ガンパレード・マーチ episode OVERS 作:両生金魚
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4コマやアンソロジーが見つかる
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いつの間にか時間がものすごい経っている
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執筆が遅れる <今ココ!
二日後、樹木公園前。速水厚志は改めてみんなの前で今回の作戦を説明していた。真後ろに芝村が居てあれこれ言っているが、誰も突っ込まないのが優しさである。なるべく楽をして勝つこと、そのために罠を仕掛けた。これが今回の戦術である。
「けど、それってやっぱり卑怯じゃね?」
「わ、わたくしも反対です! やっぱり潔くありません!」
まだ躊躇いが有る滝川に「卑怯者」呼ばわりされたくなくてアリバイ作りをする壬生屋。
「そのことなら大丈夫。罠を使うなとも、下準備をするなとも言われてないよ」
そんな二人を笑いながら諭す速水。
「そうそう、これは戦争の訓練なんだし。卑怯外道何でもあり! 反則が有るなら即使え、だね」
ノリノリで賛同する猫宮。何やら小道具を入れた袋を持っていた。それを見て他のメンバーは何とも嫌な予感がしたものだ。
「そういうこった。まあ、二人共覚悟を決めなさい。速水が困っているしな。それにしても、まさか速水がこんな事を言ってくるとはなあ。芝村も真っ青の極悪非道の作戦じゃないか」
瀬戸口は見透かしたように言った。
「ぼ、僕はただ芝村さんに……」
「しっかりしろ、速水。そなたは作戦を発案し、ここまでこぎつけた。雑音に惑わされず、堂々としておればよい」
芝村は威圧するように速水を睨みつけた。バレっバレである。必死でクスクス笑うのをこらえている幾名かの反応が辛かった。
「じゃ、じゃあ分担なんだけど……」
とりあえず話を戻す速水。言われたことを必死に思い出していた。
「各班がそれぞれの地域の罠を巡回し、監視します。滝川と猫宮と加藤さんは北、僕と芝村さんは真ん中を、瀬戸口さん壬生屋さんののみちゃんは南を担当してもらいます。そうだったよね、芝村さん」
「たわけ。わたしに確認してどうする? 」
「あの……斥候は出さなくてよろしいんですか? 」と壬生屋。
「昨日決めた監視ポイントに潜んで獲物がかかるのを待つこと。それだけでいいんだ。ホイッスルの合図と同時にダッシュでね」
「できればあの罠にかかってほしいよな」
滝川が指したのは巨大な網だった。滝川が作った苦心の作である。若宮に何度も怒鳴られ直されながら作った作品だ。プラモデルを完成させた時より遥かに達成感が有った。
「あはは。でも、罠は卑怯じゃなかったの?」 加藤が混ぜっ返した。
「そ、そうなんだけどよ。でも折角作ったんだからさ」
「そうそう。折角沢山作ったんだし、三、四個程度は引っかかってほしいよね」
滝川は顔を赤らめた。罠作りは楽しかったし、あれこれ工夫して作るのも充実感が有った。いつの間にか相手が罠にかかるのをワクワクしている自分が居た。
「けど速水のやつ、どうしたんだろ? 芝村にこき使われてさ」
「そりゃ、あの芝村さんはコミュニケーション凄い苦手そうだからね。速水を使ってワンクッション置いてるんでしょ。速水なら人当たりもいいし」
滝川の疑問にさらりと答える猫宮。その答えに二人がおかしそうに笑った。
「あはは、なるほど、スピーカーか。でも、芝村さんの声そのスピーカー使わなくてもよく響くのよね」
「そうそう。芝村、影の番長やろうと思ってるんだろうけど、バレバレだよなー」
みんなが賛同したのはアイディアがなかったのは勿論、芝村には自分たちには無いものを感じたかもしれない。が、今のところ期待半分胡散臭さ半分といったところだ。しかし、加藤は既に芝村と一緒に資材調達の際に隊費横領という罪を犯している。
「なんや、ウチも結構巻き込まれてるなぁ」とは加藤のボヤキだ。
「それにしても、来ないな、敵」
滝川が寂しそうに言った。
「芝村さんの計算によると敵が来る確率は南から4:5:1みたいだからね」 猫宮が言った。
「一ってのも寂しいな……」 せっかくの罠が役に立たないのは寂しい滝川。
「あれ、リスがいる」 加藤が言った。
「えっ、どこどこ!?」 滝川が樹上から慌てて探す。
「あはは、嘘や嘘、それじゃあ芝村さんや速水君が不安に思うのも無理はあらへん」
いたずら成功、と加藤は笑った。
「え? こっちに居るよ?」
「「へ? 」」
振り向く二人。見ると、猫宮がリスにアーモンドを手渡しで渡していた。詰め込めるだけ、そのリスは頬袋にアーモンドを詰め込んでいた。
遠くの方で、悲鳴が立て続けに上がった。どうやら上手くトラップに引っかかったようだ。
「お、向こうで引っかかったみたいだ」
「そうやなあ、やっぱりこっちには来いへんか」
滝川と加藤が声のした方を見た。滝川は心なしか残念そうである。
「いや、心構えができてない所に罠が有ったらパニックになって逃げる事は有るだろうし、こっちに来るかも」
そんなことを言っていると、二人分の足音が聞こえてきた。
「な、何なの罠とか! もー、信じらんない!」 どうやら凄くご立腹のようだ。
「と、とにかく何とか体勢を立てなおさないと……」
慌てる二人は頭上には注意が行ってないようだ。上にいる3人には気がついてない。
「ど、どうする? 降りて一気にやっちまうか?」
興奮した様子でまくし立てる滝川。
「それだと相打ちになっちゃうかもだし……ここはやっぱり罠におびき寄せないとね? 」
「ほな、どうやるんや?」 疑問に思う加藤。
「こうするのさ」 にやりと笑って猫宮が袋から長い緑色のものを取り出した。蛇だ!
「「ひっ!?」」 思わず木の上でおもいっきりのけぞる二人。
「あはは、大丈夫、これただの作り物」
そう言って猫宮は大量の蛇をぶん投げた。罠の方へ走るように、反対側へである。絹を引き裂くような悲鳴が二人分、二回とも上がった。
「228番、871番!」 降りて番号を言う猫宮。
「ひ、ひっど~~い!」
「ひっぐ、えっぐ……」
抗議の声と泣き声が一つずつ。
「ひ、ひでえ……」
「猫宮君、女の子泣かしちゃダメやで……」
味方からの視線も痛かった。
「ご、ごめんなさい……」
思わず謝る猫宮。と、もう一つだけ足音がやってきた。
「あっ、やばっ!?」
「猫宮君、逃げてっ!」
叫ぶ滝川と加藤。だが猫宮は袋から卵を取り出すと、足音のした方にぶん投げた。木に当たってぶつかると、胡椒が辺りに撒き散らされ重石が下に落ちた。
「へくしゅっ! へくしゅっ! 」
可愛いくしゃみが響く中、「489番!」と猫宮の声が響いた。
「「「さいって~……」」」
三人の撃破という戦果を上げたが、引き換えに滝川、加藤、泣いてない女学生を含めた三人の声が冷たかった。
この後、泣いている子とくしゃみが止まらない子に猫宮は土下座して謝ることとなる。
他の地点でも、次々と罠にかかった堅田女学校の生徒が助けだされ、第62戦車学校の勝利で訓練が終了することとなる。
勝利を宣言した後、樹木公園前に集合した生徒たちは晴れやかな顔で善行の前に出た。えへん、これで文句ないでしょ、という得意顔である。
「第62戦車学校、ただ今帰投した」
芝村舞は腰に手を当てて無表情に言った。善行は苦笑いを浮かべ、眼鏡を直した。若宮から詳細を聞かされて、「いやはやどうも」と頭を振るばかりである。
「目的のためには手段を選ばぬ、ぞくぞくするような勝ちっぷりですね。こんな卑怯な手で勝利して恥ずかしくないのですか?」
言葉の割に善行の口元はほころんでいる。何よりも生徒たちが自らの力で勝つ手段を模索してくれたことが嬉しかった。
「けど、これって芝村の作戦ですから」 澄ました顔で加藤が言った。
速水と芝村はぎょっとして顔を見合わせた。
「な、何をたわけたことを!「いや、最初っからバレッバレ!」 む、むう……」
芝村の言い訳に猫宮が言葉を重ねた。顔がみるみる赤くなっていく。目立たぬよう、影で速水を操っていたつもりだったが、そう思ってたのは芝村ただ一人である。
「ははは、もう下手な芝居はたくさんだ。最初から全部バレていたよ、芝村。おまえさん、役者には絶対になれないな」
「そうそう、速水がかわいそうだったぜ?」
瀬戸口は兎も角滝川にまで! 芝村はあまりの事に足元がぐらつくのを感じた。とてつもない屈辱である。
「けれどわたくし、勝ててよかったと思っています。芝村さんの考えてくれた作戦があったから、勝てたんですよね」
壬生屋の言葉に、生徒たちは耳を疑ったが、やがて大きく頷いた。
「芝村は嫌いやけど、芝村さんがいてくれると心強いいうことがよくわかったわ。けど芝村さんてかわいいとこあるんやねー。影番気取っちゃったり。大昔の学園漫画の読み過ぎや」
加藤の一言は舞に堪えたようだ。立ち尽くす舞。
「どうです? これで少しは見込みが出てきたんじゃないですか?」
瀬戸口は相変わらず飄々とした口調である。
「多少は」 善行はそっけなく言ったが、笑いを抑えるのに苦労していることが分かる。
速水の口元も知らずにほころんでいた。
「そ、そなた、何を笑っている?」 笑いものにされ被害妄想に陥っている舞に責められ、速水ははっと口元に手を当てた。
「ええと、その……だって楽しかったじゃない? 芝村さんも楽しかったでしょ?」
芝村は憮然として速水を睨みつけた。
「……まあ、それはそうと猫宮君、君は後で私と共に堅田まで挨拶に行くように。」
「へっ? な、何で自分だけ!?」
あ~と納得する周囲。
「勝ったことは喜ばしいですが女の子を泣かせてしまいましたので。きちんと菓子折りも用意するように」
「ぶ、武士は犬ともいへ、畜生ともいへ、勝つことが本にて候……」
「問答無用です」
こうして、猫宮は用意した資材費の他にさらなる出費を強いられることとなった。
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