そして姿が見えないなと様子を見に来た他の隊員たちに見つかり大騒ぎとなりました。そのまま、接収した建物の一室に無理やりウォードレスを脱がされた後布団や毛布と共に放り込まれて閉じ込められました。見張りとして、無職の茜も一緒です。茜は両目にいっぱい涙を溜めてこちらをキッと睨みつけています。

 この後、どうみんなに言い訳しようと布団の中に逃げ込んだ猫宮は頭を抱えました。

 

『猫宮の発言力が-1000』『みんなの士気が-200』『みんなは悲しみに包まれた』『猫宮の薬は全て破棄されてしまった』『これから継続して監視が付きます。そして、強制的に休憩を入れられるようになりました』

 

 イベント終了

 

 

 

【善行忠孝の場合】

 

 ふと、気配と嫌な予感がしたので振り返る。そこには、見たこともない呆けた表情で口を開け、立ち尽くす善行が居た。凄まじく気まずい猫宮。首に刺さった針を抜き、シリンダーをしまうが何を言っていいのかと逡巡する間に、善行が震える足で寄ってきた。

 

「……何時から、ですか」

 

「い、いやあのですね、別に副作用は特には「何時から、なのですか」……つ、辛い時にちょくちょく?」

 

 震える声、しかし有無を言わさぬ断固とした圧力。それに気圧されて多少脚色をして伝えると、善行は崩れ落ち、両手を付くと、頭を地に擦り付けるように下げた。

 

「いやっ!?ちょっとっ!?」

 

 大慌てする猫宮。だが、善行は震えて許しを請うていた。思い返すのは、あの半島での戦い。心身ともにすり減り、幽鬼のようになっていった部下たちは、それでも善行の前では決して弱みを見せようとしなかった。正義の味方であるために、ただひたすらに、善行へと献身し、その生命を捧げた。そう、あの捨て石とされ、損耗率99.5%を記録したあの戦場でも、最後まで。笑いながら付き従った男達。

 

 あの光景は、己の生有る限り忘れられないだろう。もう二度と、あの様な光景は作らないようにとひたすらに、努力を重ねてきた。だが、その結果がこれか? 結局の所、ただ自分は部下に命を捧げさせているだけなのか。そう思った時、善行の悲しみは止まらなくなった。

 

「すみません……本当に、すみません……」

 

 後悔にまみれた男は、それでも悲しみに浸ることは許されなかった。もう、小休止の時間は終わってしまうだろう。なら、自分も指揮に戻らねば。そう思うと、立ち上がり、鉛のようになった足取りで指揮車へと戻って行く。

 

「いや、あのですねっ!? 大丈夫ですからねーほんと!?」

 

 後でどうフォローしよう……そう思うと、猫宮は頭を抱えるのだった。

 

『善行の士気が-200』『善行の気力が-200』『善行は悲しみに包まれた』『善行は恥ずかしくなってきた』『善行の喜びは吹っ飛んだ!』

 

 イベント終了

 

 

【芝村舞の場合】

 

 背後で一つ、足音が聞こえた。嫌な予感がして振り返ると、そこには芝村舞が今まで見たこともないような呆然とした、そして悲しみをたたえた表情で立っていた。冷や汗が止まらない猫宮。ゆっくりと首から針を抜くと同時に、芝村が全速力で駆け寄ってきた。目に涙を湛え渾身の右ストレートを猫宮の顔面に突き刺した。パイロット用であり女性用の久遠とは言え、ウォードレスである。レスラー並みの筋力で殴られ吹っ飛ぶ猫宮。一方殴った芝村は、息が荒い。

 

「……け」

 

「え、ええと……」

 

「……け、…わけ、たわけ、たわけたわけたわけたわけたわけたわけたわけぇっ!!!!」

 

 辺りに芝村の絶叫が響き渡った。どうしようと言い訳を考えていたが、もう手遅れかなと色々と諦めた猫宮。何事かと人が集まってくるが、芝村は意に介さず猫宮の胸ぐらを掴むと思いっきり持ち上げる。

 

「そなた、そなたはこんなものに、頼っていたのかっ……! 何故、誰にも言わなかった……何故、辛いなら辛いと言わぬのだ、この、たわけがぁっ……!」

 

「い、いや栄養ドリンクみたいなものだし……」

 

「……これが?」

 

 舞の絶叫に慌てて駆けつけてきた速水が、近くに落ちたシリンダーを拾い上げて悲しみの目でこちらを見ています。罪悪感が凄まじいです。

 

「……あ、あ、あぁぁぁ…………」

 

 衛生兵の石津はそれを見てぽろぽろと涙を溢れさせています。「……ひっく、……ぐすっ……」と言葉も出ずにしゃくりあげて泣き出しています。猫宮の良心はグサグサと針を刺されているような状況です。おまけに時間が経つごとにどうしたどうしたと5121の仲間たちが駆けつけてきて、猫宮を怒りや悲しみを込めた目線で見てくるので猫宮の良心はデンプシーロールを喰らった後のようにボロボロです。

 

「…………バカッ!」

 

 それから原さんがドスドスと近寄ってきて思いっきり張り手をしていきました。目に涙が溜まっていたのを見ると体より心の痛みのほうがヤバいです。

 

 ひとしきり皆から責めに責められた後、接収した建物の一室に無理やりウォードレスを脱がされた後布団や毛布と共に放り込まれて閉じ込められました。見張りとして、無職の茜も一緒です。茜は両目にいっぱい涙を溜めてこちらをキッと睨みつけています。

 この後、どうみんなに言い訳しようと布団の中に逃げ込んだ猫宮は頭を抱えました。

 

『猫宮の発言力が-1000』『猫宮の体力が-50』『みんなの士気が-200』『みんなは悲しみに包まれた』『猫宮の薬は全て破棄されてしまった』『これから継続して監視が付きます。そして、強制的に休憩を入れられるようになりました』

 

 イベント終了。

 

 

 




猫宮「た、ただ回復アイテムを使っていただけなのに……」

次こそは甘酸っぱいラブコメをきっと……!

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