桜花妖々録   作:秋風とも

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第8話「死体泥棒」

 

 静かな夜だった。

 煌びやかに瞬く星々と、柔らかい光を放つ月。凛とした静けさの中、空から降り注ぐ自然の光だけが、地表を緩やかに照らしている。虫の音も聞こえぬ静寂と冷たい空気が合わさって、周囲は淑やかながらも引き締まった雰囲気に包まれていた。

 

 密やかな宵。京都の外れにある墓地に、一匹の猫がいた。

 黒猫である。夜に溶けてしまいそうな真っ黒な毛で覆われている所為か、その赤い瞳がより映えて見える。一見するとごく普通の黒猫のようにも見えるが、ある一部分だけあまりにも奇怪な箇所がある。

 尻尾が、二又に分かれているのだ。分かれた尻尾のそれぞれが、まるで別の生き物のようにゆらゆらと自由に揺れている。その様子は、常識的な思考では説明出来ないような懐疑めいた気味の悪さがあった。根拠のない不穏さが、どこからか迫ってくるかのような。

 

「にゃー」

 

 猫が鳴いた。一つの墓を前にして、まるで獲物を見るような眼つきで。

 猫は立ち上がった。分かれた尻尾をゆらゆらと揺らし、今にも獲物に飛び掛らんとするような剣幕で。

 そして、猫は――。

 

 

 ***

 

 

「遅い……」

 

 その日。マエリベリー・ハーンは不貞腐れていた。

 12月中旬の、肌寒い気候の昼だ。空は雲一つない快晴で、日光が燦々と降り注いでいる。が、そこは冬。幾らカラッとした快晴とは言っても、それほど気温は引き上げられない。どうしようもない程ではないが、ちょっと前の秋の気候とは程遠かった。

 そんな中でメリーが座っているのは、都心にある某カフェのテラス席である。空になったティーカップをソーサーに置きながらも、メリーは椅子の背凭れに身を委ねる。この気候の中でテラス席を選んだのは失敗だったかも知れない。

 

 言わずもがな、彼女が待っているのはあの遅刻の常習犯だ。つい先月、珍しく約束の時間を守ったかと思ったら、直ぐにまたこれである。やはりあれは本当に奇跡の類だったようだ。彼女にそんな期待など抱くべきではないと、メリーは改めて思い知らされた。

 メリーは片手で頬杖をつく。今日は進一も妖夢もいない。なんでも、夢美の研究を手伝うとの事で、二人とも不在である。つまりは蓮子と二人で活動する事になるのだが、肝心の彼女が来ないのでは意味がない。あっちから呼び出してきた癖に、この仕打ちはあんまりではないか。

 

「まったく……。せめて電話には出て欲しいわね……」

 

 遅刻するにしても、せめて事前に連絡を入れてくれればまだ良いのだが――。そんな事はまず有り得ないし、こちらから連絡を入れても返信がないのだから尚更タチが悪い。一体、何をやっているのだろう。そもそも約束を覚えているのだろうか。

 

「はぁ……」

 

 進一と妖夢は不在。蓮子はいつ来るか分からない。つまりこの状況、メリーにとってとんでもなく暇であると言う事で。思わず明け透けに溜息をついてしまうのも、まぁ仕方がないだろう。本でも持ってくれば良かったと、後悔したのは最早一度や二度ではない。

 

 取り敢えず紅茶のおかわりを注文した後、メリーはぼんやりと街並みを眺める。

 クリスマスシーズンであるが故に至るところに展開されたイルミネーションに、相変わらずの人波。そんな中で一際目立つ、猫耳の少女。

 

「……へっ?」

 

 いや、ちょっと待って。今、妙なものが視界に入り込んだような。

 メリーは慌てて目を凝らす。人波の中、確かにその姿はあった。

 猫耳の少女である。深い紅色の髪を両サイドで三つ編みにし、それらを黒いリボンで結んでいる。服装は所謂ゴシックロリータファッションで、黒を基調としている為かどこか呪術的な印象を受ける。そして一際目を引くのは、彼女の背後で左右に揺れる二本の尻尾。

 

「……へっ?」

 

 なんだ、あれは。あまりにも暇過ぎて、幻覚でも見ているのだろうか。一瞬本気でそう思ったが、どうやらそんな事はないようだ。すれ違う人々の誰もが、彼女に訝しげな視線を向けている。

 冷静に考えて間違いなくコスプレイヤーなのだろうが、京都のど真ん中であんな格好をしているのは違和感極まりない。萌えやオタクの文化が浸透しているのは今も昔も東京であり、どちらかと言えば厳粛な京都ではあまりにも場違いだ。そのようなイベントや同士が集まるお店等でならともかく、こんな街中でコスプレをし、あろうことか闊歩する者などまずいないのである。

 そんな中でのあの格好だ。注目を集めてしまうのも、無理はないと言える。

 

(コスプレ、ね……)

 

 正直、実際に見るのはメリーも初めてだ。ひょっとして彼女は東京辺りから京都に来たばかりであり、勝手を知らないのではないだろうか。それならば、あんな風に浮いた格好になってしまうのも、一応納得できると言えばできる。

 それにしても、随分とクオリティの高いコスプレである。あの耳と尻尾なんて、実際に生えているようではないか。時折ピクピクと動いている辺り、よりリアルティを推し進めている。コスプレイヤーというのは、皆あんなに力を入れているものなのだろうか。

 

 そんな猫耳ゴスロリ少女は、何かを探し回っているかのようにきょろきょろと周囲を見渡している。すると次の瞬間、その様子をぼんやりと眺めていたメリーと目が合った。途端に彼女はトコトコとこちらに走り寄ってきて、

 

「ねぇ、そこのお姉さん。ちょっと聞きたい事があるんだけど、いいかな?」

「……えっ!? わ、私……?」

 

 つい、メリーはおどおどしてしまった。目が合った瞬間もしやとは思っていたが、まさか本当に声をかけられるとは。周囲の視線がこちらに集まっているのを感じる。

 一瞬メリーは狼狽えそうになってしまうが、会話の内容を落ち着いて噛み砕いてみれば大した事はない。ただ、ちょっと聞きたい事があるだけなようである。

 それならば、メリーに彼女を拒む理由はない。短く深呼吸をして落ち着きを取り戻したあと、メリーは彼女に受け答えする。

 

「……何かしら?」

「えっと……。実はあたい、妖……じゃなくて、人を捜してて。これくらいの背丈で、黒い帽子を被った女の子なんだけど……この辺で見かけなかった?」

「黒い帽子の、女の子……?」

 

 メリーは記憶を探る。黒い帽子の女の子と言われて真っ先に思い浮かぶのは未だに来る気配もない相棒の事だが、まさか彼女ではあるまい。そもそも背丈が違う。猫耳少女が示しているのは、自分の胸元よりもやや小さいくらいの背丈だ。その身長だと、おそらく小学生くらいだろうか。

 黒い帽子を被った、小学生くらいの女の子。残念ながら、メリーには見覚えがない。ひょっとしたらどこかですれ違っていた可能性もあるが、少なくとも記憶の中には残っていなかった。

 

「うーん……。ごめんなさい、見覚えはないわね……」

「……そっか。やっぱり、そうだよねぇ……」

 

 がっくりと項垂れる猫耳少女。その口ぶりから察するに、あまり期待はしていなかった様子。まぁ、確かに。余程印象に残るような少女でない限り、そう都合よく記憶には留めておかないだろう。況してや日々多くの人々とすれ違う機会が多い都会である。見知らぬ少女の姿を覚えている可能性は、それだけでより低くなってしまう。

 

 メリーが考え込んでいると、猫耳少女はおもむろに顔を上げて、

 

「ありがと。時間取らせちゃってごめんね。それじゃ」

「あっ……」

 

 気がつくと少女は踵を返し、人波の中へと立ち去ってしまう。反射的にメリーは手を伸ばしかけるが、時既に遅し。既に猫耳少女の姿は、どこにも見当たらなくなってしまった。

 メリーは思わず呆気にとられる。

 

「なんだったのかしら……?」

 

 あっという間の出来事だった。彼女が捜していた黒い帽子の女の子とは、一体どんな人物なのだろう。コスプレ仲間か何かだろうか。或いは、彼女の妹とか――。ともあれ、見覚えがないのだから情報提供しようがない。

 しかし。メリーには何も分からなかったけれども、蓮子なら或いは何か知っているかも知れない。後でちょっと聞いてみよう。

 

 取り敢えず、人捜しをしている猫耳少女がいたという事を頭の片隅に置いておきながらも。メリーは運ばれた二杯目の紅茶を口に運ぶのだった。

 

 

 ***

 

 

 メリーが二杯目の紅茶を飲み終える頃になって、蓮子はようやく現れた。

 相変わらず悪びれる様子も一切ないのが流石である。「いやー、ごめんごめん! はっはっは!」などとのたまいながら席に着いた彼女を見て、遅刻の原因を追求する気も完全に失せてしまった。しかもそろそろ怒りさえも覚えなくなってきている始末。慣れとは、げに恐ろしい。

 

 なんだか色々とどうでも良くなってきた所で。いけしゃあしゃあと自分の分の紅茶とケーキを注文する蓮子を横目に、メリーはついさっきの出来事を彼女に話してみた。

 

「猫のコスプレ? へぇ……京都の街中でそんな格好をする人なんていたんだ」

「京都の人かどうかは分からないけどね。観光客か何かかも」

 

 実際、その線は濃厚である。京都に来たばかりの観光客であるのなら、妙な格好をしているのも、連れとはぐれてしまうのも納得できる。特に都心なんかは人の量もかなり多くなる。人混みに分担されて、迷子になってしまうのも無理はないだろう。

 

「それで? 黒い帽子を被った女の子だっけ?」

「ええ。蓮子は何か知らない?」

「うーん……、私にも心当たりはないかなぁ……」

「そう……」

 

 ケーキをフォークで切り分けながらも、蓮子はそう口にした。

 彼女も知らないとなると、流石にどうにもならないか。進一達にも聞いてみたいが、生憎今日は不在であるし。今は諦めるしかないだろう。モヤモヤとした感覚は残るが。

 そんなメリーをよそに、蓮子は切り分けたケーキを口一杯に頬張り始めた。

 

「あっ、そうそう! 猫と言えば……」

「……飲み込んでから喋りなさい」

 

 もぐもぐ、ごくんと飲み込んで、蓮子は紅茶を一口運ぶ。それから一呼吸置いて、

 

「実は、今回の活動内容も猫に関する事なのよねー」

「……猫? どういう事かしら?」

「ふふふっ……。まぁ聞いてよ」

 

 蓮子が話し始めたのは、最近巷で話題になっているとある事件の事だった。

 端的に言ってしまえば墓荒らしである。京都中の幾つかの墓が何者かによって荒らされ、その中身を持ち去られてしまう事件が多発しているらしい。犯人は未だ不明。これと言って決定打に成りうる証拠も見つかっておらず、調査は難航しているとの事。

 随分と罰当たりな人もいるものだ。他人の墓を勝手に荒らし、あろうことか中身を持ち去るなど。

 

「まさか私達以外に墓荒らしをする人がいるなんてね……。しかも本格的だし」

「一緒にしないで欲しいわね。私達の活動目的は結界を暴く事であって、墓荒らしが本質ではないわ」

「……まぁ、蓮子がそう思っているのなら、そういう事にしておきましょ」

 

 それはさておき。

 

「でも、それに猫がどう関係してくるのよ」

「あれ? メリーは知らない? 『火車』っていう妖怪の事」

「火車?」

 

 火車。それは葬式場や墓場に現れ、死体を奪うとされる妖怪である。その伝承は日本各地に存在するが、細部は微妙に異なっている場合が多い。ある一説では地獄からの使者であると言われていたり、単に異形の化け物であると伝えられていたり。その中でも特に多い伝承が、正体が猫の妖怪であるというものである。

 猫の妖怪と言えば真っ先に猫又が上げられるが、それと同一の存在であるとする伝承も存在している。姿形は普通の猫とほぼ変わりないが、尻尾が二又に分かれているという。年老いた猫が化けた妖怪であるとも言われており、つまりは後天性の妖怪であるとも言えるだろう。

 

 とは言っても、先述の通り日本各地に伝承が存在する妖怪である。正体が猫の妖怪であるというものもあくまで最もポピュラーな伝承であるというだけであり、必ずしもそれが正しいとは断言できない。

 

「……まさか、その火車って妖怪が墓荒らしの犯人だって言いたいの?」

「ふふん、そのまさかよメリー!」

 

 意気揚々とそう語る蓮子を前にして、メリーは思わず苦笑いを浮かべてしまう。

 幾らなんでも突拍子もない話である。犯人の足取りが全くの不明だからと言って、妖怪の所為にしてしまうのはあまりにも唐突過ぎるのではないだろうか。

 

「その顔……全く信じてないって感じね」

「いや、まぁ……そもそもこの現代社会に妖怪なんて存在するとは思えないのよ。幻想郷じゃないんだから」

「確かに、そうかもね。メリーの言う事は最もだわ」

 

 そこは蓮子にも分かっているらしい。

 妖怪等の魑魅魍魎が闊歩しているとされるのは、あくまで人間の想像の中での事である。そう決定づけられて存在が完全に否定されてしまった今、最早新たな妖怪は現代社会には誕生しない。人々が抱く畏怖の念も薄れ、その存在を誰もが信じ込まなくなってしまった時点で。妖怪の居場所は完全に消滅してしまった事になる。

 既に妖怪という存在は“非常識的”だ。この現代において非常識的な存在は排斥される傾向にあり、そんな行き場を失った者達の終着点が幻想郷なのである。

 

「この現代に妖怪は存在しない。それはほぼ確実に断言できるわ」

「それじゃあ、どうして……」

「でも幻想郷には存在している。そうでしょ?」

「それは……妖夢ちゃんの言っている事が正しければ……」

 

 メリーは首を傾げる。

 蓮子の言わんとしている事が、イマイチ理解できない。含みのあるような言い方ではなくて、もっとはっきりと言って欲しいのだが。

 

「つまり、どういう事?」

「簡単な話よ。妖夢ちゃんは冥界という異世界からこっちの世界に迷い込んでしまった。それはとても珍しい事例だけど、可能性がゼロって訳じゃない。もし……妖夢ちゃんみたいに、こっちの世界に迷い込んでしまうような妖怪がいたとすれば?」

「まさか……その火車って……!」

「そう。幻想郷の住民である可能性が高いって事ね」

 

 成る程、確かに。

 こちらの世界では非常識的な存在でも、幻想郷ではごく常識的である。仮にその火車が元々幻想郷の住民で、なんらかの要素が起因してこちらの世界に迷い込んでしまったのだとすれば。一応、納得は出来る。

 

「或いは迷い込んじゃったんじゃなくて、自分の意思で博麗大結界を越えて来たか。まぁどっちにしろ、幻想郷となんらかの関わりを持っている事は確かね」

「でもちょっと待ってよ蓮子。まだその墓荒らしの犯人が火車だって決まった訳じゃないでしょ? ひょっとしたら、普通に人間が犯人なのかもしれないし……」

「ふふっ……甘いわね、メリー。その点については抜かりないわ」

 

 そう言って胸を張る蓮子は得意顔だ。この反応、どうやら既に証拠は掴んでいるらしい。

 

「私の独自ルートで調べた結果……ここ数日で荒らされたお墓の幾つかに、ある共通の目撃例があったのよ」

「……目撃例?」

「ええ。被害の遭ったお墓全部って訳じゃないけど、どこも荒らされる前後に黒い猫を見たっていう目撃例が上がっているの。しかも中には尻尾が二又に分かれてた、なんて主張する人もいるみたいだし……」

「そんな事が……」

 

 単なる見間違い――とは言い難い。目撃者が一人や二人だけならともかく、複数人が同じように黒猫を目撃しているのだ。たまたまその場に猫がいただけという可能性もあるが、それにしても偶然と片付けるのには些か出来過ぎているような気がする。

 

「どう? ちょっとは信じる気になった?」

「うーん……、でも尻尾が二又に分かれてたなんて……。実際に見てみない事にはなんとも……」

「確かにその辺はちょっと不明瞭なのよねー。二又に分かれているように見えただけって可能性もあるし」

「でも、もしも本当に火車が墓荒らしの犯人で、その妖怪が幻想郷の住民だったとしたら……」

「この上ない手がかりって事になるわね。博麗大結界を越える手段も何か知っているかも」

 

 そういう事になる。

 夢美達が博麗大結界の調査を初めて少し経つが、未だにこれといった進展はない。やはり強力な結界であるが故に、現代の人間ではどうしようもないのだろうか。

 同じように、秘封倶楽部で行っている調査の方も芳しくない。こっちはこっちで冥界へと直接行ける方法を探していた訳だが、正直お手上げ状態だ。そう簡単に、結界の解れは見つかるものではない。

 そんな中での、この事件である。期待を抱かずにはいられない。

 

「それじゃあ、今日の活動内容って……」

「そう! その火車を捜しにいくのよ! なんとしてでも見つけ出して、話を聞かなくちゃ……!」

「言葉が通じれば、だけれどね」

 

 珍しくオカルトサークルらしい活動内容である。これまでのような非合法的な結界暴きとは違うのでなんとなく妙な感じだが、これはこれでありか。と言うか、そもそも今までの活動の方が世間的に見ればおかしなものだったのだろうけど。

 

「よしっ! 早速捜しに行くわよメリー!」

「ちょ、ちょっと待ってよ。宛はあるの? 闇雲に捜し回っても……」

「ふふふっ……。私がなんの計画もなしにこんな話を持ちかけてくると思う?」

「えっ?」

 

 と言う事は。宛はある、という事なのだろうか。

 

「そこまで言うのなら……プランを聞こうかしら?」

「そうこなくっちゃ! いい? よく聞いて……」

 

 やけに仰々しい様相で、蓮子はメリーに耳打ちをした。

 

 

 ***

 

 

「……ねぇ、蓮子」

「しー! 声が大きいわメリー……!」

「いや、だから聞いて? やっぱりこれじゃ……」

「大丈夫よ。万事順調だわ……!」

 

 隣でメリーが溜息をついたが、蓮子はそんな事微塵も気にしていない。それよりも、今はもっと集中力を傾けるべき事があるのだ。一瞬でも気を抜く訳にはいかない。

 

「いい? メリー。墓荒らしは京都のあちこちで起きているけど、数日間立て続けに被害にあった墓地は一箇所もないのよ。一つの墓地につき、被害はたった一日のみ。つまりまだ墓荒らしの被害に一度も遭った事のない墓地で張っていれば、犯人と接触できるかも知れないって事ね」

「それは分かってるけど、でもねぇ……」

「まぁ、ここは私に任せておいてよ。メリーは大船に乗ったつもりでいなさい!」

 

 グッと蓮子は親指を立てる。メリーは「大船じゃなくて泥船だ」とでも言いたげな表情を浮かべている。

 蓮子達が足を運んだのは、京都某所のとある墓地だった。大学からも歩いて行けるくらいの場所に位置している墓地で、規模はどちらかと言うと小さめである。墓荒らしの被害には一度も遭っておらず、墓地は少々寂しげな平穏を保ち続けている。

 

 そんな墓地の一角で、蓮子とメリーは陰に隠れて墓荒らしの犯人が現れるのを待っている。けれども当然、ただ適当な墓を注視して闇雲の張り込みをしている訳ではない。

 罠は、既に張っている。

 

「教授から借りてきた魔寄せの人形……。あれの効力に惹かれて、火車は必ず現れるはず……!」

「だと良いけどね……」

 

 うきうきとしながらそう語る蓮子とは対照的に、メリーはほぼ完全に冷め切っている様子。温度差が物凄い。

 メリーが肩を落としている理由は、その魔寄せ人形なる物にある。大量のオカルトグッズを収集している夢美のコレクションの一つで、その効力は折り紙つき――らしい。ぶっちゃけ真偽は不明である。

 何より、その見た目が問題だ。あれは、どこからどう見てもただのぬいぐるみにしか見えない。しかも猫のぬいぐるみだ。アニメ調に可愛らしくデフォルメされた、黒い猫のぬいぐるみである。それこそ、そこら辺のファンシーショップにでも普通に売ってそうな。

 

「まったく魔寄せの人形には見えないのだけれど」

「何言ってるのよメリー。あの教授が持っていた人形なのよ? 本物の魔寄せグッズに違いないわ!」

「夢美さんが持っていたからと言ってもねぇ……」

 

 もっと禍々しい形相をした人形だと良かったのだろうか。

 しかし、見た目だけで判断するのは早計だと蓮子は思う。こんな可愛らしい見た目でも、その効力な確かなはずだ。そう信じている。

 

「あんなぬいぐるみに頼るんじゃなくて、もっとこう……統計を取るとかした方が確実に犯人に近づけるんじゃないかしら?」

「それじゃあ時間がかかり過ぎるじゃない。犯人は待ってくれないんだから。巧遅は拙速に如かずよ」

「急がば回れって言葉もあるわよ蓮子」

 

 正直、あの人形が本当に魔寄せの効果があったとしても、犯人が火車ではなく普通に人間だった場合は全く意味がない訳だが。しかし火車が犯人だった場合、常識的な方法では接触が難しい事も事実である。実はこれくらいシュールなくらいが丁度いいのかも知れない。

 

「それにしても、こんな真昼間から陰に隠れてお墓の前に置かれた黒猫のぬいぐるみを見張ってるなんて……。知らない人が見たら不審極まりないわよね」

「大丈夫だって。この辺は意外と人通り少ないし、誰かに見られるなんて事……」

「あの、何してるんですか?」

「うひゃあ!?」

 

 変な声が出た。どこから出た声なのか、蓮子本人でも分からなかった。

 メリーとそんな話をしていた矢先、いきなり背後から第三者のお声かけである。フラグの回収速度が尋常ではない。これには流石の蓮子も飛び上がってしまう。

 弾けるように振り返ると、そこにいたのは見知った顔。

 

「す、すいません……驚かせちゃいましたか?」

「よ、妖夢ちゃん!? どうしてここに……?」

 

 夢美の研究を手伝っていたはずの妖夢だった。

 まさか彼女もここまで驚かれるとは思っていなかったらしく、少し面食らっている様子。やけにリアクションの大きい蓮子を前にして、流石の妖夢も苦笑いである。

 しかし、本当になぜ彼女がこんな所にいるのだろう。今頃は、丁度夢美の研究室で手伝いをしているはずなのに。

 

「いえ、ちょっと夢美さんに頼まれて買い出しを。その帰りに何やらコソコソしている蓮子さん達を見かけて……。気になってつけちゃいました」

「そ、そうだったの……。全然気づかなかったわ」

「あ、で、でもっ! 別に、驚かすつもりじゃなくてですね……!?」

 

 それは分かっている。妖夢はそんな悪戯をするようなキャラではない。どちらかと言えばされる方だと思う。

 

「そ、それより……。本当に何をしてたんですか? 何かを見張ってたみたいですが……」

「いや、実はね……」

 

 メリーが事の経緯を妖夢に説明する。墓荒らしが多発している事、犯人が火車という妖怪ではないかという推測、そして蓮子が考えた火車と接触する為の作戦の事も。

 全ての説明を聞き終えた後、妖夢は「うーん……」と思案して、

 

「火車、ですか……」

「そうそう。妖夢ちゃんの知り合いに、火車の妖怪はいない?」

「いえ、私の知り合いには……。化け猫の妖怪ならいるんですけど……」

 

 残念ながら妖夢の知り合いに火車はいなかった様子。しかし、妖怪の楽園とも言える幻想郷である。火車の一人や二人くらい、いてもおかしくはないはず。

 

「それで、その火車を誘き寄せる為の物が……」

「そう! あの魔寄せの人形よ!」

 

 蓮子は自信満々で猫のぬいぐるみを指さすが、妖夢が浮かべるのは引きつった苦笑いである。これは完全に呆れられている。

 

「そりゃこんな反応になるわよ。だってあれ、どう見てもただのぬいぐるみにしか見えないもの」

「い、いえっ……! そ、その、私は……! えっと、あんなタイプの魔寄せ人形もありだと思いますよ……?」

「ちょ、ちょっと待って妖夢ちゃん? どうして目を逸らすの……? こっちを見て妖夢ちゃん……!」

 

 一応口にしている内容は肯定気味ではあるが、妖夢は全く目を合わせてくれない。蓮子の心にぐさぐさと突き刺さった。色々と。

 いや、確かに。確かに蓮子も、最初にあのぬいぐるみを見たときはちょっと妙に思っていたのだ。けれども夢美の熱心な説明を聞いているうちに、段々とその気になってきて――。今は完全に虜である。そう言う事では、ある意味()()()の効力を発揮できていると言えるかもしれない。

 

 そんな枝葉的な事を蓮子が考えていると、目を逸したはずの妖夢が「あっ……」と声を上げた。

 

「……? どうしたの?」

「い、いえ……。あの、あれは……」

 

 胡乱に思った蓮子が妖夢に確認してみると、彼女は自らの視線の先をその手で指さした。どうやら何かを見つけたらしい。

 蓮子とメリーは揃って妖夢の視線を追い、彼女の示す先へと目を向けてみる。そこにいたのは、

 

「……猫?」

 

 猫だった。それも黒猫である。闇夜に溶けてしまいそうな真っ黒の毛並みに、ぼんやりと浮かび上がる赤い瞳。この位置からでは全体を見る事は出来ないが、体格から考えて子猫という訳ではないだろう。そんなツリ目気味の猫は、墓石の陰に隠れてこちらを訝しげに伺っているように見えた。

 赤い瞳の、真っ黒な猫。黒い、猫。

 

「……ねぇ、蓮子。あの猫ってひょっとして……」

 

 蓮子が集めた目撃例。その中にある猫の特徴と、ほぼ完全に一致する。

 

「……ふ、ふふふ……」

 

 途端に蓮子は、強い愉悦感を覚える事となる。

 

「れ、蓮子さん……?」

 

 いきなり笑い始めた蓮子を目の当たりにして妖夢は若干気押されているようだが、そんな事は気にならない。一度この状態に入ってしまったら、最早周囲の音など蓮子の耳には届かなくなっていた。

 ゆらりと立ち上がった後、蓮子は腰を低くして、

 

「ついに見つけたわよ火車ァァア!!」

 

 恥を知らぬような大声を上げつつも、蓮子はまるでロケットの如く飛び出した。

 凄まじいスピードで、ぐんぐん黒猫へと接近する蓮子。その様は最早獣である。鬼でも逃げ出しそうな形相と凄みで突進するその様を見たメリーと妖夢は愕然として声も出ないようで、口を開けたまま目をパチクリさせている。

 そんな彼女達の心境など露知らず、勢いを殺さぬままに蓮子は黒猫へと飛び掛った。

 

「つーかーまーえー……、た……?」

 

 飛び掛ると同時に両手を伸ばし、蓮子は黒猫を捕まえようとする。――が、彼女の両手はその猫を捕らえる事が出来ず、虚しく空を掴んだ。

 勢いよく走り出した蓮子だったが、真正面から突っ込んだ事により驚いた猫が逃げてしまったのだ。器用に身体を捻らせて蓮子を側をすり抜け、「なー!」と鳴き声を上げつつも素早い足取りで逃亡をはかる。

 

「あっ逃げた! そっちに行ったわよメリー! 捕まえて!」

「えっ、ええ!?」

 

 素早くメリーに声をかけるが、当の彼女は随分と面食らっている様子。わたわたとしながらも、メリーは猫の進行方向上へと割り込むが――。

 

「ほ、ほら、大人しくして……きゃっ!?」

 

 失敗である。

 メリーも両手で猫を捕まえようとしたのだが、その標的の身の熟しは予想を上回るものだった。するりと難なくメリーを躱し、猫は危なげもなく走り去ってゆく。

 

「まずい見失う! こらぁ! 待てぇ!」

 

 反射的に蓮子は走り出す。このままあの猫を逃がす訳にはいかない。事態の進展の為にも、是が非でも捕まえなければなるまい。

 猫にも負けないスピードで蓮子は走り続け、その勢いで背後から思い切り飛びついた。

 

「ぎゃふっ!?」

 

 が、相手は小回りの効く猫である。素早く進路変更して、蓮子の飛びかかりを回避してしまった。お陰で蓮子は頭から地面に突っ込む事になる。

 

「れ、蓮子! 大丈夫!?」

「くっ、くぅぅ……! な、なんてすばしっこい猫なの……!?」

 

 ぷるぷると身体を震わせながらも、蓮子は顔を上げた。頭から地面に突っ込んだものの、幸いにも大きな怪我はしていないようだ。精々擦り傷程度である。

 それにしても、本当にすばしっこい猫だ。これが火車の力なのだろうか。

 

「あ、あのっ……。大丈夫ですか……?」

「だ、大丈夫よ……。安心して妖夢ちゃん! 私が必ずあの猫を捕まえて……、あれ?」

 

 声をかけてきた妖夢を見て、蓮子は思わず間の抜けた声を上げてしまった。

 と言うのも、今の今まで蓮子達を散々翻弄したあの猫を、妖夢は抱きかかえていたのだ。先ほどまでの逃げ回る様子はどこへやら。猫はすっかり大人しくなって、妖夢の腕にすっぽりとはまってしまっている。

 

「あっ! ど、どうして……!?」

「いえ……。蓮子さんが急に飛び掛るから、びっくりしちゃっただけみたいですよ? この通り、もうすっかり大人しくなってますし」

 

 なー、と。肯定するかのように猫は鳴き声を上げる。蓮子は思わず項垂れそうになった。

 蓮子達はあれだけやっても駄目だったのに、妖夢はこうも簡単に捕まえてしまっているのだ。あの苦労はなんだったのだろう。

 まぁ、ともあれ。

 

「これで話を聞けるわね……。さぁ! 博麗大結界を越える方法を……!」

「ちょ、ちょっと待って下さい蓮子さん! この子をよく見てください!」

「……え?」

 

 妖夢にそう促され、蓮子は猫をまじまじと凝視する。

 真っ黒な毛なみ。赤い瞳。そして一本の尻尾。

 尻尾。尻尾が、一本。二又に、分かれていない。

 

「こ、これって……」

「ええ。この子、火車でも猫又でもなくて、普通の黒猫みたいですよ? 妖怪なんかじゃありません」

「あら、本当ね。尻尾が分かれていないわ。それじゃあ……」

「…………」

 

 蓮子は思わずピクピクと引きつった表情を浮かべる。

 火車だと確信して追いかけていたあの猫は、実は妖怪でもなんでもなく普通の黒猫だった。当然博麗大結界を越える術など知っている訳もないし、幻想郷の住民である事もない。

 つまり。今の労力は、全くの無駄だったという訳で。

 

「そ、そんなぁ……」

 

 ぐったりとへたり込んでしまうのも、仕方がないと言えるだろう。

 

 

 ***

 

 

 結論から言ってしまえば、結局火車の発見には至らなかった。

 火車と勘違いした黒猫を逃がし、買い出しの途中だった妖夢と分かれた後に。夢美から借りたらしい例の魔寄せ人形を見張り続ける事数時間。根気よく張り込みを続けていたのだが、結局あれ以降火車どころか猫すらも現れる事はなかった。

 カラッと晴れた冬空の下、折角の休日を無駄に浪費した気分である。これなら、いつものように結界の解れを探しに行った方がまだ有意義ではなかったのではないだろうか。いよいよ蓮子すらもあの人形の効力に疑問を持ち始めた所で、ようやく張り込みは打ち切られた訳だが――。

 

「……で? 結局無駄に終わったって事か」

 

 そう口にするのは、帰り際にばったりと出会った進一である。どうやら夢美の手伝いもついさっき終わったようで、彼も帰宅する途中だったらしい。妖夢と共に帰路に就く進一に今日の活動を説明した所、なんとも言えぬ表情を向けられてしまった。

 

「ま、まさかあれからずっと張り込んでたんですか……?」

「いや……まぁ、そういう事になるわね……」

 

 さっきから何も言わない蓮子に代わって、メリーがこれまでの経緯を説明していた。

 蓮子は珍しくだんまりを決め込んでいる。おそらく、落ち込んでいるのだろう。いつでもポジティブシンキングな彼女でも、どうやら流石に今回は中々にダメージを感じているようだ。まぁ、成功の確信を持って仕掛けたはずの魔寄せ人形が空振りに終わり、数時間もの時間を無駄にしたとなると――。落ち込んでしまうのも無理はないだろうけれど。

 

「ね、ねぇ蓮子? げ、元気だしてよ。ほら、まだ他にも火車と遭遇できる方法もあるかも知れないでしょ?」

「…………」

「お、おい蓮子。あのぬいぐるみ、姉さんから借りたんだろ? いくら姉さんでも、持ってる物全てに……その、霊的な力が宿ってる訳じゃないと思うぞ?」

「……ぬいぐるみじゃないもん。魔寄せ人形だもん」

「……あ、あぁ……」

 

 喋った。とても小さな声だったけれども。

 しかし、まさか彼女がここまで落ち込む事があろうとは。意外な一面である。

 

「……あ、そうそう。実は進一君と妖夢ちゃんに聞きたい事があるのだけど」

「……ん?」

「なんですか?」

 

 取り敢えず蓮子はそっとしておくべきだとして。場の雰囲気を変える為にも、メリーはあの話題を進一達に持ちかける事にした。

 さっき出会った猫耳少女の事だ。彼女が捜していたらしい、黒い帽子を被った少女。メリーも蓮子もその行方に心当たりはなかったが、進一達なら何か知っているかも知れない。

 

「黒い帽子の女の子?」

「ええ。どこかで見かけなかった?」

「……いや、俺は見てないな。妖夢はどうだ?」

「うーん……。すいません、私にも心当たりは……」

 

 だけれども、結果は不発。

 メリーは思わず肩を落とすが、よく考えてみればそもそも彼女の名前すらも知らなかった事に気づく。仮にここで情報を得られたとしても、あの猫耳少女と連絡を取れる手段が無ければ意味がないだろう。――あんな格好をしていれば、見つけるのはそう難しくもないかも知れないが。

 

「それにしても、猫のコスプレか……。そんなにクオリティ高かったのか?」

「ええ、そりゃもう。耳と尻尾なんか、まるで本当に生えてるみたいで……」

「へぇ……」

 

 思い返して見れば、あのコスプレは本当に凄かった。どんな技術が使われているのか分からないが、あんなリアルに作れるものなのか。

 メリーが一人、そう感心していると、

 

「ひょっとしてそいつ、猫のコスプレをしていたんじゃなくて、火車が人間の姿に化けてたんだったりして」

 

 進一が冗談口調で何気なく口にした言葉。

 衝撃が、走った。

 

「それだァァァァア!!」

「うおっ!?」

 

 黙り込んでいた蓮子の突然の絶叫である。空気を振るわせる程の声量を前にして、進一も思わずひるんでいる。

 蓮子は鬼気迫る表情で、

 

「そうよ! そうに違いないわ! もうっ……なんで今までそれに気づかなかったのよ……!」

「ちょ、ちょっと待て蓮子。今のは冗談で言ったつもりだったんだが……」

「いや、冗談でもなんでもそれは限りなく的を得ているわ! よく思い出してみてメリー! 貴方が会ったのは、本当にコスプレイヤーだったの?」

「えっ? そ、それは……だって、あれはどう見ても……」

 

 どう見ても。コスプレ、だったのだろうか?

 あの耳も、あの尻尾も。作り物には見えぬ程のリアリティだった。時折ピクピク動いている所なんか、特に――。

 

「……あ、あれ? コス、プレ……?」

「ほら! やっぱりコスプレなんかじゃなかったのよ!」

 

 急に元気になった蓮子にかなり気圧されながらも、メリーは自分の記憶を探る。今の今まであの猫耳少女は完全にコスプレイヤーだと思っていたのだが、よく考えてみると確かに色々と妙な部分があった。

 まるで生き物のように動く耳や尻尾もそうだが――。何と言うか、どこかこの現代に順応出来ていないような。そんなちぐはぐな印象を受けていたような気がする。

 

「メリー! その女の子、あの喫茶店で会ったのよね!?」

「え、ええ。あっちから話しかけてきて……」

「もしかしたらまだ近くにいるかも知れない……! よしっ! 行くわよメリー!」

「えぇっ!? ちょ、ちょっと! 本気!?」

 

 愕然とするメリーを余所に、蓮子は強引に手を引いてくる。思い立ったが吉日、やると決めたらやるのがモットーの彼女だ。ここでメリーが諭したとしても、蓮子の意思は揺るがない。

 

「ね、ねぇ待ってよ! もう結構遅い時間だし、捜索は明日に回した方が……」

「甘いわよメリー! そんな悠長な事してたら、今度こそ完全に見失っちゃうじゃない!」

 

 やはりこうなる。一度こうなってしまったら、説得するだけ無駄である。

 

「ふふふっ……! 今度こそ見つけ出してやるわ!」

 

 喜怒哀楽の激しい、随分と現金な少女だとは思うけれど。

 まぁ、いいかと。メリーは半ば諦めて蓮子について行くのだった。

 

 

 ***

 

 

 一方その頃、妖夢と進一は。

 

「あの、私達も行った方がいいんでしょうか……?」

「どうなんだろうな……。と言うか、喫茶店ってどこの事だ?」

 

 完全に置いてけぼりにされていた。


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