ガンパレード・マーチ episode OVERS   作:両生金魚

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結構長くなってしまいました。


砂上の楼閣の内憂

 昼過ぎ、疎開で閑散とした集合住宅の一角に、6人の男女が居た。速水、滝川、茜、芝村、西住姉妹の6人である。彼らは誰も猫宮の家を訪ねたことがなかったので、不謹慎とは思いつつも調査とともに見てみたいという好奇心も多分に有ったのだ。あちこちに戦闘の爪痕が残り、現在地を把握しづらくなった街を地図とにらめっこしつつ、ようやく猫宮が隊に提出している住所へとやってきたのだ。

 

「建物名は合ってるな」

 

「では、行くぞ」

 

 茜が確認すると、芝村が階段を登っていく。しかし、やはり鍵はかかっていた。管理人に合鍵を貰おうにも疎開をしていて、その手も使えなかった。

 

「やっぱり閉まっているね……」

 

「なら、裏に回るぞ」

 

 ドアが使えないなら、勿論裏から回るしか無い。まず、速水と滝川が雨樋を伝い苦労して2階へ登ると、ベランダで立ち尽くした。ベランダにも鍵がかかっていたからである。しかも、カーテンが締め切られていて部屋の中が見えない。そして、登るとベランダに居た猫が逃げてしまった。

 

「どうしよう……」「どうする……?」 

 

 ベランダで立ち尽くす二人。そこへ、芝村も登ってきた。

 

「二人で立ち尽くして何をしているのだ?」

 

「えっと、鍵かかっててカーテンも閉まってるから……」

 

「そんな事、予想できたことだろう」

 

 芝村は立ち尽くす二人をどかすと、背嚢からスパナを取り出してガラスへと叩きつけた。ガラスが割れて、ポッカリと空いた穴に手を差し込み、鍵を開ける。

 

「芝村、お前……」「舞ってば……」

 

「たわけ。家に行きました、しかし鍵がかかっていて入れませんでしたでは子供の使いではないか。いいから仕事にとりかかる……ぞ……」

 

 芝村がアルミサッシの戸を開き、カーテンも開いて部屋の中を見ると、絶句してしまった。速水、滝川も同様である。下でハラハラしながら見ていた3人は、その様子を訝しんで声を上げる。

 

「おーい、芝村、どうしたんだ?」

 

「……説明するより見たほうが早い。玄関から入ってくるが良い」

 

 茜にそう言うと、芝村は玄関に行き鍵を開けた。そして、次々と入ってくる残りの3人。そして、反応もまた同じ。

 

「なっ……」 「えっ……」 「これは……」

 

 その部屋には、生活の気配が殆どしなかった。

 

 机・椅子・ベッド・食器・冷蔵庫など……きちんと掃除されているものの全てが粗末で、装飾などは全くされていない。服などはダンボールに詰められている程だ。ゲームや雑誌などの娯楽品も見当たらない。そしてパソコンは、かけられた布を取るとケースの一部が開けっ放しにされていて、ハードディスクが取り外されていた。

 

「……盗まれたのだろうか?」

 

「いや、違う。これ、普段から取り外して持ち歩いてるんだ」

 

 まほの疑問に、茜が答えた。複数回、脱着を繰り返した跡が有る。

 

「誰かが押し入って、盗んでいった……訳じゃ無いですよね……」

 

 みほが、部屋を見渡しながら言う。何か取っていくものが有るようには、見えなかった。

 

 部屋の捜索も、ごく短時間で終わった。部屋に元々ある私物も少なく、何かが消えた痕跡も無い。

 そして、猫宮の部屋を後にする6人の表情は重かった。

 

「……何もなかったね」

 

「……ああ。何も、見つからなかったな」

 

 速水の言葉に、茜が頷く。全員がまだまだ猫宮の事を知らないのだと、思い知らされた気がした。そして、猫宮が頑なに自分の家に他人を呼ばない理由も、良く分かってしまった。

 

「……原の家で、手がかりが見つかっていると良いが……」

 

 どの道、手がかりは無かった。だから芝村はせめてもと、原の家で手がかりが見つかるように願った。

 

 

 

 田代と来須は、主に治安の悪い地帯を歩き回っていた。田代の不良時代のコネと嗅覚を使い、たむろしている不良やら脱走兵やらから情報を仕入れていたのである。来須はその付き添いだ。田代一人では襲われていたかもしれないが、来須のオーラの前では、余程の兵でも無ければ尻込みしてしまうだろう。そして、当然のごとく来須に対等に張り合えるような奴らは居なかった。

 しかし、その事に田代は少し不満げである。元不良としては、一人だと舐められるのが気に食わないのだろう。

 

「しっかし、やっぱり中々見つからないもんだな……」

 

 田代がぼやくと、来須がコクリと頷いた。片方は美人だけ有って注目はされやすいと思うのだが、余程上手く人を避けたのだろうか。そんな事を思いつつ、また一つの集団に声をかけると、ようやく有力な情報が得られた。

 

「そう言えばそんな姉さんなら見たけど、なんか大変なことに巻き込まれてたみたいだな」

 

「大変なこと?」

 

「ああ。なんかテロに巻き込まれてたみたいだな……」

 

「テロにだと!? 何が有ったんだ!?」

 

 ようやく得られた手がかりのとんでもなさに、思わず詰め寄る田代。その必死さにその脱走兵は思わず仰け反りつつ言葉を続ける。

 

「よ、よく分からねーけどよ、夜に銃声がたくさん起きて、その後爆発音が起きて……何が有ったかと遠目に覗いてみたら、その言われたのと似た姉さんと血まみれの男が這々の体って感じで出てきて……」

 

「血まみれだとっ!? そ、そいつは何処へ言ったんだ!?」

 

 血まみれと聞いて、更に目を剥いて詰め寄る田代。来須も目を見開くと、脱走兵を見た。そのプレッシャーに、更に萎縮する。

 

「し、知らねえよ!? その後銃声が近づいてきたから俺達も逃げてよ……」

 

「クソッタレ! とりあえず、この辺りの逃げ込めそうな場所、探すぞ!」

 

 田代がそう叫ぶと、来須も頷き足早に去っていった。情報は得られた。だが、それは手がかりと言うよりは、悪い知らせと言うべきものだった。

 

 

 

 一方、原の部屋には善行・瀬戸口・壬生屋・石津の4人が訪れていた。原の部屋は猫宮の部屋とは違い、この戦時下でも出来得る限り部屋を彩り、また生活感に溢れていた。しかし、そんな部屋で、異常は見つからなかった。原に支給されている情報端末も、そのまま家に残されていた。そして失礼とは思いつつも、原の日記も覗いてみる。壬生屋に「ふ、不潔です!」 などと叫ばれてしまい気まずいが、やむなくという事でページを開くが、日記は3日前で止まっていた。

 

「手がかりは無し……ですね」

 

 善行の言葉に、がっくりと肩を落とす3人。善行自身もひどく落胆していた。人型戦車があまりにも魅力的に映り過ぎたせいだろうか。自分の見通しの甘さをいくら自嘲してもし足りない。そう思っていると、左手の多目的結晶がアラートを鳴らしてきた。

 

『201V1 201V1 全兵員は……』

 

 全員が、思わず左手を見た。こんな最悪のタイミングでか!?

 

「し、司令……」 「……」

 

 壬生屋と石津が、不安げに善行を見た。

 

「……ひとまず、尚敬高校へ戻りましょう。話は、その後です」

 

 

 

 尚敬高校へ戻ると、顔を青くした田代が真っ先に善行に駆け寄ってきた。そして、善行・瀬戸口・芝村の3人に集めた情報を渡す。

 

「……どうでした?」

 

「テロに巻き込まれたらしい。男……多分猫宮の方は血塗れだったって見た奴が」

 

「っ!?」 「それは……」 「なんだと……!?」

 

「ま、まだはっきり猫宮だって分かったわけじゃないけどよ……そう考えたほうが良いかも知れねぇ……」

 

 そう報告すると、田代もウォードレスを装着しに行ってしまった。

 

「……隊員達には伝えるか?」

 

「……まだ、混乱させたくは有りません。少なくとも、この出撃が終わってからにしましょう」

 

 芝村の問いに、善行が答えた。最悪も、考えねばならない。そんな悲壮な想定に、芝村と瀬戸口も重々しく頷いた。

 だが、指定された配置を確認すると、混乱が深まった。善行戦隊に与えられた配置は、演習場であった。ウォードレスを着込みながら意図を考えたが、読めない。そして結局は準竜師に連絡を入れることにした。

 

 

 

「俺だ」

 

「今回の配置についてご説明を頂けませんでしょうか?」

 

 挨拶もなしに、本題をいきなり。芝村式の会話である。善行も慣れたものだ。

 

「ふむ、憲兵隊から共生派のテロはそろそろでは無いかと警告が来てな。生身よりも兵器に守られている方が安全であろう。それに、そなたの戦隊は注目の的でな。あちこちに散らばっているよりは一箇所に居たほうが憲兵としても守りやすかろう」

 

 考えてたよりも更に斜め上の理由に、善行は絶句した。それを、ガハハと笑いながら見る準竜師。

 

「それとな、行方不明の二人は気にするな」

 

「何か、情報が?」

 

 今度こそ無様は晒さないようにと心を落ち着けるが、準竜師から帰ってきたのはまた意外な言葉だった。

 

「なに、あやつは殺しても死なぬような奴だと言うことだ」

 

 そう言われると、さすがの善行も苦笑を隠しきれないのであった。

 

 

 

 

 西住しほが目を覚ますと、戦場の音が近くで聞こえていた。轟音と銃声である。それと、血の匂いも漂ってきた。周りには、他にも倒れている人間が見える。

 

「中将、大丈夫ですか!?」

 

「あ、ああ、何が有った?」

 

 体全体がまだ揺れているような気がするが、何とか体を起こすと、目の前の衛兵に事態を確認する。

 

「はっ、L型にこの建物が砲撃されています! また、共生派が戦闘を仕掛けてきているようです!」

 

「共生派が、だと……!?」

 

 確かに、度々会議の議題にも上がっていたが、ここ1ヶ月で憲兵の働きは目覚ましかった筈だ。だが、奴らの浸透はそれ以上ということか――! 

 

「ひとまず、建物奥へ――うわっ!?」

 

 また、120mm弾が司令部へ撃ち込まれた。その威力は絶大であり、幾つもの壁が貫通され、直線上に居た人・物が引き裂かれた。こう何度も撃ち込まれれば、この周囲が崩壊してしまうのも時間の問題だろう。だが、外へ出るにしても外はL型と、その援護を受けた共生派が目を光らせているだろう。どうすれば……

 

「っ! 伏せてっ!」

 

 衛兵がサブマシンガンで、突入しようとしてきた共生派を薙ぎ払った。それに怯み、生き残った数人が逃げていく。

 

「場所を知られました、ひとまず、移動を!」

 

「ああ」

 

 しほも護身用のハンドガンを手に取るとセーフティを外し、衛兵に連れられて移動する。また砲撃音。さっきまで居た部屋を、120mm弾と破片が蹂躙した。ジリ貧だ、このままでは応援が来る前に蹂躙される……

 

 と、外で突然音楽が流れ出した。それも、暴走族が流すような下品で喧しい曲が大音量でだ。そのあまりにも場違いな音に、思わず戦場の誰もの注意がそちらへ向く。

 

 音の方向を見ると、バイクで誰かがL型に突っ込もうとしていた。L型の機銃座に居た人間が慌てて銃口をバイクへ向けるが、バイクに乗っていた人間が、サブマシンガンで機銃座やL型の周囲に居た共生派を薙ぎ払った。そしてバイクのスピードを落として、バイクをL型に突っ込ませつつ飛び降り物陰に隠れる。

 次の瞬間に爆発。なんて奴だ! バイクに爆弾を仕込んでいたのだ! そして、バイクに乗っていた人間はL型の出す黒煙で見えなくなった。

 

「なんだ、今のは……」

 

「共生派を相手取っていたのだ。少なくとも敵では無いだろう」

 

 しほはそう言いつつ慎重に移動すると、広い部屋近くの曲がり角で、グレネードが落ちる時に発する独特の金属音がした。衛兵とともに咄嗟に壁際に隠れると、爆音の代わりに煙が噴き出る音がして白煙が部屋を覆った。スモークグレネードだ。白煙は、部屋の視界をほぼ0にしてしまった。

 

「くそっ、スモークだ!」

 

「誰か投げたのか!?」

 

「そんなことするはずは無いだろう! 敵だろう、気をつけろ!」

 

 耳を澄ませると、近くには共生派が複数居たらしい。これは、かなり計画的な犯行だろう。と言う事は、これまでのテロは囮か――! と、そんな思考は、人間が倒れる音で中断させられた。

 

「ん、誰d」

 

 煙に紛れて、人が倒れる音がした。そして、血の吹き出す音と血の香りが広がる。

 

「なっ、何が起きたっ!?」

 

「て、敵だ、敵が居るっ!?」

 

 混乱する共生派。更に、一人が口に布を詰め込まれ、仲間の方へ突き飛ばされる。

 

「そ、そこか……って、なあっ!?」

 

 突然迫ってきた体に思わず引き金を引くと、それは味方であった。

 

「ど、同士討ちに気をつけろ!」

 

「そ、そんな事言われてもどうすりゃいいんだよ!?」

 

 一人の死で動揺が生まれ、一回の同士討ちで心が縛られる。後はパニックを起こさないように次々と、事態を認識する間もなく共生派が屠られていく。

 

 やがて煙が晴れていくと、しほは驚愕した。そこには、見知った顔が居たからだ。

 

「ね、猫宮君……?」

 

「あはは、無事で何よりです、西住中将」

 

 頭に包帯を巻いている猫宮は、フードを外しつつ何時も通りの人懐っこい笑みでこちらに敬礼をしてみせた。その両手には、何やら手甲が装着されていた。

 

「き、君が何故ここに……」

 

「テロが起きていてL型も持ち出されているって聞きまして。あ、憲兵さん達もすぐ来るようですよ」

 

 猫宮はそう言いつつ、片隅に居た縛られている将官を助け出していた。わざわざスモークグレネードを投げた理由はこれであった。人質に犠牲を出したくなかったのである。

 

「……他の戦闘車両が来れば生半可な装備では駆逐されてしまうが……」

 

「そっちもバッチリ、応援頼んでいますから」

 

「応援?」

 

 しほがそう首を傾げると、遠くからズシンズシンと、聞いたことのある足音がしてきた。士魂号の足音が一つ。

 

「5121が?」

 

「いえ、0101です」

 

 猫宮がくすりと笑いつつ、やってきた士魂号に通信を入れた。

 

「どうもお疲れ様。周囲警戒、よろしく!」

 

「ふん。この借りは高く付くぞ」

 

「まあまあ神楽、お手柔らかにしておこうよ」

 

 通信を入れつつ、神楽は複座型のセンサーをフルに使い索敵をしている。怪しい動きをしている車両は、今のところ無い。そして士魂号の周囲を、憲兵が固めつつこちらへ向かってきている。そして、憲兵を見守るようにツバメが空を飛び、周囲を猫が見張っていた。

 市内で相次いで起きている共生派のテロは、史実よりも早く、犠牲も少なく鎮圧されていく。

 

「(史実よりは犠牲者は減っただろうけど……)」

 

 それでも、犠牲は出た。そんな事実にまた心を重くしつつ、皆になんて説明しようかと頭を悩ませるのだった。

 

 

 

 善行戦隊は演習場に展開していた。中央部に整備班達を配置し、その周囲を車輌と士魂号で警戒、更には憲兵も護衛として配備されていた。上としても、彼らをテロで消耗させるわけには行かなかった。

 しかし、それに不機嫌そうにしているものも居る。芝村だ。複座型の中で、刻々と変化していくテロ情勢を分析し、更に士魂号を動かせないことに不機嫌になっていく。

 

「やはり、今からでも士魂号を動かせば……」

 

「対人戦にはなれていないでしょう。それに、瓦礫の除去など、後からの仕事も重要です」

 

「む、むぅ……」

 

 善行にそう諭されるが、やはり不満である。そして、司令部付近の配置を見たことで更に大きくなった。

 

「むっ、司令部のこの識別番号は、神楽かっ!?」

 

「えっ、神楽さん?」

 

「マジで? あいつらも出てるのか?」

 

「あら、お久しぶりですね」

 

 芝村の言葉に、速水、滝川、壬生屋が反応する。

 

「しかし、何故奴らが……」

 

「猫宮に頼まれたからな」

 

『なっ!?』

 

 突然割り込まれた通信にびっくりする5121一同。

 

「猫宮君は無事なのですか!?」

 

 即座に確認する善行。それに、神楽は頷いた。

 

「ああ。最も、起きたのは今日らしいが。ああ、後原素子も無事のようだぞ」

 

 その言葉に、安堵する善行戦隊一同。

 

「なるほど……だが、何故我らを動かさぬ? 練度は我らのほうが上だろう」

 

「お前たちはあちこちで注目されているんだ。動かしたら、目立つだろう。その点我らは機密部隊だからな」

 

 神楽にそう言われ、苦虫を噛み潰したような顔になる舞。道理だ。

 

「あ、あの、司令部って事は母……西住中将は無事ですか!?」

 

 と、そこへまほが通信を入れる。母の安否が気になったのだろう。

 

「ああ、西住中将なら無事だ。司令部を襲っていたL型を、猫宮が片付けた」

 

「また、彼は……」

 

 怪我から復帰したばかりで何をしているのか、思わず善行は呆れた声を出してしまう。いや、待てよ。と言うことは――

 

「……ひょっとして、猫宮君はそこに居ますか?」

 

「ああ、居るぞ。通信も聞いてる」

 

 神楽がそう言うと、しばし沈黙が落ちる。

 

「あ、あはは……どうも、猫宮です。ご心配かけましたか?」

 

 恐る恐る、といった感じに通信に猫宮の声が入る。

 

『当たり前だ!(です!)(だろう!)』

 

 と、猫宮は善行戦隊の面々から総ツッコミを受けるのであった。

 

 

 

 

 爆発で吹き飛ばされた原は、生暖かいものが体に滴るのが感じられた。ぬるっとしたこの感触は――血だ!

 

「ね、猫宮君……」

 

「大丈夫です、行きましょう……」

 

 猫宮は頭に包帯を巻きつつ、原に支えられて更に夜の街を歩いて行く。

 

「は、早く病院に……いや、憲兵を呼べば……」

 

「い、いえ。この怪我だと……下手をすれば後ろに護送されるかも……。憲兵にも、実は派閥が……と、とりあえず、隠れられる場所に……」

 

 そう言うと、猫宮はたまたま近くに有った地下倉庫へと向かった。扉を叩いて少しすると、インターホンから声がした。

 

「誰だ」

 

「猫宮です。ちょっと場所を借りたいんですけど……」

 

「ちょっと待て」

 

 扉が開いて原はびっくりした。裏マーケットの親父であった。その姿を認めると、猫宮は安心したかのように気を失った。慌てて、原が支える。

 

「……テロか」

 

 親父の言葉に、コクリと頷く原。

 

「……場所も薬も好きに使え」

 

 そう言うと、親父は猫宮を粗末なベッドに運んで行ったのだ。それから3日程、原は看病することになった。

 

 

 

「と、こんな事が有ったわけ。私ってば本当に薄幸の美少女よね」

 

 そんな言葉を聞いて善行は苦笑した。迂闊であった。既に、原に強引な手が伸びるほど事態は進んでいたのだ。

 

「ま、良いわ。嫉妬している貴方なんて珍しいものも見れたし」

 

 そう言われ、善行はキョトンとした。

 

「あ、そんな顔してる?って思ったでしょ。してたわよ? 私には分かるの」

 

「……失礼。まあ、致し方ないとも思っていましたが……」

 

 駆け落ちだったとしても、少なくとも自分よりは原を幸せにしてくれるだろうなどと心の片隅では思っていた。そんな様子に原は溜息をつくと、善行にするりと近づく。

 

「あなたねえ、そこは『嫉妬してました』って言って抱き寄せたりするところじゃないの? このヘタレ」

 

 ヘタレと言われて、更に心臓にグサッと来る善行。本当に、彼女には敵わない――

 

「失礼。昔から、臆病でして」

 

「ええ、ホント昔から変わらない。……ま、そう言われるのが嫌なら、少しは変わりなさい。……あ、ちなみに今、私怖い思いして凄い傷ついているの」

 

 そう言うと、原はぷいっと後ろを向いてしまった。少し悩んだが、善行はその小さな背中を後ろから抱きしめることにしたのだった。

 

 




Q:何で爆音流したの?
A:戦場を混乱させるため

Q:テロリストは徹底的に狩り出していたんじゃ
A:史実よりは持ち出されている車輌は一応減っている感じです。しかし、流石に機関銃やサブマシンガンの類までは防ぎきれません。

はい、アナザープリンセスのキャラの登場です。
神楽・秋山含めて善行戦隊の面々はアナザープリンセスのキャラとの面識がある感じです。その話は……いつか外伝で。

撤退戦まであと僅か。外伝か、青春か、他の一兵卒達か、ソックスか、一体何を書こうかな……

短編が出るとしたらどんな話が良い?

  • 女の子達とのラブコメが見たいんだ
  • 男連中とのバカ話が見たいんだ
  • 九州で出会った学兵たちの話
  • 大人の兵隊たちとのあれこれ
  • 5121含んだ善行戦隊の話

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