ガンパレード・マーチ episode OVERS   作:両生金魚

20 / 100
腸を壊して3日連続で点滴受けてました……
更新遅れて申し訳ございません……


雨降って固まった地面には緑が芽吹く

OVERS・OVERS・OVERS・OVERS

OVERS・OVERS・OVERS・OVERS

OVERS・OVERS・OVERS・OVERS

 

this Omnipotent Vicarious Enlist a Recruit Silent System

 

OVERS・OVERS・OVERS・OVERS

OVERS・OVERS・OVERS・OVERS

OVERS・OVERS・OVERS・OVERS

 

私の名前はOVERS・SYSTEM。

七つの世界でただ一つ、夢を見るプログラム。

 

 

Yagami達のプログラムにより機能をアップデートします。

 

 

士魂号に新たなるプログラムを追加します。

 

データリンクシステムをアップデートしています。

音声認識プログラムをインストールしています。

総合広域戦域指揮プログラムをインストールします。

 

貴方の義体に新たなる機能をインストールします。使い過ぎに留意しなさい。

 

Overs Assisted Targeting System をインストールします。

任意リフレックスモードをインストールします。

 

 

新機能を駆使して戦場をコントロールし、より多くの味方を助けなさい。

大丈夫、これからやることは今までやってきた事の延長線上にあるもの。

RTSとFPSがリアルタイムで同時進行してノーポーズノーコンティニューノーセーブで敵の数が膨大で時々味方内部にも敵が出現する事があるだけです。

 

 

では、戦いなさい。我々の存在意義を消し去るために、この悪夢を終わらせなさい。

 

 

 

「――君、猫宮君、聞こえますか?」

 

「はい。――夢を見ました。大切な友人と語った夢を。世界が、平和になる夢を」

 

「……そうですか。では、他の四人に合流して下さい」

 

「了解です」

 

 一歩一歩歩み出す士魂号には、何処かぎこちなさがついて回った。まあ初めて乗るので当たり前では有るし、これには善行や若宮も流石に士魂号まではスムーズには乗りこなせないかとむしろ安堵したものだ。まあ猫宮のぎこちなさの理由は微妙に違うのだが。

 

(やっぱり他の機体に慣れてると動かしにくいなぁ。ラウンドバックラー系とは何処か似た所も有るけど)

 

 様々な世界で様々な機体に乗ってきた経験の先入観が邪魔をする。まあラウンドバックラー系は通じるところが有るかもしれないが、250年後の機体なので比べるのは可哀想だろう。なんだか士魂号から文句を言われたような気もしつつ、猫宮は他の四人との基礎訓練やサッカーゴールを使ったキャッチボールに勤しんだ。

 

 

 

 

 翌日、猫宮は瀬戸口と一緒にとある解体業者を訪れていた。目的は指揮車である。案内されて初めてそれを見た時、二人は思わず絶句してしまった。

 

「おいおい、こりゃー幾らなんでもボロすぎやしないか?」

 

「……動くんですかね、これ」

 

 途方に暮れる二人。あちこちが錆びているし見るからにボロい。まあこの何もかもが不足しているような現状で解体所送りにされる機体なので当然と言えば当然である。

 

「まあ、ここで突っ立ってても仕方がない。ちょっくら見てみるか」

 

「了解です」

 

 瀬戸口の言葉に頷く猫宮。とりあえず、工具を出して二人共簡単な点検をする。幸いにも致命的な不具合は無いようで、安堵の溜息をつきつつ二人は指揮車に乗って解体場を後にした。

 

 順調に運転できていたのは最初だけである。突然何かが壊れるような大きな音がしたかと思うと、装甲車は動かなくなった。エンジンは動けどそれだけである。

 

「――不良品取っつかまされたかなぁ……」

 

「……まあ解体場のお下がりですし」

 

 途方に暮れる二人。幾ら猫宮の修理技術がとんでもなくても流石にシャフトがぽっきりではお手上げである。せめて別の車が有ればゾンビに溢れた街のメカニックの如く合体なり何なりで……いや、無理か。

 

 と、そこへ後ろから軽トラが来た。狭い県道なので道を塞いでいたのである。二人が振り返ると、声がかかった。

 

「どぎゃんしたと?」

 

 見ると不機嫌な顔をしたおやじが運転席から顔を出していた。これこれこういう訳だと事情を説明すると、やおら車体の下へと潜り込んだ。

 

「こげなシロモノ、どこで手に入れたと? プロペラシャフトがポッキリやられとるばい」

 

「まさか」

 

「装甲車のシャフトが……!?」

 

 驚く二人にムッとするおやじ。

 

「ええい、こげなオモチャ、つくっとるから戦争に負けっとたい! スペックばいくら立派でも、生産ラインば粗悪な鉄を使っておるからしょうがなか。胸くそ悪か!」

 

「俺たちに怒ってもしょうがないですよ。それとも、おやじさん、こいつを修理できるんですか?」

 

 瀬戸口の言葉を挑発と取ったか、おやじはぎろりと目をむくとゴツゴツとした職人の人差し指を一本立てた。

 

「あ~、一ヶ月もかかるのはちょっと……」 猫宮が苦笑する。

 

 すると、おやじは「ム」とうなって首を振った。

 

「一週間」

 

「え、嘘だろ? 一週間で直せたら、それこそ神様だ。おやじさん、何やってる人?」

 

「鍛冶屋ばい」

 

 おやじの顔が微かにほころんだ。

 

(やった!鍛冶屋の知り合いゲット!)

 

 内心ガッツポーズをする猫宮。専用のナイフやら銃剣やらカトラスやらを作って貰う気が満々で、その為に今日瀬戸口についていく事にしたのだ。こうして、一週間後にはシャフトが見事に修理された指揮車が第62戦車学校へと届くことになる。取りに行くついでに数々の武器を作ってもらうのは、またもう少し後の話。

 

 

 

 さて、えっちらおっちら昼頃には帰ってきて、猫宮が向かったのは校門脇の芝生の辺りである。行ってみると、丁度速水・滝川・茜が話をしていた。

 

「やっ! 三人とも何の話?」

 

「あっ、猫宮……」

 

「猫宮……ああ、あのパイロット兼食料調達係か」 

 

 渋い顔をする茜。どうやら「茜は除く」と書かれかけたことを根に持っているらしい。

 

「他にも色々と調達してるけどね」 それを気にせずにくすっと笑う猫宮。

 

「で、猫宮は今日は何処に行ってたの? 士魂号の辺りに居なかったけど」

 

「そうそう、士魂号の調整しなくていいのかよ?」

 

 尋ねる速水に心配する滝川。

 

「瀬戸口さんと解体業者に行って使えそうな指揮車引き取ってきた所。まあ持ってくる途中でシャフトポッキリ行っちゃったから修理に預けてきたんだけどね~」

 

 苦笑する猫宮に不安そうになる三人。指揮車までお下がりなのか、ここは……

 

「ま、腕の良さそうな人に預けてきたから大丈夫だと思うけど。それよりどうかしたの?」

 

 顔を見合わせる三人。事情を説明されると猫宮も表情が険しくなる。

 

「――石津さん、色々と内に秘めちゃうタイプだろうからね。茜君、お姉さんが心配なら――勇気を出して聞いてみるのも必要かもね」

 

「そ、そんな姉さんに限って!」

 

「何かあるから思いつめてたんでしょ?」

 

「そ、それは……」 

 

 口籠る茜。複雑な表情をする三人を背に、猫宮は歩き出した。

 

(今日か……。傘、用意しとかないとね)

 

 そう思いつつ、士魂号の様子を見に整備テントまで歩いて行った。

 

 

 すっかり日が暮れた頃、ポツポツと雨が降り始めた。整備テント内からそれを感じて傘を持って外に出る猫宮。冷たい強風が体の体温を急激に奪っていく。詰所の側の外灯へと歩いて行くと、その下に石津が一人佇んでいた。この時点で、かなり体温が低下していそうだ。

 

「雨の中、傘を差さずに踊る人間がいてもいい。自由とは、そういうことだ」

 

 猫宮がそう言うと、石津はゆっくりと猫宮の方を見た。

 

「そう言った人がいたけど、石津さんはその人程頑丈には見えないかな?」

 

 苦笑しつつ猫宮は傘を石津にさした。傘は石津への雨を防ぎ、代わりに猫宮がどんどんと濡れていく。

 

「ダメ……風邪……引くわ……」

 

 石津がふるふると首を振って、傘を猫宮の方に押し戻そうとするが、猫宮の腕はびくともしない。

 

「君がそう他人を心配するように、他の人も君を心配するんだよ。――だから、こんな事しちゃダメだ」

 

 珍しく怒ったような顔で言う猫宮。そう言われて、石津は俯いた。

 

「石津さんのお陰で皆色々と助かってるんだ。石津さんが倒れちゃったら、誰が皆の面倒見てくれるのさ?」

 

 そう言うと猫宮は食堂まで石津を引っ張っていった。お湯を沸かして紅茶を淹れ、ミルクと本物の砂糖を横に置く。中々手を付けようとしない石津をじ~~~っと見続ける猫宮。そして俯いたままの石津。

 

「じ~~~~」 とうとう口で言い始めたぞコイツ。

 

 そんな猫宮に根負けしたのか、ミルクと砂糖を入れてから、おずおずと石津は紅茶を口にした。

 

「うん、それで良し!」 笑って頷く猫宮。

 

 そして、今度は食材置き場から野菜と魚を取り出し、更には干した昆布も引っ張りだして大鍋で浜鍋を作り出した。奮発して白米も炊飯器で炊いている。そして、そんな匂いを嗅ぎつけたのか、整備士たちが帰っても士魂号の調整をしていたパイロットたちがやってきた。

 

「うおーっ、腹減った! 猫宮! できたら食わせてくれ!」 勢い良く入ってくる滝川。

 

「あ、あの、わたくしの分も是非……」 はしたないと思っているのかおずおずと入ってくる壬生屋。

 

「ふむ、野菜と魚介類の鍋か。ビタミン各種にタンパク質にとバランスよく摂取できるな」 

 

「あはは、僕もお願い。ずっと芝村さんに付き合わされちゃってさ、もうお腹ペコペコなんだ」

 

 冷静に分析しているようで顔がほころんでいる芝村に、楽しみそうにしている速水。

 

「はいよっ! 沢山食べてね!」 それに猫宮は笑って答えるのだった。

 

 そして真っ先に石津に盛りつけた。おずおずとして中々食べない石津に全員の視線が注がれる。しばらく逡巡するが、石津が口にしないと猫宮は他に盛り付けようとしない。少し迷って石津が可愛く箸をつけた後、猫宮はようやく他の皆にも盛りつけたのだ。

 

 

 普段のジャガイモの塩ゆでとは違い、白米もあったので体が資本のパイロット連中が大量のおかわりを重ねた。皆が食べ終わってまったりした空気が流れだした時、猫宮は話を切り出した。

 

「さて、皆に聞いてほしいことがあるんだけど」

 

 表情と雰囲気が変わる猫宮。それに反応するパイロット四人。そして、石津は猫宮の腕を掴むとふるふると首を振った。それを見て、速水と滝川は表情を曇らせた。

 

「石津さんね、この雨の中で外で傘も差さずに立ってたんだ」

 

 そう言うと、芝村と壬生屋の表情も変わる。

 

「じゃ、じゃあ茜の話ってやっぱり……」

 

「何だと、茜の話とはどういうことだ?」

 

 滝川のつぶやきに反応する芝村。

 

「い、いや、森さんが『石津さんごめんなさい』ってずっとうわごと言ってるって……」

 

「たわけがっ! 何故それを周りにすぐに言わぬ!?」

 

「そうですっ! こんな雨の中で、もし発見が遅れたら命に関わっていたかもしれませんっ!」

 

 激昂する芝村と壬生屋。

 

「わ、悪ぃ……。茜のやつ、森さんの事凄く信じてたから……」

 

 俯く滝川。友達の言う事を信じたかったのだ。

 

「僕は……僕は……」 俯いて、何も言えない速水。

 

 速水が何もしなかったのは、事なかれ主義――というよりも自己防衛の為だった。他人と深く関わらなければ、深く傷つくこともない。そんな感情から出たような逃げ。そして、石津という少女への嫉妬もあった。そう、悪いのは――

 

「その目はやめろ。その目をわたしは嫌いだ。おのれのことしか考えず、しかも他者に恨みがましくすべてを転嫁する目だ」

 

「君に僕の何がわかるっていうんだ!」 

 

 速水はかっとなって叫んだ。びっくりして滝川や壬生屋や石津は速水の方を見た。

 

「そなたのことなど知らぬ。そなたもわたしのことなど知らぬ。そうであろう? それでそなたはよいのだろう?」

 

 芝村の口調はひややかだったが、どこか悲しげな響きが交じっていた。他のメンバーも、その響きを敏感に感じ取った。

 

「噂で聞いていたんだ。石津さんがいじめられていること――」 ぎり、と歯を噛み鳴らした速水。

 

「僕は最低だっ!」 

 

 叫ぶ速水。だが、石津は速水の側に寄るとふるふると首を振った。

 

「わたしの……ことは……いいの……」

 

 それでも、速水の事を気にかけて自分のことを大事にしない石津。なんで、なんで君はそんなに他人のことを。僕は、僕は――

 

「じゃ、今日から変わってみよっか?」

 

 様々な感情が渦巻く速水の背中をぽんっと猫宮が叩いた。

 

「変わ……る……?」

 

「そう、試しに今日から、お節介するような人に変わってみよっか? 笑って感謝されたりするの、楽しいよ?」

 

 優しく微笑んで速水の顔を覗き込む猫宮。滝川もすこし迷った後、速水の側に寄ってきた。

 

「えーっと、まあ、俺たち親友だろ? あんまり一人で抱え込むなよ」

 

 頭が悪いなりに、頑張って励まそうとする滝川。そんな二人に、速水はなんだか心が少し暖かくなったような気がした。

 

「速水さんの事はお二人に任せるとして。無抵抗な石津さんをいじめていたなんて森さんを許せませんっ!」

 

「同感だ、善行の所へと行くぞ」

 

 壬生屋の言葉に同意して食堂を出る芝村。

 

「ま、待って! 僕も行くよ!」 慌ててそれについていく速水。

 

「うーん、あの三人だと加減できないかもしれないねぇ……。よし、滝川、GO!」

 

「うおーい、俺一人であの三人止めろってか!?」

 

 三人だと危ないと更に猫宮は滝川を付ける。不安そうだが、それでも仲間はずれは嫌なのか滝川は後へと続いていった。

 

 残された猫宮と石津。しばしの沈黙の後、ためらいがちに猫宮は口を開いた。

 

 

「……色々と皆に偉そうな事言ったけど。本当に謝らなきゃいけないのは自分だね。……石津さんが苦しんでるのを大体分かっているのに、この隊の為に、利用しちゃった。――本当に、ごめんなさい」

 

 後悔を滲ませて、頭を下げる猫宮。正義の味方として、会わせる顔が何処にも無かった。

 

「…………許さない……わ……ずっと……呪う……の……」

 

 猫宮にとって永遠にも思える沈黙の後、石津からの死刑宣告が聞こえた。ビクッと震えた後、がっくりと肩を落とす猫宮。

 

「……うそ」

 

 石津が、上目遣いに猫宮を見た。その顔には、ほんの僅かに、いたずらっぽい笑顔が浮かんでいたのだ。

 

 

 この後の話はまあ特に詳しく語る必要もないだろう。森も原も、壊れそうな心を皆に支えられ、心から石津に謝ったのだ。その結果は陳腐だが、みんなが大好きなこの言葉で締めくくろうと思う。すなわち、一件落着、と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




これにてepisode ONE は終了です。ここまではゲームで言うチュートリアルで、殆どオリジナル展開は入れられませんが、戦闘が始まってからはオリジナル展開をガンガン入れていけると思います。

短編が出るとしたらどんな話が良い?

  • 女の子達とのラブコメが見たいんだ
  • 男連中とのバカ話が見たいんだ
  • 九州で出会った学兵たちの話
  • 大人の兵隊たちとのあれこれ
  • 5121含んだ善行戦隊の話

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。